ダミー
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 戦闘記述や消えている時期 陸自イラク「日報」の不可解

 防衛省は陸上自衛隊のイラク派遣の日報を初めて公表した。「非戦闘地域」に派遣されたはずが、日報には「戦闘」の文字が複数あり、宿営地が攻撃された事実も記載されていた。
 陸上自衛隊がイラクに派遣されたのは2004年2月から06年7月までの2年半。米軍が武装勢力と戦闘を続けていたが、自衛隊は憲法の規定から武力行使せず、施設復旧などの人道支援活動に徹した。
 派遣期間を通じて戦闘に巻き込まれることがないよう「非戦闘地域」に派遣されたはずだったが、合計すると13回22発のロケット弾が宿営地に向けて発射されたことが分かっている。05年7月4日夜には宿営地付近にロケット弾が着弾した。7月5日の日報には「昨夜の『飛翔音・弾着音事案』対応として0600(午前6時)より宿営地一斉検索実施」の記述がある。05年6月23日には陸上自衛隊の車列が道路横に置かれた仕掛け爆弾攻撃を受けた。日報には「3両目右前方付近で爆発」「ミラーは割れ落ちている」と生々しい攻撃の様子が書かれている。
 公表された日報は派遣期間全体のうち四五%にすぎないが、この分だけでも「自衛隊が活動している地域は非戦闘地域だ」と明言した当時の小泉純一郎首相の情勢認識と現地情勢との乖離が際立つ内容である。
 撤収時に会見した小泉氏は「このイラクに対して行ったさまざまな措置、正しかったと思っています」と、イラク派遣を成功と位置づけた。
 危険だった戦地への派遣が「成功」で終わった意味は小さくない。イラク派遣は期限を定めた特別措置法が根拠だったが、安倍晋三首相は15年、自衛隊の海外活動を拡大する安全保障関連法を成立させた。恒久法なのでいつでも派遣可能となり、さらに派遣地域も「現に戦争が行われている現場以外」と、事実上、「戦闘地域」への自衛隊派遣を認めている。
 それにしても気になるのは残り55%の日報にどんな記述があったのかだ。ロケット弾攻撃は04年4
月7日から始まり、自衛隊は宿営地をテントから鉄製のコンテナに変え、さらにコンテナの屋根と壁の周りを土嚢で覆う要塞化を行っている。
 国会で小泉首相が野党から激しく追及されていた当時と重なる時期の記録でもあり、この期間にあたる前期の1年分以上がそっくり消えているのは不可解というほかない。


 米韓の思惑違いが見えて米朝首脳会談への懸念

 トランプ政権はもはや赤信号の点滅状態。ワシントンでは政権が今後急速に機能しなくなる可能性を危惧する声が強まっている。特に、政権人事や外交面でのトランプ大統領の独断専行が主な原因だ。
 一番の痛手はライアン下院議長の引退表明だ。ホワイトハウスと議会共和党の調整役を失うことで、今後の法案成立が難しくなっている。また、中間選挙に向けて、共和党が一枚岩でないことが露呈されたことで、大敗を喫する可能性が強まった。加えて高官の辞任が続くホワイトハウス内では、ケリー首席補佐官の辞任も取り沙汰され始めている。
 もっともトランプ大統領は、ケネディ大統領の時と同じく首席補佐官を置かず、五、六人の分野別のアドバイザーからの意見を聞いて判断するスタイルにしたいと考えているといわれる。だが、やはり議会や政府の要職の経験がないまま勉強不足の中で判断を行えば、ますます暴君になっていく可能性が高い。その兆候はシリア問題での対応や今後のイラン合意破棄、イスラエルでの米大使館移転など、かなり国際社会を揺るがすことになる。
 かてて加えて、モラー特別検察官の大統領選挙でのロシア疑惑捜査に絡んだ長年の顧問弁護士の動きも気になる状況なのだという。
 そうした中で懸念されているのが、米朝首脳会談。ここで北朝鮮のペースに巻き込まれ、間違った合意をすれば、日本にも相当な悪影響が出る。そのため、米国の外交専門家の間では、米朝会談そのものを避けるほうがベターだとの考えもある。
 その北朝鮮対応で聞こえてきたのが韓国外務省からの情報とする外交関係者の話だ。
「南北首脳会談を前にして、青瓦台では離反者が出ているという。ばりばりの左翼政権で、南北首脳会談が韓国外務省も知らされていないシナリオで進められ、事務方の意向が通らないのだそうです。文在寅大統領は、朝鮮半島の非核化を金正恩委員長に伝えるが言質はとらない。本音は、核を残した形の南北融和で、そのため、今の朝鮮戦争の南北休戦協定を、平和協定とまではいかないものの『終結宣言』くらいには持っていくシナリオだというのです」
 そうなれば、論理的に国連軍、在韓米軍は必要なくなる。これは、もともと在韓米軍には金がかかりすぎると考えているトランプ大統領も乗りかねないと懸念する。南北首脳が描くシナリオ、その先は、強力な反日国家なのだという。
 安倍晋三首相はトランプ大統領との親密さを強調し、トランプ任せの姿勢できたが、仮に米朝首脳会談であいまいな朝鮮半島の非核化で合意した場合は、日本の国益にとっては取り返しのつかない事態になる。


 “恐怖”の都条例改正は民主主義を殺す凶器か

 警視庁は三月、都議会に迷惑防止条例改正案を提出、都民ファーストの会も賛成して可決された。当局から名誉棄損に類する行為と判断されれば摘発される可能性もあり、法律家から憲法違反の疑義も噴出する中、7月に施行される。
 大手マスコミは森友・加計問題で執拗な取材攻勢をかけて政権を追い込んでいるが、足元の小池百合子都知事と都議会の「恐怖の都条例改正案」には目が向かなかった。
 改正条例の「つきまとい行為」の規制は、16年前に都議会定例会に提出された。だが、「憲法が保障する人権侵害」として削られ、廃案になった経緯がある。今回は、小池知事のもとの議会で、1時間程度の審議で可決され、罰則も「1年以下の懲役または罰金」に強化された。
 条例改正に反対した弁護士など反対派が懸念する名誉棄損関連とは何か。刑法上の名誉棄損罪が親告罪で、現状では被害者からの告訴がなければ捜査機関は動かない。だが、改正条例は「告訴がなくとも捜査機関の判断により逮捕・起訴をし、処罰をすることが可能」だという。名誉棄損の行為に関しては、刑法の名誉棄損罪の防波堤となるべき、公共の利害に関する場合の特例もないのは驚きだ。当局が「名誉を害した」として逮捕できるなら、途上国の独裁政権のような状況で、権力監視を大きく抑制することになる。
 この条例改正で報道も市民運動も潰されるのか。「みだりにうろつくこと」が摘発対象になり、取材対象者の家をうろつくことが条例違反となるのか。「監視していると告げること」や「名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと」も条例違反となり、記者らの取材が該当すれば、報道規制に直結しないか。公的機関を「監視」するオンブズマンはどう扱われるのか。この条例の「運用」については、こういった疑問や恐怖がつきまとう。
 条例が示す、「迷惑行為が反復される」という文言の範囲が判然としないため、数回でもこれに当たる行為を行えば処罰される可能性がある。その要件も限定されていないのだ。さらに、条例の乱用の歯止めになりうる「正当な理由」の要件を巡って、「何が正当な行為か」という判断は、当局のサジ加減次第ということになりかねない。「正当な範囲を逸脱した」とされることを恐れ、世の中全体が委縮して暗くなるだろう。
 官邸や国会前、いや都庁前で首相や知事を批判し、デモでチラシをまく「反復」的なデモはどうなのか?SNSで主張を反復すればどうか?条例には、市民の政治活動の「予防」をしたり「委縮」させる効果もある。
 最悪の場合、言論表現の自由、知る権利、報道の自由を殺し、「法律の範囲内で条例を制定できる」とする憲法94条に違反、逸脱することになりはしないのか。


 文化庁の京都移転は難題山積の無理筋

 文化庁移転法案(文部科学省設置法の一部を改正する法律案)が、今国会で審議される。すでに、2月に閣議決定されており、10月1日に施行、京都市に移転するのは決定しているが、「文化に関する施策を総合的に推進する役所だから文化度の高い古都・京都へ」という政権の発想に異を唱える人は少なくない。
「俗に白足袋と言いますが、京都には表の市政や市行政、それに検察、警察などの司法とは別の権力構図があるんです。お寺の僧侶や神社の宮司、池坊家など華道や千家など茶道の家元、それに旧宮家や旧華族などが、微妙に影響力を持っている。そんな閉鎖的な所に来て、役所風を吹かせたところで誰も言うことを聞きません」(京都政界関係者)
 もともと文化庁移転も、必要に迫られてのことではなかった。2014年、安倍晋三政権が「ひと・まち・しごと創生総合戦略」を打ち出したのがきっかけだった。要は、疲弊する地方を元気にしようという人気取り政策。差し迫った事情があるわけではなく、文化庁自身は、移転費用が嵩む上に移転による機能低下を恐れていた。
 だが、華々しく「創生」を打ち出したものの、動かすにふさわしい適当な役所がなかなか見当たらない。結局、予算が1000億円程度で人員も少なく、さほど影響がないうえ、「京都なら格好がつく」(文科省関係者)と、文化庁に白羽の矢が立った。しかし、41の芸術団体で構成する芸術家会議が、「担当部署との連携や政策調整が不便になる」と反対の声を挙げるなど、誰も賛同者がいないのが実態だ。
 それに加えて京都の特殊事情である。法案では、芸術教育に関する事務を文科省から文化庁に移管し、これまで本省管理だった博物館事務も文化庁が一括して所管するなど、京都文化との親和性を感じさせる部分はある。
 だが、前述のように政治や行政、ことに京都市政に及ぼす「白足袋」の影響力は大きく、古都税導入では僧侶が反対に回ってその威力を見せつけたし、文化事業や祭典は彼らの協力なしには動かない。そんな京都事情を考えると、文化庁行政は、他の市町村に移転したほうが、よほど効率的だと思えてくる。


 黒田日銀総裁2期目の鍵を握る雨宮、内田氏

 4月9日、黒田東彦・日銀総裁の2期目(5年間)がスタートした。2013年4月に総裁に就任するとすぐ、2年間で消費者物価を2%に引き上げるとするバズーカ砲(異次元緩和)を発動し、大量の国債等を買い上げてきた黒田総裁。2期目の最大のミッションはその出口戦略にほかならないが、消費者物価は目標の二%に届かないばかりか、米国トランプ政権による円高圧力もくすぶる。また、マイナス金利政策やイールドカーブ・コントロールに疲弊する金融界からは怨嗟の声が挙がる。異例の2期目に突入した黒田氏を待ち受けるのは茨の道か。
 その黒田総裁を支える日銀プロパーの注目人事が発出された。3月20日に中曽宏副総裁の後任に雨宮正佳理事(63)が就任したのに続き、4月2日に内田真一名古屋支店長(55)が理事に昇格した。雨宮、内田の両氏はそれぞれ企画担当理事、企画局長として異次元緩和やその強化に関わった政策参謀。「黒田総裁の2期目を支える布陣として雨宮氏を副総裁に引き上げ、内田氏を理事として名古屋支店長から呼び戻した。雨宮、内田の両氏は将来の総裁候補」(日銀関係者)と目されている。
 1979年東大経済卒の雨宮氏。「酒は飲まないが、物腰が柔らかく、いつの間にか相手を説得している」というのが日銀関係者の雨宮評だ。偉ぶらないので永田町や霞が関に知己も多い。また、民主党政権末期の2012年に白川方明総裁(当時)に嫌われて出ポストの大阪支店長に飛ばされたが、これが結果的に幸いして翌年、安倍政権発足に伴い理事に返り咲いた。運も味方している。
 一方、86年東大法卒の内田氏は企画局が長く、日銀史上最も長く企画課長を務め、40代で企画局長に抜擢された。FRB(米連邦準備制度理事会)への出向経験もあり、英語も堪能だ。「内田氏はエリート中のエリートで、何をやらせてもそつがない。人あたりもいいが、雨宮氏に比べ政界や官界との人脈が少ない。理事昇格で顔を広めていくだろう」(日銀関係者)という。今回の人事で企画担当は1年先輩の前田栄治理事が務めることもあり、内田氏は国際担当理事として、海外の中央銀行との調整や19年に日本が議長国を務めるG20の開催準備に奔走する。
 黒田総裁の知恵袋となる2人は、異次元緩和の出口戦略をどう描くのか。うまくいかなければ責任を問われ、共倒れになりかねない。そうなれば日銀が目論むプロパー総裁誕生も夢に終わることになろう。


 名古屋大・岐阜大統合で囁かれる地元大手銀復活

 名古屋大(名古屋市)と岐阜大(岐阜市)が統合に向けた協議を開始したことが金融界で話題を呼んでいる。
「まさに地銀の再編を見ているようだ。大学名を地元地銀に置き換えても違和感のない統合劇じゃないのか。有名大学も地銀と同様に追い込まれている証しだろう」(地銀幹部)というわけだ。両大学は、「持ち株会社」に相当する新法人「東海国立大学機構(仮称)」を設立し、両大学がその傘下に入る「アンブレラ(傘)方式」で統合を検討している。実現すれば全国初のケースになる。
 国立大学は戦後、各都道府県に最低1つの総合大学が設置された。大学を運営するのは「国立大学法人」で、現行制度では1法人が1大学しか運営できない。しかし、少子化や財政難から、地方大学の中には単独で生き残ることが難しいとみられるところも少なくない。国からの交付金も減少し続けている。
 そうした中、全国の国立大学でつくる「国立大学協会」は今年1月、各県に1つの国立大学を維持しつつも、法人再編の必要性を盛り込んだ提言案をまとめていた。さらに文科省は3月27日、国公私立の枠を超えた大学再編を促す制度案を公表。新たに設置する一般社団法人「大学等連携推進法人(仮称)」の下に、複数の大学がぶら下がる案が提言されている。「実現すれば金融機関以上に大学の再編は進むことになるが、反発も避けられないだろう」と地銀幹部は指摘する。金融機関でいえば、都銀と地銀と信金・信組が一緒の傘の下に入るようなものだからだ。
 名古屋大と岐阜大の統合案を見たある地銀幹部は、「持ち株会社となる東海国立大学機構のネーミングはかつての東海銀行を思い起こさせますね。中部地区の金融機関が大再編して東海銀行を復活させてはどうかという構想は地元でいまも根強くくすぶっています」と感慨深げに語った。
 東海銀行は戦前、中京地区を地盤としていた愛知銀行、名古屋銀行、伊藤銀行の3行が、1941年に政府の「1県1行主義」に基づき合併して誕生した名古屋を本店とする銀行で、戦後、都市銀行の中位行として中部地区の経済を支えた。しかし、バブル経済崩壊後、旧三和銀行と統合してUFJ銀行となり、そのUFJ銀行も東京三菱銀行と統合し、現在の三菱UFJ銀行と繋がっていく。この間、本店は東京に移され、名古屋を本店とする都市銀行は消滅した格好となった。
 だが、トヨタ自動車をはじめ優良な製造業が集積する中部地区だけに、名古屋を本店とする大手銀行の復活を求める声はいまも絶えない。


 出口戦略が迫られる2期目の黒田総裁

 黒田東彦・日銀総裁が2期目に入った。4月9日午後、辞令交付のため官邸に呼ばれた黒田総裁は、安倍晋三首相から「物価安定目標に向けて、さらにあらゆる政策を総動員してもらいたい」と語りかけられ、「(政府と日銀の)共同声明を堅持し、2%の物価安定目標に向けて最大限努力する」と返した。
 しかし、日銀の政策は副作用が懸念される状況に立たされているのが現状だ。日銀の国債保有残高は黒田総裁就任直前の2013年3月の125兆円から、今年3月には450兆円を超え、日本国債全体の約4割を占める異常事態に至っている。
 2期目の記者会見で黒田総裁は、金融緩和を縮小する出口戦略について「物価目標の実現にはなお距離があり、検討する局面にはない」とする一方、「大幅な緩和を長く続けた場合、金融仲介機能に対する影響は注視しないといけない」と語った。しかし、市場では出口戦略に踏み込みつつあるというのが共通認識である。
「ステルス・テーパリング」呼ばれる国債の購入額減少はその一端であろう。日銀は14年に年間80兆円の国債を買い入れる緩和拡大に踏み込んだが、足下の買い入れペースは40兆円台にまで減額されている。明確な説明がないまま減額されているため「ステルス」というわけだ。
 そうした中、有力日銀OBからは、「早ければ年内にもコアコアCPI(生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価指数)が1%に達する可能性があり、日銀が長期金利の引き上げに動く可能性がある」との指摘も出されている。出口戦略は近づきつつあるように見える。


 ホテル事業の活況で西武に復活の兆し

 来年3月、西武池袋駅の南口に、地上20階建てのビルが竣工する。もともと当地は西武鉄道の本社ビルがあった土地ではあるのだが老朽化し、かつては西武百貨店が本社機能を置いていた時期もあった。
 西武グループ総帥だった堤義明氏が率いていた頃、同氏は都市部や観光地でプリンスホテルを建てたり、リゾート開発するほうにご執心だった。その転機が訪れたのが2004年。西武鉄道の有価証券虚偽記載事件が発覚し、西武鉄道が上場廃止に追い込まれて堤氏も失脚。代わって、みずほコーポレート銀行副頭取から転じた後藤高志氏が再建請負人として西武に派遣され、事業再編で持ち株会社の西武HDを設立、傘下にプリンスホテルと西武鉄道を置いた。
 当時はどん底だったが、14年には悲願だった株式再上場も果たした。その後、東京五輪招致や円安への反転効果もあって訪日外国人が年々増え、今ではそうしたインバウンド需要を当てこんで、ホテルラッシュになっている。プリンスホテルは海外での知名度は高くはないが、総客室数はかなり多く、インバウンドの波に乗って業績がアップしてきた。
 旧赤坂プリンスホテルも東京ガーデンテラス紀尾井町として生まれ変わり、従前のホテルだけでなくオフィスフロアも併設している。こうした効果もあって、関東私鉄の雄である東急電鉄との純利益の差はまだかなりあるものの、東武鉄道や小田急電鉄よりも純利益は上で、2番手につけている。今後もリニア新幹線の始発駅となる品川駅周辺での再開発などが控えるなど、先々でののびしろはまだある。東急vs.西武の構図が将来、復活するかもしれない。


 日本でのドローン物流に米アマゾンは本気?

 米国IT企業でネット通販最大手のアマゾンが、本国の米国でもまだOKが出ていない小型無人機ドローンを使った宅配物流を日本で実現させたい、と意欲を見せている。
 ことの発端は、アマゾン首脳が2015年秋に来日して安倍晋三首相を表敬訪問してドローン物流の早期実現を要請した際、安倍首相が当時、国家戦略特区でドローンの実証実験を含め一八年内に方向性を示す、と表明したことにある。これを受けて国土交通省や経済産業省が今年夏をめどに具体化に動き出すことになったため、アマゾン側は宅配を含めた物流激戦区の日本で足掛かりをつけるチャンスがいよいよ来たかと期待感を持っている、というのが真相。
 競合する楽天も最近、静岡県藤枝市で個人の家などにドローンで運ぶ実証実験に踏み出している。
 日本では国家戦略特区諮問会議が規制緩和に向けて動き、千葉市が国家戦略特区指定を受けてのドローン物流に意欲を示している。実証実験を踏まえて具体化する可能性が高まっている。しかし、専門家は「ドローン物流はまだ克服すべき課題が多くアマゾンや楽天が意欲を示しても実現に時間がかかる」と述べている。
 その専門家によると、大都市でのドローンを使った宅配物流は問題が多い。実際、マンションや住宅密集地では着陸スペースがなかなか見つからない、電線に接触して事故を起こす確率が高い、配達時の受け取り確認の印鑑やサインが難しいなどの制約が指摘されている。このため、仮に実証実験でチェックする場合も、安全面でのリスクが少ない2地点間輸送になるだろう、という。
 アマゾンは米国で監督当局の米連邦航空局にドローン物流の申請を出している。だが、安全面で問題の少ない趣味のドローンは機体登録をすればOKながら、商業用に関しては制約が多いことを理由に認めていない。そのため、アマゾンは米議会にロビー活動を続ける一方で日本政府にも働きかけたようだ。
 ただ、このドローン規制では柔軟な英国はアマゾンに対して地方都市のケンブリッジで、条件付きで宅配物流での使用を認めている、また米国でもトランプ大統領が州レベルでの規制緩和でチャレンジも認めるという大統領令に2017年秋、署名している。
 これらを踏まえて、アマゾンは日本でも、という意向なのかもしれないが、内閣支持率で苦境に立つ安倍政権が、イノベーションとはいえ、安全確保の面で課題を残すドローン物流にどこまで踏み出せるか、極めて流動的だ。


 水素エネルギー利用拡大はガラパゴス化の不安と表裏

 政府が水素エネルギーの利用拡大に舵を切ろうとする中、重工メーカーやエネルギー会社、商社などが呼応する動きを見せている。燃料電池車(FCV)の普及を後押しし、水素ステーションの整備目標も引き上げることが検討されている。民間事業者は水素の供給網や、水素を活用した発電設備、インフラ整備に取り組んでいるが、内実は「水素社会の到来」に疑問符を投げかける関係者も少なくない。
 川崎重工業と大林組はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援を受け、市街地で水素による熱と電気を近隣の公共施設に供給するシステムの実証試験を始めた。同実証は世界初とされる。両社は昨年12月に実証プラントを神戸ポートアイランド地域に完成させ、今後、システムの安定性や運用性について実証していく。
 水素はガスタービンによる発電や、燃料電池自動車などさまざまな用途で利用が可能で、エネルギーとして利用する際にCO2を排出しない。NEDOは水素の利活用を進めるために、本格的な供給網構築やエネルギー供給システムの確立に必要な技術開発を実施していくとしている。
 先頃、川崎重工業などがオーストラリアから液化水素を輸入する実証事業の実施にあたり、豪政府から1億豪ドル(約82億円)の資金支援が決まったと発表。低炭素社会の実現に向け、燃料電池車や発電など活用拡大を想定し、大量の水素を安定供給できる体制の整備を目指す。
 実証事業では豪州で産出する褐炭をガス化し、そこから取り出した水素を冷却し、液体にしてから輸入。埋蔵量が豊富な石炭を利用することから、大量に低価格で水素の調達が可能だという。岩谷産業、電源開発、丸紅、現地のエネルギー企業の四社と共同事業体を組織して取り組む。
 国内では2020年の東京五輪・パラリンピック開催に向け、今後、東京を中心に100台以上の燃料電池バスを導入する計画も進む。ただ、欧米の主要先進国は、脱炭素社会に向けたエネルギー源として、太陽光や風力など再生可能エネルギーに軸足を移している。さらに、自動車やバイクの動力源は急速に電気自動車(EV化)が進む。民間は政府の支援などがついた実証実験への参加にとどまっており、本格的な投資には踏み切っていない。それだけに日本だけが主要エネルギー源に水素を位置付ければ、かつて携帯電話が辿ったような“ガラパゴス化”が待ち受ける不安も残っている。


 三菱重トルコ原発計画に「東芝の二の舞い」の懸念

 「正直、トルコでの原発計画は難しい。このままだと、うちも東芝の二の舞いになりかねない」──三菱重工業のある幹部は漏らす。
 この幹部が言うトルコの原発計画とは、黒海沿岸のシノップで予定されているもので、トルコ政府が三菱重工業など日本勢と締結、同国建国100周年を迎える2023年に初号機を、28年までに計四基を順次稼働させるという。三菱重工や伊藤忠商事などの企業連合が計51%を出資。事業費は2兆円規模を見込む大型プロジェクトだ。
 現在、事業化調査(FS)を進めているが、3月末だった期限が延期。「東京電力の福島第1原発後の安全基準の強化で、事業費が5兆円にも膨らむ見込みで、FSは延期になった」(同)。
 シノップ原発はインフラ輸出を日本経済のエンジンにしたい安倍政権の「目玉プロジェクト」の1つ。しかし、度重なる開発延期で投資金額は膨らみ、苦戦する国産初のジェット機「MRJ」や豪華客船の納期遅れなどで巨額損失を計上した三菱重工にとって、5兆円にも膨らんだ原発開発を手掛ける余裕はない。
 さらに、風力発電など再生エネルギーの発電コストが下がり、原発は放射能漏れなどの環境問題に加え、コスト面からも世界的に敬遠されてきている。三菱重工の中では「官邸やそれに同調する経済産業省の言うがままに原発開発にのめり込んでいくと、東芝の二の舞いになりかねない」との懸念が日ごとに高まっている。
 東芝はかつて三菱重工と競って米原発会社ウエスティングハウス(WH)を6000億円もの資金を投じて買収した。しかし、その後の運営がままならずWHは破綻。東芝もその影響を受け、虎の子の半導体事業を売却する羽目に陥った。
 三菱重工の原発を巡っては、まだ懸念がある。シノップ原発を共同で手掛ける仏原発大手のアレバとの関係だ。
 アレバはフィンランドの原発計画の開発遅延で多額の損失を計上、6年連続の赤字決算を計上しており、仏電力大手EDFの支援を得て再建途上にある。このほど、フィンランドの原発事業を切り離すなど手術中だが、その再建途上で三菱重工も新会社への出資など、累計で1000億円も資金を拠出している。
 シノップ原発はこのアレバの再建もかかる重要な案件だが、「失敗すれば共倒れになる可能性も高い」(同)。通常、5年でトップが交代する三菱重工の宮永俊一社長は、異例の任期延長となった。
 日本、トルコ、仏政府が関わる案件にどう対応するのか、匕首を突きつけられた格好だ。


 京阪中之島線の延伸で「京都とカジノを結べ」

 京都観光で業績好調な京阪ホールディングスの加藤好文社長が、大阪都心を通る京阪中之島線の延伸について意欲を見せている。
 地元報道では、大阪・夢州にカジノ(統合型リゾート=IR)の誘致が決まれば、「延伸の具体化に踏み切り、そこから5年以内に開業する」とアドバルーンを打ち上げた。
 京阪は、延伸工事には1000億円超を投じる。IR関連ビジネスで南海電鉄、阪急電鉄に出遅れた京阪だが、「カジノ会場と京都がつながることで、京都を訪れた外国人のインバウンドでカジノがにぎわう」という戦略を見せることで、カジノ誘致当局の大阪府・市や経済界に「忖度」を求めるもよう。京都のホテル運営やインバウンド輸送で潤う京阪が、逆転を狙うわけだ。民営化された大阪の地下鉄と相互直通も目指すなど、「つながる鉄道網(=カジノネットワーク)」で汗をかく。
 延伸は地下路線で、現在の京阪の中之島駅から九条駅までの約2キロメートル。公営地下鉄から民営化した大阪メトロの中央線を念頭に、九条駅とも接続を図る。
 IR建設予定地の人工島の夢洲の一帯には、鉄道延伸構想が花咲く。京阪は地下鉄との相互直通により、商業施設や国際会議へ訪れる国内外の客を京都方面へ運びたい。
 さらに、京阪は九条駅から北西方向にさらに約一キロメートル延伸し、JR西日本環状線と接続する案もぶち上げる。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の利用客取り込みも視野に入れることができるからだ。
「IRや万博といった大型プロジェクトの大阪誘致が本格的に議論され、これまで止まっていた関西の交通インフラ整備がようやく動きだした。中之島線を起点に、地下鉄やJR、私鉄も接続できれば、京阪の鉄道需要を拡大できる」(加藤社長)というわけだ。
「京阪沿線の京都は、ホテル事業で開業もしくは開発中の案件を含め、約1500室の規模を持つ。各地域の行政とも連携し、そのノウハウや、M&Aで取り込んだ特色ある事業者の即戦力を生かしていく」とPRしていく意向のようだ。
 4月にはカジノの海外業者のメルコが大阪オフィス(心斎橋)を開設した後、府民を対象に「関西IRショーケース」も開催され、大阪府知事、大阪市長らも「登場」し、海外のIR事業者数社のトップがPRしている。


 人生100年時代構想は政府よりも民間主導

 先頃、内閣府は「人生100年時代構想会議」がまとめた中間報告を発表した。同構想会議はベストセラーになったロンドンビジネススクールのリンダ・グラットン教授の『ライフシフト 100年時代の人生戦略』を基に超長寿社会のグランドデザインの検討を重ねている。
 グラットン教授は同書で人生100年時代には今までの20歳までの教育期間、20歳から60歳までの就労期間、60歳以降の定年退職後の余生というライフスタイルは通用しないと指摘。定年退職後の人生が40年もあるからで、退職後はリカレント(生涯教育)、再就労、あるいは、経験を生かして起業するようになる。それに合わせて大学改革が必要であり、政府、企業は環境づくりを支援することが必要だと説く。
 安倍首相を議長にした構想会議では著者のグラットン教授を招いた。幼児教育・高等教育の無償化、待機児童の解消、介護人材の処遇改善などを挙げ、最終報告には大学改革を盛り込む方針だが、森友、加計学園問題の陰でさっぱり目立たなかった。
 代わって飛びついたのが民間企業だ。たとえば、野村証券は「人生100年パートナー宣言」を発表し、「資産寿命をいかに伸ばすかが課題」と投資信託や積み立てNISAを推奨すれば、信託銀行も負けてはいない。三井住友信託銀行は「豊かな老後生活を送るためには月34.8万円が必要だが、公的年金は給付水準が減少するばかりでなく、支給年齢も引き上げられ、あてにならない」と謳い、若い人には投資信託や500万円から始められる投資一任運用商品を勧め、高齢者には遺言信託や土地を担保に年金を受け取るリバースモーゲージ商品を宣伝する。
 オリックス生命保険会社は85歳まで加入できる医療保険を用意し、太陽生命保険は「100歳時代年金」を売り出した。同社は「死亡時の保障をなくす代わりに、生涯にわたって多くの年金を受け取れるトンチン型の『長寿生存年金保険』と介護が必要になった場合に受け取れる『終身生活介護年金保険』を組み合わせた商品です。この年金保険で人生100年時代のリスクに備えることができます」と説明する。
 さらにダスキンも、かつて話題になった“きんさん、ぎんさん”の100歳と94歳の2人の娘を登場させ、「人生100年時代は100番、100番」と宣伝。100歳時代は大いなるビジネスチャンスと映っている。


 炭素繊維で起死回生図る東レの超大型買収

 炭素繊維は東レの「顔」。事実「世界一の生産量」を誇っているし、「炭素繊維の東レ」と紹介されたりしている。しかし炭素繊維をして東レの収益の「大黒柱」とするにはいま一歩二歩というのが現実なのである。
 開示済みの今3月期決算の第3・四半期の実績が、それを如実に物語っている。「炭素繊維(複合材)事業」の東レの総売上高に占める比率は、前年同期比8.3%増とはなったものの「7.7%」にとどまっている。営業利益も然り。「原料価格上昇や競争激化」から26.9%減となり、総営業利益に対する貢献度は12%強という現実がある。いまだに開花には至ってはいない。
 東レはこの間に大口納入先である大手航空機メーカーを中心に、積極的な営業強化を進めてきた。また、競合メーカーのM&Aで炭素繊維メーカーとしての立ち位置の確立を図ってきた。そして今回、格好のタイミングで改めて炭素繊維拡充に向けた「本気度」を見せつけた。
 オランダの炭素繊維加工大手のテンカーテ・アドバンス・コンポジット・ホールディングス(TACHD)の買収発表である。「本気度」と記した主因は、以下の2点である。
 1つ目は買収金額が約1230億円だったこと。東レがこれまでに実施したM&Aでは、最高金額である。ちなみに東レは2014年に米国大手炭素繊維メーカーのゾルテックを買収し話題となったが、金額は580億円だった。
 2つ目は時代への対応で、今、炭素繊維(部材)に求められているのは、「早く安くつくる」体制の整備・実現である。買収するTACHDはエアバスなどとの取引があり、東レ同様にそのことは重々承知している。その意味で着目すべきは、TACHDが持つ強みである。それはオランダおよび英国の生産拠点で、「炭素繊維複合材を熱で柔らかくし、短時間で部品に加工する」技術を有している点である。
 フリーキャッシュフローが潤沢な東レとはいえ、1230億円という買い物は決して安くはないはずである。水面下での時間をかけた交渉の末であろうが、炭素繊維に求められる「時代の要請」を勘案し「勝負をかけた投資」と言っても過言ではない。今年後半までには全株式を取得するという。
 航空機業界に明るいアナリストは「来期は、炭素繊維の大口顧客である航空機業界の在庫が一巡する。炭素繊維が需要を盛り返す時期に入る」とした上で、「その辺りを見定めた上での買収だったとみる」と言い及んだ。「炭素繊維の東レ実現」に逃せない商機と捉えた「大型買収」の断行といえる。


 NHK第1期工事を竹中JVが棚ぼた受注

 NHKが2025年の供用開始を計画している東京都渋谷区にある放送センターの第一期工事を、ゼネコン大手の竹中工務店が代表を務める共同事業体(JV)が“棚ぼた式”に落札した。入札には大林組、大成建設、清水建設のゼネコン大手もそれぞれJVを組んで参加し、竹中を含む4グループが応じていたが、決して竹中が競り勝ったわけでない。
 大林、大成、清水の3社は中央リニア新幹線の建設工事をめぐる入札談合事件で独占禁止法違反で起訴されたことから、NHKは内規に沿ってこれら3社を3月30日に4カ月間の指名停止としたからだ。NHKが4月10日発表したところによると、1期工事の契約額は618億円で、竹中は労せずして、この大型案件を手に入れた格好となった。
 放送基幹設備などを備える情報棟を建設する1期工事は高度な技術が要求されることもあり、スーパーゼネコンと呼ばれる大林、大成、清水と、建築事業の技術・施工面でこれら3社と渡り合える竹中のいずれが落札しても不思議でなかった。しかし、大林、大成、清水が不祥事で墓穴を掘ってしまったのだから、竹中はまさに漁夫の利を得た格好だ。
 1期工事は地上9階・地下1階建てで、今秋に着工する予定だ。NHKはさらに36年までに約1700億円をかけて放送センター全体を立て替える計画としている。
 中央リニア新幹線をめぐる談合事件では大林、大成、清水に加えて鹿島も起訴されており、国土交通省や自治体などから指名停止を受けている四社が今後、今回のようなケースに見舞われるのは避けられない。
 20年以降は東京五輪による建設特需は消えるだけに、スーパーゼネコンにとって“自失”で大型案件を落としたダメージは大きい。


 「LINE」に対抗して携帯大手3社が新サービス

 NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの携帯大手3社が、対話アプリで席巻する「LINE」に対抗しようと、5月9日から共通で利用できる新たな「ショートメッセージサービス(SMS)」をスタートさせる。「あまりにも遅きに失した」との声が聞こえてくる中、利用者に受け入れられるどうかは未知数だ。
 新サービスの名称は「+メッセージ」。現行のSMSは、他社の端末宛てでは最大七十文字の短文と絵文字しか送れないが、新サービスでは最大2730文字の長文に加え、写真や動画、500点の無料スタンプを送れる。また、複数の利用者が同時にメッセージをやり取りできるグループチャットも可能になる。
 アプリをダウンロードして利用するが、メッセージは「LINE」のように対話形式で表示され、「既読」か「未読」かもわかり、画面も「LINE」そっくり。両者の違いは、「LINE」を利用する場合は事前に「友だち登録」が必要だが、「+メッセージ」は電話番号さえわかれば送受信できること。通信料は定額サービスに加入していれば、現行の1回3円の料金は発生しない。
 3社がここにきて結束を固めたのは、世界の移動通信の業界団体「GSMアソシエーション」が2016年にSNSの標準仕様「RCS」を策定した事情がある。すでに世界39カ国・50事業者が導入しているという。かつては携帯メール、今や「LINE」に隠れて影の薄いSMS、果たして巻き返しができるか。


 詐欺商法に近かったかぼちゃの馬車

 「かぼちゃの馬車」というネーミングと女性専用シェアハウスというコンセプト、それに「地銀の雄」のスルガ銀行が融資するサブリース事業だっただけに、2012年の設立ながら急成長を遂げ、売上高300億円に達していたスマートデイズ(東京都中央区)が、4月9日、経営破綻して民事再生法を申請した。負債総額は60億円だが、800名以上のオーナーがいて被害総額は1500億円を上回りそうだ。(本誌51ページ参照)
 単なるビジネスモデルの破綻ではないのは、これまで発生した民事訴訟や被害者のオーナーが明かすスマートデイズの販売実態で明らかだ。この種のサブリースは、相続対策などで行われることが多く、相続税が発生する富裕層が、寮やアパートなどを建設、ローンを組んで借金を発生させて税を軽減する、というものが多かった。
 ところが「かぼちゃの馬車」は30代から50代のサラリーマン層に、土地の買収資金と建設資金を貸し付けて物件を建てさせ、それを一括でスマートデイズが借り上げて、入居者に転貸するという利殖のビジネスモデル。満室かそれに近ければ利益が出るというスキームなのに、急拡大戦略の歪みで、駅から遠く、狭く、高いという物件が多かった。
 結果、空き室率が50%を切るような物件が多く破綻は目に見えていたが、破綻の直前、スマートデイズに対して起こされた民事訴訟では、最初の不動産売買の段階で実質的な創業者が中間業者として入って中抜き、物件販売業者へのキックバックも指摘されており、要は、オーナーは最初から高く買わされるスキームだった。
 問題となっているのは実質的な創業者である。この人物は、過去に安売り石油販売、安売りビデオのチェーン展開などで何度も話題になる一方、風営法違反や住専に絡む詐欺事件などで逮捕歴がある。表に名前を出さず、だから被告にもなっていないが、「破綻が必至のビジネスモデル」を築いたといえる。
 それに手を貸したのがスルガ銀行だった。「地銀冬の時代」に高収益を上げている銀行として金融庁にも評価されていたが、高収益をもたらしたのが怪しいサブリース事業で、融資申込書などの書類には収入を多く見せかけるような改ざんの事例もあったという。それも含めて、「詐欺のようなビジネスモデル」だったわけで、被害者弁護団も結成されているだけに事件化は必至。大型経済事件となりそうだ。


 画期的なバイオ新薬は庶民には高嶺の花

 昨年、効果よりも値段の高さが注目された抗がん剤オプジーボだが、今年4月の薬価改定で16年に保険適用された時から半額以下に値下げされた。とはいえ、100ミリ当たり約28万円で、治療費の総額は1000万円を超える。
 一方で、2〜3年前からオプジーボのように効果も薬価も画期的な医薬品の開発が相次いでいる。最近では、オプジーボを上回る超高額薬が登場し、世界的に物議をかもしている。米国で先頃承認されたという遺伝子治療薬「LUXTURNA」はなんと15万ドル、日本円で9000万円近い。ほかにも2種類の白血病治療薬が登場し、こちらも4000万円〜5000万円と超高額だ。
 いずれも世に出たばかりで、実際の臨床現場での評価が待たれるが、臨床試験ではともに画期的な効果を示している。最も高額な遺伝子治療薬は病気を引き起こす遺伝子を持っている患者に、正常な遺伝子を送り込んで病気を治すという、これまでになかった治療薬だ。現時点では遺伝性網膜ジストロフィー治療薬として認可されている。
 バイオテクノロジーの進歩は今や遺伝子レベルでの薬の開発を可能にし、これらの新薬の多くは、最先端のバイオ技術、遺伝子組み換えなどを駆使して生み出されている。
 いずれ日本でも認可される可能性が高いが、やはり、難関はオプジーボ以上ともされる値段だ。医療のビジネス化で最先端を走っている米国でさえ、高額な薬価への批判が大きい。1億円近い治療費を出せる金持ちしか恩恵にあずかれない、格差医療そのものだからだ。医療を福祉ととらえる北欧や英国などでは、果たして超高額薬が無条件で認可されるかは疑問だ。
 最近の新薬の高額化の背景には、前述した遺伝子や細胞再生などの最先端バイオ技術を使ったといった開発コストが大きいことにある。しかも、米国のバイオ産業はベンチャー産業に負うところが多く、新しい薬の開発を行うバイオベンチャーが数多く生まれている。米国ではバイオベンチャーは今やIT産業をしのぐ勢いで急成長しているという。製薬メーカーはこういったベンチャー企業の開発した特許を高額な値段で取得するというのが最近の傾向なのである。
 画期的な新薬が次々に生まれる背景にはバイオベンチャーの開発力が大いに寄与しているが、一方でそれがコストを引き上げている側面もあるようだ。この傾向はますます加速しており、医薬品業界は新しい時代に入ったといっていい。


 プーチン氏の2女が離婚、元夫は愛人と英国暮らし

 ロシアのプーチン大統領の2女、エカテリーナさんが昨年秋、新興財閥の子息で億万長者のキリル・シャマロフ氏と離婚していたという話がモスクワで流れている。
 エカテリーナさんは大学時代に日本語と日本の歴史を学んだ日本通。父親同様、運動神経抜群で、新競技アクロバチック・ロックンロールの選手として知られる。2014年頃、資産20億ドル(約2200億円)とされるシャマロフ氏と結婚した。同氏はプーチン大統領に近い新興財閥でロシア銀行のニコライ・シャマロフ頭取の子息。35歳ながら、石油化学大手シブルの副社長を務め、フランスの保養地に高級別荘も所有し、パワー・カップルと呼ばれた。
 しかし、性格の不一致などから昨年離婚したもようだ。ロシア当局は一切公表していないが、シャマロフ氏は昨年末、フェイスブックに新しい愛人とのツーショットを公開しており、離婚がほぼ確認された。
 ロシアのネット情報によれば、離婚でシブル副社長のポストを更迭され、株式の一部も剥奪、資産は一気に8億ドルまで減少したという。新しい愛人をつくって大統領の娘と離婚した「罰」、との見方も出ている。
 プーチン大統領には2人の娘がいるが、動静は一切公表されていない。長女も新興財閥の子弟と結婚し、一時オランダに住んでいたが、現在はモスクワに居住しているようだ。
 シャマロフ氏の新しい愛人は英国に居住するロシア人女性で、今後は2人で英国を中心に暮らすという。元二重スパイで英国亡命中のスクリパリ氏は何者かに化学兵器「ノビチョク」を盛られ、一時重体になったが、シャマロフ氏はまさか、何らかの報復に怯えることになるのか。


 存在感強めるタクシン兄妹、狙いは総選挙後の復権か

 国外逃亡を続けるタイのタクシン元首相と妹のインラック前首相が今年に入り、あえて人目につく行動を取り、存在感を強めている。来年初めにも実施される総選挙に向け、影響力を維持する狙いがあるのは明らか。2人は今もタイ国民の間で絶大な人気を誇り、兄妹と対立する軍事政権は警戒を強めている。
 兄妹は2人とも汚職関連の罪で有罪判決を受けており、帰国すれば収監される立場。このため、ドバイやロンドンを拠点に逃亡生活を続けており、昨年8月にインラック氏がタイを脱出してから、2人の動向が伝えられることはほとんどなかった。
 ところが年明け早々、インラック氏がロンドンの高級デパート、ハロッズの前で、エルメスの高級ハンドバッグを片手にタイ人観光客と撮影したツーショットの写真がSNSで拡散したことをきっかけに、ロンドンのさまざまなデパートで買い物中の写真がインターネットに出回った。2月にはタクシン氏とインラック氏が連れ立って中国、日本、香港、シンガポールを歴訪。3月にもそろって来日し、その後、中国に向かった。
 さらにタクシン氏は、タイの旧正月に当たる4月のソンクランに合わせ、フェイスブックに「来年のソンクランは国民に選ばれた政府の下で迎えたい」と投稿し、軍をけん制している。軍はタクシン氏の一連の行動について、「ニュースで取り上げられたいだけ」と静観を装うが、2月にタクシン派の政党、タイ貢献党の幹部がそろって香港でタクシン氏と密談したとの情報を受け、兄妹の動向を注視している。


 蔡英文総裁再選に黄信号、対中国軟弱姿勢が命取り?

 4月18日、中国海軍は空母「遼寧」を加えた多数の新鋭艦隊を台湾海峡に入れ、これみよがしの実弾軍事演習を展開した。
 米国は南シナ海に「航行の自由作戦」と称して海軍艦船の示威行動を続ける一方、「台湾旅行法」を連邦議会上下院は圧倒的多数で可決させた。仮に蔡英文・台湾総統が訪米し、希望すればホワイトハウスで首脳会談を行うことも法的に可能となったのだ。加えて「沖縄にいる海兵隊を台湾へ移転させよ」と主張するジョン・ボルトン元国連大使が大統領安全保障担当補佐官に就任し、台湾はますます元気づいた。
 ところが、肝心の民進党政権の腰が定まらず、蔡英文総統の人気は下降線をたどっている。原因は台湾独立を口にせず、中国に対しての姿勢が軟弱で、外交姿勢があまりにも曖昧だからだ。
「このままでは再選は覚束ない。国民党に奪回されるのでは」という不安が本省人の間に急速に広まっている。
 蔡総統は人気回復のため民進党のエース格、頼清徳氏(台南市長)を行政院長(首相)に、総統府秘書長に陳菊氏(高雄市長)を抜擢して盤石の態勢で11月の六大市長選挙(台北、新北、桃園、台中、台南、高雄)に臨むつもりだ。これは2年後の総統選挙の前哨戦となる。
 だが肝腎の台北市長は政治的立場が一定しない何文哲の独走態勢にあり、また独立派の地盤だった台南と高雄の市長が総統府入りしたため次の有力候補がまとまらない。
 この弱点を突いて、国民党が捲土重来を期すべく金とエネルギーを注ぎ込み巻き返しに懸命で、予断を許さぬ状況になっている。


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