巻頭言
池 東旭の


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池 東旭氏
(ソウル在住/
国際ジャーナリスト)





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米朝トップ会談で
新パワーゲーム開始

 トランプ大統領のワンマン・ショーにアメリカが振り回されている。政権ナンバー3の国務長官をはじめ20人を超す長官、側近を至極簡単に罷免し、身内(娘、娘婿)をホワイトハウスの要職に起用する等々、やりたい放題だ。ワンマン経営で資産を築いた彼は、アメリカ合衆国もワンマンで統治する。アメリカ・ファーストとは「トランプ・ファースト」のことだ。彼はだれの掣肘(せいちゅう)も受けず、ツイッターで重要政策に関する私見を衝動的に発信する。政府は後始末と尻拭いにきりきり舞いだ。大統領の暴走はだれも止められない。
 権力の行き過ぎにブレーキをかけるのは言論の役割だ。しかしトランプは、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、CNNなどマスコミをフェイク・ニュースと罵倒して、歯牙にかけない。大統領選挙にまつわるロシアとの通謀疑惑、婚外情事等々スキャンダルが次々とバクロされた。ほかの政治家ならとっくに失脚してもおかしくない。だが、トランプは平然だ。食言と前言を翻すのは朝飯前で、その鉄面皮は尋常ではない。海外でも地球温暖化防止協定を離脱、グローバル・スタンダードの自由貿易協定を廃棄して保護貿易へ回帰する。メキシコ国境の壁建設、移民規制強化など国際的摩擦を生んでいる。

──大統領弾劾の現実味
 トランプの傍若無人な振る舞いに各国は非難の大合唱だが、アメリカ・グレイト・アゲイン(アメリカ復興)を唱えるトランプは意に介さない。世界のリーダー・アメリカはトランプのせいで国際的に嘲笑の対象になった。唯我独尊のトランプ氏の弾劾論は就任当初からくすぶっていたが、11月8日の中間選挙次第で現実味をおびる。
 大統領弾劾の要件は、△下院の過半数の賛同で弾劾を決議、△上院の弾劾裁判で議員2/3の賛同、で罷免される。現状の議席数は、上院=100(共和党51、民主党47、無所属2)、下院=435(共和党240、民主党193、欠員2)だ。少数野党の民主党は発議ができない。だが中間選挙の結果如何により変わる。中間選挙は任期2年の下院議員全員と任期6年の上院議員の1/3を改選する。
 直近CNN世論調査でトランプ大統領の支持と不支持率は42対54だ。今回の中間選挙では、民主党の躍進が有力視される。共和党議員の中にも反トランプが多く、弾劾賛成派は少なくない。弾劾賛成は下院の過半数(218)上院の2/3(68)を上回るとの予測だ。トランプが解任されても後任選挙はせず、穏健派のペンス副大統領が昇格する。共和党も不人気なトランプを代えたほうが得策と判断するだろう。

──会談決裂か、妥協か
 6カ月後の中間選挙を前にトランプは、支持率アップのためになりふり構わず動く。手始めは5月末か6月の米朝首脳会談だ。トランプと金正恩は互いに耄碌爺、ロケット小僧など口汚く罵った。それが一転、トップ会談だ。その背景は弾劾説に焦るトランプと経済制裁で窮地にある金正恩の打算がある。
 トランプは北朝鮮の非核化を要求する。金は段階的非核化を前提に制裁解除を主張する。北は決して核を手放さない。段階的非核化とは時間稼ぎというのが常識だ。大統領を補佐する強硬派の面々を見れば、会談は物別れになるが、軍事行動に至らないとの見方が専らだ。しかし国際外交には真逆、奇想天外の逆転がある。金正恩は核を廃棄する見返りに対米国交樹立合意で妥協する。トランプは北の核廃棄を成果と誇示して中間選挙の退勢を挽回する。村八分の北は、対米国交によ3月訪中で破格に厚遇したのはそのせいだ。米朝国交樹立となれば、東アジアで新しいパワーゲームが始まる。米・日・韓対中・露・朝の構図は崩れ、チェンジング・パートナー劇が繰り広げられる。(敬称略)
(ソウル在住/国際ジャーナリスト)


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