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 総裁3選目指す安倍首相が野田総務相の出馬を期待か

 今年の国内政治で最大の焦点は9月に想定される自民党総裁選だろう。安倍晋三首相(63)の三選出馬が確実視される中、安倍政権中枢から、無派閥の野田聖子総務相(57)の出馬に好意的な声が漏れてくる。安倍首相が無投票で再選された前回2015年の総裁選では、出馬を模索する野田氏が推薦人(国会議員20人)を集められないよう、徹底した「野田潰し」をしてきただけに、大きな変わりようだ。そこには、政治状況の変化がある。
 今回は政権批判を強める石破茂元幹事長(60)の立候補は確実。一方、禅譲路線で「ポスト安倍」をうかがう岸田文雄政調会長(60)の動向に注目が集まるものの、出馬しても勝算は見いだせそうもない。野田、岸田両氏が不出馬なら、「安倍vs.石破」の一騎打ちの可能性が高くなる。
 石破氏率いる石破派は本人を含め20人。これに対し、現時点で首相支持とみられるのは最大派閥の細田派と麻生、二階の3派。国会議員票では石破氏を圧倒しており、順当なら安倍3選だ。ただ、今回の総裁選から党員票の比重が増し、国会議員票(405)と同数になる。仮に三選を果たしても、党員票で石破氏を下回れば、「不人気」が露呈して求心力の低下は必至。実際、前々回12年総裁選では党員票で石破氏の後塵を拝している。こうした状況を考えると、首相にとって、政権批判票が集中する石破氏との一騎打ちは得策とはいえない。政権批判票が分散する三つ巴の戦いのほうが好都合だ。
 そこで想起されるのが、1998年の総裁選。当初は、最大派閥・小渕派会長の小渕恵三氏と派閥主導の候補者選びを批判して同派を離脱した梶山静六氏による一騎打ちの様相だったたが、三塚派の小泉純一郎氏も立候補して、三つ巴の戦いとなった。小渕陣営が「反小渕票」を分散させて選挙後の梶山氏の力をそぐことを狙い、水面下で小泉氏に出馬を働きかけたとされる。
 前回の総裁選時に安倍陣営で「野田潰し」の中心だったのが菅義偉官房長官。その菅氏と野田氏は98年総裁選を梶山陣営で戦った間柄だ。もちろん、岸田派を率いる岸田氏が出馬すれば、安倍、岸田、石破各氏による全面戦争となり、野田氏出馬の余地はなくなる。しかし、岸田氏が出ない場合、首相にとって「野田カード」の価値は高く、水面下で推薦人集めに協力する展開も否定できないというわけだ。


 イージス・アショア導入は電磁波や費用など難問浮上

 防衛省が導入を決めた地上配備型弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」をめぐり、早くも難問が浮上している。人体への影響が懸念されるうえ、レーダーの完成がずれ込むことが確実になったからだ。
 イージス・アショアはイージス艦の迎撃システムを地上に置いたタイプ。艦艇と違って乗員の疲労や潜水艦からの攻撃の心配がない一方で、配備先の住民は強力な電磁波のもとでの生活を余儀なくされる。
 やはり弾道ミサイルを探知するXバンドレーダーが置かれた京都府京丹後市の米軍経ヶ岬通信所の場合、航空機の計器を狂わせるおそれがあり、周辺空域は飛行禁止。レーダーの運用が始まった2014年12月以降、救急患者の搬送に使われるドクターヘリが基地周辺を飛行するため、レーダー波の停止を要求した事例が9回あった。弾道ミサイル迎撃システムは人々の日常生活と無関係ではない証拠となっている。
 イージス・アショアの配備が予定されているのは秋田市と山口県萩市。両市の住民の間では健康被害への不安が高まり、秋田市では労組を中心にした反対運動が起きている。
 小野寺五典防衛相は1月11日、米ハワイ州カウアイ島に置かれたイージス・アショアを見学した。その際、米ミサイル防衛庁のグリーブス長官から「レーダーによる人体や通信機器への影響はまったくない」との説明を受けた。
 しかし、同行した報道陣が撮影したイージス・アショアの動画には電磁波の影響が疑われる雑音が入っていた。甘い言葉で誘い、後に乗り越え難い現実を突き付ける「武器商法」は米政府の得意技だけにグリーブス長官の言葉は信用できそうもない。
 そもそも価格について防衛省は当初、1基約800億円と見積もっていたが、米側からの内示で約1000億円に高騰。過去の例からみて日本側が正式に購入を決めた場合、さらに高くなる可能性は極めて高い。
 また搭載する新型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」に対応した改良版のレーダーは現在、開発中でいつ完成するか不明という。防衛省はイージス・アショアの稼働を二三年度と見込んでいるが、旧バージョンのレーダーで稼働開始となれば、迎撃ミサイルは能力を発揮できないことになる。改良版のレーダーが完成したとしてもバージョンアップの費用は米側の言い値で負担する必要が出てくる。
 時間とカネがかかることが判明してきたことにより、防衛省幹部はイージス・アショア配備の意義づけを「北朝鮮対処」から「中国対処もある」と言葉を変え、防衛省のご都合主義が露わになっている。


 日露平和条約締結は2020年7月か?

 日露間の平和条約交渉は3月のロシア大統領選でのプーチン大統領当選を待って、5月の安倍晋三首相訪露で再開される。安倍首相はプーチン大統領最後の任期に一気に平和条約締結を果たす構えで、2020年7月の調印が目標のようだ。
 注目された16年12月の山口県での首脳会談は、北方領土問題で進展がなく、日本での関心は遠のいた。だが、関係者によれば、プーチン大統領は安倍首相に「次の選挙が私の最後の選挙であり、それまで待ってほしい」と述べていたという。大統領選挙前は領土で柔軟発言はできないという意思の伝達だった。
 プーチン大統領は最後の任期で歴史に名を残すことを狙うとみられ、日露平和条約締結は業績となる。
「安倍首相は今年2度訪露しますが、プーチン大統領の訪日は、今年はありません。しかし、19年は日本主催のG20首脳会議、20年は東京五輪開会式で訪日する。安倍首相は東京五輪直前の首脳会談で一気に平和条約締結を目論んでいるようです」(永田町関係者)
 1956年の日ソ共同宣言は「平和条約締結後の歯舞、色丹引き渡し」を明記しており、平和条約を締結しておけば、二島は自動的に戻ってくるとの思惑があるようだ。
 ただし、平和条約を締結しても、ロシア側は「米軍のプレゼンス」を口実に、二島引き渡しを先送りする恐れもある。領土引き渡しを伴わない平和条約締結だけなら、ロシアの思うツボとなりかねない。


 経団連に求められる安倍政権との一定の距離

 経団連は1月9日、5月末で任期満了を迎える榊原定征会長の後任に、副会長として榊原氏を支えてきた日立製作所の中西宏明会長の起用を内定した。「対抗馬なき本命中の本命」(経団連関係者)の「財界総理」に経済界が寄せる期待は大きいが、半面、「安倍1強政権」と近すぎる距離感は相互利益誘導になりかねない危うさもはらむ。
 中西氏は2010年に日立の社長に就き、09年3月期に日本の製造業で当時、過去最大となった7873億円の最終赤字を出し、どん底に沈んだ日立をV字型回復に導いた。その経営手腕と、製造業出身者など榊原会長が掲げた後継者の条件と合致した点で白羽の矢が立った。
 一方、日立には「副会長には就くが、会長は絶対に引き受けない」(元経団連事務方役員)伝統があり、中西氏の会長受諾に意外感を持った向きもある。4年前の会長人事で当時、同じく日立の会長で最有力候補と目された川村隆氏(現東京電力HD会長)に袖にされた経緯もあった。
 ただ、旧三大財閥系から会長を起用しない“不文律”破りが、住友化学出身の米倉弘昌氏、東レの榊原氏と2代続いた異常事態の中、独立系の日立に落ち着いた点で、経団連内には安堵感も漂う。榊原氏は中西氏の起用を「政府で経済界を代表して活発に活動している。次期会長に最もふさわしい」とした上で、「製造業を先駆的に改革する」と次期会長の条件にかなった点を強調した。
「政治と経済はクルマの両輪」と歴代の経団連会長が強調してきた。「アベノミクス」で掲げる政策と日立の事業と重なる要素は、人工知能(AI)、IoT(モノのインターネット)による第4次産業革命、インフラ輸出、原発稼働などと多い。中西経団連が政権と一定の距離を保ちながら政策提言機関の機能を発揮できるかは今後、大いに注視されよう。


 I I J が3月に開始する“フルMVNO”に期待

 昨年末、楽天が通信キャリア事業への参入計画を明らかにしたが、基地局等への莫大な設備投資が必要なため、事業性に疑問符を投げかける指摘もある。一方、そのニュースに比べて地味だが、意外と賢い方法なのではと目されているのが、インターネットイニシアティブ(以下IIJ)が三月にサービス開始を予定している“フルMVNO (仮想移動体通信) ”だ。
 楽天やIIJはこれまで、通信キャリアから回線を借り受けてユーザーに格安SIMサービスを提供するMVNO業態だった。これは別名、“ライトMVNO”と呼ばれている。それに対してIIJがやろうとしているフルMVNOとは、基地局を自社で持つわけではないものの、通信キャリアとの接続交渉によって加入者管理機能を持つことができ、自社製のSIMカードが発行できるところに特徴がある。それによって、IIJ独自の料金プラン、あるいは海外でのローミングサービスでも独自性が発揮できるのだ。
 目下、MVNOはあまた存在するが、IIJのようにある程度の技術力や資金力がなければフルMVNOは難しく、さりとて楽天のように一気にキャリアへの“昇格”を狙わなくても、疑似キャリア的な事業を開始することができるIIJのやり方はありだ。さらに、IIJではeSIMと呼ばれる、あらかじめ通信機器に自社のSIMカードを組み込んだ事業も視野に入れている。実現すれば、通信機器のみならずクルマや家電製品など、IoT分野での広がりも出てくるだろう。


 小池氏「都政に専念」も国政復帰へ“次の一手”

 自ら率いた希望の党の衆院選大敗で党代表を辞任した小池百合子東京都知事(写真)は「都政にまい進」を宣言。周囲に「私も今年はおとなしくしている」と語って、国政とは距離を置く姿勢を見せている。ただ、わざわざ「今年は」と限定していることから、捲土重来を期して策を練り始めたとの憶測も出ている。
 小池氏にとって痛恨の極みとなった希望の党への民進党合流に関する「排除発言」。その本質は、「保守勢力の再編によって、リベラル派を排除することにあった」(小池氏側近の1人)。このためかつての民進党への先祖返りの様相を見せる希望の党の現状には強い不満を持っている。
 当面は2020年の東京五輪・パラリンピックの準備に専念する一方、小池氏は、「東京五輪・パラリンピックを都知事として迎えるとは決して明言しない」(都政ウォッチャー)。このため、東京五輪の開会直前の7月に都知事1期目の任期を前に都知事を辞任して、「国政復帰を含めた次なる一手に打って出るのではないか」と見る向きも少なくない。
 今後、小池氏が後継都知事候補を見つけて一期目の任期途中に都知事を辞職し、安倍後継レースに参画してくる可能性は否定できない。とりわけ来年夏の参院選前は要注意だ。


 世界で失敗続く水道民営化、東京都があえて進める理由

 その小池百合子都知事は都の下水道施設の運営権の民間事業者への売却検討を始めた。上水道の売却につなげるためと推測されている。しかし、水道の民営化は世界中で失敗続き。例えばボリビアでは政府が水道事業を米系企業に売却した結果水道料金が3倍に上昇し、暴動が起こって死者も出た。3月の都議会でも都議会の自民、公明から共産まで「水に流せない暴挙」と反発が必至だ。
 都の「民営化ビジネス」は、知事が任命した都の顧問で、運輸官僚やマッキンゼー幹部などを務めた上山信一慶大教授の発案。下水道民営化も上山氏が影響力のある都政改革本部の検討事項として昨年末に発表された。確かに、下水道網は人口増加以上に造られ過ぎたが、上水道の水質や価格など「うまい水」は今や東京名物となっているほどだ。当然、上下の水道サービスは切り離しにくいセットのインフラだ。
 都の「下水道売却作戦」はコンセッションや包括委託などの形式を想定。2019年までに民間事業者の意向調査を進め、20〜21年頃から本格的な検討、試行に入る。
 専門家によれば、上下水道事業は「なるべく安い料金でサービスを提供するよう、基本的に儲けないようにしてきた事業」。企業が儲かるモデルに変える時、大きなお金が動くという。水道料金の値上げ、水の消費増、労働者を削減し、非正規雇用に置き換えコストを下げる、さらには公金・税金での売却先への経営補填がコンセッション等の常とう手段だ。
 2大水道メジャーのスエズ社、ヴェオリア社のあるパリでは、1985年から水道料金が2.6倍前後に上昇。再公営化の動きが起きている。英国では、九九年にブレア政権となって水道料が引き下げられ、経営悪化した水道企業の1部は、次々に外国資本に買収・合併された。
 日本では13年、麻生副総理(当時)が「日本の水道を民営化する」と言い、その麻生氏が議長代理、安倍首相が議長を務める産業競争力会議で、竹中平蔵氏が水道の民営化に言及。さらに大阪市は、水道設備を保有しつつ、30年間の事業運営権を新会社に売却するかたちで民営化を進める道筋を示した。海外の失敗事例を分析しているかが気になる。


 もう「箱だけ」しかない兜町再開発に不協和音

 往年のT極東のウォール街”兜町(東京・中央区)の再開発をめぐって関係者間に不協和音が響く。証券会社が集まる日本証券業協会(日証協)と東証や東証直系の平和不動産の間がしっくりいかない。
 日証協は1月、歴史的建物の東京証券会館に入る本部を日本橋の三井不動産が手がける再開発エリアのビルに移すと発表した。実は、東証自身も高速取引などを行う心臓部は、すでに兜町ではなく豊洲市場隣の旧東電系のデータセンターに移設済み。東証や兜町は「もはや箱だけ」といわれる。野村や大和など大手証券の本社も大手町や日本橋に移り、中小の廃業も相次ぐ。
 70周年を超えた平和不動産は東証など各地の取引所が入るビル所有者。東京では兜町や茅場町に10棟以上のビルを持つ。平和が取り組む今回の再開発では国家戦略特区を活用し、容積率を1000%に引き上げたい。ただ、空洞化する兜町の再開発も、テナント誘致などでは経験豊富な大手不動産頼みで足元も見られた。「兜町を守れ」の移転に反対する動きに力はなく、日証協移転で兜町に残る証券界の顔役は東証くらいになる。東証の立会場が電子化で1999年に廃止されて「場立ち」の証券マンが消え、街は賑わいを喪失、再生が急務だった。しかし、大手町、丸の内、日本橋が土日も客が来る活気ある街に変身するまで約20年かかったが、兜町の取り組みは今年から。遅きに失した感は否めまい。


 商工中金再建で火中の栗を拾った関根正裕氏って誰?

 金融界に衝撃が走った。政府が不正融資で存亡の危機に瀕している商工中金の次期トップに、西武ホールディングス(HD)傘下のプリンスホテル常務の関根正裕氏(60)を充てる人事を固めたからだ。
 元第一勧業銀行(現みずほ銀行)出身の関根氏は、同行が総会屋への不正融資で揺れた1997年に危機対応に奔走した伝説上の広報担当者で、高杉良氏の小説『金融腐蝕列島』のモデルとなった改革「4人組」に連なるエリート行員だ。都内の支店長を歴任した後、「4人組」の筆頭格で、西武HD社長に転じていた後藤高志氏に請われて西武HD入りし、「事実上のナンバー2」(関係者)として同社の再上場やプリンスホテルの再建に力を尽くした。
 だが、関根氏招聘までの舞台裏は紆余曲折があった。商工中金を所管する経産省は多方面に打診を重ねたが、火中の栗を拾う者は現れなかった。中でも経産相の指示で設置された「商工中金の在り方検討会」メンバーの一人で三菱商事前副社長の中原秀人氏は本命視され、本誌もその状況を報じた(昨年12月号)。だが、結局は本人に固辞された。苦慮した末に検討会が頼み込んだのが後藤高志社長で、「後藤氏が関根氏を推薦した」(関係者)とみられている。
 ただ、その一方で関根氏の政界人脈が招聘の鍵を握ったとの見方もある。「開成高校出身の関根氏は、自民党の岸田文雄政調会長と高校同期で、ともに野球部で汗を流した級友だ。岸田氏は日本長期信用銀行に、関根氏は第一勧業銀行と大手銀行に就職したのも同じ。また、関根氏は早大雄弁会出身で、政界での知己も少なくない」(関係者)という。
 関根氏は第一勧銀や西武HDのように商工中金を再生させられるか。


 旧村上ファンド系から狙われる国内海運業界

 低迷から脱しきれない海運業界が「物言う株主」の標的になっている。かつて村上ファンドを率いた村上世彰元代表が実質支配するファンドが約200億円を投じて日本郵船株の約五%を買いつけたことがあった。村上氏は2006年にインサイダー事件で罪に問われたが、その後復帰して活動を再開、旧村上ファンドの出身者が設立したエフィッシモ・キャピタル・マネージメントが1000億円もの資金を投資して川崎汽船の4割近い株を買い占め、同社は「経営の自主権はエフィッシモに実質握られている」(大手証券アナリスト)状態に追い込まれている。
 海運業界は中国の高成長など過去の景気拡大局面で中韓勢と競い合うようにコンテナ船やばら積み船を大量に発注し、依然として船舶が過剰な状態になっている。このため、日本郵船、商船三井、川崎汽船の3社で定期コンテナ船事業を統合した。中でも、川崎汽船は主力事業を切り離して、ライバルと設立した新会社に移したが、そのコンテナ新会社への出資比率を日本郵船や商船三井より低く抑えられたため「先行き、どう他社と差別化して事業展開していくか、よく見えない」(同)との指摘が株式市場からあがっている。
 川崎汽船以外の商船三井や日本郵船にしても、買収や経営統合を繰り返して巨大化する中国勢や欧州勢に比べ、規模で大きく見劣りする。
 各社の業績低迷がこのまま続けば、旧村上ファンド系のこの二つのファンドが国内海運業界の再編を仕掛ける可能性もありそうだ。


 フィンテックで銀行店舗が不要になる?

 日銀のマイナス金利政策で経営に打撃を受けている金融界。ITと金融を組み合わせたフィンテックの対応を迫られている中、世間の関心事は銀行の店舗の売却だろう。
 銀行店舗への来訪を不要とする電子取引の進展で、焦点となっているのは一等地に店舗を構えてきた都銀や地銀だ。銀行の貸しビル業は、貸出先への影響から制限されている。そのためフィンテックの余波で人員削減コストをビル売却の利益で埋め合わせる戦略が検討されている。都心の1等地に投資先を絞ってきたヒューリックなどは、手ぐすね引いて支店店舗売却を待っているだろう。
 昨秋、メガバンクが不採算の住宅ローンからの部分撤退や人員や店舗の合理化に踏み込むと表明。ATMによる現金引き出しや両替は実質赤字の銀行が多く、店舗網の縮小を補完するATM網の量的拡大はコンビニに任せてきた。だが、コンビニのATM利用者も減っており、コンビニも削減を今後進める方針だ。
 大手行にとって個人客とのコンサル機能は、銀行の大型店が担っており、法人客は訪問営業が主流。「欧米並みのキャッシュレス社会になれば、ATMの需要がさらに減り、小型店の意味はない」という命題は金融庁にも突き付けられた。メガバンクが買収した消費者金融会社も、融資の機械化は極限まで進んだ無人店舗が主流だ。
 ブロックチェーンやスマートフォンによる決済、仮想通貨決済などの新手の取引・決済技術は銀行以外の勢力が攻め込んできており、銀行にとって「いつ何がブレイクするか分からない」状態だ。それゆえ、巨費がかかるITへの設備投資と余剰となる人員のリストラは欠かせない。アマゾンのようなネットとAI、クラウドを駆使した異業種の動きも不気味だ。
 不動産を寝かせておく余裕のない銀行から店舗不動産の処分は始まる。それも五輪後に想定される不動産不況の前までがベストで、売り時はあと2年余しかない。
 振り返れば、日本の銀行は、欧米のように収益が高い投資銀行業務は苦手で、ひたすら土地を担保にする間接金融で低金利の貸し出し競争を演じてきた。自身では株式保有も収益不動産の所有も制限された銀行だが、「買収先に融資して自行系列の不動産を買わせる」というバブル時代のような禁じ手もやればできないわけではないのだが。


 サイバーテロ対策でイスラエルに急接近

 北朝鮮の暴発リスクが高まる中、「米国の同盟国としての日本にサイバーテロ攻撃が仕掛けられることも皆無ではない」との判断から、複数の日本企業と防衛省が、サイバー攻撃への防御対策のために、この分野では世界でも突出したテクノロジーを持つイスラエルのセキュリティー関連のベンチャー企業群に急接近していることが判明した。
 日本にビジネスチャンスが多いと来日しているイスラエルのベンチャー企業、またそれら企業と日本企業を橋渡しする日本のイスラエルビジネス企業関係者が異口同音に、その事実を語っている。
 これら関係者の話を総合すると、イスラエルでは政府機関が周辺の敵対するアラブ諸国対策のみならず米国の専門機関と連携してサイバーテロを含めたサイバーセキュリティー対策には万全の手を打っているが、それとは別に民間では300ほどの大小さまざまなサイバーセキュリティーに特化したベンチャー企業がある。
 日本は、これらの対策に関して政府機関、民間企業ともかなり以前からイスラエルの関係企業との間で情報収集を含めてコンタクトしていたが、最近の北朝鮮のミサイル打ち上げ、核実験などのデモンストレーションがエスカレートし、しかも米国を含めた複数の国々に巧妙な形でサイバーアタックが行われていることが明らかになり、急速にイスラエルのサイバーセキュリティー専門のベンチャー企業への接近が目立ち始めた。中には技術取得のために企業買収話に発展する動きもあるという。
 関係者は安倍晋三首相が2015年1月にイスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相との首脳会談などで2国間関係強化を確認したことで、「北朝鮮のサイバーテロリスク対策に関して日本の防衛省が内々に協力要請を仰いでいる」と話す。
 東京電力などとの原発メンテナンスで関係がある重工業企業の関係者は「北朝鮮からの日本の原発へのサイバーテロリスクのみならずIoTがらみでもテロリスクには万全の対策が必要なので、イスラエルの専門企業とはさまざまな連携を考えている」という。
 かつて日本企業は中東からの原油確保の必要性からイスラエルと敵対するアラブ諸国からボイコットされるリスクを考え、慎重対応できた。しかし、イスラエル企業関係者は「自動運転技術やヘルスケア、農業技術、データ解析、それに最近のサイバーセキュリティーがらみで、原油などエネルギー以外であれば、イスラエルのベンチャー企業の持つ先端技術を取り込まざるを得ないと現実対応に切り替えつつあるように見える」と述べている。


 ルノー会長のゴーン氏に6月退任説が急浮上

 仏ルノーのカルロス・ゴーン会長兼最高経営責任者(CEO)が退任するとの観測が浮上している。仏紙レゼコー、フィガロなどの現地メディアは昨年末、ヘッドハンティング会社による後継者の選定が始まったと一斉に報じ、ルノー傘下の日産自動車内に動揺が走った。
 ゴーン氏のルノー取締役としての任期は今年6月15日に開かれる株主総会で切れるため、CEO職の去就に注目が集まっている。CEOを交代する場合、株主総会までに後任を選ぶ必要がある。
 ルノーは二月に経営委員会を招集し、候補者を決める予定だ。現地メディアでは後継候補として、ルノーでものづくりを統括するチーフ・コンペティティブ・オフィサー(CCO)のティエリー・ボロレ氏や販売担当責任者のティエリー・コスカス氏、また外部の人材では欧州エアバスのファブリス・ブレジエ最高執行責任者(COO)らの名前が取り沙汰されている。さらに自動車業界では、ライバルのトヨタ自動車のディディエ・ルロワ副社長、仏グループPSAのカルロス・タバレスCEOらの名前も挙がる。
 ここで大きな影響力を持つのがルノーの約20%の株式を持つ仏政府だ。かつてオランド政権は、株式を長期保有する株主の議決権を2倍にできる「フロランジュ法」を盾に、ルノーと日産への経営関与を強めようとした。当時、経済産業デジタル相だったマクロン氏も、議決権が16年4月に28%程度に高まるよう道筋をつけ、ルノーと日産に仏政府が強い影響力を持つ形で経営統合するように求めた。
 これに対しゴーン氏は反発。日産がルノー株を追加取得すれば、ルノーの日産に対する議決権自体がなくなる日本の会社法の仕組みまで選択肢とし、仏政府の介入を遮断することに成功した。
 しかし、そのマクロン氏が大統領に就任。「さすがにゴーン氏は世代交代すべきだ」(仏政府関係者)との声に押される形で、ゴーン氏の退任が濃厚になっている。
 仮に仏政府の意向を受けた人物がトップになると「稼ぎ頭の日産への介入は激しくなり、日産の社長ポストや幹部はフランス人に独占されかねない」(日産幹部)との懸念が高まっている。さらに、日産が傘下に収めた三菱自動車の幹部の胸中も穏やかではない。「ゴーン氏が去れば、日産も三菱自動車も仏政府の言いなりになる」(同)のは必至。ゴーン氏の去就に世界の自動車業界の注目が集まっている。


 MRJの前途にまた暗雲、ライバル2社が大手傘下に

 国産初のジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」の前途に暗雲が垂れこめている。MRJがターゲットに据える小・中型機でライバル関係にある海外2社が、それぞれ米ボーイング、欧エアバスと提携することを決めたからだ。
 昨年10月、小型機大手のボンバルディア(カナダ)の小型ジェット機事業が欧州エアバスの傘下に入ると発表。続いて12月には、米ボーイングと小型旅客機大手のエンブラエル(ブラジル)の提携交渉が明らかになった。いずれの案件も「アメリカ・ファースト」を掲げる米トランプ大統領が、ボーイングなど米国内の航空産業保護のために、カナダ・ボンバルディアから米国に輸入する航空機に高い関税をかけたためだ。これでボンバルディアは欧エアバスを頼り、ボーイングも対抗上、エンブラエルを取り込むことになった。
 これで窮地に追い込まれたのが三菱重工業が手掛けるMRJだ。
「ボンバルディアとエンブラエルがボーイングとエアバス傘下になれば、部品の調達など規模のメリットを生かして、安くて性能のいい小型機が開発される」(同)と見る向きは多く、「MRJはますます窮地に陥る」(同)。
 MRJは、2008年に全日本空輸から最大25機の受注に成功。その後、米スカイウェスト航空(最大200機)、日本航空(32機)などと契約を結び、受注を447機(基本合意含む)に伸ばした。だが、5度にわたる納入延期で、全日空への初納入は当初予定の13年から7年以上遅れ、20年半ばにずれ込む見通し。開発に手間取り、新規受注は16年7月以降ない。
 三菱航空機の水谷久和社長は開発中のジェット旅客機MRJについて、設計見直しを反映した新試験機を2018年後半に完成させる見通しを示した。20年半ばを目指す初号機の納入は「今の見通しでギリギリ」の状況だという。米国で認証をクリアするために、電気配線などの設計を見直し、重量などの制限を克服するためだ。
 MRJはエンブラエルなどのライバルに比べ、二割程度燃費がいいことが特長だ。しかし、初号機が出る20年にはエンブラエルやボンバルディアなどライバルは「ボーイング・エアバスからノウハウを受け、さらに性能のいい小型機を開発してくる」(航空アナリスト)もよう。加えて、開発の長引く延期でMRJを運営する三菱航空機は債務超過に陥っている。「単独での生き残りは極めて難しくなった」(同)。親会社の三菱重工業はどう乗り切るのだろうか。


 全面戦争寸前までいった大正製薬とマツキヨの軋轢

 一般医薬品メーカートップの「大正製薬」とドラッグストア大手の「マツモトキヨシ」が“全面戦争”寸前までいったようだ。
 発端は昨年4月。大正製薬の上原茂社長が営業本部長を兼任することになり、販売促進費の見直しを始めた。すると、マツキヨへの販促費が突出しているのに大正製品の売り上げが他のドラッグストアより少ないことが判明。大正製薬は販売契約の見直しを求めた。
 ところが、その交渉中に起こったのが大正製薬の毛はえ薬「リアップX5」の後発品の登場だ。リアップの成分であるミノキシジルは厚生労働省から医療用医薬品成分として承認されたが、大正製薬は大量に売るため医療用より一般薬として販売したダイレクトOTC薬である。同社にとってはリポビタンDと並ぶ商品に育てる計画だった。
 ところが、薬用シャンプー「スカルプD」や化粧品、サプリメントのネット販売で急成長中の「アンファー」社が毛はえ薬に参入、リアップの後発品「メディカルミノキ5」を販売した。マツキヨはこの後発品をリアップより推奨上位にする販売計画を示すと、後発品の登場に神経を尖らせていた大正製薬が硬化。新製品を供給しない、販促費のストップ、販売員派遣停止など、供給制限に走り、それに対してマツキヨが大正製薬商品を優先販売しないと対抗したことでヒートアップした。
 このT戦争Uがマツキヨのトップに伝わり、松本南海雄会長が「困るのはお客だけではないか。みっともない」と交渉再開を指示する一方、業界活動で親しい大正製薬の上原明会長に連絡し、社長同士で話し合うことになったという。この結果、マツキヨが販促費見直しを受け入れ、戦争は終結と相成った。


 経営悪化が判明した「かぼちゃの馬車」

 狭いながらも個室があって、トイレ、シャワー、洗濯機、キッチンなどは共用だが家賃が安いシェアハウスがここ4〜5年、人気を集めてきた。ブームを牽引したのが、女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」というブランドを持つスマートデイズである。2012年に設立後急速に規模を拡大、17年3月期の売上高は316億円に達し、これまでに600棟以上を販売している。
 そのスマートデイズの経営悪化が表面化したのは昨年10月。「サブリース賃料支払い変更のお知らせ」と題する通知書がオーナーのもとに送られてきた。
 スマートデイズは、オーナーを募って物件を建築、運営を引き受けるサブリース業者である。15年1月の相続税改正によって、相続税支払い対象者が増え、それを見越して金融機関とサブリース業者が資産家などに売り込みをかけたのが、「首都圏でのアパート経営」だった。
 スマートデイズはシェアハウスに特化したが、倍々で伸びた業績は物件過剰につながり、勢い駅から遠い不人気物件が増え、しばらくすると他物件に移る入居者が続出、業績は悪化した。これに追い打ちをかけたのが、金融庁のアパート・マンション向け融資の自粛方針。ブームの先行きを懸念してのことで、スマートデイズの主力銀行は融資を絞るようになった。すべてが逆回転し始め、経営危機が深刻化した。


 GACKTコインに仮想通貨暴落の余波

 歌手で俳優のGACKTが、昨年末、仮想通貨ビジネスに進出すると自身のブログなどで公表、大きな話題を集めた。ネット上では、「GACKTコイン」と“命名”され、将来性が取り沙汰されたが、どのような事業であるかを説明する「ホワイトペーパー」の公表直後から、2つのカベにぶつかっている。1つはビットコインに代表される仮想通貨バブルの崩壊であり、もう1つはSPINDLEプロジェクトと名付けられた事業そのものへの懐疑だ。
 事業を運営するBLACK STAR&COのホームページでは「SPINDLEは暗号通貨のひとつとして発行及び暗号通貨を活用したヘッジファンドプラットフォーム開発・運用を行うプロジェクトになります」とある。つまり、仮想通貨技術を使った資金調達(ICO=イニシャル・コイン・オファリング)の一種であり、投資家は資金を投じてSPDトークンという仮想通貨を得て、SPINDLEというネット上のプラットフォームの中で、仮想通貨ファンドに投資する。
 だが、仮想通貨バブルは過熱感もあって昨年末から崩れ始め、今年に入ると各国が規制強化の方針を打ち出して一挙に暴落した。中でも厳しい管理下に置かれることが確実なのがICOである。「詐欺的調達が多い」というのがその理由だ。
 加えて、SPINDLEプロジェクト自体にも疑義が生まれた。中心メンバーに関東財務局から行政処分を受けた人物がいた。また、仮想通貨交換業者登録の申請をしていない状態での事前調達の「プレセール」を行っているのは、「ブームへの便乗でやり過ぎだ」と、批判された。
 GACKTコインは、内憂と外患を抱えた船出となった。


 民放で放送トラブル続出、広告費3倍返しに悲鳴

 年明け早々から民放各局で放送トラブルが続出し、放送できなくなったCMの補償に悲鳴を上げている。放送業界では、天災・人災を問わず、トラブル発生時の広告費は「3倍返し」が暗黙のルール。各局は、思わぬ出費に頭を抱えている。
 まず1月8日、名古屋の東海テレビで、送信機器の故障で目玉番組の放送中に5分10秒間、約406万世帯で放送が中断した。同10日には、南日本放送など民放4局で午後0時半頃から「停波」が発生、復旧は午後3時過ぎだった。共同で運用する電波の中継局でトラブルが発生したとみられる。15日には、テレビ朝日系列各局で、情報番組「ワイド!スクランブル」が冒頭から2分余りも音声が出なくなった。
 極めつきは、金沢の石川テレビと北陸放送。石川テレビの敷地内にある共用の送信鉄塔を雷が直撃し、約38万世帯でゴールデンタイムの午後7時前から番組が見られなくなった。放送中断は15時間余り、1週間たってもなお数千世帯が番組を視聴できなかったという。親局の送信設備が損傷したため、完全復旧には数カ月かかかるとみられる
 ここで問題になるのが、トラブルで放送できなくなったCMの補償問題。広告主にとって、高額でCM枠を購入したのに、予定通り放送されなければ商機を逃してしまう。それだけに、放送局は「3倍返し」で、お詫びするのが慣例。民放の生命線である広告料収入が消えるどころか支払いが生じるのだから痛い。
 石川テレビの場合、放送途絶が異例の長時間だったうえ、送信鉄塔の管理責任上、北陸放送の補償分も一部負担を求められかねないが、雷を恨むわけにもいかず……。


 日本人宇宙飛行士が探る健康・長寿のヒント

 国際宇宙ステーションに滞在中の日本人宇宙飛行士・金井宣茂氏は現在、多くのミッションをこなしながら、医師としての専門性を生かして「健康長寿のヒントは宇宙にある」というテーマで研究を続けている。
 これまでも宇宙空間での医学的実験はいくつも行われ、最近では「宇宙医学」という言葉も使われる。宇宙では重力がないため骨や筋肉の衰えが早く、加齢に似た体の変化が進む。例えば、骨粗鬆症が10倍のスピードで進み、骨折や尿路結石になりやすくなる。筋力も寝たきり高齢者の2倍の速さで低下が進む。
 この現象をもとに金井宇宙飛行士は「加齢とアンチエイジングを解明するカギ」を探りたいと、打ち上げ前に抱負を述べていた。ここから老化のメカニズムを探り、老化を遅らせることにつなげるわけだ。
 骨量や筋力低下の予防のため、1日1000ミリグラムのカルシウム、ビタミンD錠剤の摂取、栄養バランスのとれた食事、毎日2時間半の運動(自転車やランニングマシンによる有酸素運動と筋萎縮を予防するマシンを使った筋トレ)が宇宙飛行士の日課だ。
 この健康管理方法は、高齢者の骨粗鬆症や寝たきりの原因となる骨折、体力・免疫力低下につながる心肺機能の低下の予防になる。とはいえ、毎日2時間半の有酸素運動や筋トレは、一般人にはハードルが高い。JAXAの研究では、ややきつい速足とゆっくり歩きを繰り返すインターバル速歩を1日9000歩以上実施すると、同様の効果が上がる。宇宙医学には、一般人の健康法への応用が期待されているのだ。


 すでに緊迫が語られている平昌五輪後の北朝鮮問題

 南北対話で北朝鮮の平昌五輪参加が決まったが、北が繰り出した南北対話は、韓国には皮肉にも苦境から抜け出る助け舟の形となった。米国からは信用を失い、中国からも冷遇され、日本とは慰安婦問題での再交渉はできないとされるこの時点で、文在寅大統領が北朝鮮にすり寄り、これを北が利用した帰結だ。
 北の五輪参加にかかる費用は約10億円とみられ、表向きこそ取り繕うものの韓国持ちになるとみられる。北に帰る参加代表団が現金の運び屋になる可能性もある。
 また、懸念されるのは、代表団に紛れた北の工作員が、韓国や日本に潜入してミサイル部品を調達済みの工作員から、密かにミサイルと核弾頭開発の部品を受け取ることだ。
 結果的に、五輪が終わると韓国国内では北に対する不快感と虚脱感が残る可能性が高い。
 一方、中国はこの事態を横目に、4月以降に起きるであろう金正恩斬首作戦について、具体的な対応策を取り始めている。年初には、大規模な軍事演習を行い、また、中朝国境沿いには難民収容所の建設を進めているとみられる。中国の判断は、昨年11月のトランプ訪中の際、米国の軍事行動は避けられないとの確信を持ったこと。また、文大統領が親北というより従北政権で指導力に疑問符が付くため、このままでは北朝鮮に取り込まれてしまうので、その前に北朝鮮トップをすげ替え、次期傀儡政権のもとで核ミサイル開発を中止させて南北は現状のままにしておくのがベターだという情勢判断に傾いたためだといわれる。
 そんな情勢下で昨年末、日本の経済界の一部に「1月9日に米国が北朝鮮攻撃に踏み切る。短期決戦で金正恩体制を瓦解させ、金はロシアに亡命、後継に故金正男の長男・漠率を据える。事態が差し迫っているので、御社の韓国駐在員及び家族を密かに順次帰国させるように」という情報が流れた。出所は首相官邸とされていた。結局、誰かが故意に流した虚偽情報だったが、マティス米国防長官は今年1月になって「北との戦争計画はある」と軍事オプションの存在を認めた。
 米軍の武力行使の作戦は最速で半年、通常は1年かけて周到に準備する。北朝鮮攻撃の前に、まず韓国に住む在韓米軍兵士家族25万人、日本人6万人、その他の国連軍関係者家族数万人の退避作戦が先行する。すでにそのための話し合いは持たれている。ただ「北朝鮮に漏れる」との理由から米側が韓国の出席を拒否し、米、英、仏、日など6カ国だけで極秘裏に会談した。在日米軍横田基地内では、脱出してきた人たちを収容するためのプレハブ住宅の建設も始まっているという話も流されている。


 イラン暴動で気になるアフリカのイスラム過激派

 テロ組織IS(イスラム国)が中東のシリアやイラクなどで崩壊した。そのイスラム過激派はアフリカのリビア、ソマリア、それにシナイ半島などで立て直しを図ると見て米国は中東に代わってアフリカが安全保障上、重要な地域になりつつあるとする。
 中東とアフリカの地図を見れば明らかなようにリビア、シナイ半島、ソマリアは、アフリカ北東部を囲むようにしてあり、アフリカ北部、同北東部それに東部の防衛に重要な役割を果たしている。米国の安全保障上もアフリカの安定は欠かせない。
 そんな中で気になるのがイランでの暴動だ。今のところはイラン政権の存亡に関わるような規模にはなっていない。だが、ロウハニ大統領も手を焼くイスラム過激派のイランでの動きが近隣諸国に与える影響が懸念される。
 アフリカ問題に詳しい米誌「ニューヨーカー」のロービン・ライト記者は米テレビの座談会で「イランでの抗議運動は悪化しているが大丈夫か、それとも政権は崩壊するのか」と聞かれ、「イラン当局は今のところ国民の抗議を封じ込むことに成功している。だが、イラン問題が解決されたわけではない。国民は今後、散発的に抗議運動を展開し、改革を要求していくだろう。問題は言うまでもなく、イラン政権が改革に必要な措置をとれるかどうかだ」と解説。イランでの不満がアフリカのイスラム過激派と結び付き拠点化する危険性を指摘した。
 ロウハニ大統領は国民の負担が増えることを覚悟で国際通貨基金(IMF)や世銀が求めてきた経済改革を行おうとしてきた。だが、補助金の削減は物価高騰の原因となっている。1980年代のイラン・イラク戦争時代からある問題だが、イランが生き残るためには対応しなければならないといわれている。
 ロウハニ大統領は予算の透明化のためイランがシリアやアヤトラ(宗教指導者)にどのくらい援助しているかを明らかにした。また、インターネットの高速化を求め「イランのゴルバチョフ」といわれてもいる。
 とはいえ原油による富にもかかわらず生活水準は高くなく、失業率も高いために不満を持った人は多い。それでもイラン革命前に見られた労働者階級、若者、リベラル、エリートの団結は見られず、まだ反革命運動は起きていない。


 ローマはゴミだらけでも総選挙で「5つ星」躍進か

 イタリアでは昨年末に上下両院が解散、3月4日に総選挙が実施されることになった。ここで躍進が予想されているのが、欧州連合(EU)懐疑派の左派ポピュリスト政党「5つ星運動」だ。直近の支持率は39%とトップ。左右両派の既存政党も過半数を獲得するのは難しい情勢で、選挙後のイタリアの政局を左右する存在になるのは確実だ。
 その五つ星運動が1昨年6月に市長選で勝利した首都ローマだが、美貌の女性市長で話題になったヴィルジニア・ラッジ市長は、選挙公約だったゴミ収集問題への対応に失敗。クリスマスから新年にかけ市内はゴミで溢れ返った。一部住人が抗議のためにゴミの山に放火するなど一時はかなり深刻な事態に陥った。直接的な原因はマフィアの影響力があると噂される公共サービス企業「AMA」のストライキ。さらに、ローマのゴミ処理を引き受けていたエミリア・ロマーニャ州など他の自治体とローマ市当局との関係悪化で、収集したゴミの搬出先がない状況という。
 ローマ市をめぐっては16年12月、ラッジ市長の側近が不動産開発業者からの収賄で逮捕されるという不祥事が起きている。また、昨年末にベネチア広場に設置された大クリスマスツリーが、何らかの不手際でクリスマス前に枯れてしまい、5つ星運動市政を象徴する「禿の大男」などと揶揄された。
 政権担当力の欠如が鮮明になってきている5つ星運動だが、それでも支持率の低下には結びつかない。昨年6月の地方選では惨敗したものの、既存政党に対する有権者の反発は根強く、その後、党勢を挽回。首相候補者として、31歳と若くソフトなイメージのルイジ・ディ・マイオ氏を据えた策略も奏功している。
 一方の既存政党では16年末の選挙改革をめぐる国民投票に失敗、辞任に追い込まれた中道左派・民主党のレンツィ党首が捲土重来を図るが支持率は伸び悩んだままだ。81歳となっても引退しないベルルスコーニ氏率いる中道右派のフォルツァ・イタリアは、「ペット治療費補助」といった露骨なバラマキ公約で有権者の関心を惹き、民主党との大連立も否定しない。
 選挙後、既存政党による政権が発足できない場合、5つ星運動が極右・極左政党と連立を組む可能性もあり、英国のEU離脱などで揺れる欧州政治の新たな火種となりそうだ。


 好景気の米国で利上げ「逆イールド」の懸念も

 米国が利上げに動いた。FRB(米連邦準備理事会)は12月13日のFOMC(公開市場委員会)で、6カ月ぶりに政策金利であるFF翌日物誘導金利の0.25%引き上げを決めた。FRBは政策金利をリーマンショック以降の0.0〜0.25%から、2015年12月、16年12月、17年3月、6月と利上げしており、今回で5回目。新たな水準は1.25〜1.50%となる。
 今年2月に任期満了となり退任するイエレン議長にとって、今回が最後の利上げで、FOMCメンバー9人のうち、ミネアポリス連銀とシカゴ連銀の2人の総裁が利上げに反対票を投じ、7対2の評決での利上げ決定となった。
 最後の記者会見付きFOMCとなったイエレン議長は、「米景気は好調だ。世界経済も同時に成長している。これは何年かぶりのことだ」と評価するとともに、「労働環境は先行きも力強さを保つ」と景気の先行きについて自信をのぞかせた。米国の失業率は4.1%とFRBが完全雇用とみる失業率4.6%を大きく下回っている。労働問題を専門とするイエレン氏にとって、失業率の低下は最大の眼目だったと言っていい。
 だが、FRBが目指す2%の物価上昇率については、相次ぐ利上げにかかわらず1.6%と目標値に達していない。完全雇用下で物価が低迷する「謎」は残されたままとなった。
 そうした中、市場で懸念されているのが、米国での長短金利の逆転、いわゆる「逆イールド」の発生だ。FRBが利上げを決めた12月13日の米債券市場では、長期金利の指標となる10年物国債の利回りが2.34%と前日より0.06%低下した。通常利上げ局面では長期金利も上昇する傾向が高いが、FRBが18年の利上げペースは3回との見方を示したことが「ハト派的」と見られ、債券が買われる展開となった。結果、政策金利(中央値)と長期金利の差は1%を割り込んだままとなっている。
 これを米国債の長短スプレッド(年限2年と10年の利回り差)で見ると、0.5%台にまで縮まっている。イールドカーブは限りなくフラット化している状態だ。市場では、高値水準にある株価への警戒感が台頭したり、利上げに伴い米国債市場へ資金が集中すれば長期金利が一段と低下し、長短金利が逆転する「逆イールド」が発生するのではないかと警戒され始めている。過去の経験則から言えば、「逆イールド」の発生は、景気後退の予兆とみられており、発生後にかなりの確率で不況入りしている。景気好調下の長期金利の低下は「謎」であると同時に大きな懸念材料となっている。


 軍事クーデターから4年、タイ暫定首相の延命策

 2014年5月、タイで貧困層から圧倒的な支持を受けていたタクシン元首相の妹、インラック前首相の政権を打倒した軍事クーデターから間もなく四年。選挙を経ずに軍が掌握した政権が長期化する異常事態が続いている。クーデターを主導し、陸軍司令官から軍事政権を率いる立場に転じたプラユット暫定首相は、今年11月をめどに総選挙を実施する方針を示す一方、続投に向けて新党設立に動くなど、政権維持へ着々と準備を進めている。
 プラユット暫定首相は年頭挨拶で「私はもはや軍人ではない。かつて軍人だった政治家だ」と軍と距離を置く姿勢を強調した。「文民宰相」として政権維持の正統性を国内外に訴えるのが狙いと受け止められている。
 軍政下で昨年施行された新憲法は、非議員でも下院議員500人、上院議員250人の計750人の国会議員の半数の支持を得られれば、首相就任を認めている。上院議員は新憲法施行後、5年間は軍が任命することになっており、軍が首相候補を擁立した場合、下院議員125人の支持があれば、議員にならなくても首相就任は可能だ。
 タイでは01年以降、総選挙のたびにタクシン派が圧勝し、反タクシン派の民主党が続く展開が繰り返されているが、新憲法下では特定の政党が多くの議席を獲得するのは難しく、タクシン派のタイ貢献党が首相を輩出する可能性は低いとみられる。
 プラユット暫定首相は就任直後から、総選挙を早期に実施して民政移管すると表明しているが、総選挙は何度も延期されており、タイ貢献党や識者からは「再び延期し、延命を目指すのでは」との見方も出ている。


 朗報を生かせぬ台湾を包囲する中国の政治力

 台湾は二つの朗報を政治的に生かせず、悔しい思いをしている。
 まず、トランプ大統領の「1つの中国にこだわらない」という発言。ところが蔡英文政権はキョトンとしたまま。中国はキッシンジャーら「中国ロビィ」を使ってトランプの外交路線を「修正」させてしまった。
 次に1月9日、米下院は台湾の政府高官の相互訪問を解禁する「台湾旅行法」を全会一致で可決した。大統領を含む米国の政府関係者が台湾を自由に訪問でき、台湾総統を含む政府関係者の訪米および国務省や国防総省を含む政府高官との対面を解禁するという内容で、蔡英文総統が「国家元首」としてホワイトハウスを訪問することが可能になる。
 さらにトランプ大統領は中国の特許侵害に対して厳重に検証し罰金を科すと表明した。北朝鮮問題が解決すれば、米中対決は不可避となる。
 ところが、今の台湾は中国に前のめり気味。中国に駐在する台湾企業1万数千社、100万人の台湾人が「人質」と化しているほか、台湾の観光業界は中国からのツアー客を歓迎。台湾のメディアは「自由時報」を除けば論調は新華社と変わらない。
 そのうえパナマは台湾と断交し、次はバヌアツ、ナウルなど太平洋の島々が中国側になびく雲行きだ。中国が数十万単位の観光客という薔薇色の計画を提示しつつ、台湾との関係断絶を取引材料としているからだ。
 台湾が望みを託す最強の政治カード・バチカンですら新ローマ法王就任以降、「14億の潜在的信者市場」中国に色目を使う。カソリック信者が多い台湾だが、バチカンの心変わりには大きな懸念を抱いている。


 フジモリ元大統領恩赦が“骨肉の争い”に発展

 長年服役中だったペルーのフジモリ元大統領が昨年暮れ、恩赦で自由の身となったが、これを契機にフジモリ家では長女ケイコ氏と次男ケンジ氏のT骨肉の争いUが起きている。
 ペルー最大野党「フエルサ・ポプラル」(FP)の党首を務めるケイコ氏と、FP有力議員であるケンジ氏との不仲説はすでに伝えられていたが、今回は「修復不可能なところまできた」(ペルー有力紙)という。
 昨年12月、クチンスキ大統領罷免決議案がFP主導で国会に提出された際、ケンジ氏らFPの10人の議員が“造反”し、決議案は成立に必要な票数に届かず否決された。事前にケンジ氏が政権側との間で父親の恩赦と引き換えに同決議案採決で棄権する密約を交わしていたとの説が濃厚で、ケイコ氏らFP指導部は懲罰委員会でケンジ氏ら造反組への厳罰を検討中だ。一方のケンジ氏は「姉は父の恩赦に積極的でなく、側近議員を使って恩赦妨害を企てていた」と真っ向から指導部に挑戦する構え。
 背景にはFPの主導権をめぐる姉弟の思惑の違いがある。ケイコ氏は父親が服役中、FPを政党として育て上げ、過去2回の大統領選に出馬、敗北したものの、今やぺルーで最有力政治家に成長。「FPのリーダーは父親ではなく自分だとの自負がある」(ペルー政界筋)ようだ。
 一方、ケンジ氏は過去2回の国会議員選挙でいずれも最多票を獲得。が、同氏には「姉ほど政治的実績がなく、父親の威光が必要」(同)。だからこそ父親の恩赦を主張したとの説も。「末っ子のケンジを溺愛している」(フジモリ家親戚の話)という父・フジモリ氏次第では、“骨肉の争い”がさらに激化するかもしれない。


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