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 衆参&国民投票を一気に? トリプル選挙の現実味

 永田町の一部に、来夏の参院選と衆院選に憲法改正の国民投票を重ねる“トリプル同時選挙”の実施を画策する動きがある。実現すれば我が国憲政史上初の珍事だが、来年の通常国会中盤までに憲法改正の国会発議が終わっていれば実施は可能だ。
 自民党の魂胆は、どうあがいても議席を減らすことになる参院選の負け数をできるだけ抑えるための、衆院選とのダブル選挙実施だった。それに改憲の国民投票が加わったのは、任期があと3年しかない安倍晋三首相の悲願である憲法改正のタイミングが絡んでいる。安倍首相は「1丁目1番地」である憲法改正を自らのレガシーとして残したい。だが、現状は他の政治課題が山積している上、国政選挙の結果次第では機会を逸してしまう可能性が大きい。
 来年秋の消費税率10%へのアップ、脱デフレ宣言、日米の経済環境、日露・日朝関係の進展など一歩対応を踏み誤ると、内閣支持率に跳ね返り、ひいては改憲のチャンスまで逃しかねない。ならば、国会発議に必要数を満たしている今のうちにやってしまおうというわけだ。
 トリプル同時選挙となると、衆参のダブル選挙の争点は憲法改正、そしてそれを同時に国民投票で諮るというわかりやすい選挙課題となる。
 この奇策の「震源地」とされる新党大地代表の鈴木宗男氏は、安倍首相としばしば会食する仲。当然、このアイデアも安倍首相に吹き込み済みと思われるが、首相が乗り気になったか否かまでは定かでない。
 このトリプル同時選挙を仕切れる政治家は菅義偉官房長官だけ。安倍3選後、菅氏が選挙の実質的元締である自民党幹事長に起用されるか否かが、安倍首相の「その気」のバロメーター……この話にはそんな尾ひれもついている。


 プーチン氏に反論しない安倍外交の「重大な失敗」

 ウラジオストクでの東方経済フォーラムで、プーチン・ロシア大統領が「年末までに無条件で平和条約を結び、領土問題はその後協議する」と、領土棚上げと思える提案を行い、日本側に衝撃を与えたが、その後、日本と領土問題を抱える中韓首脳が暗に領土棚上げを支持するような発言をしていた。日本のメディアは詳報しなかったが、領土問題で中韓露3国が足並みを揃えかねない。
 フォーラムに初参加した習近平国家主席は、プーチン発言の後、ロシア人司会者から質問を振られ、「領土をめぐる係争が存在するのは問題だ。解決できないなら、それをうまく管理することが重要だ。歴史の教訓から学んでほしい」と述べた。アドリブの苦手な習主席ながら、係争をコントロールすることは、現状凍結を意味し、中露蜜月を反映してかロシアの主張に近い発言だった。
 竹島を実効支配する韓国の李洛淵首相も「国際的な文書を基に、英知で解決すべきだ。中国の?小平は『現世代が問題を解決する英知を持たないなら、次の世代に委ねるべきだ』と述べたことがある」と領土棚上げを事実上支持した。
「中韓首脳ともに突然振られてとまどった感じでしたが、ロシア寄りの発言。安倍首相も4、5回発言を振られて朝鮮半島情勢などに言及したが、プーチン提案には一切反論しませんでした」(モスクワ特派員)
 中韓が結束すれば、日本は苦しい立場に置かれるだけに、首相は反論し、日本政府の立場を強調すべきで、「安倍首相は重大な外交的失敗を喫した」(ゴロブニン・タス通信東京支局長)と言えそうだ。


 ふるさと納税見直しは総務官僚の意趣返し!?

 野田聖子総務大臣が9月11日、ふるさと納税制度の抜本的な見直しを検討すると発表した。ふるさと納税は、全国の自治体のいずれかに寄付すると、2000円を超える部分について住民税や所得税から控除される。寄付者・自治体・地場産業の「三方一両得」となる好制度とされるが、最近は出身地の活性化や被災地への寄付よりも、返礼品目当てに縁もゆかりもない自治体に寄付するケースが目立つ。一方、自治体も、少しでも多く寄付を集めようと高額な返礼品や地場産業とは無関係の品を贈る事例が続出。自治体間の競争が過熱し、税金が流出する都市部の自治体とのあつれきも起きていた。
 このため、総務省は「返礼品の調達費は寄付額の3割まで」「地場産品以外は返礼品にしない」旨を17年春と18年春の2度、自治体に要請したが、9月1日時点で、246自治体(全体の14%)が総務省の要請を無視し、3割を超える返礼品を贈っていたことが判明した。
 業を煮やした総務省は、ついに法律による規制という強硬手段で、従わない自治体を排除する方針を打ち出した。年末の与党税制調査会で詳細を詰めたうえで、通常国会に地方税法改正案を提出、早ければ19年4月から実施したい考えとされる。
 だが、法制化は「なぜ3割なのか」「地場産品とは何か」といった根源的な問題にぶつかり、自治体の意見も聞かずに進めることは容易ではない。総務官僚のプライドが「法制化」を口走らせたとも言え、「単なる恫喝」に終わるとの見方も少なくない。


 横田基地に事故率高いCV22オスプレイ配備

 在日米軍は東京都の米空軍横田基地に空軍版の垂直離着陸輸送機「CV22オスプレイ」5機を10月1日に正式配備すると発表した。2024年頃までに10機(要員約450人)になるとしている。
 問題は、CV22の訓練空域が群馬県を中心に、長野、栃木、新潟、福島5県の真上にあるH(ホテル)空域となることだ。直下には群馬県の高崎、前橋両市や長野県の軽井沢町など53自治体が含まれる。
 もともとは航空自衛隊の訓練空域だが、自衛隊は住宅密集地での訓練を避けるため陸地の上空での訓練を行っていない。自衛隊が抜けて空白となったホテル地区を米軍がわが物顔で利用することになる。
 市民団体「オスプレイと飛行訓練に反対する東日本連絡会」が昨年12月、横田周辺の自治体とホテル地区直下の81自治体を対象にアンケート調査を行ったところ、回答のあった58自治体のうち、93%にあたる47自治体が「飛行ルート直下にあると認識している」と回答。CV22配備に対し、高い意識を持っていることがわかった。
 今後も政府に対して説明を求めたり、資料収集を行うなどの何らかの対応をする自治体がほとんどだったが、2016年12月、沖縄県名護市に墜落した海兵隊の「MV22オスプレイ」の事故に関する取り組みは、横田基地周辺では16%、ホテル地区直下は61%の自治体が「何も行わない」と答え、事故発生の可能性に対する準備が整っていないことを裏付けた。
 米軍はホテル地区とは別に、東北から関東、四国、九州、南西諸島へと延びる6つの低空飛行訓練ルートが存在することを公表している。こちらは政府が提供した訓練空域ではなく、米軍が一方的に「ルート」と名付け、勝手に飛び回る。
 日本政府は抗議するどころか、提供施設外で行う低空飛行訓練をほぼ無原則に認めている。CV22の横田配備をきっかけに米軍のやりたい放題が広がり、日本の空域全体が無法状態に陥る可能性がある。
 MV22の十万飛行時間当たりのクラスA(被害が200万ドル以上か、死者の出た事故)の事故率は3.24で海兵隊保有の航空機の中でもっとも高い。しかし、CV22はそれより高い4.05である。


 金融界に広がり見せるビッグデータの活用

 ビッグデータの活用が金融界全般に広がりを見せている。いわゆる「データバンク」や「情報銀行」と呼ばれる事業だ。
 例えば、金融界でいち早く「情報銀行」の実験に乗り出した三菱UFJ信託のケースでは、個人は同行が提供するスマホアプリで自分の購買履歴や健康状態、行動記録など、提供する個人情報を選択する。一方、データを集めたい企業は情報の利用目的や欲しいデータの種類をアプリ上で明示する。個人は案件ごとに提供するか否かを決め、提供の対価として1企業ごとに毎月500〜1000円程度の報酬を受け取る仕組みが想定されている。実験にはデータ利用企業としてフィットネスクラブや旅行会社など4社が参加する予定だ。
「情報銀行」は、政府の2016年の「日本再興戦略」に盛り込まれた構想で、17年5月に施行された改正個人情報保護法でデータのトレーサビリティが確保され、罰則が強化される一方、情報の匿名化により積極的なデータの利活用が可能となった。所管する総務省も今年5月11日に「情報銀行」の認定に係る指針案を公表している。
 情報銀行については、電通傘下の「電通テック」が9月3日に、100%子会社の「マイデータ・インテリジェンス」を設立。11月からサービスを開始すると発表し、話題を集めている。
 新会社は、消費者から氏名・住所、メールアドレスや自動車保有の有無、健康情報などのパーソナルデータの登録・信託を受ける一方、消費者に広告・宣伝のアプローチをしたい企業からの依頼を受けて、パーソナルデータを企業に提供する。企業から依頼を受けるたびに消費者から事前承諾を取得し、消費者には報酬として金銭や商品カタログなどを提供するスキームだ。20年までに3億円の売上高を目指す計画という。
 また、保険業界では日本生命保険が内外のビッグデータの収集や分析を行う「データサイエンティスト」の育成に乗り出すという。すでに30名程度を専門の育成講座に派遣しており、数年かけて100人規模に増強する予定だ。
 保険会社は、契約時に顧客の健康状態や属性情報を把握するが、さらに内外のビッグデータを活用し、詳細かつ科学的な分析を加えることで、よりキメの細かい顧客目線に立った保険の引き受けに繋がることが期待される。
 まさに多様な業種からビッグデータ活用事業への参入が目白押し。とりわけ金融界にとっては、「タイムリーに個人、企業に関する情報をどれだけ質量ともに握ることができるかで、金融の世界の勝負は決まる」(メガバンク幹部)と言われるだけに、参入者は多い。


 頬かむりは通用しない、ケフィア倒産で社長と息子

 債権者数3万人で負債総額が1053億円と、今年2番目の大型倒産となったケフィア事業振興会(東京都千代田区)は、関連企業の数が60社を超えるだけに、9月14日、東京地裁が新たに12法人の破産手続き開始を決定し、負債総額がさらに190億円も積み上がるなど、混乱を増している。
 そんな中で顰蹙を買っているのが、ケフィアをリードしてきた鏑木秀彌代表(82)の息子で、傘下のかぶちゃん農園を率いる武弥社長(50)の姿勢と発言である。ケフィアは、「オーナー制度」や「サポーター制度」で、10〜20%の利回りを約束して資金を集め、それを農作物、再生エネルギー、サプリメント、温泉ランドなどさまざまな事業に投じてきた。そして、かぶちゃん農園はメインの商材ともいえる干し柿などを販売。それをケフィアは、例えば1口・5万円の干し柿コースに入金すると、半年後に5万5000円で品物を渡すか現金を支払います、という買い戻し特約付きでオーナーを募集していた。
 ケフィアとかぶちゃん農園は一体の関係にある。親子の共同運営は自明だが、武弥社長はホームページ上でケフィアの破産を見越したように「ケフィアは当社の主要取引先で、オーナー制度に当社は関係していない」とアピール。地元紙の直撃取材に対しても「倒産騒動はメディアを通して知った。我々にも詳細な情報はない」と、白々しく述べた。
 被害者弁護団も立ち上がっており、それで通るワケはないのだが、注目されるのは武弥社長と海外、中でもカナダのケベック州との関係である。もともと大学卒業後、農業系出版社を経て海外青年協力隊員として2年間、南米パラグアイで農業指導にあたってきた武弥氏は海外志向が強く、その相手先として選んだのがケベック州だったのだ。
 メープルシロップから始まって、蜂蜜、グランベリー、スモークサーモンなどケベック州の農水産物や食料品の輸入販売を行っており、昨年11月には長年の功績を認められて、州政府から勲章を授与されている。また、会員をつなぎ留めるために、歌舞伎公演などに招待していたことが知られている。特に頻繁に開催されていたのが、カナダ発の世界的に有名なサーカス「シルク・ドゥ・ソレイユ」の貸切公演だった。
 関連企業が多いだけに資金の流れは複雑で、債権債務の確定には時間がかかる。また、海外との取引もあり、特にカナダには「ケベック開発」や「ケベック合同」といった企業もあって資金移動は複雑さを増す。その移動に不正はないか、といった観点からの調査も徹底的に行われるわけで、武弥氏は「ウチは関係ない」と言っていられる状況ではないはずだ。果たして、いつ尻に火がつくのか──。


 仮想通貨による買収に震え上がるビートHD

 仮想通貨バブルが発生した昨年、最も話題性が高く人気を集めたのは「ノアコイン」だった。当初は「フィリピンの政官財民が一体となってつくる仮想通貨で、貧困撲滅に寄与する」と説明。その使命もさることながら、日本では著名歌手やモデルなどを人寄せに使った大きなセミナーが何度も開催され、大きな話題になった。
 その後、フィリピン政府やフィリピン航空が「仮想通貨プロジェクトに関与していない」と表明。ノアコインサイドが希望者への返金に応じるなどして信頼回復に務め、今年3月には香港市場などで上場に踏み切った。発効残が約916億NOAH(ノアコインの通貨単位)で、日本円換算で時価総額は約110億円だ。
 しかし、このままでは「草コイン」として仮想通貨市場に沈み込んでしまうため、起死回生策として打ち出したのが上場企業の買収だった。東証2部に上場するビート・ホールディングス・リミテッド(ビートHD)の筆頭株主となり、「ノアコイン仮想通貨プロジェクトの中核を担うべき」と株主提案を行った。
 実現すれば、仮想通貨が上場企業のオーナーになる初めてのケースとなる。金融庁も東京証券取引所もこの事態を歓迎していないが、買収提案自体はルールに則って行っており、禁止する術はない。ビートHDは株主提案に反対だが、筆頭株主の申し入れに従って、10月5日に臨時株主総会を開く。
 ノアコインサイドの申し入れはかなり強硬だ。まずは社名変更。ビートHDを「ノアコイン・グローバル・リミテッド」にして、仮想通貨プロジェクトの推進姿勢をアピールしたい考えでいる。次に、私募によってノアコインの株式数を増やして支配権を手に入れ、最大4名の取締役を送り込むもようだ。その上で、日本、北米、シンガポール、香港などで仮想通貨取引所を開設。さらにICO(新規仮想通貨公開)が適法なシンガポール、香港、インドネシアなどで、約10億米ドル(約1100億円)を調達するという。
 金融庁がコインチェック事件以降、仮想通貨への監視体制を強化している中での大胆な提案だが、それを株主は認めるのか。行方が注目されている。


 NTTが調達会社を設立、NECや富士通は弱体化

 NTTがパソコンやサーバーなどの資材をグループ一体で調達する専門会社「NTTグローバルソーシング」を米国に設立すると発表。今後、グループの調達機能をまとめてコストを削減する。
 取扱高は年間1一兆円規模で、発注量を増やすことで値引き交渉力を高める。これまでは「同じようなスペックで価格もそれほど差がなければNECや富士通など国内勢に通していた」(NTT幹部)。だが、国内では楽天が新たに通信事業に参入、政府も相次ぐ通信料の値下げを要求している。「海外勢との戦いに勝つためにも、調達費用の削減に踏み込まざるを得なくなった」(同)という。
 すでに英ボーダフォンやドイツテレコムなど海外の通信大手は2010年前後に調達専門会社を設立して、コスト削減の実績を上げている。NTTの競争相手は通信大手だけではなくなっており、ITサービスでは米IBMなどとしのぎを削る。大量のデータをやり取りする5G時代には競争環境が大きく変わるため、コスト削減による体質強化は急務だ。
 米国では米AT&Tが米タイムワーナーの買収を仕掛けるなど、通信や放送が入り乱れた市場になっている折、サービスの競争力強化は待ったなしの状況である。基地局の分野では米国などで新興勢も楽天の受注を狙うなど台頭している。NECや富士通が、こうした流れについていけなければ先はない。


 スルガ銀の再編先に関西みらいFG

 「地銀の風雲児」ともてはやされたスルガ銀行創業家の岡野光喜会長が9月7日、辞任に追い込まれた。2兆円を超すシェアハウスなど投資用不動産向け融資の大半で「組織的な」不正行為が明らかになったためだ。
 いま最も懸念されているのは預金流出で、「スルガ銀行の帯封が付いた大量の資金が持ち込まれている」(地元静岡県の地域金融機関)という。すでに「静かな取り付け」が始まっている。さらに、貸出債権の劣化に伴う引当金の積み増しも避けられず、9月期決算で赤字に転落する可能性が濃厚で、「再編は避けられないだろう」(地銀幹部)との見方が有力だ。
 その再編相手としては、横浜銀行と東日本銀行を傘下に持つコンコルディア・フィナンシャルグループ(FG)が有力視されているが、ここにきて新たな受け皿候補として急浮上しているのが、りそなホールディングス(HD)を親会社にする関西みらいフィナンシャルグループ(FG)だ。関西みらいFGは、傘下に近畿大阪銀行、関西アーバン銀行、みなと銀行の三行がぶら下がる。「関西みらいFGは、地銀のプラットフォーム的な存在で、将来、他の地銀等が合流しやすいよう中間持ち株会社が設けられている」(メガバンク幹部)。
 関西みらいFGの源流は、都銀が不良債権処理に苦慮した1990年代後半に大蔵省銀行局(当時)の大物官僚・杉井孝氏(現在・弁護士)が密かに温めていたスキームに求められる。杉井案では、東西に複数の地銀を糾合するプラットフォーム(持ち株会社)がつくられる構想で、その中核銀行は、関東があさひ銀行、関西が大和銀行だった。その後、両行が合併して誕生したのが、現在のりそなHDだ。そのりそなHDが主導して生まれたのが関西みらいFG。であれば、「関東みらいFG」的なものが設立されて、その傘下にスルガ銀行が入る可能性もあろう。


 新卒採用に波紋広げる経団連の中西会長発言

 「経団連が採用選考に関する指針を定め、日程の采配をしていることには極めて違和感を覚える」
 経団連の中西宏明会長が9月3日の記者会見で述べたこの発言が物議を醸している。経団連が定める新卒の採用選考指針を自らの手で葬ろうとの意図がにじみ、経済界、大学はもとより、政府も巻き込み、波紋を広げているのだ。
 指針は新卒を採用する企業、就職活動に取り組む学生が拠り所とするルールであり、それを基準に採用日程が決められている。それだけに、廃止の可能性も匂わせた発言は新卒の採用選考の仕組みが一変するため、各方面に大きな衝撃を与えた。
「中西発言」の意図は、指針が定める採用選考スケジュールなどの問題だけに終わらない。指針の廃止となれば、企業にとって「新卒一括採用」という効率的な慣行は崩れ、ひいては年功序列、終身雇用といった日本型の雇用形態、さらに人材流動化など労働市場を大きく変えかねない。
 その影響の大きさから、中西発言には賛否両論が渦巻く。大学はもとより大企業にも、指針の廃止は「混乱を招くだけ」との反応が目立つ。中西発言を受け、全国の大学で組織する就職問題懇談会は10日の会合で、指針を「学修環境への影響が極力抑えられている」と評価し、現行ルールを維持する方向で一致した。半面、指針に縛られ、企業の採用活動・手法の自由度を奪ってきたのも確かで、指針順守の対象となる経団連の会員企業にも不満が積もる。実際、指針を改定し、5日以上としてきたインターンシップ(就業体験)の期間を廃止した昨年は、「ワンデー(1日)インターンシップ」の実施に会員企業が堰を切ったように踏み切ったが、この例だけでも指針が就活の実態にそぐわず、会員企業の採用活動の自由度を縛ってきたことがうかがえる。
 確かに、指針の評判は決して芳しくない。指針を改定し採用選考スケジュールが変更される度に学生は翻弄され、さらに経団連の会員でない企業が早期に内定を出し、会員企業でも指針を無視した行動に出るなど、指針が形骸化してきた点も否めない。こうした現状を反映し、経済同友会の小林喜光代表幹事は4日の記者会見で、日本企業が国際競争力を高めるうえで「終身雇用の社会体制は明らかに変革を迫られている」とし、中西発言を「前向きに評価したい」と述べた。しかし、中小企業を束ねる日本商工会議所の三村明夫会頭は「何らかのルールが必要。これがないと就職活動が際限なく早まる」と異を唱える。大企業と、新卒採用で不利な中小企業との温度差は大きい。
 かつて企業の採用ルールだった「就職協定」は1997年、当時の日経連(現経団連)の根本二郎会長(故人)が協定破りの「青田買い」の横行に「正直者が馬鹿を見る」と廃止した。しかし、その後に現在の指針としてルールは復活した。その過程を振り返ると、その再現も予想される。


 アサヒビール専務に就任、サトーHD前社長の手腕

 ビール業界で外部からのプロ経営者招聘といえば、真っ先に名が挙がるのはサントリーホールディングスの新浪剛史社長だが、同業他社では見当たらなかった。そんな中、知名度では新浪氏には劣るものの、やはりプロ経営者といっていい人物がアサヒビールの専務に就任した。ラベルプリンター大手、サトーホールディングスの前社長、松山一雄氏(58)がその人で、青山学院大学卒業後、鹿島に入社。米国ノースウエスタン大学大学院も修了し、現在のP&Gジャパンを経て、サトーHDでは約7年、社長を務めた実績がある。
 松山氏はアサヒビールでは営業とマーケティング統括と、いきなりの重要部門を任されたが、同氏のIT関連のノウハウや知見を活かし、デジタルマーケティング体制の構築に取り組むという。また、同氏はTOEICで満点近いスコアを取るなど語学の達人らしく、グループを挙げて海外展開に注力するアサヒにあって、頼もしい存在だ。そこで早くも、松山氏の今後の手腕によっては、平野伸一・アサヒビール社長(62)の後継者になるかもしれないといった観測も出ている。
 国内はビール離れに歯止めがかからない中、首位のアサヒも昨年、看板の「スーパードライ」が年間1億ケース販売を割り込むなど、新たな戦略を迫られている。同社の歴代トップは総じて営業畑を歩んできた人物が多いが、ビール事業のテコ入れやデジタル戦略を深化させるには、ここで松山氏のような新しい外部の血を入れて“化学反応”を起こしたいといった思惑もあるのだろう。
 さらに、持ち株会社の小路明善・アサヒグループホールディングス社長(66)の後継という点でも松山氏は注目の人になってくる。同社の取締役にも就いたからで、むしろ新浪氏同様、持ち株会社の司令塔のほうが合うかもしれない。アサヒで外部からの役員招聘は32年ぶりで、住友銀行(当時)から転じて社長、会長を務めた樋口廣太郎氏(故人)以来となった。アサヒグループHDでは2019年から次期中期経営計画を始める予定だが、その計画遂行の過程で松山氏の“手腕”が試される。


 原子力事業で大手4社がやむにやまれぬ」提携

 東京電力ホールディングス(HD)と中部電力、日立製作所、東芝の四社が原子力事業で提携協議に入った。原子力発電所を運営する電力会社と、電力会社に原子炉を納めるメーカーとの異例の組み合わせだ。
 原発先進国であった欧州でも原発の新規建設を見合わせ、太陽光や風力など再生可能エネルギーに代替しようという動きが急だ。急速に原発市場が縮小する中で、「やむにやまれぬ」提携とはいえ、四社それぞれの思惑もあり、うまくまとまるかは未知数だ。
 四社をつなぐ共通点は、沸騰水型軽水炉(BWR)と呼ぶ同じタイプの原発を扱っていることだ。日立と東芝は原発の建設で売り上げが立てられる一方、電力会社は原発の管理運営で収益を立てる。「海外への原発輸出でも建設から運転まで一貫した提案がしやすくなる」(東電HD幹部)メリットがある。
 ただ、原発の事業環境は厳しさを増している。2011年3月の福島第1原発の事故から7年。国内原発の再稼働ペースは鈍く、新増設は正面からは議論すらされない。さらに4社それぞれ個別の事業を抱える。
 東電は建設再開を目指す東通原発(青森県)の問題がある。11年1月に着工したが、東日本大震災以来、工事は止まっている。17年5月に策定した経営再建計画で、他社との「共同事業体」を通じて進める方針を示した。東電は電力各社に協力を呼びかけているが、各社は慎重姿勢を維持してきた。今回の連合を機に他の電力会社の協力を仰ぎたいところだ。
 一方、中部電力は浜岡原発(静岡県)の再稼働のめどが立っていない。社内では先行きが見えない原発事業を持つことへの懸念もあり、今回の四社連合で同原発の建設を前進させたい考えだ。
 さらに日立製作所は英国での原発事業につなげたい思惑がある。英子会社のホライズン・ニュークリア・パワーは、英中部アングルシー島で二基の原発新設を計画する。ただ東日本大震災を受けて、安全規制は強まり総事業費は当初の約2兆円から3兆円まで膨らんだ。国内の大手電力や金融機関との出資交渉を始めたいが、電力会社は参画には慎重姿勢を貫く。
 東芝に至っては、事情はさらに複雑だ。米原子力大手のウエスチングハウスの売却で六千億円を超える損失を計上し経営危機の引き金となった。海外での原発事業からの撤退を表明しているが、残る国内事業をどうするかで対応に迫られていた。連合入りすることで、国内で何とか原発事業を存続させる光明が見えてくるのではと期待する。


 関係者も辟易する一般薬連の会長職騒動

 胃腸薬のキャベジンコーワで知られる「興和」の社長と正露丸で有名な「大幸薬品」会長が「日本一般用医薬品連合会(一般薬連)」の会長職を巡り、泥沼紛争を続けている。
 一般薬連は日本OTC医薬品協会、日本医薬品直販メーカー協議会、日本家庭薬協会、全国配置薬協会、日本漢方生薬製剤協会の5団体からなる連合会で、一般薬の普及活動に力を入れている団体。確定申告で一般医薬品購入費を控除できるセルフメディケーション税制の実現に精力的に活動したことで知られている。
 騒動の発端は三輪芳弘会長(興和社長)が黒川達夫理事長(元厚生労働省大臣官房審議官)と意見が対立。黒川理事長を「セルフメディケーションに熱心ではない。職務怠慢だ」と更迭し、鶴田康則氏(元厚労省大臣官房審議官)を理事長代行に起用したことだった。これに反発したのが大正製薬の上原明会長や大幸薬品の柴田仁会長、太田胃散の太田美明社長ら5人の副会長。「会長に理事長を更迭する権限はない。暴挙だ。三輪会長は能力を喪失している」として「会長に事故がある事態」に開催できる緊急理事会を開き、黒川理事長更迭の撤回と、三輪氏に代わる新会長に柴田氏を選任した。
 が、今度は解任された三輪氏が反撃。「柴田氏や上原氏らが開いた理事会は違法で、決定は無効だ。柴田氏らが自分たちの利益のために一般薬連を壟断(ろうだん)しようとしている」と主張する文書を関係者に送付し、近くのビルに同名の一般薬連の看板を掲げた事務所を開設。一般薬連が2つになってしまった。ホームページも双方ともまったく同じ絵柄で、ご丁寧にも「似た名称の団体にご注意ください」という注意書きまである。
 さらに、それだけに留まらず、三輪氏は「私のことを『会長としての意思と能力を喪失した』と記載した文書を全理事に送った行為は誹謗中傷。名誉を傷つけられた」とT認知症U扱いされたことに怒りはエスカレート。名誉棄損として柴田新会長と黒川理事長に対し3300万円の損害賠償を請求する訴訟を提起した。対する柴田新会長派は一般薬連で訴訟に対処すると応じ、会長職を巡る泥沼の争いに発展している。
 裁判は口頭弁論が始まったが、医薬品業界や団体職員は「どちらも世間に知られた会社のトップなのにみっともない。社長が証言台に立つ姿など見たくもない」と騒動に辟易している。


 来年度の薬価引き下げで製薬会社の米国シフト加速

 厚生労働省と財務省は2019年度予算編成で薬の公定価格となる薬価を下げる方針だ。
 薬価は2年に1度、流通価格の下落を反映させる目的で改定されるルール。だが、19年度は流通の値下がりが大きいとみて、異例となる2年連続の下げに踏み切る。来年秋には消費税が8%から10%に引き上げられる。増税分が市販される薬に転嫁されないようにしたいという財政当局の思惑もある。
 たまらないのは国内の製薬メーカーだ。今年4月の薬価改定では国内市場で年約7200億円のマイナス影響が出るとみられている。このため、収益確保のため、「儲からない日本市場は捨てて最大市場の米国に移す」(国内製薬大手メーカー幹部)動きが広がっている。
 研究拠点の米国シフトも続く。アステラス製薬は従来日米に分かれていた再生医療の研究拠点を17年に米国のマサチューセッツ州に集約。エーザイも19年春に認知症薬の新たな研究拠点を同州に開設する。武田薬品工業はアイスランド大手のシャイアー買収を機に精鋭部隊を米国に移す考えだ。シャイアーは米国内に工場や営業拠点を多数持つ。米国事業の強化はクリストフ・ウェバー社長が「買収の最大の目的」とまで位置づける最重要経営課題だ。新部署のメンバーは定期的に会合を開き、買収完了後、米国ですぐに統合効果を出せるよう具体策を検討している。
 18年4〜6月期の各社の決算では米国での収益拡大が目立った。武田は4〜6月期としては3年連続で米国の医療用医薬品の売上高が上回り、日米差は過去最大の300億円超となった。アステラスの売上高は米国が1129億円、日本が1002億円と初めて日米が逆転した。
 その一方、国内は厳しい。第一三共の売上高は従来の薬価だった場合と比べ120億円減少した。「薬価改定の影響を引きずる。収入を伸ばすのは非常に厳しい」(第一三共幹部)という。他にもエーザイで50億円、アステラスで48億円のそれぞれ減収要因となった。
 今回の薬価の引き下げ幅は7.48%。過去10年間の改定幅は毎回5%程度だったが、今回は、画期的な新薬の価格を維持する「新薬創出加算」の対象が3割減るなど、制度そのものを一部見直したことも響いている。
 日本製薬工業会では「新規性などを評価せず一律で下げるのは厳しい。再考を求めていく」(中山譲治会長)との声が上がるが、国内の医薬品市場は米国の医薬品市場(17年で4666億ドル)の1/5に満たない。先行きを見ても、同社の予測では米国が22年まで年平均4〜7%で成長するのに対し、日本の成長率はマイナス3〜0%と、先進国で唯一のマイナス成長になる。「このままだと日本の製薬メーカーはみな海外に出て行ってしまう」(大手証券アナリスト)との声も出る。


 ヒューリックから刺激? 三菱UFJと地所の提携

 マイナス金利やAI(人工知能)の波などの影響で経営が圧迫され、店舗リストラが進む銀行業界だが、そんな中で最大手の三菱UFJ銀行が三菱地所と合弁会社を設立し、同銀行撤退跡地の再開発に取り組む。
 駅前店舗等の好立地もかなりあることから、店舗周辺の土地も買うことができれば、確かに場所によっては有望な再開発ロケーションとなる可能性もある。この三菱UFJと三菱地所のタッグは、ある企業の成長を横目で見てきたことにヒントを得たものと思われる。それが近年、成長著しいデベロッパーのヒューリックだ。
 ヒューリックの原点は旧富士銀行(現・みずほ銀行)の銀行店舗ビル管理である。かつての大手都市銀行は大抵、駅直結か駅近の好立地に銀行店舗の入ったビルを擁していたから、ヒューリックもそれなりの収益は上げていた。だが、その後金融ビッグバンの中でメガバンクが続々と誕生し、旧富士銀行も旧第一勧業銀行、旧日本興業銀行と経営統合。三行統合ともなれば当然、リストラの過程で店舗の統廃合が行われる。そこを逆手に取ったのがヒューリックだ。好立地の老朽化した自社物件を建て替えて、付加価値を付けて賃料を増やしていくという戦略である。具体的には所有物件を建て替えて高層化し、増えた床面積をオフィステナントや商業テナントに貸し出して家賃収入を増やしていく。
 その代表例が、都心の中でも最重点エリアの一つで多くの所有物件を持つ銀座にある、「ヒューリック銀座数寄屋橋ビル」だ。
 同ビルはもともと旧富士銀行の支店が入っていた物件だが、建て替えて2011年に竣工。ビル1階には米国衣料チェーン大手の「GAP」の旗艦店がテナントで入っている。
 また、ヒューリックが初めて手がけたホテルが東京・浅草にある「ザ・ゲートホテル雷門」。当地も、もともと旧富士銀行の店舗があった場所だが、雷門支店が3行統合で閉鎖対象店舗になったことから建て替え用途を検討し、ホテルにした。こうした成功事例を見てきて、三菱UFJも三菱地所と組んで都心や郊外の再開発に注力し始めたのだろう。


 子ども時代の咀嚼能力が将来の健康を決める!?

 日本人の子どもの虫歯、例えば12歳の虫歯本数は平均0.9本(2015年文部科学省統計)と歯科先進国並みに減少した。ところが、咀嚼能力は決して向上しておらず、このままでは将来、不健康な大人が増加する危険があるという。
 警告を発しているのは、半世紀近く小児歯科に取り組んでいる増田純一・マスダ歯科医院院長だ。
「12歳までの口の状態は、人格形成や知能・運動能力とも密接に関係しています。子どもの頃の咀嚼能力と学習能力の関係を調べた研究や実験によると、きちんと?んで食事を摂っている子どもは、身体能力や学力などが向上するという報告が、多く出されています。しかし、近年の子どもの口を見ていると、きちんと?めない子どもが増えています」
 増田院長によると、口の機能は乳幼児期の食事の仕方によっても影響されるという。これまでの臨床経験から、離乳食を上唇で上手に捉えて食べる子どもと、それができない子どもに分かれ、上手に食べる子どもはその後の口の発達も順調だという。
 唇を鍛えるためには、小さい頃になめたりかじったりする感覚を脳に伝え、学習する必要がある。それがうまく学習できずに、上唇が動かない子どももいるという。
「3歳頃になると、食べ方がおかしい子どもが目立ってきます。口の中に物を溜めたままで、食べる時間が長く口があまり動かない、硬いものが?めない。さらに、丸飲みするなどの様子もみられます」
 こういった子どもが、食べ方を治さないままで大人になると、さまざまな不調が出てくるという。顎の歪みと体の歪みによる肩こりや頭痛、視力低下、アレルギーや意欲低下などだ。
 健康長寿には乳幼児期からの、口の健康が不可欠ということだ。


 海洋プラスチック対策で化学業界5団体が協議会

 プラスチックごみの海洋流出や不法投棄が世界中で問題になっている。
 こうした中、国内の化学業界五団体は、海洋プラスチック問題に対応するための協議会「海洋プラスチック問題対応協議会(JaIME)」を設立した。プラスチック廃棄物に対する科学的知見の集積や、アジア諸国での管理向上への対応協議などを行うという。
 国内の化学メーカーの心中は複雑だ。すでにスターバックスなど外食チェーンや小売業界ではプラスチック製ストローやスプーンの使用を禁止するところも出てきたし、欧州連
合(EU)の欧州委員会は今年1月、2030年までに使い捨てのプラスチック容器・包装を域内でゼロにする目標を掲げた「プラスチック戦略」を表明。こうした機運が世界的に広がれば「廃プラのための取り組みや負担が化学業界に押しつけられる」(国内化学大手)ためだ。
 日本の化学メーカーは大中合わせて十数社がひしめき合う混戦業界。海外では米デュポンと米ダウケミカルが統合するなど巨大化学メーカーが誕生しているが、国内では再編がなかなか進まない。さらに、廃プラの取り組みが遅れれば、最近のESG投資への関心の高まりから「環境問題に対して後ろ向きだ」と指摘され、市場から新たな投資資金の調達が難しくなるほか、株や債券を売却される可能性もある。海洋プラスチック問題が国内化学メーカーの再編の引き金になる可能性も高い。


 米大統領の制御に動く閣僚&首席補佐官の3人組

 トランプ大統領は11月の中間選挙に向けて背水の陣を敷いている。下院で仮に民主党が多数派になれば、弾劾手続きが始まるからだ。その可能性に怯えている彼は、市場に対し、そうなれば大暴落の可能性があると逆に脅かしている。
 そうした中、中間選挙までの事態のカギを握っているのがコーエン弁護士だ。トランプビジネスの裏側を支えてきた彼は、脱税や選挙資金法違反などで司法取引に応じ、今やトランプ政権を追い詰める急先鋒となった。刑務所にいる間に大統領恩赦で出すという申し出より、コーエン氏は司法取引を選んでしまった。
 そして、大きな問題になっているのが来年度の予算編成だ。米国では議会が予算を作成するが、軍事費を除きことごとく議会予算局とトランプ政権が対立している。具体的には、国境の壁、インフラ投資、宇宙軍の創設で、これらの予算をトランプ政権の言う通りにすれば、100兆円を超す財政赤字が発生する。
 また、外交面でも中国との通商問題や対北との交渉が進まないため、迷走を続けている。いまや、ポンぺオ、マティスといった主要閣僚もトランプ流の無茶苦茶な外交のやり方に辟易している。ケリー首席補佐官も一旦は辞任を決意したが、政権内にとどまり、トランプ氏の暴走を抑える構えだ。この3人に共通するのは、軍出身でトランプの暴走から米国を守るという使命感だ。次第に暴君の本性を露わにしてきているトランプ大統領をこの3人がうまく制御できるかどうかが、今のワシントンの最大の関心事だ。


 国民の中国への感情悪化で頭抱えるフン・セン政権

 カンボジアのフン・セン政権が権力をほしいままにしている。欧米の批判を浴びながらも強気の姿勢を崩さずに強権姿勢を進めるのは、中国の全面的な支援を受けているからだ。カンボジアには中国企業が次々と投資。プノンペンや南部の保養地シアヌークビルでは、中国企業が建設する高層建築物が雨後のたけのこのように空に向かって伸びている。
 世界遺産アンコールワット観光の拠点となる北西部シエムレアプは、アンコールワットより高い建物が禁止されているため、プノンペンやシアヌークビルのような光景は見られない。しかし、遺跡群を訪れる観光客の大半は中国人だ。
 ところが、ここにきて国民の間で中国に対する不満が顕在化。カンボジアと中国の持ちつ持たれつの関係が揺らいできた。
 カンボジアに進出した中国企業は同じ中国の企業とだけ取引。雇用される労働者も中国人で、地元企業は中国企業との取引に参加できていない。また、中国の旅行会社が企画したツアーに参加する中国人旅行者は、中国系のホテルに宿泊し、訪れるレストランは中華料理店ばかり。カンボジアは中国の経済活動に場所を貸すだけで、事実上の植民地に成り下がっている。
 また、カンボジアでは中国人が絡む犯罪が急増。特に売春や麻薬犯罪に手を染め、今年上半期の薬物関連の逮捕者の7割は中国人だった。国民が中国の進出による恩恵にあずかれないだけでなく、治安悪化が進み、中国への反発が強まれば、フン・セン政権が中国依存の戦略見直しを迫られる可能性もある。


 EU離脱を控えてロンドンの競争力に陰り

 英シンクタンクZ/Yenグループがこのほど発表した「国際金融センターとしての競争力を示す最新ランキング」で、ニューヨークが首位になった。半年前の前回調査で首位だったロンドンは2位に転落。英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)をめぐる不透明感が背景にあるとみられる。
 ランキングは、インフラ面やアクセスのしやすさ、従業員の質などの要素を測定し、世界百都市を番付している。「国際金融センター指数(GFCI)」とも呼ばれる。
 今回、ロンドンの指数は786と、前回から8ポイント低下。10位以内の金融センターの中では最大の下げ幅だった。首位の座を奪ったニューヨークも指数は788と前回から5ポイント下げたが、ロンドンの低下幅がこれを上回った。
 欧州ではチューリヒ、フランクフルトが上位10位入りしたほか、アムステルダム、ウィーン、ミラノといった金融センターの上昇が目立った。英国のEU離脱が近づいているのを受け、他の欧州の金融センターの魅力が相対的に高まっている。ただし、欧州でもダブリン、ミュンヘン、ハンブルクなどは順位を下げた。
 調査担当者はロイター通信に対し、「英国のEU離脱後、ロンドンが欧州の他のすべての金融センターと取引できるようになるかどうか、依然不明だ」と指摘。「ロンドンの競争力に疑念が生じている」と説明した。
 英国のEU離脱を見越してロンドンの大手金融機関は人員のEUシフトを進めており、ロンドンのランキングは低下を続ける可能性もある。今回、3位香港とロンドンの指数の差はわずか3ポイントに縮まり、香港がニューヨークやロンドンを脅かす存在になっている。


 サウジ国営石油会社の「世界最大IPO」中止に

 サウジアラビアの国営石油会社「サウジアラムコ」の上場が中止となった。上場すれば時価総額2兆ドル(約220兆円)規模の世界最大のIPO(新規株式公開)となるとみられていただけに、市場関係者は困惑を隠せないでいる。サウジアラビアは同社上場で得た資金を経済改革に振り向ける計画であったことから、代替財源の確保策が問われるほか、経済改革を主導するムハンマド・ビン・サルマン皇太子の権力基盤にも影響が及ぶのではないかと懸念されている。
 サウジアラビアは、アラムコ株をロンドン、ニューヨークなど複数の海外証券取引所へ上場すべく準備を進めてきた。しかし、取引所がIPOに伴い求める情報開示(原油埋蔵量などの情報)やガバナンス改革にサウジアラビア政府が反発、最終的にサルマン国王が反対し、中止を決めた。すでにIPOのため組織された国際投資銀行や弁護士事務所の支援チームは解散した。
 サウジアラムコの上場は、サウジアラビアの経済改革の試金石とみられてきた重要イベント。世界のエネルギー地図が、従来の石油中心の化石燃料から再生可能エネルギーなどへ大きくパラダイムシフトする中、サウジアラビアの危機意識は否応なく高まっている。特に、世界最大規模の石油埋蔵量を背景に、潤沢なオイルマネーで潤ってきた王族にとって、エネルギーの脱石油は死活問題となりかねないだけに、改革は待ったなしの状況だ。
 サウジアラビアの歳入の7割以上は石油による収入で賄われている。これまで医療費や教育費は基本的に無料で、ガソリン代や水道料金も補助金で安く抑えられてきた。しかし、ムハンマド皇太子は、こうした石油に依存した財政基盤を改革するため、日本の消費税に相当する付加価値税(VAT)を導入し、ガソリン代も2倍超に引き上げるなど、国民に痛みを強いている。国内に1万人以上いるとされる王族など特権階級の逮捕も辞さぬ姿勢を示すことで、国民の改革への理解を促した格好だ。
 政敵の排除に成功したムハンマド皇太子は、政治、経済、軍事、外交などほぼすべての権力を掌握したとされ、メディアでは「ミスター・エブリシング」と称されている。だが、その経済改革の目玉として最も期待が高いのが、投資ファンドを原動力とする運用益の増強だ。皇太子は政府系のパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)を2030年までに2兆ドル規模に育て、経済改革のエンジンにする方針だ。
 だが、PIFを2兆ドル規模に引き上げる原資として予定されていたアラムコ株の上場が中止されるとあってサウジアラビアは、当面の財源確保のため、外国銀行の融資団からの資金調達で賄う方針だが、コストアップは避けられない。ムハンマド皇太子の改革はまさに時間との勝負となる。


 J・マー引退の背景に中国のIT企業狙い撃ち

 中国の若者のアイドルでもある「中国のビル・ゲイツ」=馬雲(英文はジャック・マー)が突然、アリババのトップの座を降り「以後は社会奉仕事業に専念したい」とした。
 直前に中国ECサイト大手・京東集団のCEOが米国でセクハラ行為に及び逮捕拘束された。これは美人局の疑いが濃厚で、背後に共産党のIT企業幹部狙い撃ちの動きがある。
 アリババの本社は浙江省杭州。従業員8万6000人、売り上げは世界で4200億ドル。神業的な急成長企業で2014年に香港でIPO(新規株式公開)した時は史上空前の250億ドルをかき集めた。この記録はまだ破られていない。
 アリババは11月11日の語呂合わせで独身者の消費ブームを演出、この現象をじっと見ていたのが中国共産党だ。
 なぜならアリババが蓄積した個人データは共産党にとって一大脅威であり、このまま民間企業を独自の方向に走らせるわけにはいかない。ましてアリババも、テンセントも百度も江沢民政権時代に急成長した企業で、習近平国家主席にとっては長らく癪の種だった。政敵の息のかかった企業を締め上げるというのが習近平主席のやり方だ。
 安邦保険、海南航空、大連万達に続く標的がアリババだった。
 安邦の呉小輝は?小平の孫娘を後妻としていた。それにも拘わらず逮捕・拘束されて牢獄へ。海南集団はバックが王岐山のはずだが、有利子負債が巨額すぎてヒルトンホテルなどの資産を片っ端から売却した。
 大連万達も虎の子のテーマパークやホテルを売却した。習近平に睨まれ、銀行融資が途絶えたからだ。
 巨大なビッグデータの横取りを企図する中国共産党の動きを肌で感じた馬雲にとって、この辺りでアリババから身を引くのが得策と考慮した可能性が高い。後継は1111セールを成功させた張勇になる。
 しかし馬雲引退という大事件は、テンセント、百度など中国のベンチャー企業大手に爆発的な衝撃をもたらしている。
 ところで、アリババの最大株主は孫正義氏である。さてどうするのか。孫氏の今後の出方にも注目だ。


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