巻頭言
枝廣淳子の


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枝廣淳子氏
(東京都市大学教授/
幸せ経済社会研究所所長)





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『不都合な真実2』と
『おだやかな革命』

 映画『不都合な真実2:放置された地球』が公開されました! ぜひ多くの方に見ていただきたい映画です。原作本の著者、元米国副大統領のアル・ゴア氏は、大学の頃から数十年にわたって地球温暖化問題に取り組んでおり、2007年にはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)とともに、ノーベル平和賞を受賞しました。当時、世界に温暖化の問題を知らしめ、多くの取り組みを先導した『不都合な真実』から10年。『不都合な真実2』が克明に伝える、悪化の一途をたどる温暖化の被害状況に、「この10年間、もっと手を打てなかったものか……」との思いが募ります。
 特に近年、温暖化への関心が低下している日本は、アル・ゴア氏がこの映画を通じて訴えている「3つのメッセージ」をしっかり受け取ることが求められます。
 1つ目は、「温暖化の影響は顕在化しており、状況は悪化の一途をたどっている」こと。
 2つ目は、「温暖化の解決策はすでにわかっており、私たちの手中にある。前作からの10年、企業や国の取り組みも大きく進み、かつての『温暖化対策か、経済成長か』ではなく、『温暖化対策が経済成長の原動力』という状況になってきた!」こと。
 3つ目は、「間に合うタイミングで社会全体を動かしていくためには、私たち1人ひとりが自分のライフスタイルを見直すだけではなく、政治家を動かしていかなくてはならない!」ことです。
 先日ドイツ・ボンで開催された温暖化会議COP23で、英国とカナダの政府は、「石炭火力発電所からクリーンエネルギーへの移行を促す国家連合」の設立を発表。20カ国と米国の2州など25の国・組織が参加しています。「脱石炭」は世界的な大きな潮流です。
 しかし、日本では今なお多くの石炭火力発電所が計画・建設されています。この国家連合にも不参加です。ボンではNGOグループから地球温暖化対策に消極的な国に与える「化石賞」に選ばれてしまいました。
 私もメンバーを務めている経済産業省資源エネルギー庁の「エネルギー情勢懇談会」は、2050年の日本のエネルギーを考えるための議論の場です。脱石炭のロードマップを描いていくことは重要な課題の1つです。しかし、まだ論点にも取り上げられていません。
 来年2月に映画『おだやかな革命』が公開されます。この映画には、限界集落と呼ばれるような中山間地域に移住し、「ほしい未来は、自分たちの手で作りたい」と、地域と一緒に木質バイオマスの利用や小水力発電の事業に取り組む若者たちの姿が描かれています。
 売電した収益を、地元の農業や福祉、若者の起業のために再投資することで、「モノ・人・お金」の循環する地域経済が生まれつつあります。見ていてわくわくします!
 この映画を製作した渡辺智史監督は、「エネルギーも日々のことだからこそ、私たちの選択によって少しずつ社会を変えていくことができます。誰かに任せていればどうにかなる、そんな時代は終わりました。これからは『ほしい未来は、自分たちの手で作っていく』という時代です」と語っています。
「温暖化は悪化しつつあるが、エネルギー転換という解決策が世界規模で展開中」という『不都合な真実2』のメッセージを背景に、まだ石炭火力発電をやめられないと考えている日本政府。再エネを軸に、エネルギーと未来の手綱を自分たちの手に取り戻し、望ましい未来を作っていこうというしなやかな地域の数々。私たちはまさしく今、古い世界と新しい世界の入れ替わりを、目の当たりにしているのです。
 そして、鍵を握っているのは、「どの燃料で発電するのか」だけではありません。「どのくらい発電するのか」、つまり、「どのくらいの経済成長が必要なのか、どのような暮らしを送るのか」も、特に人口が減少していくこれからの日本を考える上で避けることのできない問いなのです。
(東京都市大学教授/幸せ経済社会研究所所長)


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