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 立憲民主が憲法論議を準備、与野党に大きな波紋か

 「九条改憲」に反対するだけでなく、臨時国会の召集期限の設定に加え、首相による衆議院解散権の制約、知る権利の明確化、国民投票の最低投票率、さらには隠し玉も──。立憲民主党(枝野幸男代表)は憲法調査会(会長・山花郁夫衆院議員)で衆参両院の憲法審査会で議論するテーマをまとめ、通常国会に備えている。野党陣営の中心的な役割を果たすとともに、盛りだくさんのテーマで議論に時間をかけて「安倍改憲」の会期中の発議を阻む意図が込められている。それより何より、「野党には対案がない」とする与党側の批判を封じることは確実だ。一方で、護憲派の市民からは「与党が圧倒的な多数を誇る中、改憲論議に乗るのは危険だ」と懸念する声も出ている。
 立憲民主党が特に準備を進めるのは、臨時国会の召集期限、解散権の制約などは新たな提起だ。
 臨時国会については、憲法は衆参のいずれかの議院の総議員の1/4以上が要求すれば、内閣は召集を決定しなければならないと定めている。しかし、召集の期限は決められていない。このため、安倍内閣は先の通常国会で野党の要求を3カ月間も無視した。自民党も「憲法改正草案」で要求から20日以内の召集を掲げており、議論を拒むわけにはいかないだろう。
 首相による衆議院解散権の制約は、「大義なき解散」を防ぐのが目的。憲法には内閣に解散権があるとの明文規定はない。このため、「内閣の助言と承認」が必要とする天皇の国事行為を列記した七条に衆議院の解散が含まれていることが、首相による解散の根拠とされてきた。これに対し、「内閣が恣意的に解散のタイミングを選べるような運用は是正されるべきだ」として、憲法論議を求める。
 知る権利の主張は、南スーダンのPKOに派遣された自衛隊の日報の隠蔽や、森友学園や加計学園の公文書の廃棄を政府が主張したりしていることを踏まえたものだ。「不十分な情報や誤った情報で議論を重ねても、正しい結論は得られない」として、議論を深めたいと提起する。
 そして、隠し玉となるのが、自民党と日本維新の会がこのための改憲を掲げている「高等教育の無償化」だ。これには国際条約を根拠に改憲の必要性を否定する。
 国際人権規約A規約の13条が、高等教育を漸次無償化することが国家の責務と求めているのだ。政府は長くこの条項を留保していたが、2012年9月に留保を撤回すると国連事務総長に通告した。憲法は締結した条約の誠実な順守を求めていることから、立憲民主党は、高等教育の無償化には法的な根拠がすでにあると指摘する。これによって、改憲をめぐる自民党と維新の会の連携にくさびを打つ構えだ。


 日米両国の軍需産業を潤す小野寺防衛相の自作自演?

 防衛省は航空自衛隊の戦闘機に搭載する長射程の巡航ミサイルを導入する関連経費約22億円を2018年度予算案に追加要求した。他国の敵基地攻撃が可能なミサイルで「専守防衛」から逸脱するおそれが高まった。省内では小野寺五典防衛相の「自作自演」との評が広がっている。導入を目指すのは米国製などの三種類のミサイルだ。防衛省は日本に侵攻する敵艦艇や上陸部隊への攻撃を想定しているというが、長射程のため、日本海上空の戦闘機から発射すれば北朝鮮のミサイル基地などを攻撃できる。
 小野寺氏は記者会見で「敵基地攻撃を目的としたものではなく、専守防衛に反するものではない」と強調した。しかし、17年3月、自民党政調会検討チームの中心メンバーとして「敵基地攻撃能力の保有」を文書にまとめ、安倍首相に提出したのは防衛相就任前の小野寺氏である。防衛相となり、早速、自説の実現に踏み込んだというわけだ。
 敵基地攻撃について、政府は「法理上は憲法が認める自衛の範囲」で可能との見解を示してきた。その一方で、攻撃は米軍に任せて自衛隊は守りに徹し、敵基地攻撃能力は保有しないはずだった。
 変化の兆しは小野寺氏の防衛相就任後、17年8月に省議決定した18年度防衛費の概算要求に表れた。あらたに「島しょ防衛用高速滑空弾(ミサイル)」と「島しょ防衛用新対艦誘導弾(ミサイル)」という2種類のミサイルを開発する予算を計上したからだ。「島しょ」とあるものの、どちらも長射程のミサイルであり、敵基地攻撃への転用は難しくない。
 年末になって、この2種の国産開発のミサイルに加え、完成品の輸入を打ち出したのは8月と9月に北朝鮮が北海道上空を横断する経路で長距離弾道ミサイル「火星12」を相次いで打ち上げたことが追い風になった。防衛省はイージス艦のシステムを地上に配備する「イージス・アショア」も予定した18年度防衛費の成立を待つことなく、17年度防衛費の補正予算で導入を前倒しする。
 長射程ミサイル、イージス・アショアとも米国製のため、トランプ米大統領が訪日した際、安倍首相と約束した「米国製武器の追加購入」に合致する。いわゆる「北朝鮮の脅威」は日米両国の軍需産業を潤し、底なしの防衛力強化に直結している。


 自民党が日本郵政Gの全国一律サービスで裏技

 自民党の「郵政事業に関する特命委員会」は、日本郵政が手掛ける全国一律の郵便局サービス、いわゆるユニバーサル・サービスを維持するための交付金制度を創設することを決めた。郵便局の窓口業務を担う日本郵便に対し、グループ内の金融2社(ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険)から徴収した負担金を交付するもので、来年の通常国会に野党の了解も得て議員立法で法案を提出できるよう調整に入る。
 この自民党が検討している交付金制度について、11月22日に記者会見した日本郵政の長門正貢社長は、「ありがたいことであり、国会等の検討を見守りたい」とコメントを寄せた。だが、民間金融機関はこの交付金制度について冷めた見方をしている。
 あるメガバンクの関係者は、「日本郵政グループは毎年、日本郵政グループの内部取引にかかる消費税を免除してもらえるよう要望しているが、財務省がなかなか首を縦に振らない。そのために、自民党がその代替策として考え出した苦肉の策だ」と解説する。
 ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険は日本郵便に窓口業務を委託し、手数料として年間約1兆円を支払っている。それにかかる消費税は年間500億〜600億円と巨額だ。財務省が容易に免除しないのも無理はない。
 そこで考案された今回の交付金制度では、この手数料のうち郵便局の維持管理など固定費に相当する100億〜200億円を負担金として第3者機構に支払い、機構がその負担金を交付することで消費税を回避する仕組みが想定されている。
 この仕組みのミソは、日本郵政グループ内での手数料のやり取りは変えずに、一定割合の消費税が免除されることだ。つまりは、「日本郵便の収益は金融2社の業務委託手数料に大きく依存しており、手数料額を下げるわけにはいかない。そこで第3者機構を迂回させることで消費税を回避する裏技が考案された」(メガバンク幹部)というわけだ。
 当然、消費税額が落ちるツケは国民に回ってくる。
 メガバンクなど民間金融機関は、本業の儲けが大きく落ち込む中、店舗や人員の削減に着手した。しかし、日本郵政グループにその兆しは見えない。法律で過疎地にも店舗を張り、全国一律のサービスを維持するユニバーサル・サービスが義務付けられているためだ。加えて日本郵政の組合は強く、42万人におよぶ職員の削減など口にできるものではない。
 しかし、インターネットが広く普及する中、郵便事業は構造的な不況に喘いでおり、担い手の日本郵便は赤字が続く。交付金制度はユニバーサル・サービスのコストを少しでも軽減してあげようという自民党の親心がなせる業か。


 共産党委員長に責任論と世代交代論が浮上

 共産党の志位和夫委員長(65)が退任か──。
 2017年12月初めに開かれた共産党中央委員会総会を前に、こんなうわさが政界に広がった。これを受けて確認を求める各メディアに対して党幹部らが「あり得ない」「完全な、がせネタ」と全面否定に追われる場面があった。
 共産党は先の衆院選で公示前の21議席から12議席に大きく後退した。12年12月の安倍政権発足以来、16年夏の参院選まで、共産党は安倍政権に批判的な無党派有権者の受け皿となってきた。だが、先の衆院選では立憲民主党がそうした浮動票を吸収した。その結果、共産党が割を食い、厳しい戦いを強いられる形になった。特に議席がゼロになった比例ブロックの北海道や、当選者が4から2に激減した近畿の党員は執行部への不満がくすぶっていた。こうした事情が志位氏退任論の背景にあったようだ。
 中央委員会で志位氏は「我が党の力不足だった」と反省の弁を口にしつつも、「相互支援・相互推薦」を原則とすることを前提に、「安倍政権を打倒し、野党連合政権をつくるために全力を挙げる」と野党共闘路線を続ける考えを強調した。
 党幹部の1人はこう語る。
「旧来の共産党支持層を固めつつ、野党共闘を追求する。こうした2正面作戦を不破哲三前議長(87)は全面的に支持しており、将来の連合政権構想を進める方針は今後も進めていく」
 つまりは、このところの共産党の柔軟路線もすべて不破氏の後押しが推進力になっており、志位委員長の後ろ盾はあるというのだ。
 ただ、このままでも当然、世代交代の時期はやってくるという点でも執行部の見方は一致しているのは事実だ。志位委員長の後継には小池晃書記局長(57)の昇格が有力視される一方で、小池氏の後任には思い切った若返りも取り沙汰される。
 そうした中で、ある党幹部はこうつぶやいた。
「例えば、吉良佳子参院議員(東京選挙区)は35歳。志位委員長が書記局長に就任したのは36歳だったな」
 共産党は当面、志位氏が続投するとしても、遠くない将来、一気に世代交代する可能性がありそうだ。


 新年の継続案件となったスパコン事件の奥深さ

 「スパコンの天才」であることを自負、情報発信を続けてきた齋藤元章・ペジーコンピューティング代表は、経済産業省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に対する詐取事件の主犯として、起訴され被告となっても捜査は継続する。文部科学省傘下の科学技術振興機構(JST)から関連会社が受けているケースにも波及しそうだ。短期間に相次いで補助金が交付されたのは齋藤氏の交友関係が背景にありそうだ。経産省の課長は齋藤氏があげた政治家への忖度を口にしつつ「ウチもそうだが文科省もかなり忖度している」と打ち明ける。
 齋藤氏は新潟大医学部を卒業後、東大大学院に進学、医療系映像分野に関心を寄せて米シリコンバレーで医療系システム会社を起業。東日本大震災を機に日本に戻り、ペジー社をはじめ、数々のスパコン周辺会社を起業した。その異色の経歴が生み出す大胆な発想は、「超絶的な能力を持つスパコンの開発とAI(人工知能)の組み合わせによって、世界の衣食住問題を解決する」という“夢物語”につながり、「ホラ吹き」と切り捨てる人もいれば、「齋藤氏の夢にかけたい」という熱烈な支持者もいた。
 世界のスパコンランキングの常連だったペジー社だが、実用化には程遠く、ビジネスは成り立っていなかった。不足分は出資者をつのり100億円を超える資金を調達、ペジー社をはじめとする「齋藤企業群」に割り振っていた。それでも足らずにNEDOからは累計で約35億円の助成金を受け、JSTからは、52億円の融資を受けていた。
 NEDOでは、虚偽の実績報告書をもとに助成を受け、他の事業に回していたとして立件された。スパコン「暁光」とその周辺技術の開発をJSTに申請、2017年1月に採択された事業で、同じような虚偽申請はなかったか。
 事件発覚のきっかけは脱税容疑だった。齋藤企業群は、ペジー社、エクサスケーラー、電子部品開発のウルトラメモリの3社を中核に10社内外。役割別、事業別に会社を設立したということだが、「超高速のパソコン作り」という共通の夢を実現するのに、なぜ細かく分社しているのか、という疑問の声も上がっていた。
 脱税調査は、そのカラクリを暴くもので、会社間取引という形態を取って経費を水増し、中には架空取引も見受けられたという。18年に入ってからも捜査は継続、特捜部の手によりJSTなど他の助成金詐取に捜査を延長し、もともとの本線の脱税捜査も本格化しそうだ。「スパコンの天才」が復活するのは難しい。


 リニアに着手した特捜部の落とし所

 官公需と民需を両輪に過去最高益の決算を続けるゼネコンに激震が走った。とりあえず東京地検特捜部の対象案件は、リニア中央新幹線の名古屋市内非常口新設工事だが、次に控えているのが独占禁止法違反での摘発。ゼネコン業界は全国レベルで行われている受注調整を見直さざるを得ないことを恐れている。
 JR東海が2016年4月にかけた入札は、名古屋市内の公園跡地に深さ約90メートル、直径約40メートルの横穴を開け、リニアの走る地下トンネルから地上への非常口にするもの。入札参加企業が工法や受注額を提案。それを総合評価のうえ、高評価の企業から個別に協議して決定する。
 今回の疑惑は、大林組幹部がJR東海の担当者から工事費の見積もりなど秘密情報を入手の上、鹿島建設など他の応札企業に受注見送りを要請、公正な入札を妨害した偽計業務妨害罪。JR東海は民間企業なので談合罪は適用されない。不正な手段で他の業者の業務を妨害したという同罪での捜査着手となった。
 10年に発生した大阪地検の証拠改ざん事件以降、地検特捜部は「長い眠り」に入り、政治家や大企業をターゲットにするような独自案件をほとんど手がけていない。それだけに鹿島建設、清水建設、大成建設と並ぶスーパーゼネコンの大林組を、国家事業といえる9兆円のリニア新幹線で狙った効果は大きい。「特捜復活」を告げることになるからだ。
 しかも、特捜部が大林組の先に描いているのは、発注者側が4工区に分けて発注し、スーパーゼネコン4社が受注調整してきた予定調和の世界にメスを入れることだ。
「05年末の『脱談合宣言』以来、受注調整は止まっていたが、11年3月の東日本大震災で『国家の非常時』ということで復活した。1000億円単位の発注を受けられるのはスーパーゼネコンしかなく、遅延なく工事を進めるために役所は調整を望み、四社の副社長クラスで調整して工事を分けた。その非常事態措置が全国に広がり、今に至っている」(ゼネコン幹部)現実へのメスだ。
 リニア中央新幹線で発注された22工区をスーパーゼネコン4社で仲良く分け合っていることに象徴され、被疑者はスーパーゼネコン4社だ。かつての特捜捜査は、火砕流のように業界全体を押し流してきた。「特捜復活が本物なら、またか」という恐れが、ゼネコン疑獄を何度も経験した業界全体に広がっている。


 「ポスト黒田」を占う次期日銀副総裁人事

 4月上旬に5年の任期を迎える黒田東彦総裁の後任人事に俄然注目が集まる。12月5日には黒田総裁が官邸に安倍晋三総理を訪ね、世界経済や日本経済の現状等について意見交換した。会談後に記者団に答えた黒田総裁は、総裁後任人事については「まったく話はなかった」と語ったものの、表情はすこぶる上機嫌。続投の可能性が囁かれている。
 しかし、本田悦朗駐スイス大使と浜田宏一内閣参与が安倍首相と会談したこともあり次期日銀総裁の鞘当ては激化している。「両氏は次期総裁の要件としてリフレ政策の維持・拡大を進言したとみられている。黒田総裁続投の可能性もあるが、超リフレ派の本田氏が就く可能性もある」と大手機関投資家幹部は指摘する。
 だが、有力エコノミストは、その前に2018年3月19日に任期満了を迎える岩田規久男(学者)、中曽宏(日銀プロパー)の二人の副総裁の後任に誰が就くのかが次期総裁を占う試金石となるという。本田氏は通信社のインタビューに応えて「金融緩和と拡張的な財政支出を同時に展開しなければデフレになじんだ人々の物価観を展開することはできない」と強調。デフレ脱却には「(日銀の)人心一新が必要」と指摘。「デフレ脱却後の(金融緩和からの)出口では、金融機関の規制に詳しい副総裁が必要で、結果的に日銀出身者になるのではないか」、「現在の岩田規久男副総裁のように政策の理論的支柱も必要」と示唆した。この本田発言を受け市場では「日銀プロパーの雨宮正佳理事の副総裁昇格と、リフレ政策を提唱している若田部昌澄氏(早稲田大教授)の副総裁起用が念頭にあるのではないか」(エコノミスト)と囁かれている。


 破綻再エネ会社を次々買収、中国資本の存在が火種に?

 再生可能エネルギーの中核をなす太陽光発電事業者の倒産が急増する一方で、中国資本が破綻した再生可能エネルギー会社を安値で買い取るケースが増えており、エネルギー市場の火種となる懸念が出ている。
 大手信用情報機関の東京商工リサーチによると、2017年1〜9月に倒産した太陽光関連事業者は68件にのぼり、過去最高だった16年(1〜12月)の65件を上回った。FIT(固定価格買い取り制度)の買い取り価格が段階的に引き下げられたことに加え、16年5月に再生可能エネルギー特別措置法が改正され、電力会社と系統接続の合意が認可要件となるなど参入条件が厳格化されたことで、事業の採算が悪化する事業者が後を絶たないためだ。
 その一方で、頓挫した太陽光発電事業を中国資本が安値で買い取り、事業を継続する動きが急増している。昨年、太陽光パネル製造で世界一の出荷を記録したジンコソーラーなど中国資本が低コストを武器に日本に上陸、破綻した太陽光事業を次々と買い取っている。中国政府が進める「一帯一路」政策の一環で、日本に一大電力供給基地をつくる構想だ。
 しかし、多くの太陽光発電事業者が事業継続を断念したのは、大手電力会社から送電線網の増設コストの肩代わりを求められたことに加え、送電線の空容量がないため発電しても送電ができないという、事実上の門前払いが原因だった。事業を買い取った中国資本も同じ課題に直面することになるが、果たして同様に門前払いになるのかが注目される。


 楽天など日本企業が次々とアマゾン・エフェクト対策

 本国の米国で既存業界を次々とディスラプト(破壊)してきたインターネット通信販売の巨人、アマゾン・ドット・コムによる攻勢、いわゆる「アマゾン・エフェクト」の脅威が日本市場に忍び寄っている。日本企業もこれに備え、相次ぎ防衛策を打ち出してきた。
 12月14日、楽天の携帯事業者への参入表明は、それを象徴している。(16ページ参照)基地局整備などで2025年までに最大6000億円を調達し、約10年後に約1500万件超の契約を目指す計画は、第4の事業者が大手3社による寡占状態を切り崩す動きとして衝撃的に受け止められた。料金値下げに波及すれば、利用者には大きなメリットになる。
 しかし、単に携帯事業への本格参入という以上に、楽天が通信というインフラにまで踏み込むのは、ネット通販や金融などグループのサービスにつなげる「楽天経済圏」の拡大が狙いであることは明らかだ。
 海外でのネット通販事業は狙い通りに進まず、国内でもネット通販の楽天市場はアマゾンの攻勢で苦戦を強いられており、携帯電話事業本格参入はアマゾン・エフェクトによる脅威に対する危機感の裏返しに映る。カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が12月15日、中堅出版社、主婦の友社(東京都文京区)の買収を発表したのも同様な背景がある。CCCはCD、DVDレンタル事業の苦戦が続くなか、書店事業の強化を進めており、17年3月に徳間書店を買収したのに続き、大日本印刷が保有する主婦の友社の全株式99.9%を取得した。
 アマゾンは書籍のネット通販や電子書籍により、米国で既存の書店事業者を経営危機に追い込んできた。CCCとしては出版社のコンテンツを取り込むことにより、書店事業に独自色を打ち出し、アマゾンとの差別化を図る。
 流通業にしても、押し寄せるアマゾン・エフェクトの脅威は無視できない。セブン&アイ・ホールディングスは提携先のアスクルと11月下旬に生鮮宅配サービス「IYフレッシュ」をスタート、4月からアマゾンジャパンが展開する「アマゾンフレッシュ」に真っ向から対抗する。
 本国の米国で百貨店、スーパーなどの既存小売業を駆逐してきたアマゾンの破壊力を日本企業は十分認識している。その意味で、今後もアマゾン・エフェクト防衛策を打ち出す日本企業が相次ぎそうだ。


 美容クリームに違法使用、医療用保湿剤「ヒルドイド」

 医療用保湿剤「ヒルドイド」が最高の美容クリームとして使われている例が急増している。
 ヒルドイドはアトピー性皮膚炎や魚燐癬に使われる保湿剤だが、皮膚の乾燥症に効果があることから、ひそかに美容クリームとして使われているのだ。最近ではツイッターやSNSで「数万円もする美容クリームより美容効果がある」「皮膚科医の間でも人気のクリーム」などという言葉が躍り、皮膚科医からヒルドイドを処方してもらう方法を教えるサイトも登場しているという。医療機関では皮膚科医が「ヒルドイドを処方してほしい」とねだられたり、医療費が無料の子供を診察させて処方してもらい、母親が使っている例もあるというのだ。
 厚生労働省によれば「患者に処方される量は1度に25グラム入りのチューブで4本程度だが、1度に10本以上が処方されることもあるし、中には1度に51本以上も処方されていた例もある」という。ヒルドイドは年間500億円市場といわれているが、そのうちなんと2割(約100億円)が違法使用されているという。
 最初に問題視したのは健康保険組合連合会で、医療費支払いの研究結果から医療費抑制のために「保険適用から除外すべきだ」あるいは「ヒルドイドだけの単剤処方を厳格化すべきだ」と提起。中医協(中央社会保険医療協議会)や財政制度等審議会で医療費の無駄遣いの代表例に挙げられ、市販する一般医薬品にスイッチすべきだと議論されている。
 こうした動きを心配しているのがアトピー性皮膚炎の患者たちだ。NPO法人の日本アトピー協会は「アトピーはステロイド剤で症状を改善してその状態を維持するのが基本です。治療方法を示すガイドラインでも症状改善後はヒルドイドの単剤処方で維持するように記載している。アトピー皮膚炎や魚燐癬患者にとってはなくてはならない医薬品。不正使用は許せない行為だが、医療用医薬品から除外しないでほしい」と訴える。
 加えて、ヒルドイドは抗がん剤の副作用として起こる皮質欠乏症などの皮膚障害治療にも処方される。ヒルドイドの製薬会社の「マルホ」は「医療用医薬品から外されたら、処方できなくなる医師も困るし、患者も困る。皮膚科医には適正使用を呼び掛ける一方、美容雑誌にヒルドイドの不適切使用の記事を見つけたら注意喚起しているが、ツイッターやSNSのブログには対応のしようがない……」と困惑する。
 厚労省はヒルドイドに処方制限をする方針だが、美容に血道を上げる女性の前には医療用医薬品も形無しだ。


 メガバンクが相次ぎ撤退、儲からない住宅ローン

 メガバンクが住宅ローン事業の縮小・撤退方針にあるという報道が相次ぐが、発信源は金融機関の監督官庁の金融庁の実力長官の周辺という説がある。来年度はメガバンクの住宅ローンの縮小・撤退が相次いで起きる可能性が大きい。
 みずほフィナンシャルグループは2018年度にも一部の地方で新規の住宅ローン業務から撤退する。東北や中国、九州が候補で、今後、撤退エリアを広げる。低採算のサービスをやめ、企業の事業承継などに専念する。また、三菱UFJ信託銀行は18年4月から、住宅ローン事業の新規融資をやめる。日銀のマイナス金利政策で経営環境に厳しさが増すなかで、富裕層向けの資産運用や相続といったより強みを持つ分野に経営資源を傾けるらしい。
 住宅ローンはこれまで長期間にわたって、勤労者の資産を30年程度も「人質」(担保)に取れ、貸倒れ率が低いおいしい事業だった。住宅取得推進策、景気浮揚を目的とする住宅ローン減税など、さまざまな政策的なサポートは銀行への「補助金」だった。住宅ローン市場が頭打ちとなったこの十五年間も、戦後、住宅ローンの主要な貸し手だった住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)が直接融資業務を縮小し、それを民間金融機関が肩代わりし、民間金融機関の住宅ローン残高は拡大を続けた。
 住宅ローンの地方撤退をするみずほ銀行は、親密な地方銀行などに住宅ローンに関する顧客サービスを委託し、自らは資産運用や富裕層向け銀行サービスなど専門性の高い分野にリソースを集中する。金融庁的に言えば、「全く儲からない住宅融資なんてやめてしまえ」となる。メガバンクは、大規模な人員削減を横並びで公表したばかり。店舗網の縮小とセットで打ち出された住宅ローンの撤退なのだ。
 さらに注目すべき事実がある。18年度の税制改正要望として、50平方メートル以下の住宅へのさまざまな恩典措置の導入を求めた。「一定の所得水準に満たない若年層および今後増加が予想される単身・少人数の中堅世帯、高齢者世帯の住宅取得を促進するため」という。
 すでに全国の家の3軒に2軒が2人以下の世帯で、地価と建築費の高騰の中、都会では狭い住宅のニーズは高まるばかり。このため、最低床面積要件を現在の50平方メートルから40平方メートルに引き下げると、景気回復に役立つ上、消費者も住宅ローン減税、住宅取得等資金贈与の非課税特例、登録免許税の特例のほかさまざまな恩典が受けられる。住宅販売促進で細る住宅ローン残の維持にも役立つというが、“ウサギ小屋”がさらに狭くなる。


 宅配ロッカーで再認識、ヤマト運輸の底力

 昨年の時代を象徴する出来事の1つに、宅配会社の「従業員の過重・過酷労働=残業代未払い問題」があった。背景にはネット通販の急拡大があり、経産省の試算では2010年に約7兆7800億円だったネット通販の市場規模は、20年には20兆円水準に達するという。
 問題解決の喫緊の課題は「再配達をどう減らすか」。そして業界トップのヤマトホールディングス(以下、ヤマト運輸)をはじめ、各社が知恵を絞って生み出されたのが、「宅配ロッカー」の駅やスーパー等への配置だ。業者は利用者と約定を交わし「宅配ロッカー」を選定し、暗証番号を割り当てる。利用者は通勤時に宅配物を預け入れることができる。
 そのなかでも存在感を改めて示したのがヤマト運輸で、宅配ロッカーの設置台数の差が明白に。10月末時点で首都圏に約1300台(提携で他業者も使用可)、「今年3月末までに3000台」という目標を掲げている。ヤマト運輸が設置を進める宅配ロッカー「プドーステーション」は、フランスのネオポストショッピングとの共同出資によるパックシティジャパンが運営している。
 とはいえ、短期間のうちにかくもの台数の設置を、どうやって実現しえたのか。実は東電用地という企業の協力が大きい。同社は東京電力グループの1社で、東電の送変電用地の取得・管理を担っている会社だ。同社を知る人は「場所探しのプロ」であり、設置場所が駅やスーパーにとどまらず商店・営業所そしてクリーニング店にまで至っているのは「プロのおかげ」とする。
 適当な場所さえ見つければ商店やクリーニング店にとっても「集客効果」が期待できる。設置料金は「ゼロ円」。プドーステーションが稼働するには家庭用電源1カ所との接続が不可欠で、電力料金数千円程度が支払われるだけである。
 さらにヤマト運輸は「ネット通販で選んだ衣料品・雑貨について、駅ビルで試着できるサービスの実施」を発表した。駅ビルに無料の試着室を設け、自社の配送網で商品を届ける。選定者は仕事帰りなどに手軽に試着し気に入れば購入。アパレルメーカーなど複数社が枠組みに参加。持ち込む運賃と試着室利用料金は彼ら持ち。18年度中に参加企業を約40社に増やし複数の駅ビルで展開するという。「泣かされた」ネット通販の後押しもしようというのだ。ヤマト運輸の面目躍如である。


 スマホ事業参入は楽天の「最後の賭け」

 「三木谷氏が最後の賭けに出た」。楽天が携帯キャリア事業に参入することを受けて、国内のネット系企業の幹部は一斉に口を揃えてこう呟く。アマゾン・ドット・コムの台頭で、本業の通販事業は頭打ちだ。この打開策を三木谷浩史氏は「スマホ事業」に見出そうとしている。
 楽天はクレジットカード部門で約1500万人の会員を抱える。バスケットボールなどのスポーツ中継の動画配信にも力を入れるなど、通販から消費者により近いネット金融やコンテンツ配信事業に活路を見出そうとしている。
 スマホ事業への参入で、こうした金融や動画配信など楽天が抱える通販やクレジットカードの会員などを囲い込み、さらに楽天ポイントを通信料の支払いにも充てるようにできればNTTドコモやKDDI、さらにはソフトバンクに対抗できると踏んでいる。
 ただ、こうした思惑通りに事が運ぶかは不透明だ。キャリア参入に伴う、巨額投資の問題がある。ドコモは2017年3月までの累計で1兆8000億円、KDDIも同期間に約1兆7000億円を4G投資に振り向けている。楽天は25年をめどに最大6000億円の設備投資を発表しているが、「基地局をゼロから建設して、大手と互角に競争するにはリスクが大きい」(大手証券アナリスト)と見る向きは多い。実際、スマホ参入が報道されたあと、楽天の株価は下がり続けている。
 また、端末メーカーとの交渉力も課題だ。後発のソフトバンクが参入できたのも英ボーダフォンやイー・アクセスなど同業の相次ぐ買収に加え、親交のあった故スティーブ・ジョブズ氏との間で米アップルの「iPhone(アイフォン)」を当初は独占的に扱えたからだ。
 アイフォンは世界各国で人気があるため「数千万台規模でないと商談は受けない」(通信関係者)とされる。大量のユーザーを確保するためには、料金面でのメリットやサービス、使い勝手など、「他のキャリアと違う特色を出さなければならない」(同)のは当然の話だ。
 楽天が11月に発表した17年7〜9月期の連結決算は純利益が前年同期比86%増の323億円と好調だった。しかしこれは、クレジットカードなどの金融事業の伸びと出資先の米ライドシェア(相乗り)大手の株式評価益計上によるもの。国内の電子商取引事業の営業利益は193億円と7%減った。本業に陰りが見える中、資本力がモノを言う携帯電話事業を早期に軌道に乗せることができるか注目だ。


 日本も宇宙開発に参入、世論対策に「宇宙安保」

 トランプ大統領は2017年12月、宇宙飛行士を再度月面に送り込む「宇宙開発指示書」に署名。時を同じくして日本政府は国際協力で月面着陸を目指す宇宙開発の「工程表」を決め、中国も宇宙開発に意欲満々。宇宙での覇権争いが過熱する。
 宇宙大国だった米国は財政難を理由に11年に、30年続いたスペースシャトル計画に幕を閉じた。宇宙開発からの撤退は米国衰退の象徴でもあったが、その米国がトランプ大統領に代わって再び宇宙開発に名乗りをあげた。米国の尻に火をつけたのは、20年までに火星に探査機を着陸させる方針を打ち出した中国だ。指示書の署名式でトランプ大統領は「米国は(軍事面を含めて)今後の(宇宙開発の)リーダーであり続ける」と表明し、中国への対抗意識をむき出しにした。だが、肝心の開発費には一切触れていない。
 これを補うのが日本政府だ。安倍首相は宇宙開発戦略本部の会合で、「国際協力という形で日本も月面着陸への参加を検討する」と意欲を示した。そして、「宇宙安全保障の確保も極めて重要だ」と強調した。
 宇宙開発には莫大な資金がかかるが、効果ははっきりしない。そんな中で世論を納得させるため持ち出したのが「宇宙安保」だ。宇宙の覇権を中国に握られたら、日本の安全保障は危機にさらされる。莫大な資金を伴う宇宙開発もこれなら有権者の納得が得やすいという判断だ。新たな日米同盟のスタートにもなる。
 政府に歩調を合わせるかのように民間も宇宙ビジネスで盛り上がる。三菱総合研究所が発起人になって発足させた「フロンティアビジネス研究会」には清水建設や三菱重工業、リクルートテクノロジーズなど多分野の企業が十社参加した。17年末には宇宙開発を目指すベンチャー企業のアイスペース社(袴田武史CEO)が産業革新機構や政策投資銀行から101億円の資金調達を行って世間の注目を集めた。同社は月面着陸を目指す方針を打ち出している。またソフトバンクの孫正義社長は低軌道を周回する小型衛星の打ち上げを目指す「ワンウェブ」に資金拠出を行っており、小型衛星を通信ネットワークとして利用する構想を描いている。
 月にある希少貴金属や水資源、真空空間の利用価値など宇宙空間はビジネスとして魅力があることは確かだが、ビジネスとしてのリスクは大きい。そんな中で出てきた官民巻き込んでの「宇宙安保」。宇宙での覇権争いを名目に莫大な資金を投じた開発競争が始まろうとしている。


 アップルの牙城崩す中国のファーウエイ

 日本では通信キャリアとの結びつきが強いが、海外ではキャリアとの契約によらないSIMフリー端末は日常風景だ。日本でもようやく市場が拡大してきたが、そのトップが中国のファーウエイなのだ。
 2017年12月から売り出した最新端末の「Mate10Pro」は、9万円前後の価格ながら大きな話題になっている。その大きな要因が、世界初となるAI(人工知能)チップが搭載された端末ということ。たとえば写真を撮る際、被写体が人なのか動物なのか、あるいは花なのか建物なのかといった認識を、スマホに内蔵されたAIチップが瞬時に判断してくれ、その被写体に合ったベストなピント合わせなどを自動でしてくれる。
 スマホだけではない。タブレットの分野でも、ファーウエイは日本において、すでにアップルの「iPad」に次ぐ販売ボリュームを持ち、アンドロイドタブレットに限ればもちろん一位である。中国製ということで、日本人の中にはまだまだ抵抗のある人や、端末経由での情報漏洩、情報抜き取り操作を警戒して敬遠する人も少なくない。
 だが、それを言えば米国のグーグルやアマゾン、アップルなども同じだ。折しも、中国の習近平国家主席は、自国の“AI大国”化を目標に掲げている。良し悪しはともあれ、アップルがブランド力にあぐらをかいていると、現在スマホで世界2位の座は、意外と早く転落するかもしれない。


 早くも採算に厳しい目、西武の球場再開発

 西武ホールディングスは2018年から21年春まで足かけ3年で球場内施設や球場周辺を、約180億円をかけて整備し直す。しかし、問題は大改修に見合うリターンがあるかどうかだ。
 西武HDはかつて、投資ファンドのサーベラスに株を買い占められた際、不採算の鉄道路線と球団売却を迫られたが、西武HDの後藤高志社長は「球団の継続保有は西武グループ再生の象徴」として退けた。地道な沿線開発は私鉄経営の王道だが、西武の場合、所沢という球場立地のため、沿線以外から動員するのにはやや不利だ。
 加えて、球場のネーミングライツが「インボイスSEIBUドーム(05〜06年)」、「西武プリンスドーム(15〜17年)」、そして17年から5年契約で「メットライフドーム」となっているものの、長期安定化が実現してない。西武ライオンズは、いまではセ・リーグの阪神タイガースと並んでプロ野球で電鉄系球団の残った2社。それだけに後藤氏も阪神球団首脳との親交があり、事業展開や沿線開発面でも阪急阪神ホールディングスを参考にしているところもある。
 だが、西武も17年は阪神と同じ2位になったとはいえ、全国区の人気で熱狂的なファンを持つ阪神とはファン層も比較にならない。西武は、「埼玉西武ライオンズ」と「埼玉」の文字を冠しているだけに、県外の東京に球場を移すことは難しい。単にアクセスだけを考えれば、西武池袋線練馬駅が最寄りの「としまえん」の敷地に、遊園地やプールなどを撤去してドーム球場が造れれば最高なのだが、そうもいかない。その中でのボールパーク化は、西武ライオンズが“常勝軍団”にならないと採算的には厳しいだろう。


 企業も取り組むが危機が迫るサンゴ礁

 地球の熱帯、亜熱帯海域の豊かな生態系を維持しているサンゴ礁に危機が迫っている。今年六月に開かれた国連海洋法会議では、「海の豊かさを守ろう」というテーマの中で、サンゴ礁の衰退が論議された。
 11月23〜26日に東京・目黒区の東京工業大学・大岡山キャンパスで開かれた「日本サンゴ礁学会・第20回大会」では、アジア・太平洋諸国のサンゴ礁の白化が進み、放置できない状態にあることが明らかになった。しかし、その対策には決め手がないことも浮き彫りとなり、今後に大きな課題を残した。
 同大会のテーマは「危機にあるアジア・太平洋沿岸のサンゴ礁──現状と保全に向けての課題」。各国の専門家が次のような報告をしている。
「日本は赤土流出、栄養塩、オニヒトデの発生などによるサンゴの白化で、サンゴ礁生態系の劣化が深刻。赤土対策に取り組んでいるが、栄養塩対策には手を付けていない」(灘岡和夫・東工大教授)
「フィリピンではサンゴの白化が海洋生態系の維持に深刻な打撃を与えている。アジアの科学者のネットワークを作り、アジアの海を守ることが緊急の課題である」(ペリー・アリニヨ・フィリピン大学教授)
「タイでは未処理排水と観光開発の影響でサンゴ礁が減少している。タイは現在、日本学術振興会などの協力を得てサンゴの回復に向け動き出した」(タマサク・イエミン・ラムカム大学教授)
「パラオのサンゴ礁は陸地からの影響よりも、エルニーニョや巨大台風による被害が多い。日本などの科学的な知見を中心にアジアのネットワーク作りをパラオは期待している」(イムナム・ゴルブ・パラオサンゴ礁センターCEO)
 以上のように、アジア海域でのサンゴ礁の衰退が表面化している点が明らかになった。しかし、その対応策については難題だけに論議するまでには至らなかった。
 一方、この問題に以前から取り組んでいる日本企業がある。全日本空輸「私の青空 海にサンゴ礁」=2004年〜、三菱商事「サンゴ礁保全プロジェクト」=06年〜、住友生命保険「サンゴ礁保全プロジェクト」=08年〜、コーセー「SAVE the BLUE」=09年〜。いずれも沖縄や海外でサンゴの保全、育成のための資金を支出している。このような社会貢献活動はもっと広く知られてよい。


 急激に進むIT医療時代、医療機器の新市場に期待

 集約労働の典型だといわれてきた医療だが、最近はIT化が急激に進み、医療現場が大きく変わろうとしている。
 その代表がAIの導入だ。検査や診断は人間よりもAIのほうがミスが少ないことがわかり、近い将来、医療の多くの分野はAIにとって替わられるともいわれている。今はまだ一部の医療機関で実験的に導入されているだけだが、1〜2年後には確実に普及すると考えられている。
 それ以上に、現実的なのが、ITを使った遠隔医療だ。こちらはすでに保険診療に入っている。医師が不足していたり、検査設備などがない所では、保険で診療ができるようになっている。地方の医師不足や離島などでは、必要不可欠な医療となりつつある。
 来年度からは、遠隔診療の保険点数が上がるため、より多くの医療機関で実施されると思われる。
 市場調査会社の調べでは、遠隔医療市場は最近になり右肩上がりで、2018年度は前年比44%増で約176億円、19年度は前年比60%増の約280億円規模になると試算されている。
 遠隔医療が行われているのは画像診断や病理診断が中心だが、今後は健康管理や診療についても遠隔で行うことが増えそうだ。糖尿病やメタボなどの生活習慣病の場合は、毎日の食事や運動、服薬、血圧や血糖値の測定などの健康管理が重要となるが、それを遠隔医療で管理すれば、医療費の節約にもつながる。
 さらに、厚労省では死亡診断書も遠隔診断で可能になるよう、すでに法整備を進めている。
 これまでは医師が来るまで遺体を冷凍保存して、死亡診断書を書いてもらう必要があった。死亡診断書がないと火葬許可も下りないため、無医村などでは「地元で死ねない」という事態も起こっていた。自分の「死に方」や「死に場所」をどうするかは超高齢社会の大きな課題となっているが、現在の制度のままでは、医師が少ない地方では、住み慣れた地域や自宅で死ぬことすら難しくなる可能性もある。
 その点、遠隔診断は医師がその場にいなくても死亡診断が可能となる。死亡診断書もすぐに作成でき、在宅での看取りも選択しやすくなると期待されている。
 また、IT医療の普及は医療関連産業にとっても新しいビジネス展開の起爆剤として期待されている。医療機器を得意としてきた東芝をはじめとする電機メーカーの不振が相次ぐ中、遠隔医療機器の新市場は技術力の高い日本の電機メーカーにとっても業績浮上の引き金となるかもしれない。


 「重大な放送倫理違反」、MXが断罪された理由

 「放送してはならないものが放送された」──。放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は12月中旬、沖縄の米軍基地反対運動を取り上げた東京MXテレビの情報バラエティー番組「ニュース女子」(2017年1月2日放送)を、「重大な放送倫理違反があった」と断罪した。MXが放送史に残る汚名を返上するのは容易ではない。
 問題となった番組は、米軍ヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)建設に反対する抗議活動を「過激派デモの武闘派集団」と表現し、「参加者が日当を得ている」「現場に出動した救急車を止めようとした」などと報じた。ところが、同委員会は現地調査までしたうえで、放送の核心となる内容に十分な裏付けがなかったと判断した。
「ニュース女子」は、化粧品会社「DHC」が放送枠を買い取って番組を流す「持ち込み番組」。この場合、MXは、放送局として放送前に放送倫理に違反していないか十分な「考査」をすべきだったのに、ほとんどチェックしていなかったことが判明。同委員会は「放送の誇りを守る砦が崩れた」とまで言い切った。
 DHCは、売上高の11.5%を占める同局の最大のスポンサー。だが、当のDHCは、同委員会の聞き取りを拒否したうえ「数々の犯罪や不法行為を行っている集団を内包し、容認している基地反対派の言い分を聞く必要はない」と開き直ったまま。MXが本気で立ち直ろうとするなら、DHCとの関係を絶つしかなさそうだが、そんな「勇気」がMXにあるとは思えない。
 MXがどんなに取り繕おうと、放送メディアとして「(真実を軽視する)ポスト・トゥルース」に加担した事実は消しようがない。


 読売がコンテンツ支援の企業連合YBSを設立

 読売新聞東京本社は12月14日、企業のコンテンツマーケティングを支援する企業連合「YOMIURI BRAND STUDIO」(YBS)を設立し、2018年1月からサービスを始めると発表した。ワン・トゥー・テン・デザイン、エートゥジェイ、グルーバー、ナディアというデジタルコンテンツ制作会社4社と組み、新聞広告の制作や動画を含めたデジタル広告の制作、広告主のオウンドメディア(自社媒体)制作など、企業や自治体向けに幅広くサービスを提供していくとしている。
 安部順一同社執行役員広告局長は、発表会見で「プロジェクションマッピング、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)など最先端の技術を使った体験型のイベントなども手がけていきたいと」と意気込みを語った。
 今回の取り組みの特徴は、記者経験者が原稿を執筆する点。新聞社が持つ取材や記事制作、校閲などの機能を生かし信頼性を担保するとともに、ウェブ制作やウェブデザインといったデジタル分野のサービスについては外部の制作・運営ノウハウや提案力などを活用する。新聞媒体だけでなく、マロニエゲート銀座やよみうりランドといった読売グループの既存施設も有効活用していく方針としている。
 大手新聞社では朝日新聞社が16年、ITベンチャーのサムライトを買収。企業が自ら運営するウェブメディアである「オウンドメディア」の受託などに乗り出している。M&Aによりコンテンツマーケティング事業を自社グループに丸抱えした朝日に比べ、企業連携という外部との協業を選んだ読売は慎重にも映るが、記者経験者がコンテンツ制作に関わるという点では、朝日に先んじているともいえそうだ。


 信憑性を帯びてきた北朝鮮「2月軍事攻撃」説

 米国の外交問題評議会はその分野では最も権威のある機関とされるが、最近出された2018年度の国際情勢に関する最新報告書では、そのトップに米国と北朝鮮の軍事衝突を挙げている。米国はティラーソン国務長官が無条件の対話を呼び掛けているが、トランプ政権内では、最後通告の意味ととらえられている。また、かつてのフセイン政権打倒のためのイラク侵攻の際、国連安保理を利用して国際世論を誘導したように今回も脱北者の女性を証言させ、英国と共同歩調を取りながら、金正恩政権の非道ぶりを訴え、軍事的な先制攻撃やむなしとの世論作りを行っている。北は平昌五輪への参加も留保しているため、今年2月に軍事攻撃を行うのではとの観測が流れている。
 また、先の米韓合同演習では航空兵力による実戦演習が注目されたが、軍事専門家筋は、世界最強の米原子力潜水艦ミシガンが釜山から巡航ミサイル・トマホークを使う可能性を指摘している。
 一方、トランプ大統領は、16人もの女性からセクハラ告発を受け、心理的には追い詰められている。民主党は、先のアラバマ州上院補選でミニトランプといわれた共和党のムーア氏がこのセクハラ疑惑で結局落選したことに味を占め、この手でトランプ大統領を追い詰める構えだ。そうなると一挙に形勢を挽回せざるを得ないトランプ氏が、北朝鮮に対する軍事攻撃を決意する可能性が高くなってきたといえる。


 W杯ロシア大会は突貫工事、頼みは北朝鮮労働者

 2018年6月に開幕するサッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会は各地でスタジアムの突貫工事が進んでいるが、北朝鮮の労働者が過酷な条件下で酷使されている実態が内外のメディアで報じられている。
 サンクトペテルブルクのガスプロム・アリーナの建設では、北朝鮮労働者約200人が働き、1日14時間労働、休日なし。感電や落下などの事故が頻発し、北朝鮮労働者も1人が死亡したという。
「北朝鮮労働者は勤勉で質も高く、ロシアの建設現場で重宝されています。北朝鮮政府が給与の約八割をピンはねし、支給額は1日10ドル(約1100円)以下。コンテナのような施設に集団で収容され、移動の自由もなく、奴隷労働です」(モスクワ特派員)
 スタジアムの過酷な労働に嫌気が差し、現場から逃げ出そうとした北朝鮮労働者が、ロシアの事業主に捕まり、アキレス腱を切られたり、掘削機で足を潰されるという凄惨なリンチを受けていたことも、ノルウェーのサッカー雑誌で告発された。それでも、貴重な外貨を得られるとあって、北朝鮮国内では海外派遣は人気の仕事だ。
 北朝鮮労働者の受け入れは国連安保理の対北朝鮮制裁決議に抵触するが、既存の契約で働いている北朝鮮労働者は対象とならず、抜け道もある。人出不足に悩むロシア建設業者、外貨を獲得したい北朝鮮の思惑が一致し、決議違反の奴隷労働輸出は続きそうだ。


 内弁慶のスー・チー政権、国内の情報統制を強化

 文民政権が誕生してから間もなく二年を迎えるミャンマーで、言論統制が一段と厳しさを増し、アウン・サン・スー・チー国家顧問に対して、市民団体は軍事政権末期よりむしろ後退させたと批判的な見方を強めている。
 ミャンマーでは「電気通信法第66条(d)」を根拠に、ソーシャルメディアへの投稿が規制されてきた。同法の監視を目的に、人権活動家らが2017年5月に設立したNGO「ミャンマー表現の自由」によると、軍事政権下で同条に基づいて摘発された案件は11件。ところが、「スー・チー政権」が発足した16年3月以降は97件に跳ね上がった。大半は名誉棄損が理由。摘発されたジャーナリストや活動家、風刺作家はほとんどの場合、有罪判決を受け、禁錮刑に処された。
 電気通信法は本来、インターネットで他人を誹謗中傷したり、脅迫したりするのを防ぐのが目的だ。しかし、規定が曖昧で、権力者が自分たちに都合がいいように同法を利用している疑いが浮上。「ミャンマー表現の自由」は、電気通信法で摘発された案件の半数以上は、権力者に対する批判を罰しようとして同法が適用されたと分析。
 批判を受け、政府は17年8月に同法を改正したが、「名誉棄損」の定義は不明確なまま。「ミャンマーの表現の自由」は「改正は目に見える効果をもたらさなかった」と批判。第66条の撤廃を要求している。
 同年12月、機密情報を入手したとしてロイター通信のミャンマー人記者2人が逮捕され、2人の手錠をかけられた姿が情報省の公式フェイスブックに掲載された。こうした手法に、西側諸国は「深い懸念」(在ミャンマー米大使館)を示している。


 深刻な国内事情解決でフィリピンが台湾に接近

 北京にお追従外交を繰り返してきた「ドゥテルテハリー(ダーティハリーばりの強引な保安官)」と呼ばれるフィリピンの豪腕大統領が、最近見事なしっぺ返しを行った。
 スカボロー礁を不法占拠する中国海軍の蛮行には目を瞑り、代わりに武器援助、経済援助をせしめてきたドゥテルテ大統領が、目下困惑しているのは国内の2つの深刻な問題。
 第1に麻薬取引マフィアを7000人も銃殺し、容疑者を片っ端から刑務所にぶち込んだが、「人権問題」と欧米から非難され、国内の反対派の「人権無視」抗議集会やデモがマニラの若者らが組織化し、強引な路線に批判が集まっていること。第2にイスラム過激派の「マウテ集団」をミンダナオのマラウィに追い詰め軍を動員して殲滅したが、町は廃墟。難民が40万人。この復興に10億ドルを要するが国際支援が望めない状況だ。
 そこで助け船を台湾に求める仕儀となった。フィリピンの出稼ぎ13万6000人のうち7000人の女性が台湾人と結婚している。両国の貿易は飛躍しており、17年は1477億ドル。台湾からフィリピンへの観光客は24万人である。台湾政府も対フィリピン外交を緩和し、歩み寄りの姿勢をみせている。
 11年3月にフィリピン沿岸警備隊は不法操業の台湾漁民15人を拘束し、あろうことか全員を中国に強制送還した。この措置には台湾が国を挙げて激怒した。13年5月には同沿岸警備艇が台湾漁船に発砲し、1人が死亡した。この事件以後、両国関係は冷え切っていた。
 ところが冒頭の国内事情によりドゥテルテ大統領は平気で台湾との経済関係強化を鮮明にしたため、中国はドゥテルテ大統領にいっぱい食わされたと不快感を示すに到った。


 国際金融機関が危ぶむ中国の債務暴発

 「中国経済は危険。とくに債務の爆発が近い」と国際金融機関の権威筋がそろって警告を発し始めた。
 習近平政権は過去2年間、負債の削減と「ゾンビ」といわれる国有企業改革に努力してきたが、一連の経済政策の間隙を縫って、末端庶民はロレックス、レクサスなどの換物投機を繰り返し、ビットコインは世界シェアの90%を占めている。外貨コントロールも持ち出し制限やら海外企業買収を禁止したりしたが、抜け穴からボロボロと外貨が流出。
 そうしたなか「泥縄式の対策では時間切れとなるだろう」と国際金融機関は中国経済の評価を格下げ。このほどIMF(国際通貨基金)と格付け機関のムーディーズが新しい報告書を発表した。そのなかでムーディーズは「地方政府の負債が膨張しており、判定は『ネガティブ』」とした。つまり投資不的確の烙印を押したのだ。また、IMFも地方政府債務に加えて国有企業の経営非能率、債権の肥大化を挙げ、『金融業の評価プログラム年次報告』で不動産バブルへの深刻な懸念を表明した。
 とくに財政の裏付けのないプロジェクトのリスクと政府の政策との齟齬を問題視。たとえばパオトウ市の地下鉄は歳入が270億元しかないのに総工費305億元という途方もなく野放図な計画だったため工事が中断している。そして経済成長のスピード減速リスクを指摘した。
 2017年の第3四半期までに地方政府の債務は「融資平台」(第3セクター)の破綻、地方債の起債ラッシュで、前年比21%増の7兆1900万ドル(812兆円)に膨らんでおり、危機水域を超えている。
 ところが習近平国家主席は「国有企業の巨大化、銀行融資の強化」と謳っており、現実を無視した強気な政策は危険すぎるとIMFなどは見ている。天津市の負債だけでも年間の歳入の7倍という恐るべき数字を前にしても、地方政府幹部は、経済成長率を高めることを優先し、矛盾に気がつかないようだ。


 経済立て直しは二の次、世界進出進める中国

 ここへきて習近平政権はラオスへの進出に異常ともいえる精力を注いでいる。2017年秋の人民代表大会終了後、習国家主席が最初に訪問した外国はラオス。今、中国人観光客が大挙してラオスを訪れており、17年上半期だけでも40万人に上っている。さらに中国政府が提供する奨学金は有名で、中国大陸に在籍する東南アジアからの留学生はラオスからのそれがトップになっている。
 また、中国人技術者が多数この国に「技術支援」で派遣されており、上海から派遣された100人以上の技術者がインターネット網建設に従事しており、学校教師なども多数送られている。ラオス・中国が鉄道でつながったため、これからも中国の進出は拡大するだろう。
「一帯一路」でパキスタン経由インド洋進出を図る中国はインドシナ半島へも密かに進出し、その一環としてラオス各地で中国援助の施設や道路が建設されているのだ。ラオスはミャンマー・タイ・ベトナム・カンボジアに隣接する地政学上の要の地であり、メコン川によってインドシナ半島各国と強く結びついている。ここを押さえればインドシナ半島と南シナ海を左右できる。海外には注目されないまま中国のラオス浸透は確実に進んでいる。
 中国がもう1つ外交攻勢をかけているのが、17年6月に外交関係を樹立したパナマだ。その象徴が18年3月に就航するパナマ-北京空路の開設である。北京-ヒューストン(米国)航路を延長するもので、週2便飛ぶ。さらに、首都パナマシティーからコスタリカ国境のダビト市までの400キロメートル鉄道建設にも全面協力することで合意している。
 11月に中国を訪れたパレラ大統領との間では新たな合意がなされたもようだ。パナマ政府が中国人観光客への大幅なビザ緩和を打ち出したことで、かなりの進展があったとみられており、中国のラテンアメリカ進出基地になろうとしている。
 経済的苦境にあったパナマは便宜置籍船設置で知られるが、最近は減少している。経済特区に進出した外資も撤退しており、経済状況は悪化。人口400万人なのに、対外債務は220億ドルになっている。これに目を付けた習近平政権だけに、これから多くの動きがあるだろう。とくに注目されるのは太平洋岸のコロン経済特区に中国企業の大規模な進出を認めたことで、ここに「中国海軍基地」ができるのではなないかとみられている。となれば将来、日本にも大きな影響が出る。
 そして、中国の世界進出はアフリカにも進んでいる。ジンバブエのムガベ大統領の失脚も簡単に言えば中国のご機嫌を損ねたからだ。グレース・ムガベ前大統領夫人は中国人民大学卒業であり、新政権にも多くの中国留学組がいる。長年にわたる中国の工作がここにきて実を結んだのであり、今、同国には中国人ビジネスマンが多数いる。
 ムガベ大統領追放劇の数日前には北京大学や南京の軍学院に留学経験のあるキブンカ国軍最高司令官が北京を訪問している。北京のアフリカへの浸透も想像以上だ。


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