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 安倍内閣の支持率急落で岸田氏の総裁選出馬は?

 森友学園への国有地売却を巡る決済文書改ざん問題で、安倍晋三首相の自民党総裁3選に黄信号が点り始めたことを受け、ポスト安倍候補である岸田文雄政調会長(岸田派会長)の去就が俄然、注目を集めている。岸田氏自身は「今後の政治状況を見極めて決める」と「中立」姿勢を堅持しているが、岸田派内では、「最終的には出馬を決断する」との見方が強まっている。
 岸田氏はもともとガードが堅く、岸田派担当記者たちとのオフレコの場でも胸の内を明かすことはほとんどない。また、岸田氏に近い中堅議員も「周辺の意見に耳を傾けるが、相談はしないタイプ」。岸田氏の行動を予測するのは容易ではない。
「まだ決めていないが、政治家としても人脈を広げていくことは大事だ」。3月10日、岸田氏は地方行脚の第一弾として訪れた山梨県昭和町で総裁選対応について聞く記者団を、こうして煙に巻いて見せた。派内で安倍首相からの禅譲待望論者と禅譲に否定的な議員が拮抗していることが背景にある。
 ただ、2月に行った講演で「安倍晋三首相も来年に向けて、しっかり力を蓄え、この大切な年を迎えなければならない」と発言。複数のメディアがこれを「岸田氏が不出馬示唆」と報じると、「総裁選における私の対応とは全く別次元の話だ」と懸命に打ち消した。「不出馬示唆」は岸田流の観測気球だったとの見方も。
 当時はまだ、安倍3選が確実視されていた時期だったため、出馬するかしないかはあくまで禅譲路線の範囲内での選択肢だったと言える。しかし、ここへ来て森友問題の影響で内閣支持率が急落。一部では早期の内閣総辞職の可能性すら囁かれ、派内では岸田氏に早期の出馬表明への期待が広がっている。
 岸田氏については長らく安倍首相からの禅譲が既定路線のように言われてきたが、さすがにこれには岸田氏も周辺には「政局は何が起こるか分からないんだ」と語っているという。勝負所を探っていると見たほうがよさそうだ。


 米朝首脳会談は実現するか、両首脳それぞれの腹の内

 スウェーデンのストックホルムでは、米朝非公式協議で首脳会談について下交渉が進んでいる。この米朝首脳会談について、ワシントンの情報筋は「6月」がキーワードだと解説する。昨年12月以来、6月には北朝鮮によるICBMが実戦配備されるため、それまでに決着をつける必要があると主張してきたのがポンペオCIA長官だった。今回、戦争回避を第1に対話路線を主張してきたティラーソン国務長官の首を斬り、ポンペオ氏を国務長官に就けた人事も、トランプ大統領がポンペオ氏の筋書きを採った故だという。
 米朝首脳会談は、韓国特使が北朝鮮の意向を説明し、トランプ大統領はその場で即決したとされる。だが、決断の前にトランプ氏はマティス国防長官、マクマスター補佐官、ポンペオ長官に相談した。その際、マティス、マクマスター両氏は首脳会談に反対し、ポンペオ長官が賛成したという。
 そのポンペオ氏の筋書きにはマティス国防長官が着々と準備をしている軍事オプションがあるため、マティス長官は外せない。同長官が3月15日にカナダで開かれた北朝鮮問題に関する外相会合関連の夕食会で「米国には(朝鮮半島有事の)作戦計画があり、準備もできている」と発言したと報道されている。
 情報筋によれば、「準備」のために米軍は、北朝鮮の65カ所の核関連施設や金正恩委員長の居住地区などに何度もステルスを飛行させて情報収集してきたが、北朝鮮側は全く気付くことがなかったという。
 こうして軍事オプションが着々と準備される中、6月のICBM実戦配備というタイムリミットを前にトランプ大統領が米朝首脳会談を受け入れることにしたのは、この会談で何かを打開しよう、朝鮮半島の非核化を確約させようという期待があってのことではないという。端的にいえば、「最期にやっつける前にどんな奴か顔を見て確認しよう」というレベルだというのだ。
 ワシントンには米朝首脳会談、米朝対話に期待する声はほとんどないという。6月に向けて軍事行動オプションを粛々と進めるだけだというわけだ。
 そしてこの情報筋は、金正恩委員長サイドの事情も解説する。
「昨年暮れには金正恩委員長の暗殺計画があった。米朝首脳会談の場所がスウェーデンやスイスでという話もあるが、そうなれば3泊4日はかかるため、北朝鮮をその間留守にしなくてはならない。だが、これだけあればクーデターには十分な時間だと彼は考えているだろう。そのため、北朝鮮を離れなくてすむ形での米朝対話にかけたのだろう」。
 では、米国が考えているその先の落としどころはどこなのか。長期政権を確立した習近平主席の中国は、北朝鮮を属国として支配し、再選されたロシアのプーチン大統領は、金正恩委員長の亡命を受け入れて朝鮮半島での存在感を高める。大国支配の構図で朝鮮半島の安定を図ることを意図しているのだという。


 枝野・立憲民主党代表は“次の次”で政権取りへ

 森友文書の改ざんで安倍政権の「終わりの始まり」に火がついたような政局に、自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長は「野党が1つになれば政権交代の可能性がある」とそそのかす。そのカギを握る立憲民主党の枝野幸男代表は野合的野党再編を「全く考えていない」と近しい人に語っている。
 枝野代表は現在、立憲民主党を純化することに傾注しており、民進党の分裂騒ぎで失望したリベラル層のカムバックを脇目も振らず強固なものにしたいと思っている。曰く──。
「国民が野合を嫌っているのは、先の衆院選ではっきり出ています。現在の民進党(大塚耕平代表)と希望の党(玉木雄一郎代表)のいずれからも束になって分党して出てきて、一緒になりたいと言ってきても絶対に受け入れません。個人的にパラパラと出てきて立憲民主党に入りたいというのであれば、拒みません」
 単なる数合わせの野合は国民からソッポを向かれる。急がば回れになるが政権を取るには当面「純化路線」
を貫くほうが近道だとの判断だ。
 政権の受け皿になる野党第一党を確立するには、まだ時間がかかることも自覚している。立憲民主党を強くするには「今、無所属の会にいる安住(淳元財務相)さんが欲しいですね。彼がいれば、我が党は本当に強力になる」と言う。一方で、ポスト安倍が誰になるにせよ、その後継者と対決しても、ただちに政権奪取までは届かない、という冷静な計算も働く。リアリストの枝野氏が狙いを定めているのはT次の次”の総選挙である。
 憲法改正問題については、安倍流の改憲は実現しない、との見方で一貫している。「年内であれ、来年初頭であれ、国会発議後の国民投票を実施するというのであれば歓迎です。今の世論からすれば、確実に6対4で否決される自信がある。改憲否決になれば、安倍首相は仮に森友文書の改ざん問題で生き延びたとしても、ただちに終わりを迎える。こちらは、ただそれを待っていればよい」と力まずに分析する。
 永田町ウオッチャーによると、枝野代表が向かおうとする政党の理念は、かつての自民党宏池会。前尾繁三郎、大平正芳、宮沢喜一の各氏がいた頃の護憲保守派のようなイメージに近いという。かつて自民党は保守からリベラルまでを取り込む包容力があった。衆院選小選挙制実施と安倍政権が出てきてから右派色で染められるようになった。枝野氏が政権取りを実現させるには、かつて自民党支持だった保守リベラル層の取り込みが欠かせないわけだ。


 「水陸機動隊」誕生も現状はまだ問題山積

 離島の奪還を主任務とする「水陸機動団」が3月末、長崎県佐世保市の陸上自衛隊相浦駐屯地に誕生した。「殴り込み部隊」といわれる米海兵隊の自衛隊版だ。頼もしい限りだが、発足早々からいくつもの問題点が浮上している。
 その一つは機動力に乏しいこと。水陸機動団は米海兵隊を真似て垂直離着陸輸送機「オスプレイ」や水陸両用車「AAV7」を導入するが、それらを運ぶ強襲揚力艦が自衛隊には1隻もない。例えば沖縄の海兵隊を運ぶ強襲揚陸艦「ワスプ」の場合、オスプレイやヘリコプターを甲板に載せ、AAV7は艦内に格納したうえで陸上部隊約1900人を1度に輸送できるが、自衛隊の場合は、強襲揚陸艦の代替と甲板が平らで空母のように見える「いずも」型や「ひゅうが」型護衛艦でオスプレイを運び、AAV7は「おおすみ型」輸送艦に積み込んで別々に運ぶ計画だ。だが、2隻あればなんとかなるという問題ではない。
 構造上、海上自衛隊の輸送艦は改修なしにはAAV7を1両も運べないが、3月現在、3隻ある「おおすみ」型の改修は終わっていない。改修後であっても搭載できるAAV7は1隻あたり16両に限られ、3隻をフル動員したとしても導入する52両すべてを運ぶことはできない。
 またAAV7を満載すれば、エアクッション揚力艇を搭載できず、装甲車などを上陸させられないことになり、戦力は圧倒的に不足する。
 さらに、オスプレイの配備先も決まっていない。防衛省は民間空港の佐賀空港に配備する予定だったが、地元の了解を得られておらず、置く場所がない状態。配備先が決まらなければ、地上部隊と組み合わせた訓練ができず、水陸機動団は開店休業状態に追い込まれかねない。
 本来、3個連隊3000人で発足する予定だったが、隊員の頭数が足りないうえ3個目の連隊の配備先が決まらず、2個連隊2100人での発足となった。敵前上陸は過酷な任務となるため、レンジャー徽章を持った能力の高い隊員を集めているが、有能な隊員は他の部隊が手放さず、人繰りに行き詰まっているのが現状だ。
 3個目の連隊の配備先として候補になっているのが沖縄本島の米海兵隊基地。自衛隊にとって指導教官役の米海兵隊との同居は願ってもないが、基地負担に苦しむ沖縄の人々が反対するのは必至だ。
 これらはいずれも一朝一夕に解決できる問題ではなく、ハレの日の門出に水を差す結果になっている。


 四国の地銀で起きた北朝鮮絡みのマネロン

 地銀を舞台にしたマネー・ローンダリング(資金洗浄)事案に金融庁が重大な関心を寄せている。事件は昨年5〜6月に四国に本店を構える地銀の支店で起こった。同行に口座を持つ会社経営者が同支店を訪れ、多額の現金を既存の口座に入金した上で、香港にある恒生銀行の特定口座に数回にわたり計5億5000万円もの資金の送金を依頼したのだ。恒生銀行に直接送金する道を持たないこの地銀は、コルレス契約のあるメガバンクに送金を依頼、すんなりと振り込みは実行された。
 だが、問題は振込先となった恒生銀行の口座の所有者だった。実はこの口座は北朝鮮と関係の深い会社のもので、役員には国連の北朝鮮制裁リストにピックアップされた者も名前を連ねていたのである。だが、その後、事態が明るみになった時には、振り込み依頼者の会社はもぬけの殻で、本人も行方をくらませていた。典型的なマネロン事案と見て間違いない。
 しかし、地銀の支店では億を超える不自然な海外送金であったにもかかわらず、厳格なマネロンチェックは行われていなかった。鍵はその送金スタイルにあった。
「窓口に振り込み依頼に来た顧客は、持参した現金をまず、これまで個人の生活口座として利用してきた口座に入金した上で、貸付金の名目で問題となる海外の法人に全額送金していた」(金融庁関係者)というのだ。既存の口座からの貸付けであったため、マネロンチェックはおざなりになったというわけだ。
 特に北朝鮮に対して国連の追加制裁が発動されるなど、資金面での厳格な包囲網が敷かれている。その最中に起こった事件だけに関係者の衝撃も大きい。
「マネロン・テロ資金供与対策は、低いレベルの金融機関が1つでもあると金融システム全体に影響し、日本全体のマネロン対策が脆弱であるとの批判を招きかねない」(金融庁関係者)と懸念する。金融庁は2月にマネロン・テロ対策に関するガイドラインをまとめるなど、徹底した封じ込めに乗り出している。
 金融庁幹部は2月中旬の地域金融機関トップとの会合で、四国の地銀で発生したマネロン事案を念頭に次のように警告を鳴らした。
「(今回の事案は)4つの点で問題があった。まず画一的・形式的なチェック態勢に甘んじてしまった点。2点目は、海外送金責任者に速やかに情報があがっておらず、第2線の管理部門にも情報伝達が行われていなかったこと。3点目は、外部からの指摘を受けるまで、問題認識を持たずに再発防止策や見直し等の対応を行っていなかったこと。そして四点目は、海外の送金先口座からの資金の移動状況を送金先銀行に確認していなかったことである」
 杜撰なチェック態勢に金融庁幹部も眉をひそめた。


 強すぎるアマゾンに公取委が立ち入り調査

 インターネット通販大手、アマゾンジャパン(東京)が独占禁止法違反(優越的地位の乱用)の疑いで公正取引委員会の立ち入り検査を受けた。自社サイトで取り扱う商品の納入業者に対して昨秋から、「サイトで販売した金額の1〜5%程度」を協力金として負担するよう求め始めたというのが、その理由だ。
 アマゾンがメーカーにこれらの負担を求める背景には、物流費の上昇などネット通販をめぐる環境の悪化がある。ネット通販の拡大で、宅配便の需要が急増。ドライバー不足もあり、アマゾンは宅配便大手の輸送費値上げを受け入れざるを得ない状況だ。商品の低価格販売を維持するために、増加したコストの一部を取引先メーカーに負担させる狙いがあるとみられる。
 アマゾンは豊富な品揃えと低い価格、スピード宅配を武器に急速に売り上げを伸ばし、2017年の国内の売上高は約119億ドル(約1兆3000億円)に上る。国内メーカーにとっては無視できない存在に成長している。
 海外でもアマゾンの「破壊力」は圧倒的だ。米最大の小売り大手のウォルマートはアマゾンに対抗するため、通販事業を強化したが、昨年の年末商戦ではネット部門の伸び率が半減した。「昨年の年末商戦のネット通販の半分以上はアマゾンが取ったのではないか」(大手アナリスト)との声も聞かれる。
 さらに百貨店ではメーシーズやJCペニーなどの店舗が大量閉鎖に追い込まれている。アマゾンはさらに小売り大手のホールフーズを1兆5000億円で買収、「ネット販売だけでなく、リアル店舗の分まで浸食している」(同)。大手玩具店、トイザラスは経営破綻に追い込まれた。
 今回の公取委の動きも「強すぎるアマゾンの影響力をそぐため、小売り業界などからの悲鳴を聞いた官邸などが動いたのではないか」(大手日用品メーカー幹部)との声もある。ただ、取引業者からは「アマゾンのこれまで得た膨大なデータから割り出す需要予測などのデータが豊富で、生産計画策定にも役立つため、協力金は必要経費と割り切っている」(同)との声もある。当局とアマゾンの「争い」は当分続きそうだ。



 女性活用が進むりそな銀 初の女性常務が2人誕生

 りそな銀行で4月1日付で2人の女性常務執行役員が誕生した。
 初の常務執行役となったのは、新屋和代氏と有明三樹子氏。新屋氏はりそな銀行の前身である埼玉銀行に、有明氏は日興証券(当時)に入社。その両氏を引き上げたのは、りそな再建を託された故細谷英二会長(当時)と、その遺志を受け継いだ現在の東和浩・りそなホールディングス社長だ。JR東日本副社長からりそな入りした細谷氏は、「従来の銀行の常識を覆す」施策を次々と打ち出した。同時に力を入れたのが女性の活用だった。
 りそなの女性活用は、金融界で最も先進していると目される「同一労働同一賃金」にも見て取れる。2003年に公的資金が注入され実質国有化されたりそな銀行。公的資金の総額は3兆円にも及んだ。
「国有化と同時に年収は3割も削減され、住宅ローンの返済に窮した社員は、社内ローンで急場を凌いだほどです。銀行の将来を悲観して大量の社員が辞めていきました。この国有化をバネに打ち出したのが人事制度の抜本的な改革でした。正社員と非正規のパートナー社員の垣根をできる限り低くし、パートナー社員から正社員への道を開くとともに、同じ職務グレードであればパートナー社員も正社員と同じ時給換算で職務給が支払われるフェアな制度に変えたのです」(りそな関係者)
 その公的資金も3月、大手生保が保有していた優先株を買い取り、名実ともに完済。りそなの将来を象徴する女性常務の誕生なのである。


 水面下で綱引き、ゆうちょ銀の限度額見直し

 政府の郵政民営化委員会は、ゆうちょ銀行の預入限度額を撤廃もしくは引き上げる方向で検討し、3月下旬まで提言のまとめ作業が続いた。
 ゆうちょ銀行の預入限度額は、2016年4月1日からそれまでの1000万円を1300万円に引き上げたばかりで、違和感を訴える民間金融機関は少なくない。「政府が保有するゆうちょ銀行の株式は一部売却されたものの、依然として7割超の株式を国が保有する国営金融機関であることに変わりはない。国の信用をバックにしている以上、預入限度額があってしかるべきだろう」(大手地銀幹部)というわけだ。
 前回の引き上げが決まった15年12月に民営化委員会の所見でも「他の金融機関との間の競争関係やゆうちょ銀行の経営状況に与える影響」の見極めの必要性が言及されていた。だが、同時にこの所見では「通常貯金を限度額管理の対象から除外する方法が最も多くの人々のニーズにかなう」とも明記されていた。
 顧客ニーズや事務コストの軽減を考慮すれば、ゆうちょ銀行の預入限度額は撤廃されたほうが好ましいという意見には説得力がある。民営化委員会も、定期性の定額・定期貯金の預入限度額は残すものの、通常貯金については限度額を撤廃する方向で検討が進められてきた。
 しかし、問題視されるのは、ゆうちょ銀行の貯金増加にともなうバランスシートの膨張と収益への影響だ。「現在のような超低金利下では顕在化していないものの、今後、金利が上昇していく局面においてゆうちょ銀行が大幅な金利リスクを負うことが懸念される」(メガバンク幹部)。バランスコントロールに失敗すれば収益は圧迫され、最終的に国民負担が生じる可能性もある。


 2つの危機に直面する積水ハウス新体制

 積水ハウスが2つの危機に見舞われている。大宣伝攻勢と抱き合わせの営業至上主義の批判をものともせず、中興の祖と崇められた和田勇会長を退任に追い込んだトップ人事の混乱は、企業としてのガバナンス(統治)を大きく毀損した。それだけでなく、もう1つの危機、戸建て住宅市場の先細りに襲われ、2月に発足したばかりの新体制に否応なしの対応を迫る。
 同社は1月24日、仲井嘉宏取締役常務執行役員が2月1日付で社長に昇格する人事を発表した。阿部俊則社長は会長に就任し、和田会長兼最高経営責任者(CEO)は取締役相談役となり、4月の株主総会後に取締役も退任する。
 阿部氏の社長就任は2008年4月で、ほぼ10年ぶりの交代について発表時には今後の住宅市場縮小に備えた「世代交代」を強調していた。
 しかし、事態は急展開する。17年に起きた地面師による詐欺取引への責任問題をめぐり和田、阿部両氏が対立し、和田氏が退任に追い込まれた事実が発覚したのだ。
 この内紛劇は「リーマンショック」後の経営不振から順調に業績を伸ばしてきた同社最大の危機。これまで推進してきた環境、社会的責任、統治を重視するESG経営も出直しを余儀なくされる。株式市場はこれを嫌気し、同社株は下落が続いた。
 住宅市場縮小への危機対応も待ったなしだ。3月8日に発表した18年1月期決算は売上高、最終利益ともに2期連続で最高を更新し、戸建て住宅トップの「常勝」ぶりが際だった。しかし、中核の戸建て住宅・賃貸住宅事業の売上高は19年1月期で1.1%のマイナス見通し。さらに同年10月の消費税率10%への引き上げ前後やその先の住宅市場の混乱・縮小は避けられない。
 これに備え、同社は第1次取得者を狙った棟単価2000万円台前半の戸建て住宅に「第2ブランド」を設け、今秋にも全国展開する。同社は中高級路線をひた走り、戸建ての平均単価は3800万円台に跳ね上がり、高収益につなげてきた。半値近い第2ブランドであえて過剰競争な「レッドオーシャン」に販路を広げる路線転換は危機感の表れに他ならない。
 しかし、今回の人事騒動が今後の受注や業績にどう影響するかは予断を許さない。仲井社長は「信頼回復に取り組むことで業績に影響が出ないことに務める」と語るのが精いっぱいで、2つの危機に向き合う新体制はマイナスからのスタートとなり、難しい舵取りを迫られる。


 インド大手の買収で占う新日鉄住金“世界一”の道

 新日鉄住金は3月2日、鉄鋼世界最大手の欧州アルセロール・ミタルと共同で、インドの鉄鋼大手、エッサール・スチールの買収に乗り出すことで合意した。高い経済成長を背景にインフラ整備や自動車など現地で拡大が見込める鉄鋼需要を取り込むのが狙いだ。
 ミタルといえば、買収に次ぐ買収で2006年に世界最大手にのし上がった勢いに乗り、当時、粗鋼生産世界第2位の新日本製鉄(現新日鉄住金)を呑み込む可能性も取り沙汰された。ただ、新日鉄住金は近年、米国で自動車用鋼板の合弁事業を展開するなど、買収実績が豊富なミタルとの関係を強化しており、今回のエッサール買収に向けた共同歩調もさながら「昨日の敵は今日の友」だ。
 エッサールはインド鉄鋼四位ながら積極投資が裏目に出て、現在、倒産・破産法の手続きに入っている。しかし、同社は現在も操業を継続中。新日鉄住金としては、数多くの買収企業の再建経験があり、インド人のラクシュミ・ミタル最高経営責任者(CEO)が創業しインド市場への造詣も深いミタルと組み、インドでの橋頭堡を築くことを狙った。エッサールの売却をめぐっては、入札にはロシアのVTBキャピタルやエッサールを傘下に置いてきたインド中堅財閥エッサール・グループの創業者らも参加しているとされ、最終決着までに激しい買収交渉が繰り広げられるのは必至だ。
 新日鉄住金とミタルが結んだ基本契約によると、両社は共同買収する合弁会社を設立。出資比率は非公表ながら、ミタルが過半を握るとみられる。ただ、共同運営にせよ、新日鉄住金にはエッサールを手中に収めることは、今後のインド戦略を進める上で大きな意味がある。西部グジャラート州に年間生産能力1000万トン規模の製鉄所を持ち、タタ製鉄との自動車用鋼板の合弁事業と合わせて鉄鋼の一貫生産体制が整うからだ。
 新日鉄住金は国内市場が伸び悩むなかで国内拠点の集約に動く一方、海外事業を加速している。その先には、国内生産した半製品を海外で加工する従来の事業モデルから、「需要地で鉄源から製品まで一貫生産する」(進藤孝雄社長)モデルへの転換も視野に入れる。
 それを裏付けるように、エッサールの共同買収と同時に発表した20年度までの中期経営計画は、M&A(企業の合併・買収)を含む事業投資に前中期計画の倍に当たる6000億円を投じる。この買収の成否は、新中計で「総合力世界ナンバーワンの鉄鋼メーカー」を目指す新日鉄住金の今後を占う鍵となる。


 文春vs.新潮の場外乱闘、伊調馨パワハラ騒動の裏

 女子レスリング五輪四連覇の伊調馨選手への陰湿なパワハラ問題は、最初に報じた「週刊文春」が栄和人強化本部長と氏を擁護する日本レスリング協会を徹底攻撃、対して「週刊新潮」が、伊調選手の従兄弟だという告発者の?氏の怪しい履歴をもとに伊調選手と?氏に反撃、場外乱闘の兆しもある。
 芸能プロダクションを経営していたこともある?氏はマスコミに知人も多い。それだけに“正体”は割れていて、「?ならやりかねない」(芸能記者)と今回の告発が色眼鏡で見られる過去がある。だが、体育会気質では片付けられないパワハラ、セクハラ体質は問題。栄氏に関しては、文春が他の女子レスリング選手も被害を受けたとして数々の証言を紹介、告発を受けた内閣府の公益認定等委員会が調査すれば、事実認定される可能性が高い。
 問題は、協会や栄氏が所属する至学館大学の対応である。協会は調査すら行わずに「事実ではございません」と発表。福田富昭会長も馳浩副会長も「そんなことあったの?」ととぼけ、至学館の谷岡郁子学長は、「栄にパワハラする権力などない」「そもそも伊調さんは選手なのか」と、開き直った。
 そこには、「伊調とくっついた?のいかがわしさが表沙汰になれば、風向きは変わる」という思惑もある。栄氏と飲み歩きするほど仲が良かった?氏が栄氏と別れたのは、スポーツ関連用品を扱う?氏が、自らのビジネスに栄氏や選手を使おうとしたのを栄氏が嫌ったためだという。
 ただ、一方で、なんでもICレコーダーに録音して材料に使う?氏は、栄氏や他のレスリング関係者との付き合いを通じて、「協会の恥部」も知っていた。ほかにも協会にはかねて国際試合などの放映権料、強化費、神社本庁と福田会長の特別な関係など、金銭絡みの問題が指摘される。「?氏発」でなくても、こうした問題が表面化する可能性がある。


 みんれびが仕掛けるお寺の民泊

 アマゾンを通じて僧侶を派遣する「お坊さん便」サービスで仏教界に論争を巻き起こした「みんれび」(本社、東京都品川区、芦沢雅治社長)。社名の由来の「みんなのレビューを集めてサービスに生かす」ベンチャー企業だが、今では葬儀の価格破壊を招くとして存在感を高めている。
 その、みんれびが手掛ける新サービスが、民泊プラットホームの米Airbnbを使ったお寺の民泊だ。みんれびはお坊さん便を通じて、全国各地の寺院の経営がかなり逼迫し、後継ぎがなく廃寺となるケースが頻発していることに着目。お寺に観光客が泊まれるサービスができるのではないかと考えた。お坊さん便で提携している全国1100人の僧侶に投げかけたところ、「ぜひ進めてほしい」という声が寄せられた。「6月から施行される民泊新法を宿坊経営の好機ととらえるお寺さんが少なくない。お寺経営の支援として始める」
 とりわけ期待できそうなのが、欧米からの旅行客による「ちょっと変わった旅行を楽しみたい」という需要だ。東京・世田谷にある妙心寺禅センターには座禅や写経を試してみたいという欧米人観光客が訪れて盛況。数年前から宿坊事業に取り組んだ鳥取県八頭郡にある光澤寺は、鳥取市内から30〜40分もかかる山村にあるものの、欧米の家族連れや若者客らが珍しがって詰めかけ、6月まで予約が一杯という。「精進料理だけでなくイタリアン料理も。お寺にはバーもあります」と同寺。
 こうしたサービスは地方にある古寺古刹に需要があるという。欧米の若いカップルや学生は日本の地方の自然と伝統に触れたがる。一方、そうした地域のお寺は檀家維持さえままならず、経営は厳しい。そんな両者をつなぐサービスになりそうだ。



 タニタが参入するカフェ事業の勝算

 2012年に多角化の目玉として外食ビジネスのタニタ食堂1号店を東京・丸の内にオープンしたタニタが、カフェ事業に参入する。タニタ食堂に比べてカジュアルな雰囲気で、ターゲット層も若年層まで広げていくとしており、22年度にフランチャイズ方式で100店舗にする予定だ。
 タニタは楽天ラグリとコラボレーションし、オーガニック野菜サラダや米麺、もち麦のサラダボウル、?むスムージーなども売りにしているが、より注目されるのが「タニタコーヒー プレミアムブレンド」である。ポリフェノールの1種であるクロロゲン酸を豊富に含み、健康面にも配慮したのがアピールポイントになっている。それゆえ、タニタカフェの販売ではスポーツジムやドラッグストアとのコラボレーションも考えており、テイクアウト専門のスタンド店も検討するとのこと。
 さらに今年度以降、オフィスへのコーヒーサービスもスタートし、オフィス市場での拡大も狙う。ただし、コーヒー市場はあまたのプレーヤーがしのぎを削る激戦マーケットでもある。その中で、クロロゲン酸を武器にしたタニタのコーヒーが戦っていくのはやさしいことではない。健康軸に振ったコーヒーでの勝負、タニタの勝算やいかに──。


 厚労省が頭をかかえる備蓄タミフルの切り替え

 いつになく早い桜の開花とともにインフルエンザの流行は終息に向かったが、そんな折、中外製薬の「タミフル」の後発品(ジェネリック)である沢井製薬の「オセルタミビルカプセル75?サワイ」が承認された。タミフルの後発品の登場で注目されるのが「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」に基づきパンデミックに備えた国家備蓄だ。
 国家備蓄は国と都道府県が資金を出し合って3384万人分(昨年11月現在)のタミフルが確保されている。備蓄では毎年、使用期限を迎えたものから順に廃棄処分され、廃棄分に相当する量のタミフルを新規購入。2019年度には527万人分が使用期限を迎え、買い替えすることになっている。
 だが、タミフル後発品が承認されたことで、国家備蓄を先発品のタミフルから初のジェネリック切り替えになるかどうかがにわかに注目されている。何しろ、政府は医療費抑制のためにジェネリックの使用量を80%に高める目標を掲げているのに、備蓄を先発品のタミフルだけにするわけにはいかない。
 しかもジェネリックの承認に当たっては特許切れ後にメーカーが先発品を他社に譲渡して撤退することが起こっていることから「インフルエンザウイルスに対する耐性化に関する国内外の調査結果・情報について随時、規制当局(政府)に報告すること」という新薬承認と同等の条件が付けられ、沢井製薬のジェネリックはこの条件を満たしていると評価されて承認されているのである。
 厚生労働省は「国家備蓄に後発品を使うかどうかは有効期限と価格次第。今のところ検討中です」と頭を悩ませている。というのも、タミフルの有効期間は10年だが、承認された沢井製薬のジェネリックは3年と短い。
 価格ではタミフルの薬価は309.1円だが、大量購入する備蓄の価格はメーカーとの契約で薬価の53%の164.1円に設定されている。一方、ジェネリックの薬価は六月頃に決まる予定でタミフルより安くなるのは確実だが、10年間の備蓄期間で比較すると、ジェネリックは3回買い替えなければならず、かえって高くついてしまう。
 目下、沢井製薬は有効期間を延長すべく長期保存試験を行っているが、秋までに有効期間延長に成功しないと、国家備蓄に採用されなくなってしまう。


 資産価値の低下を招く? 民泊禁止の利用規則

 マンション管理協会の調べでは、全国の約8割の分譲マンションの管理組合が民泊利用の規則を設け、民泊を容認するマンションは0.3%にすぎない。自治体の姿勢もほぼ同じだ。「だれが入ってくるかわからない」「隣のマンションもそうだから」という。
 だが、そもそも民泊は、京都市、大阪市、東京の都心区などインバウンドに人気で、ホテルの足らないごく一部のエリアでしか儲からない。言外に、管理組合規則により「民泊排除」の規定を奨励する向きもある。このため、誰も泊まった実績のないマンションまでがこぞって「民泊禁止」を打ち出すことがブームになった。
 マンションは多くて3人暮らしの場合が多く、少子高齢化でそのうち、2人、1人暮らしとなる。2020年代は年金が削られそうな中、私有財産のマンション専用部の使い方も説明なく制限されていく。これでは資産価値の劣化につながるが、管理組合から満足な説明はない。
 民泊拒否の動機が「マナーの悪いインバウンドが入ってくる」というものだが、そうしたマンション住民は、同様に中国人などアジアの外国人富裕層がマンションを買う動きにも反発。しかし、「外国人が見向きもしないマンションは値が下がるだけ」(仲介業者)ということで、外国人排除は資産価値を下げるだろう。
 これとは別に、空きが目立つ今日の駐車場も、維持費や固定資産税が上がるのに収入は落ち目で、マンション躯体の大規模修繕費を食っている。というわけで、本当の「買ってはいけないマンション」は、(1)民泊禁止、(2)駐車場多い、(3)外国人が見向きもしない物件というわけだ。
「おもてなし大国」の看板も泣く。ウーバーなどマイカーでの顧客送迎も違法な「白タク」扱いされそう。つまり、企業社会の延長で消費者の資産活用を実質許さない「シェア経済不寛容社会」で、インバウンドに民泊でおもてなしとは大嘘。「表」の入り口がなく(おもてなし)、「裏」(ヤミ民泊)の摘発に資する。
 新法とセットの条例で、民泊禁止マンションの割合が、さらに増加しそうだ。民泊解禁法として期待されていた住宅宿泊事業法を取り巻く環境は、非常に厳しい。「家主や常駐の管理人がいない場合は学校周辺の営業を認めない」(千代田区)ほか、「廃棄物の適正処理・緊急対応で家主が不在の場合は1キロメートル以内に管理者常駐が必要」、「近隣住民に営業に反対する意思がないか確認してもらうようにする」、「身分証を発行して宿泊客に携行させ、貸し手には自治会を求める」といった外国人を侮辱しかねない条例案も出てきた。


 きな臭さが漂う首相主導の放送法改正

 安倍晋三政権が、放送の「政治的公平」などを義務づけた放送法4条の撤廃を検討していることが3月中旬、明らかになった。放送制度改革は安倍総理の肝入りでスタートしたもので、政府の規制改革推進会議が5月にも取りまとめる答申に盛り込む方向で調整を進めている。これまでの議論では、放送とネットで異なる現行規制を一本化し、ネット事業者が放送事業に参入しやすくすることが主眼で(1)放送の大幅な規制緩和、(2)ネットの著作権処理の簡便化、(3)放送のハード・ソフトの分離の徹底──などが検討されてきた。
 最大のポイントは、番組制作にあたって「善良な風俗を害しない」「政治的に公平」「事実を曲げない」などを定めた4条の撤廃。しかし、四条の撤廃は、戦後の放送行政を根底から覆すもので、過激な番組やフェイクニュースが激増し、放送の信頼低下につながりかねない。
 このため、日本民間放送連盟は一報が伝わると、即座に反発。「放送の価値向上に関する検討会」を立ち上げ、理論武装を急ぐことになった。放送事業を所管する野田聖子総務大臣も「放送事業者は放送法の枠組みの中で放送番組を編集し、重要な社会的な役割を果たしてきた」と、頭越しの改革案に不満を隠さなかった。
 元はといえば、森友・加計問題で窮地に立っている安倍総理が自身を応援してくれるネットテレビが増えることへの期待感がきっかけになっているともいわれるだけに、すんなりとはいきそうにないのだが……。


 診療・介護報酬見直しでかかりつけ医育成に注目

 4月からの診療報酬と介護報酬の同時改定で、これまでの病院診療や入院重視から在宅や訪問診療に転換する流れが、一気に加速しそうだ。
 日本の医療は入院期間が長くベッド数が多いのが特徴だった。一昔前には、引き取り手のない高齢者や認知症患者などを長期に入院させる社会的入院が問題になったが、医療と介護の分離により、入院から介護施設入所へと変わっていった。
 今回の改定で金のかかる過剰検査や濃厚医療を抑制する厚労省の方針が具体化されたといえる。たとえば、訪問看護や訪問診療に対してより手厚い報酬を付ける、入退院支援や患者を地域に移行するために診療報酬を手厚くする、地域包括医療やかかりつけの医師、歯科医師、薬剤師をさらに充実させるといったものだ。
 しかし、問題なのは医療を提供する側の体制がまだ整っていないということだ。特に、かかりつけ医の教育や養成は、そう簡単には進まないのが現状だ。かかりつけの医師や歯科医は、これまでの専門医とは違い、1つの分野だけでなく幅広い知識や適切な診断が必要となり、場合によっては、専門医並みの知識が必要とされる。いわばスーパードクターといえる。しかし、これまでの教育や養成は専門医偏重で、各分野でのスーパードクターは教育・養成できるシステムがあるが、総合医を教育・養成するカリキュラムや教えられる医師が少ないのだ。
 そうした中、5年前から歯科総合医の教育を行っている大学がある。明海大学・朝日大学歯学部生涯研修部の生涯研修センターだ。日本初の試みで、これまで9人の歯科総合医認定医が誕生している。かかりつけ歯科医としての幅広い知識や技量を身につけるためのプログラムが組まれ、各方面から注目されている。


 プーチン後継に浮上したジューミン知事って誰?

 4選を果たしたロシアのプーチン大統領は、「憲法改正してまで任期延長はしない」と公言しており、後継者選びが焦点になる。
 いまダークホースとして注目されているのが、モスクワ南部トゥーラ州知事を務めるアレクセイ・ジューミン氏(45)だ。もともとは大統領のボディーガードで、国防次官を経て、2016年から知事を務めている。ロシアの評論家、セルゲイ・ドレンコ氏は「知事抜擢は、後継者として帝王学を学ばせるためだ。私は後継者として、ジューミン氏に賭ける」と述べた。
 ジューミン氏が脚光を浴びたのは、14年のウクライナ危機での活躍だった。キエフが親欧米派デモ隊に占拠され、親露派のヤヌコビッチ大統領が拘束の危機に直面した際、クレムリンの警護隊に属していた同氏は、部隊を指揮して同大統領をロシアに出国させた。
 同氏はその後、ウクライナ領クリミアに移動。ロシア軍特殊部隊の展開を管轄し、クリミアの併合に道を開いた。プーチン大統領はジューミン氏の功績を称えて勲章を授与、国防次官兼将軍に昇格させた。クレムリンの統制下にある国営テレビが昨年になって急にこの時のエピソードを報じたため、後継者候補との憶測が高まった。仮にジューミン大統領となれば、「プーチンなきプーチン路線」になるのは必至だ。
「ジューミン氏はプーチン大統領のイエスマンで、忠誠心が買われているようです。しかし、大統領は40代の若手を何人も地方知事に起用し、競わせているようで、まだまだ不透明です」(モスクワ特派員)
「ジューミン大統領」なら、プーチン氏が退陣後の身の安全は守られるが、経済や外交問題は素人。経歴からすれば大統領の座は重荷となろう。


 イタリア総選挙で極右「同盟」が躍進

 3月4日投票のイタリアの総選挙はポピュリストの「五つ星運動」が躍進したものの、過半数を維持はできず、政権入りを狙う右派連合と、大幅に議席を減らした与党の左派連合との間で、政権樹立に向けた多数派工作が続いている。
 ここまでは予想通りのシナリオだったが、驚きをもって迎えられたのが108議席を増やした「同盟」(旧北部同盟)の大量得票だ。右派連合では元ベルルスコーニ首相が率いる「フォルツァ・イタリア」を上回り、サルビーニ書記長が一躍、首相候補に躍り出た。かつては地方政党だった「北部同盟」とは、趣を異にする全国的な支持を受けており、その過激な反EU(欧州連合)の姿勢が、欧州全体の波乱要因になりかねない情勢だ。
 ザルビーニ書記長は地元ミラノで、「レオンカバッリョ」という組織の極左系の活動家として政治の世界に入り、国内はもとより、フランスのル・ペン氏、オランダのヘルト・ウィルダース氏など国外の極右指導者との連携にも熱心だ。
 EUへの対応では、ユーロからの離脱を表明するなど、従来に増した過激な主張を掲げており、ディマイオ氏率いる「五つ星運動」の政権入りを阻止するため、大敗した中道左派の与党・民主党との連携も模索しているとされるが、対EU政策では相容れない関係だ。
 いずれ、マッタレッラ大統領が組閣に向けて仲介に乗り出すことになりそうだが、どのような組み合わせの政権が誕生しても、EUは英国に次ぐ厄介な問題を抱え込むことだけは間違いがない。


 財政危機のベネズエラが仮想通貨「ペトロ」発行

 財政破綻の危機に瀕したベネズエラ政府は2月20日、独自の仮想通貨「ペトロ」を発行した。国家が仮想通貨を発行したのは世界初である。
 世界最大の埋蔵量を誇る石油を裏付けにするもので、1ペトロの売り出し価格は原油1バレルに相当する60ドル(約6500円)、初日で7億3500万ドル(約790億円)を集めた。ベネズエラ政府は、総額1億ペトロを発行する計画で、すべてを売り切れば60億ドル(約6500億円)を調達する計算となる。
 勢いづいたマドゥロ大統領は、次は金を裏付けにした「ペトロ・ゴールド」を発行すると宣言。しかし、市場の見方は懐疑的で、「ペトロはベネズエラの国債と変わりなく、ほぼ無価値に近い。国家的な詐欺に等しい」(市場関係者)との見方が有力だ。
 なぜベネズエラは国家として仮想通貨の発行に踏み切ったのか。それは米国の経済制裁により国家財政が破綻の危機に瀕しているためだ。昨年のインフレ率は2600%超に及び、IMFの推計では今年のインフレ率は13000%に達するとみられている。法定通貨ボリバルはほぼ紙屑に等しい。このためベネズエラ国民は、持ち運びに窮するボリバル紙幣を使わず、スマホなどの電子決済で生活を維持している状態だ。
 経済制裁を逃れる抜け道を意図した仮想通貨「ペトロ」発行だが、その基盤システムは日本で大量流出事件を起こした「NEM」のシステムが使われているとの情報もある。集まった資金の多くはマネーロンダリング資金だとの見方が強い。


 米国のカルテル事件で東海興業勝訴の「快挙」

 米司法省が「史上最大のカルテル事件」と喧伝している自動車部品カルテル事件で、日本企業が陪審裁判で勝訴するという「快挙」を成し遂げた。
 勝訴したのは、自動車用ゴム部品である車体シールを製造している東海興業(本社・愛知県)で、2016年に価格カルテルに関与した容疑で司法省から起訴されていた。
 自動車部品カルテル事件をめぐっては、これまでに40数社が摘発されており、そのうちのほとんどが日本企業だ。部品の納入先もトヨタやホンダなどの日本企業であることが多く、いわば日本企業同士のカルテルであるのが特徴だ。
 東海興業などごく一部を除けば、摘発された企業は罪を認めて当局の調査に協力する見返りに処罰を軽減してもらえる司法取引に応じている。それでも、これまで司法取引で企業側が支払った罰金額は総額29億ドル(約3080億円)を超えている。
 ほとんどの企業が司法取引を選択したのは、米政府を相手に米国の裁判所で戦えるか大きな不安がつきまとうからだ。しかも、米国の裁判は陪審による裁判で、企業側が法外の賠償金支払いを言い渡されたり、特許訴訟などで日本企業が煮え湯を飲まされたりしてきた経緯もある。
 そんな中で東海興業は日本企業としては初めて、カルテル事件をめぐって裁判で争う道を選択した。社内調査の結果、嫌疑を示す証拠がないと判断したからだ。
 同社の弁護人を務めた米法律事務所バーンズ・アンド・ソーンバーグは、「業界の競争は激しく、カルテル容疑は成立しない」などと主張。また、司法省に協力して駆り出された別の日本企業の証人の証言は信頼性に欠けると訴えた。日本企業同士が米国の法廷で敵味方として応酬したわけだが、東海興業側の一貫した戦術が勝訴もたらしたといえる。
 バーンズ・アンド・ソーンバーグの弁護チームを率いたラリー・マッキー弁護士は、「司法省に敢然と立ち向かった東海興業の経営者は称賛に値する」と述べている。時間と労力、さらに弁護士費用など多大な負担を強いられる上、勝訴が約束されているわけではない陪審裁判を戦い抜く上では、企業トップの強い意志が大前提だ。
 今回の被告企業側の勝訴を受け、米司法省も今後、摘発に慎重になる可能性がある。東海興業の快挙がもたらす影響は大きいとみられる。


 日本郵船と川崎汽船にEUがカルテル制裁金

 欧州連合(EU)欧州委員会はこのほど、日本郵船、川崎汽船など日本や欧州、南米の海運会社5社が自動車輸送で価格カルテルを結んだとして、計3億9500万ユーロ(約513億円)の制裁金を科すと発表した。
 内訳は、日本郵船が1億4180万ユーロ、川崎汽船が3910万ユーロなど。商船三井もカルテルに参加していたが、カルテルの存在を最初に欧州委員会に自主申告し、調査に協力したため、予定されていた2億300万ユーロの制裁金を全額免除された。
 のべ10数社に及ぶ世界の海運大手が関与したとされる海運カルテル事件では、日本の公正取引委員会が2012年9月、日本郵船や川崎汽船、商船三井などに立ち入り検査を実施。自動車を日本から海外に輸送する際の海上運賃を申し合わせて引き上げたり、受注を分け合ったりするなどのカルテル行為を働いた疑いが持たれた。
 調査の結果、公取委は2014年3月、日本郵船や川崎汽船を含む4社に総額227億1800万円の課徴金納付を命じた。商船三井は公取委にも自主申告していたため、処罰を免除された。
 海運カルテル事件は日本だけにとどまらず、米司法省、中国の国家発展改革委員会など各国・地域の当局も相次いで摘発。その結果、これまでに日本郵船に科された金銭的な処罰の総額は400億円を超えた。米国では個人の責任も追及され、同社元幹部1人が服役、別の2人が起訴されている。
 川崎汽船も200億円近い科料を支払った。米国では同社幹部も2人が禁錮刑を受け、別の1人が起訴されている。
 商船三井は調査前に日米欧など主要な当局に自主申告したのが奏功し、唯一、中国で約7億円の制裁金を科されたのみだった。
 日本郵船、商船三井、川崎汽船の3社は2017年、定期コンテナ船事業の統合新会社「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス」を設立した。世界的に貨物需要の伸びが鈍化する中、事業統合によって国際競争力を高めるのが狙いだ。売上高は2兆円規模を想定しているが、それでも定期コンテナ船市場では世界第6位にとどまる。
 川崎汽船の村上英三社長は設立時の記者会見で、「競合した3社による日本唯一のコンテナ船会社として、世界のコンテナ船ビジネスを引っ張る会社にしたい」と語ったが、カルテル事件で負け組となった日本郵船、川崎汽船両社と、勝ち組の商船三井の間に遺恨が残るようだと、世界の大手に伍していくには安定を欠くことになりそうだ。


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