巻頭言
枝廣淳子の


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枝廣淳子氏
(幸せ経済社会研究所所長)





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新しい時代のエネルギーに向けて

 2050年に向けての日本のエネルギーの方向性を考えるエネルギー情勢懇談会が最終提言をとりまとめて終了しました。
 特に注目を集めていたのは、「再エネの主力電源化」と、「原発依存度を可能な限り低減する」という文言です。
 委員として参加してきた立場から、中長期的な日本のエネルギーに影響を与える3つの大きなポイントをお伝えしましょう。
 1つは、「エネルギー情勢は不確実で、予測不可能なものなのだ」という認識を今回の提言の大前提としたことです。
 従来のエネルギー政策は、「未来はこうであるはずだ」「未来はこうなるべきだ」という決め打ちの像を描き、その実現のための施策を実施するという形で進められてきました。しかし、情勢懇では14名もの内外有識者のヒアリングを通して、「未来は不確実であり、現時点での予測に基づいて進んでいくことは危険だ」という認識を共有しました。
 そこで、1つではなく「複線型のシナリオ」を描き、科学的にレビューしつつ、状況変化や技術進歩に応じて柔軟に対応していくメカニズムを設けるという提言となったのです。
 これは非常に大事な方向性ですが、「どのように複線型のシナリオを描くのか?」「科学的レビューメカニズムとして、だれがどのようにレビューするのか? そのガバナンスはどうなるのか?」については、今後の議論と設計となりますので、目を離せません。
 2つ目に大事なポイントは、「地域の視点」が大きく入ったことです。私が初回の情勢懇から何度も発言し、強く望んできたことなので、本当にうれしく思っています。
 提言の中では「分散型エネルギーシステム」として、このように述べられています。
「地域におけるエネルギー自立を目指す動きも加速する。エネルギー安全保障と地域、この双方の観点から、技術に裏打ちされ経済的で安定した分散型エネルギーシステムの開発を主導し、世界に提案するとの姿勢で臨む」
「分散型エネルギーシステムの世界は、各地域に根差した経営マインドにあふれる新興企業が担い手として登場する可能性がある。世界市場を舞台に活躍する総合エネルギー企業群と地域で分散型エネルギーシステムの開発を担う企業群、この世界と地域で活躍する企業群を生み出す事業環境を用意し、それぞれの強みを活かし、エネルギー転換・脱炭素化を加速する構造を作り出すべきである。また、この過程で、送電網の次世代化、分散ネットワークの開発などエネルギーインフラの再構築を加速すべきである」
 3つ目に大事なポイントは、これまでのように「再エネは高いか」「原発は安いか」という、個別の電源別のコストを考える時代ではなくなった、ということです。
 これまでは、10の電力会社を中心に、「少数の電力生産者と、無数の電力消費者」という状況でした。現在、その構図が大きく変わりつつあります。新電力も数多く登場し、企業や家庭での発電も増えています。「電力の生産者も無数にあり、電力の消費者も無数にいる」という状況になってきたのです。
 IT化、IoT化、デジタル化などの技術によって、あらゆる発電施設からの電力をつなぎ、つねに変動する需要にマッチするように調整することが可能になってきます。供給状況に合わせて需要を調整するデマンド・サイド・マネジメントも一体化されるでしょう。
 電源別だけでなく、ネットワークや、将来的には電気を貯蔵する水素やメタンに関わるコストなども含めた、「調整し合う全体」としてのコストを考える必要があります。
 そこで今回の提言では「電源別コスト検証から脱炭素化エネルギーシステム間のコスト・リスク検証への転換」と述べています。
 再エネや原発の位置づけだけでなく、エネルギーに関する考え方自体が大きく変わってきたこと、変えていく必要があることを、今回の提言は強調しているのです。
(幸せ経済社会研究所所長)


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