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 安倍首相「改憲慎重」に隠されたしたたかさ

 衆院選での与党圧勝にもかかわらず、安倍晋三首相が憲法改正への慎重姿勢を崩さない。11月17日の所信表明演説で首相が改憲に触れたのは最終部分だったうえ、表現も控えめだった。与野党の枠を超えた政策論議を呼び掛ける文脈の中で「共に、困難な課題に答えを出していく。そうした努力で、憲法改正の議論も前に進む」と指摘したにとどまり、具体論には踏み込まなかった。
 首相は周辺に、今年5月に2020年の改正憲法施行を目指す考えを自ら示したことを引き合いに、「私が停滞していた改憲論議を進めるきっかけを作った。後は各党の協議に任せればいい」「多数派形成には時間がかかる。拙速はいけない」と語った。
 そうした中、自民党は改憲重点項目として、憲法9条への自衛隊明記、緊急事態条項創設など4項目を提起。このうちまずは比較的各党の合意が得やすいとみられる参院の合区解消を優先して論議を進めたい考えだ。
 ただ、首相にとって「1丁目1番地」はあくまで9条改正だが、これには公明党が拒否反応を示している。また、自民党内でもライバルの石破茂・元幹事長が九条への自衛隊明記には異論を唱えている。加えて森友・加計問題による自身への逆風は依然やんでおらず、「安倍カラーの象徴である改憲路線は封印が得策」(自民党長老)との判断もある。
 もっとも、首相が9条改正に後ろ向きになったと考えるのは早計だ。事実、首相は「新執行部は玉木雄一郎代表をはじめ、長島昭久氏(政調会長)や細野豪志氏(憲法調査会長)はみんな9条改正の推進派なんだよね」と、希望の党を改憲勢力として期待しているフシがある。
 首相が小池路線を受け継ぐ玉木執行部との連携を模索する可能性は十分ある。首相の慎重姿勢の裏に、したたかな戦略が潜んでいるのか。


 対露外交「進展ナシ」で官邸に対中シフト派台頭

 安倍晋三首相とプーチン・ロシア大統領の20回目の顔合わせとなったベトナム・ダナンでの日露首脳会談(11月10日)は、共同経済活動の協議継続や元島民の墓参簡素化を決めただけで、焦点の平和条約交渉に進展はなかった。
 プーチン大統領は記者会見で、「(平和条約問題は)誰が政権の座にあるかに左右されない。安倍かプーチンかといったことは重要ではない。歴史的な関係発展に向け、長期的に取り組む姿勢が重要だ」と述べ、安倍首相が2人の任期中の決着を図った「私とウラジーミルの手で……」という発言を否定した。
 首相官邸内には、この際日中関係改善を先に進めるべきだという「中国シフト」派が台頭、「ロシア・シフト」派との暗闘が起こりつつある。
「中国シフト」派は国家安全保障局の谷内正太郎事務局長らで、安倍首相の外遊で、ベトナムで習近平国家主席、フィリピンで李克強首相との連続会談を設定。来年、首脳相互訪問を実現させ、一気に日中関係を軌道に乗せようとしている。
 これに対し、対露外交を主導してきた経済産業省出身の今井尚哉首相秘書官らは記者団に、「総理とプーチン大統領の密室会談を通じて、いずれサプライズが出る」と述べ、現在の交渉継続を主張している。
 だが、プーチン大統領の対日発言は硬化する一方。来年3月のロシア大統領選を経て、5月の就任式までは日露首脳交渉は凍結される。官邸も当面は「日中友好外交」に邁進しそうだ。


 米国製武器のセールスはとんでもない“悪徳商法”

 11月に初来日したトランプ米大統領の米国製武器の購入要求に対し、「米国からさらに購入していくことになる」と安倍首相は追加購入を約束したが、日本の防衛省はすでに米政府から直接購入する有償対外軍事援助(FMS)方式による輸入を激増させている。米政府が米国内の軍需産業から武器を買い上げ、各国政府に売って利益を得る方式だ。
 防衛省のFMSによる購入額は、2007〜11年度までの5年間は計3258億円だったが、12〜16年度までの5年間は合計1兆3717億円と4倍増。まとめ買いで防衛費を節約するためだが、従来は商社輸出を認めていた武器類を、米政府の財政赤字削減のためFMS方式に変えたことも一因だ。
 ところが、このFMSはとんでもない“悪徳商法”。(1)契約価格、納期は見積もりであり、米政府はこれらに拘束されない、(2)代金は前払い、(3)米政府は自国の国益により一方的に契約解除できる、という不公平な条件を提示し、受け入れる国にのみ武器を提供する一方的なものだ。
 当然ながら問題は噴出している。たとえば滞空型無人機「グローバルホーク」について、米政府は3機で474億円と約束していたが、今年4月になって約630億円に値上げすると通告、代替できる無人機はなく、防衛省は言い分を呑んだ。ほかにも「カネを払ったのに武器が届かない」「最初から壊れていた」などの問題が指摘されている。防衛省幹部は「限られた予算の中で無駄遣いはできない」と、米政府からの購入圧力に息を潜めている。


 新国税庁長官の答弁で思わぬ難問抱える職員

 確定申告の時に納税者が一斉に反乱を起こすのではないか──。
 国税庁の長官に就いた佐川宣寿氏の財務省理財局長時代の国会答弁のために、税務署員が苦境に立たされ、心配を募らせている。佐川氏が森友学園への国有地払い下げに関する記録を「廃棄した」「復元できない」と言い募ってきたため、提出資料の不備を指摘された納税者から「おたくのトップは認められるのに」と反撃されているというのだ。
 同庁の職員からなる「全国税労働組合」(国交労連加盟)は佐川氏らとの団体交渉に臨み、苦労を強いられている職員への謝罪を求め、納税者からの抗議の実情も明らかにした。団体交渉の模様を、同労組の機関紙「全国税」の10月25日号が次のように伝えている。
 労組の代表が「理財局長時代の森友事件に関わる言動で、職員は批判の矢面に立たされている」と指摘したうえで、「現場で苦悩する職員へ、何らかの言葉を発するべきだ」と求めても、佐川氏は「職員の皆さんが高い使命感を持って職務に精励していることに感謝申し上げる」としながらも、「事務の簡素化、効率化に努めながら、明るく風通しのよい職場をつくりたい」とするだけ。
 税務署員が心配するのは、確定申告の際に個人事業者に書類の不備を指摘しても、「うちも財務省と同じで、記録が自動的に消去され、復元できないシステムを使っているのですよ」などと言い逃れされてしまう事態。しかし、決して杞憂ではないようだ。
 納税者からの抗議の実例が、団体交渉で示されている。「法定外資料を提出した納税者から、『来年からは提出しない。信用できないから』と言われた」「消費税の申告の調査で、仕入税額の領収書がないことを指摘したら、『おたくのトップは(資料を提出しなくても)認められるのに』と言われた」などである。
 森友学園への国有地払い下げでは、ゴミの撤去費用として約8億円が値引きされた。しかし、撤去費用は2億円から4億円程度で済み、値引き額は最大で約6億円も過大だったと会計検査院が試算したと報じられている。この試算は財務省の判断の妥当性を疑わせるもので、納税者の反発を勢いづかせるに違いない。
 確定申告の時期は通常国会と重なる。安倍晋三首相と自民、公明両党は臨時国会の開会を拒み続けてきたが、進行中の問題として国会で取り上げられることも十分にあり得る。


 西室氏の独断だった日本郵政のトール社買収

 会計検査院は11月8日に「平成28年度決算検査報告」を内閣府に送付して公表したが、この中で日本郵政が買収した豪大手物流企業トール・ホールディングス(トール社)について、「経営会議を開催せずに執行役社長が決裁を行い取締役会に提案された」との驚くべき内実が暴露されている。トール社買収は当時の西室泰三社長(故人)のほぼ独断で決定されていたことになる。
 日本郵政および傘下の日本郵便は、国際的な物流事業の強化策として2015年2月にトール社を6093億円で買収することを決め、同年5月に子会社化した。しかし、その後、買収したトール社の業況悪化に伴い、日本郵政は16年度連結決算でのれん等の減損損失約4000億円を計上、07年の民営化以来初の最終赤字に転落した。
 日本郵政はトール社買収にあたり、「オーストラリア国内で企業間物流を中心に強固な基盤を有していること、および国際的な事業運営における豊富な知見と経験を有していること」を強みとして挙げる一方、「長年合併を繰り返してきたことにより、顧客に対するネットワークビジネスの組織体制と機能連携が弱いこと、物流情報システム及び物流モデルが、子会社ごとに独自に整備されているため、それらの全体最適化が未整備になっていること」が弱みと指摘していた。その上で、買収にあたりメインシナリオと悲観シナリオを作成したのである。
 しかし、実際の16年度実績は、悲観シナリオの将来予測と比較して売上高が九割程度であったものの、営業利益は二割以下となっており予測を大きく下回った。日本郵政が指摘した強みは発揮されず、弱みのみが顕在化した格好となった。
 実はトール社の業績は日本郵政が買収する前の12年から営業利益が年々減少し、16年度は13年度の15.5%まで落ち込んでいた。まさにバラ色のシナリオを描いた高値掴みだったわけだ。
 さらに検査院の報告書は驚愕の事実をあぶり出している。トール社買収の決定は、経営会議を開催せずに執行役社長が決裁を行い、取締役会に提案されたこと。しかも取締役会は、事前に書面による同意の意思表示を得たことで代えられていたという事実だ。いわば執行役社長の独断に近い形で決裁がなされていたことになる。
 取締役会で一度も実際の議論がないまま6000億円超もの投資が決められたことに、会計検査院は「重要事項を決定するための会議等の場を設けた上で判断する必要があったと思料される」と指摘している。故西室泰三前社長の責任が問われそうだ。


 官邸主導の民間頼み、教育無償化に批判百出

 安倍晋三首相の肝いりの「人づくり革命」を議論する「人生100年時代構想会議」で、安部首相が教育無償化の財源として産業界に求めた3000億円規模の拠出をめぐり、波紋が広がっている。
 教育無償化と待機児童対策などに向けて、年内にもまとめる2兆円規模の政策の財源のうち、2019年10月の消費税増税分から手当てする1兆7000億円で不足する分を、10月27日の会議で「産業界においても3000億円程度の拠出をお願いしたい」と異例の要求を行ったからだ。
 しかし、安倍首相の唐突な発言には与党・自民党内にも反発があり、小泉進次郎筆頭副幹事長が「党で全く議論していない」と安倍政権による不透明な意思決定過程を批判。さらに、3000億円の負担を「従業員が活用できるなら応分の協力はすべき」とあっさり容認した経団連の榊原定征会長をも、「経済界は政治の下請けか」と切り捨てた。
 労使双方が負担する「こども保険」を提案してきた小泉氏には、企業からだけの拠出となる3000億円の財源には、官邸主導の強引な決定の仕方と併せて納得はいかない。
 一方、経済界も決して一枚岩とはいえない。全国の中小企業を束ねる日本商工会議所の三村明夫会頭は11月2日の記者会見で「いろいろな疑問があり、中身がよく分からない。もっとオープンな議論が必要だ」「われわれは要請を受けていない」と不快感すら漂わせた。
 教育無償化の議論は、消費増税の使途について民進党の前原誠司前代表が代表就任時に教育無償化の財源に充てることを提言し、その後、衆院解散を機に安倍首相が公約に掲げ、「トンビが油揚げをかっさらうかのような考え方」(前原氏)と批判したいわく付きの案件でもある。
 教育無償化には表立って反対する意見も少なく、それだけに安倍政権が急ごしらえする教育無償化・待機児童対策などの二兆円規模の政策は「究極のポピュリズム(大衆迎合主義)」との指摘もある。
 批判を受け、当初は無償化の対象外としてきた認可外の保育園も対象に含める方向に切り替わったこともそれを裏付けている。
 衆院選で大勝した安倍首相は、「3%の賃上げ」と具体的数値を掲げ経済界に賃上げを求めるなど、「謙虚な姿勢」を表明した選挙直後とは裏腹に「安倍一強」の独断が際立つ。3000億円の拠出、賃上げによるデフレ脱却も民間に頼るしかない安倍政権の無策ぶりを露呈している。


 ついに大手も赤字転落へ、旅行業界の生き残り模索

 史上最多の九万人が被害を受けた格安旅行会社、てるみクラブに象徴されるように、中堅中小の旅行会社の経営破綻が相次いでいる。東京商工リサーチは2016六年度に休廃業や解散に追い込まれた国内の旅行会社は80社と、15年度より16%増えたとする調査結果をまとめた。
 資本金が1億円以上の会社はなく、中小零細が大半だった。熊本地震や台風による国内宿泊旅行の低迷、テロによる欧州旅行の不振に加え、楽天トラベルや米エクスペディアなど世界的なインターネット専業の旅行会社が利用者を伸ばしていることも響いているという。
 ただ、こうしたネット旅行会社の台頭による店舗型の旅行会社の苦境は大手にも及び始めた。
 中でもJTBに次ぐ業界2位の、近畿日本ツーリストが前身のKNT-CTホールディングスは厳しい。2017年3月期の連結純利益は29億円で比較可能な15年12月期との対比で53.6%減、さらに最終損益は13億円の赤字だ。
 苦境打開のため。6月に親会社の近畿日本鉄道(現近鉄グループホールディングス)元常務の丸山隆司顧問を社長に引き上げる人事を発表したが、ネット系の勢いを覆すまでには至っていない。
 同様に、JR西日本を親会社に持つ日本旅行も厳しい。16年12月期は黒字は確保したものの、「今期は減益は確実で、下手をすると赤字に転落する」(大手証券アナリスト)状態だ。
 荒波を乗り切るため、この2社は経営統合を検討している。「最大手のJTBも苦戦するが、旅行取扱高で3倍もの差があるJTBと組んだ場合、呑み込まれてしまう」(KNT幹部)ため、同じ関西に拠点を置く日本旅行と組もうというのだ。
 しかし、この両社は過去に2回、経営統合を検討しながら「主導権争いで破談になった」(同)歴史がある。リーマンショックの翌年の09年、両社は3期連続で赤字に。打開のため、2度目となる経営統合を探ったが、債務超過になった近畿日本ツーリスト(当時)に対し、統合したら共倒れになることを懸念した日本旅行が身をひいた。
 その後、KNTはクラブツーリズムを統合するなどネット勢への対策を練るが、「しょせん焼け石に水。唯一期待をかける訪日外国人についても、宿泊も米エアビーアンドビーや中国・トゥージア(途家)など民泊の台頭で厳しくなる」(大手証券アナリスト)のは間違いない。
 JTBも含め、どう生き残りの絵を描くのか。苦難の道は続く。


 商工中金の新社長は三菱商事前副社長?!

 商工中央金庫(商工中金)による「危機対応貸出制度」をめぐる不正融資問題は、底なしの様相を呈した。不正融資の責任をとって、既に経済産業省出身の安達健祐社長、財務省出身の稲垣光隆副社長、商工中金プロパーの菊池慶幸副社長が辞任の意向を表明しているが、その一方では後任をめぐる省庁間の暗闘が繰り広げられている。
 商工中金のトップには戦後一貫して通産省(現経産省)の次官経験者などの有力OBが天下り、ナンバー2には大蔵省(現財務省)から天下りが続いた。しかし、小泉改革で政府系金融機関の民営化路線と合わせ、2008年に新日本製鉄副社長の関哲夫氏が民間人として初めて社長に就任。だが、13年には元経産省事務次官の杉山秀二氏が社長となり、現在の安達健祐氏(元経産省事務次官)に引き継いでいる。
 後任社長には、外部の民間人を登用する方向で調整が進められている。白羽の矢があたるのではないかと囁かれているのは、経済産業大臣の指示で設置された「商工中金の在り方検討会」のメンバーの1人で、三菱商事前副社長の中原秀人氏だ。同検討会は、不正融資が多発した商工中金の危機対応業務を見直し、商工中金のビジネスモデルそのものの在り方を問い直す行政の組織。その結果を待って、社長交代になるとみられる。「後任社長は民間出身者にすることは決まっており、検討会のメンバーはまさに適任者」(メガバンク幹部)。だが、またOBを送り込みたい関係省庁は、将来の布石に向け熾烈な駆け引きを展開している。


 金融行政に爆弾投げ込む辣腕の元金融マンとは

 元三菱UFJフィナンシャル・グループ副社長の田中正明氏(現金融庁参与)が爆弾を投げかけた。
 11月15日に開かれた金融庁の企業統治に係る諸問題を議論する有識者会議で、金融機関が保有する「政策投資株」について、「経営の安定というよりも、経営者の地位の安定に資するものだ。(政策投資株)の保有を法令で禁止することを検討する時期に来ているのではないか」と指摘したのだ。
 金融機関の政策投資株は、企業の安定株主確保策の中核に位置するもので、もし法令で禁止されれば市場に激震が走りかねない。株価下落の引き金ともなりかねない劇薬だ。この田中氏の発言の背後には、森信親金融庁長官の問題意識もあるとみられており、今後金融界の中心テーマに浮上する可能性がある。
 米日カウンシル評議委員会副会長で、世界4大会計事務所であるプライス・ウォーターハウス・クーパースのシニアグローバルアドバイザーなども務める田中氏の爆弾発言は今回が初めてではない。
 昨年9月23日に開催された「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会合」で、「企業向けに融資しながら、その企業の株式に運用する。さらに不動産仲介業務を手掛ける信託銀行のビジネスモデルは利益相反そのもの」と爆弾発言し、その後の金融行政の中心テーマとなった「フィデューシャリー・デューティー」論議をリードした。
 欧州の一部の国を除き、先進国の銀行は総じて銀行が株式を保有することを禁じている。今回の「政策投資株」に関する田中氏の発言は波紋を広げそうだ。


 地銀が規制緩和を切望するソーラーシェアリング事業

 構造的な収益低下に喘ぐ地銀が、有望な貸出市場と期待する農業分野での融資に関し、規制緩和を切望しているのが「ソーラーシェアリング事業の農地一時転用許可の更新制廃止」だ。営農を続けながら、その農地に支柱を立てて、上部空間を利用して太陽光(ソーラー)発電などを行う事業である。ソーラー発電と農業を両立して分かち合う(シェアする)というものだ。
 しかし、所管する農林水産省は新事業形態として慎重にモニタリングするとの姿勢を崩してない。そのガイドライン(指針)が13年3月に農林水産省から発出された「営農型発電施設について〜農地転用に係る取扱いの明確化〜」である。
 このガイドラインでは次のような具体的な対応が明記されている。(1)支柱の基礎部分について一時転用許可の対象とする。一時転用許可期間は3年間(問題がない場合には再許可可能)。再許可は、転用期間の営農状況を十分勘案し総合的に判断、設備の設置が原因とはいえないやむをを得ない事情により単収の減少等がみられた場合、その事情を十分勘案。(2)一時転用許可に当たり、営農の適切な継続が確実か周辺の営農上支障がないか等をチェック。営農の適切な継続(収量や品質の確保等)が確実、農作物の生育に適した日照量を保つための設計、支柱は、効率的な農業機械等の利用が可能な高さ(最低地上高2メートル以上)や空間が確保、位置等は、周辺農地の効率的利用(農用地区域は土地改良や規模拡大等の施策)等に支障がない等。(3)一時転用許可の条件として年に1回の報告を義務付け、農産物生産等に支障が生じていないかをチェック(著しい支障がある場合には、施設を撤去して復元することを義務付け)。
 ソーラーシェアリング事業は、原則農地転用が許可されない第1種農地(良好な営農条件を備えている農地)等であっても実施できるメリットがあることから、許可件数は2013年度97件、14年度304件、15年度374件と増加しており、地銀が有力な融資先として期待する理由もここにある。
 しかし、太陽光発電の買取価格は20年間固定(10キロワット以上)のため、事業者は長期融資を希望する一方、一時転用の許可期間が3年では事業途中で土地を利用できなくなるリスクがあり、銀行としては長期融資に取り組みにくい。このため地銀では、「農地一時転用許可の3年更新を廃止し、営農状況の報告のみ」とするよう規制緩和を求めている。


 戸田建設の初名乗りでグリーンボンドに広がり

 グリーンボンド──。環境問題解決への対応を的に絞り込んだ、資金調達債券である。日本は残念ながら欧米諸国に比べ同債券の発行で出遅れていた。極論すると日本政策投資銀行など政府系金融機関が、先行する国々に向けた僅かながらの「実績作り」策の範疇にとどまっていた。
 それが、ここにきてようやく、日本のグリーンボンド発行にも広がりが見え始めてきた。例えば10月31日に東京都が機関投資家向けに、100億円の「東京グリーンボンド」を発行し、同時に「12月には個人向けボンドの発行を計画している」とした。大手証券の債券担当役員は「テレビなどに顔を出す著名な県知事が“遅れてはならない”という感を強めているという情報が入ってきている」と洩らす。大手自治体の発行に広がりが見え始めたというわけだ。
 だが、それ以上にインパクトをもたらしたのは、民間企業として本邦初の名乗りを上げた準大手ゼネコンの戸田建設である。11月1日、「新たな浮体式(海面に浮くタイプ)洋上風力発電設備の建設資金を賄うため、12月にグリーンボンドを発行する」と発表した。調達額は100億円、償還期間は5年。長崎県五島市の沖合に建設する施設用に全額充当する。同社では既に2020年3月期までに「浮体式」施設の普及に備え「3年間で200億円を投じる」として、昨年第1号施設を建設している。同社は「計画に勢いをつけるために、社債市場を活用させる」(山嵜俊博執行役員)としており、こうした動きに日生をはじめとした機関投資家も「歓迎」の意を示している。
 超低金利時代で運用難のため、機関投資家は中長期のスタンスでESG(環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別する)投資に注力している。だが日本では投資先の判別が必ずしも容易ではないため、海外企業に資金を向ける状態が続いてきた。それだけに戸田建設の1件を「日本のグリーンボンドにも目を向ける格好の契機」と捉えている。ちなみに日生は「東京グリーンボンド」にも投資している。
 また戸田建設の山嵜氏が「これまで当社の社債に興味を持つ人があまり多くなかった。今回の1件で新たな投資家が増えてくれれば」と、資金調達市場として人気に陰りが見える社債市場の活性化に「グリーンボンド」が果たす役割は大きいとの見方が出てきたことは重要な変化だ。先の大手証券の債券担当役員も、自らに言い聞かせるように「グリーンボンド発行を道標に社債市場の活性化を図りたい」と言う。


 サウジ政変でどうなる、ソフトバンクの投資計画

 サウジアラビアの政変が、孫正義・ソフトバンクグループ会長兼社長がサウジ政府と共同で進める投資計画10兆円ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」に微妙な影を落としている。
 サウジでは「脱・石油」政策を掲げる若き後継者であるムハンマド皇太子が「腐敗・汚職一掃」のかけ声の下、身内も含めた権力者を拘束、自らの国家改造計画を推し進めている。孫氏はこのムハンマド皇太子の脱石油政策をサポートするという触れ込みでサウジ政府に接近。「ビジョン・ファンド」への出資を要請、ムハンマド皇太子も応じた。IT(情報技術)やAI(人工知能)など、最先端の技術をサウジに導入するなどを共同で進める。今後3〜4年で、サウジの都市開発などに最大250億ドル(約2兆8000億円)投資する計画も明らかになった。
 しかし、ムハンマド皇太子の国家改造計画がうまくいくかは不透明だ。皇太子の国家改造は脱・石油政策以外にも女性の社会進出の促進など多岐にわたるが、問題なのは「国家改造よりも足元の景気回復のほうが優先だ」との声が根強くサウジ国内にあることだ。長引く景気低迷で若者の失業率は四割を超える。一向に景気が上向かない中でイランなどとの対立が勃発すれば、内部対立が先鋭化してサウジ政権はまさに「内憂外患」の状態になる。「とてもビジョン・ファンドに付き合っていられる状態ではなくなる」(大手投資ファンド幹部)というわけだ。
 孫氏はサウジ政権内の緊張の高まりについて「ビジョン・ファンドには一切影響はない」としているが、予断を許さない状況が続く。


 2019年にオープン、銀座にMUJIホテル

 銀座でも東京五輪を睨んだ再開発が活発だが、さながらホテルラッシュの様相だ。森トラストや朝日新聞社、読売新聞社がこぞってホテルを誘致しているのがそれ。中でも、読売新聞社の所有地に立つビルには、無印良品(運営は良品計画)の大型店舗に加え、日本では初となるMUJIホテルが再来年の19年(中国では来年、深?と北京で開業予定)にオープンする。
 無印良品といえば、鉛筆1本から食品、衣料品、さらに家具や住宅まで手がけている。「これがいい、ではなく、これでいい」が商品コンセプトで、地球との共生に強いこだわりを持ちながら、無駄を削ぎ落したシンプルな生活提案をし続けるのが変わらぬ哲学で、暮らし方の提案そのものが無印良品だという点に、他社には真似のできない世界観がある。そこに共感、共鳴する無印良品ファンは「ムジラー」とも称される。
 そこでMUJIホテルである。無印良品の住宅もモデルルーム内には自社商品の装飾が施せるが、その世界観を体感してもらうにはMUJIホテルはうってつけだ。そして、下層階に下りれば無印良品の大型店舗があれば、そこでは高い購買率に結び付くだけでなく、ホテル宿泊という経験値をもって口コミでの高い宣伝効果も期待できる。
 かつて、ダイエーが隆盛の時代は同社もホテルを展開し、旧セゾングループもホテル西洋銀座(現在は消滅)やインターコンチネンタルホテルチェーンを買収したりしたが、いずれも本業の小売業とは別物の多角化としてのビジネス。その点、MUJIホテルは前述したように本業と密接な関係があり、シナジー効果を狙っている。


 神戸製鋼データ不正問題で「眠った子を起こすな」の声

 神戸製鋼の製品データ不正は、部材の納入を受けていた自動車メーカーなど企業の間では「信頼関係が崩れたばかりか部材の安全性確保が大変だ」と反発が強い。ところがそれら企業の本音は、意外にも「眠った子を起こすな」という状況なのだ。
 ある自動車メーカーの場合、神戸製鋼との間で結んだ契約のうち品質基準にかかわる部分がポイントになるため、安全性にかかわるものがあるかどうかチェックした。問題が重大であれば、すでに販売した自動車のリコール(無償で修理など)対応に臨まねばならないという。
 神戸製鋼はこれまでグループ企業を含めて不正製品の納入先が525社であること、このうち納入先企業自身で安全性を確認したのが292社、また納入先が当面すぐに問題が起きる事態ではないと判断したのが109社、また神戸製鋼自身が安全と確認できたのが69社だったと公表している。
 神戸製鋼関係者は「お詫びのしようがありませんが、私たちはもともと高品質のものを自負していました。ただ今回、担当部門から『納期順守が最優先だ』とプレッシャーをかけられ、やむなく品質誤差の範囲内の基準の未達成の状況でしたので、大丈夫だろうと甘えの行動が出てしまいました。抗弁の余地なしです」と述べている。
 ある自動車メーカー幹部は「うちには問題はないが、企業名が公表されると、何ら問題がなかったとしても問い合わせを含め対応に迫られる。だから神戸製鋼には社名公表はするな、と言ってある」と言う。


 都の入札改革に抵抗し、ゼネコンがサボタージュ

 豊洲市場への移転の前提となる追加安全対策工事で入札が成立しない「不調」が相次ぎ、2018年10月に予定されている開場が危ぶまれている。理由は、小池百合子都知事が決断した入札改革が厳しすぎて、実態に合わないためだという。実際に11月半ばの段階で、追加九工事の入札において、成立に至ったのは2工事にとどまっている。
「一者入札を認めず、予定価格は事後公表となり、カネをかけた見積もり作業を行っても、取れるか取れないかわからない。今は無理をしなくとも仕事はヤマほどある。都の仕事、なかでも注目度の高い豊洲に積極的にはなれない」(ゼネコン幹部)
 豊洲市場は、まず土壌改良工事から発注がなされ、11年8月、5街区が鹿島建設JV、6街区が清水建設・大林組JV、7街区が大成建設JVとなった。そのうえで13年11月、建物建設の入札が行われたが、3街区すべてにおいて「(ゼネコン側の)見積価格が都側の予定価格に合わない」として応札がなく、不調となった。14年2月の再入札では、ゼネコン側の主張が通り、価格合計は3棟628億円から1035億円に4割もアップして決着。その結果、建物は土壌改良工事に連動、5街区の青果棟が鹿島JV、6街区の水産仲卸棟が清水・大林JV、7街区の水産卸棟が大成JVとなった。
 3工区なので清水と大林がJVを組んでいるが、これは東日本大震災以降に定着したスーパーゼネコン4社による“調整”の一環。役所が工事をスーパー4社で分けられるように官製談合が定着したが、「しがらみからの脱却」を掲げる小池都知事は、入札改革に乗り出した。中でも問題視したのは、都が落札上限の予定価格を公表しているため、1者入札となった場合、その上限に張り付いて落札率99%以上となってしまうこと。今年3月末に改革に踏み切り、1者入札を認めず、予定価格の公表は入札の事後となった。
 入札不調が続く豊洲の追加工事は、3棟の地下ピット室にコンクリートを敷設、地下水管理システムと換気施設を強化するもの。本来なら建物建設を請け負ったゼネコンの役割である。設計仕様を理解していない業者は見積もり作業をするだけムダ。だから1者入札になるのだが、入札改革でそれでは不調となるし、「しがらみ排除」の東京都に恩を売っても仕方がないから、本気で入札に応じない。つまり、ゼネコンによるサボタージュである。不調の背後にあるのは、小池都政改革に対するゼネコンなど業者の反発にほかならない。


 働き方改革に壁、大学病院の大きな悩み

 安倍内閣の目玉政策「働き方改革」──。周知のように大手広告会社、電通の新入社員だった高橋まつりさんが過労自殺したことから残業問題を中心に働き方を変えようという政策だ。欧米からも「働きすぎの日本がようやく改革に乗り出した」と評価されている。
 ところが、この働き方改革に困惑しているのが大学の医学部附属病院だ。なにしろ、残業が最も多いのが病院。全国医師ユニオンが行ったアンケート調査でも当直をする医師の7%が過労死ラインとされる月80時間の時間外労働を超えていたと発表している。働き方改革に応じて休日診察を廃止する総合病院も出ているが、救急体制を廃止するわけにもいかないという声もあり、医療界は働き方改革を1年延期してもらった。
 その1年がたち、厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」がスタート。だが、相変わらず困っているのが大学病院。全国80大学の医学部が加盟する全国医学部長病院長会議は、大学病院で働く医師の特性への配慮、医師の負担を軽減するための事務補助者の活用制度と財政支援を要望する声明を発表した。
 同会議で働き方改革対策を担当する山本修一千葉大学医学部附属病院長は「確かにタイムレコーダーが使われていない大学病院があったり、事務に追われている病院もあり、事務を効率化する必要はある。また地域の中核病院である大学病院は休日診療をしていないし、診療所の紹介状を必要とする特定診療制度の導入で初診患者は減った。しかし、大学病院には高度医療を行う診療と医師養成という教育、それに自己研鑽を含む高度先進医療の開発と提供を担う研究があり、それが絡み合ってモザイクになっている」という。
 たとえば、手術には多くの医師が加わるが、それは治療であると同時に若手医師への教育でもある。さらに五時間、7時間に及ぶ手術では途中で残業になってしまうし、救命救急医療では手術が必要になることに備えて脳神経外科医は自宅に帰らず、仮眠している例もある。
「総合病院は診察が中心ですが、大学病院は診察に加えて教育、研究という面がある。医師も使命感と意欲で働いている。モザイクというより裏表だという人もいるが、どこからどこまでが医療で、どこからどこまでが教育、研究なのか線引きできない」(山本氏)
 過剰残業を減らすには医師の増員が必要だが、医師不足だし予算もない。大学病院の働き方改革は一筋縄ではいきそうもないようだ。


 2審も無罪になった電通LED事件

 「循環取引によって売り上げを仮装する動機があったことは否定できない」──。11月9日、電通の子会社「電通ワークス」に架空取引を持ちかけ、約56億円を騙し取ったとするLED(発光ダイオード)事件の控訴審判決はLED開発・販売会社「ワールド・ワイド・エンジニアリング(WWE)」の長谷川篤志代表や津田悦資オーナーら被告全員を無罪とした一審判決を支持した。
 事件は、WWE側が電通ワークスを騙し、前渡金の取得目的で架空の注文を出し、詐欺を働いたというもの。暴力団担当の組織犯罪対策4課が乗り出して立件したが、反社会的勢力に事件が波及することはなく、悪徳LED業者が新規事業を手掛けたかった電通ワークスを騙したという単純な詐欺事件に捜査は終始。
 しかし、当初から電通ワークスが「知らなかった」では済まない証拠の数々が残されていた。例えば電通ワークスは77万本、約114億円の注文を出していた。これがWWEの仕掛けだというのだが、当時の電通ワークスは売上高200億円程度の会社。年商の半分以上の注文を疑いもなく受け入れることはありえず、地裁の江見健一裁判長は「架空取引と知っていた」と断定した。
 WWEは、将来のビジネスに期待して電通ワークス側の要請で犯罪を承知でその商流を手がけたと説明した。警視庁は電通を罪に巻き込みたくないという思惑から、循環取引に目をつむり、一方的に電通が騙されたという詐欺罪で立件した。
「無理な事件構図」に、最初から無罪を予想する関係者は多く、その通りの結果となった。


 迷走するマイナンバー、総務省流「普及大作戦」

 マイナンバーの本格運用が11月13日から始まったが、一向に広がらないマイナンバーカードの取得を促すため、総務省が「便利」「お得」を前面に打ち出し、あの手この手の「普及大作戦」を仕掛けている。民間利用も検討するが、情報流出のリスクは高まるばかり。
「自治体ポイントでお得にお買い物」とうたうのは、ネット通販サイト「めいぶつチョイス」。9月から始めた実証実験で、マイナンバーカードを持っていれば、クレジット会社のポイントや航空会社のマイレージを「自治体ポイント」に変換し、長崎県平戸市など全国各地の特産品を購入できる仕組みだ。さらにはマイナンバーカードを取得すれば、バス会社の乗車券2000円分を提供する自治体も現れた。ボランティアの本人確認や図書館の貸し出しカードに利用する取り組みも進んでいる。
「民間利用」の促進も声高に叫ばれ出した。社員証への利用、インターネットバンキングの認証、イベントのチケットレス入場、カジノ場への入場規制……。
 11月時点で発行されたカードは約1280万枚、普及率は約10%で、「2017年3月までに3000万枚」は絵に描いた餅に終わった。
 マイナンバーは、税と社会保障の事務効率化など限定的に活用するのが原点。利用機会が増えれば、リスクが大きくなるのは自明の理だ。先行する米国や韓国では、大規模な流出が起き、悪用される被害が続出したという。国内でも6月、大阪市でマイナンバーが記載された169人分の給与支払報告書が紛失する事件が発生した。果たして、「お得感」につられて、国民が踊るどうか。


 ラグビーW杯日本大会、試合数割当に不満の声

 11月2日、東京都内で「2019ラグビーワールドカップ日本大会(以下W杯)」の試合日程、会場決定が発表された。北海道札幌市から熊本県まで全国12都道府県で開催される。大会期間(9月20日〜11月2日)の40日間に世界中からのべ800万人が訪れ、滞在する。W杯組織委員会は経済効果を「36億ドル(約4000億円)」と試算する。スポーツの国際大会では五輪、サッカーW杯に次ぐ大規模な大会だ。
 しかし試合会場発表の場では、振り分けに疑問を持つ記者の質問があった。熊本の地元紙記者が「熊本の試合数は予選2試合しかない。大分は予選3、準々決勝2の5試合ある。なぜそうなったのか?」。これに対して組織委員会は「九州は福岡など計三会場で開催する。収容数、交通アクセスなどを考慮した」と答えた。
 大分は大分スポーツ公園総合競技場が会場。収容数は4万人と九州では最大だ。熊本県民総合運動公園の3万2000人を上回る。しかも予選では世界最強のニュージーランド、世界3位豪州や人気のフランスが出場する。スポーツの試合ではベスト8が戦う準々決勝が面白いといわれる。ここにはイングランド、仏、アルゼンチン、豪州などが進む可能性がある。一方、熊本は仏対トンガにウエールズ戦だ。初心者は「やや敬遠する」(ラグビー記者)。
 九州の別のメディア関係者が明かす。「大分は組織委員会会長の御手洗冨士夫会長の出身地。地元は普及など熱心に取り組んできたが会長の力もあった」。また「会長周辺の大分関係者は日本の予選を必ず取ってくる」と豪語してきたというが、「そこは遠慮した」(大手紙記者)とも。
 会場を新設中の岩手県釜石市は2試合だ(収容数が最少の1万6000人)。新日鐵釜石で有名なラグビー熱狂地だが、出場国未定のアフリカ地区代表対敗者復活戦勝者のラグビーファンも興味がない試合を含む。「東日本大震災からの復興という位置づけも程遠い」と指摘する声もあった。
 チケット総販売予定数は180万枚。組織委員会が7月に全国約31万人の成人を対象に行ったアンケートでは「大会開催の認知度は51%、開催地で53%。観戦希望が全国7開催地で9%」にとどまる。
 決勝戦を行う横浜国際総合競技場(日産スタジアム、7万2300人収容)では発表の2日後、11月4日に日本対豪州の試合が行われた。4万3621人と代表戦史上最多のファンが訪れた。「一生に1度だ」の大会キャッチコピーが花開くか。キックオフまで2年しかない。


 財務省が実態調査根拠に診療報酬引き下げを諮問

 財務省が診療報酬引き下げの方針を打ち出した。2年ごとに改定する診療報酬は、診療である本体の診療報酬と調剤報酬で構成され、高齢化に伴う社会保障費抑制のために今までは医師の技術料である診療報酬には手をつけず、薬価を引き下げて対応してきた。だが、厚生労働省が先日発表した医療機関と保険薬局の経営状況を調べる一六年度「医療経済実態調査」で、国公立病院を除く一般病院の収益が改善していることを根拠に、財政制度等審議会に診療報酬引き下げを諮問したのである。
 実態調査は診療報酬改定の基礎資料にするもので、国公立病院を含めた一般病院全体の損益率は2年前のマイナス2.0%からマイナス2.6%に悪化している。が、悪化の元凶は自治体が経営する公立病院のマイナス13.7%という赤字拡大の影響による。民間病院の収益率では14年度の0.4%から16年度は0.6%に改善し、一般診療所は10.4%から11.9%に上がった。この実態調査結果から財務省は、今まで手をつけられなかった診療報酬の本体である医師の技術料引き下げに切り込みたいという見解である。
 来年度、社会保障費増を5000億円に抑えるためには1300億円を削る必要があるが、診療報酬を1%引き下げれば国庫負担はざっと1200億円浮くと試算されている。加えて、再来年の参議院議員選挙まで当面、選挙がないことでチャンスは今しかないという思いもある。
 だが、日本医師会の政治力は強大だ。かつて小泉純一郎内閣で診療報酬を引き下げて以降、約十年間診療報酬が据え置かれたことから自民党への反発が強まり、医師が自民党を一斉退会した“茨城の乱”が起こるなど、民主党政権誕生の一因になった経緯がある。以来、診療報酬の本体は“聖域”扱いになり、むしろ医師の技術料を微増させてきている。
 早速、財務省の動きに日本医師会が反発。横倉義武会長が首相官邸を訪れ、18年度診療報酬のプラス改定を要望し、返す刀で「財務省は実態調査の都合のよいところだけを切り取っている。診療報酬は財政審で議論すべきではなく、中医協(中央医療社会保険協議会)で審議すべきだ」と牽制する。
 来年度に実施される診療報酬改定は年末までに決まるが、果たして小泉内閣以来の診療報酬引き下げを実現できるか、安倍首相の判断にかかっている。


 的確な訓練を積めば第2の藤井4段になれる?

 中学生棋士の藤井聡太4段は100年に1人の天才といわれる。そうした歴代の天才といわれる棋士に共通するのは、瞬時に最善の1手を思いつく直観的思考回路の優秀さだ。この直観的思考回路を素人でも訓練で開発できる可能性があることが、独立行政法人理化学研究所などの研究グループが日本将棋連盟の協力で行った最近の研究でわかってきた。
 将棋経験のない20代の素人男性20人を対象に4カ月間の訓練を行った。訓練内容は「5五将棋」という5×5盤面で桂馬と香車を省いた簡易な詰め将棋。訓練時間は1日平均40分で、コンピュータープログラムを使って対局を行い、訓練終盤にはトーナメントも行うというもの。訓練後に脳の働きを調べたところ、直観的思考能力が上がっていた。
 直観的思考回路は大脳の奥にある大脳基底核の尾状核が関与している。尾状核は記憶や学習などに関係する神経の集まりで、ここを通る神経回路で瞬時の判断を行う。プロ棋士が将棋を指している時は、常にこの尾状核が活発に活動している。
 今回の研究によって、直観的思考回路の優秀さが天賦のものではなく、訓練によって鍛えられるものであることがわかったわけだ。頑張れば、誰でも将棋名人になれるかもしれない。さらに、この訓練法をさらに進化させれば、直観能力が必要な他の分野にも応用できるそうだ。


 日経の「押し紙」、公取が実態調査に着手

 公正取引委員会は今、日本経済新聞をターゲットにして「押し紙」の調査を進めている。公取委に対して日経の販売店から苦情が殺到しているのが、調査に乗り出すきっかけだ。
 大都市圏のサラリーマンを中心に日経本紙離れが加速し、デジタルへのシフトが進んでいる。「ひと頃よりも30%も購読者が減ったにもかかわらず、日経本社販売局は実売の減少を認めてくれない。向こうが決めた一方的な部数を押し付けるばかり」とは、中堅販売店の社長の弁だ。同社長は再三再四、日経本社に実勢に見合った部数減をかけあったが、日経側は認めてくれなかった。
 同社長は「市場経済を強く信奉している日経なのに、やっていることがまったく違う」と、このほど公取委の調査に応じて実情を暴露。さらに他の数店の販売店が相次いで公取委に苦情を申し立てているもようで、公取委はすでに販売現場に調査官を派遣して事情聴取を開始。公取委は「想像以上に悪質」(関係者)と事態を重く受け止めている。
 日経は他の全国紙と比べて折り込みチラシが非常に少ないため、販売店主からすると第2の収入源といえる折り込み広告収入の実入りに乏しい。そのうえ、読売や朝日のような本社からの経営補助のリベートが少ない。日経の押し紙の急増は販売店にとって迷惑以外の何物でもない。
 日経は専売店網が少なく、読売や朝日、地方紙の専売店に販売を委託しているケースがほとんど。こうした他紙の専売店主が相次いで公取委などに苦情を申し立てており、読売など他の全国紙の販売部門も事態を深刻に受け止めているようだ。


 社員の給与160万円減、朝日が再度の大リストラ

 朝日新聞社が来春に、またまた社員の年収を平均160万円引き下げる。11月中央経営労働協議会で会社側は、昨年却下された賃下げプラン(人事給与制度改革案)を改めて朝日労組に提示して「意識改革」を訴えた。実売部数は620万部を割り込み、読売との差は開くばかり。700億円近い人件費を100億円近く減らすのが狙いのようだ。
 担当役員は「中期経営計画は策定から1年半の実行期間が過ぎ、残念ながら当初計画を下回り厳しい」「新聞業の不振に痛みを伴う改革。本業がちょっと下振れすれば赤字になる」と大幅賃下げに意欲を示した。そして「現実から目をそらしていると本当に未来はない」と危機感を煽ったというが、コンテンツの充実策は全く示されなかった。
 参加した次長によると、説明会では販売店関係者の自殺、デジタル部門の予算不足によるスマホ用のコンテンツ表示の陳腐化、押し紙対策で450億円の販促予算のうち350億円が消失など、現場からの「疑問」の声が大合唱になったという。
 実は、今でも1職級上がれば200万円以上も年収がアップし、上司に気に入られようと必死になる構図が存在する。これでは給料が突出して高かった印刷工やビジネス部門の職員のほか、記者のほとんどが内向きになる。掲げた働き方改革は、点数主義、上司のきめ細かい裁量加点制度など、「ゴマすり改革」とも揶揄され、混迷を深めるばかり。「これが最後」と言いながらリストラが激しくなるのは、経営者のあせりと部数急落のなせる業なのか。
 売り上げの半分を占めた新聞広告は実額でピークの半額以下。読売も朝日も読者と社員の高齢化が進み、定番広告は「毎晩妻が驚いた」という見出しが立つ男性機能強化薬となった。特ダネ記者を育てるには厳しい改革を良薬に変える必要がある。朝日の労使にはジャーナリズムを牽引する心意気を見せてもらいたい。


 サウジ・イランの関係悪化、背後にトランプ大統領の影

 サウジアラビア政府が11月4日、11人の王子を含む約50人を汚職などの疑いで逮捕した。その後、著名な投資家、富豪それにアブドラ前国王の息子で後継候補の1人だったミテブ国家警備隊長ら500人以上に増えた。
 サウジで複数の王族が一斉に逮捕されるのは異例で、腐敗撲滅を目指す政府の決意を示す一方、ムハンマド皇太子の対抗勢力になりうる有力王族を逮捕し、弱体化させる狙いがあるものとみられる。
 そうした中、レバノンのハリリ首相が4日、突然サウジに飛び、「命の危険がある」として辞任することを表明したことから事態は複雑化している。
 翌5日にはイエメンからサウジの首都リヤドにミサイルが撃ち込まれた。ミサイルはイランのものとみられ、サウジのジュベイル外相は米CNNテレビとのインタビューで「これは戦争行為以外の何ものでもない。イランはサウジの都市にミサイルを撃ち込んでもサウジは何もしないと思っているのか」とこれまでになく厳しい口調で非難。
 サウジ、イラン関係が一気に悪化してきた。ムハンマド皇太子の台頭で湾岸を含む中東情勢は一気に緊張を高める危険性が出てきた。
 冷戦中、中東は米国側にイスラム教スンニ派のエジプト、サウジなど湾岸諸国、トルコ、ヨルダン、イスラエルが、ソ連側にイスラム教シーア派のイラン、シリア、イラクがついた。冷戦後、アラブの春、イラン・イラク戦争、湾岸戦争などで同盟国は大きく変わり、現在は米国側にサウジなど湾岸諸国、ヨルダン、イスラエルなどがつき、ロシア側にはイラン、イスラム教シーア派ヒズボラ(レバノン)、シリアなどがついて激しい代理戦争を展開している。
 これには外交や軍事問題で強硬策を支持するトランプ米大統領領の影響が大きいといわれる。トランプ米大統領はサウジだけでなくレバノンにも強硬策をとるよう奨励しているといわれ、サウジとイランをめぐる代理戦争は一段と悪化しそうだ。
 これまでサウジは内政、外交とも穏健策をとり、内政では王族のコンセンサスを重視。外交でもレバノン、シリア、イランに対し穏健策をとり、中東情勢の安定化に貢献してきた。ところが、今回の出来事はサウジが内政、外交とも政策を硬化させたことを示している。
 サウジとイランはこの30年間、レバノン、湾岸諸国、イラク、シリアをめぐり勢力争いを行ってきたが、今回のサウジ側の発言はもっとも厳しいもので、内政面だけでなく、外交でもムハンマド皇太子の強硬姿勢が懸念される。


 米GEが航空、電力など3分野に事業集中を発表

 業績低迷に陥っているゼネラル・エレクトリック(GE)はこのほど、経営再建の一環として、航空機エンジン、電力、ヘルスケアの3分野に事業を集中する方針を明らかにした。
 GEは複合企業の代表格で、発明王トーマス・エジソンによって創業された。風力タービンや航空機エンジンなど巨大な産業機器の製造を得意としてきたが、電力や鉄道事業が不振で株価も低迷している。
 このため、今年8月に就任したジョン・フラナリー最高経営責任者(CEO)は、事業構造が複雑になったために最適な経営資源の配分ができていないとして、200億ドル(約2兆2600億円)相当の事業の分離、売却を進めている。今年7月に買収を完了したばかりの資源サービス大手ベーカー・ヒューズについても、商品市況の変動により業績の先行きが不透明だとして、保有株式の縮小を検討している。
 主力の電力分野も不振が続いており、2014年に買収した仏重電大手アルストムも期待通りの業績を上げていない。アルストム買収では三菱重工業との争奪戦となったが、フラナリー氏自身が中心的な役割を果たした経緯もあり、GEの電力事業の基盤は強いとして、長期的には中核事業に据えたい考えだ。
 これに対し、同じく不振に陥っている鉄道事業については、他社との提携かスピンオフ(分離・独立)、あるいは売却の対象となる。同事業では貨物用のディーゼル機関車などを製造しているが、最近はGE全体の売上高への貢献度は4%を下回っており、合理化の対象となった。
 前任のジェフ・イメルトCEOは、IoT(モノのインターネット)事業を手掛けるGEデジタルに注力してきたが、フラナリー氏も、産業用IoTのプラットフォーム(基盤)ソフト「プレディックス」の売り上げ拡大を図る方針だ。これは、膨大なIoTデータを収集・蓄積し、サービスにつなげるソフトで、現在、この分野では世界的な覇権争いが繰り広げられている。
「プレディックス」は、GEが販売した産業機器の状態を把握するための一種のクラウドサービスで、航空機エンジンや風力発電タービンなどの障害を検知できる。今年10月には米アップルとの提携を発表、iPhoneやiPadで広範なサービスが受けられるようになる。「古いGE」からの脱皮を象徴する提携といえるだろう。


 「パラダイス文書」にロシアか中国の陰謀説

 「パラダイス文書」は、バミューダの法律事務所「アップルルビー」から683万件、ほかにシンガポールの法律事務所「アジアシティ」から50万件、マルタなどから600万件がハッキングされたものだ。朝日新聞も加盟する国際報道機関の手に渡り、最初は「南ドイツ新聞」に発表された。
 この手口は「パナマ文書」と同じだが、その際にターゲットだった中国とロシアの不正資金暴露から、今回は英王室と米国の有名人に的が絞られており、諜報合戦の面妖さを伴う。つまりパナマ文書で「迷惑」したロシアか中国の陰謀ではないかという疑惑が広がっているのだ。
 英国王室はエリザベス女王が15億円をオフショア市場に投資しておりチャールズ皇太子の名前もある。驚かされたのはローマカトリックの高位聖職者やヨルダン前国王妃殿下、メキシコの大臣クラスから米国歌女優マドンナの名前まで。また中国をこっぴどく批判するジョージ・ソロスの名前もあり、中国のハッカーによるものではないかとの疑惑は、この点にもある。
 米国メディアの批判はムニューチン財務長官に集まっている。ムニューチン氏はウォール街出身でゴールドマンサックスに17年間勤め、ファンドを立ち上げてオフショアで大胆な投資を展開、相当の資産家だ。
 選挙キャンペーン中に「反ウォール街」を謳ったトランプがムニューチン氏を指名した時、支持者の多くが失望した。結局、金持ち優遇の政策を打ち出すはずで、ウォール街が不利となる政策は実行しない。
 この騒動、はたしてムニューチン辞任にまで発展するか──。


 順調な政権運営に見える韓国文大統領の内憂外患

 韓国の文在寅大統領への支持率は7割を超え、順調な政権運営を行っているかに見えるが、実態は危うい側面を抱え込んでいる。
 まず中国との関係だ。トランプ大統領の韓国訪問前に、韓国は中国との間でTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)配備について、これ以上の追加は行わないことで合意した。しかし中国側はその後もこの約束を反故にし、THHADそのものを段階的に処理せよと一連の首脳会談で韓国側に強硬に迫っている。
 10月中旬にIMFの報告書が出され、韓国経済に対する厳しい見方が示された。韓国の潜在成長率は今後も三%以下に下落するが、その理由は労働生産性が米国の半分にとどまっていることや、青年失業率が8.6%に上昇しているためだ。労組の既得権擁護が強く、また非正規雇用の割合が高いため、生産性が今後も改善せず、その一方で政府が対応策として打ち出している公共事業拡大の対策だけでは財政破綻を招き、やがて、ギリシャ型の経済危機を招く可能性があるとしている。
 短期的には、来年冬の平昌五輪が無事に終えられるか危惧されている。最大マイナス20度にもなる冷凍庫五輪といわれているが、屋根のないメインスタジアムでの長時間の開会式や閉会式では、低温症で死者の出る可能性も指摘されている。また、ホテルの予約が極めて困難で、切符の予約販売もいまだ3割を超えた程度に過ぎない。これらの背景に北朝鮮リスクが存在しているのは確かで、北朝鮮への融和策だけで乗り切れるのだろうか。


 米メディア業界規制緩和で合従連衡の動きが加速か

 米連邦通信委員会(FCC)はこのほど、新聞とテレビの兼業を禁じたメディア規制を緩和する方針を決めた。地方紙やテレビ局の間で合従連衡の動きが広がるとみられる。
 米国では同一企業が同一地域で新聞社と放送局(テレビ・ラジオ)を兼業することは禁じられていた。メディアの独占を防ぎ、多様な言論を保障することが狙いだったが、インターネットの普及で環境が変わってきた。FCCは、同一地域内のテレビ局のシェア一〜四位のうち、二局が合併することも条件付きで認可する方針も明らかにした。
 FCCはこれまで、インターネットの普及を受けて規制緩和を主張してきたが、民主党を中心に、報道の質の低下につながりかねないとして反対意見も根強かった。しかし、トランプ政権が規制緩和派のアジット・パイ氏をFCCの新委員長に据えた結果、委員の構成は与党共和党支持者が多数を占めるに至った。今回の規制緩和をめぐっては、パイ氏を含む委員3人が賛成、反対は2人で、僅差での決定だった。
 業界では、この恩恵を受ける企業の筆頭として、共和党寄りのテレビ放送大手シンクレア・ブロード・キャストの名前が挙げられている。同社は今年、同業のトリビューン・メディアを約39億ドルで買収する計画を発表。買収実現にはFCCの承認が必要だが、今回の規制緩和で、シンクレアは一部部門の売却などをしなくても、承認はほぼ確実になったとみられている。
 ただ、今回の決定で反対に回ったFCC委員の1人、ジェシカ・ローゼンワーセル氏は、「多様性、地域性、競争へのコミットメントが全く見られない」と批判している。


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