ダミー
ダミー

←10月号へ                                      12月号へ→

 自民大勝でも政権への不信は消えず

 第48回衆院選は野党分裂の敵失で自民党が大勝、安倍晋三首相は政権継続とともに来年秋の自民党総裁選3選も視野に入った。もともと今回の衆院解散は「森友学園や加計学園の疑惑隠し」と野党から批判され、首相は選挙戦でも疑惑について説明責任を果たそうとしなかった。内閣支持率は不支持が支持を上回り、首相は選挙後「今後も求められれば丁寧に説明していきたい」と語ったが、それも口先だけでは政権不信に拍車が掛かるだけとなる。
 自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長が選挙後、「野党がボタンを掛け違わなかったら政権交代の可能性もあった。(小選挙区で)1対1のガチンコだったら、いつだって自民党は負け得る」と指摘。「加計学園(疑惑)への国民の不信感は根強い」とも語っていたが、これも有権者の厳しい反応を率直に受け止めたものだ。
 石破茂元幹事長が「(自民党が)謙虚で誠実で正直な政党にならないと、いつの日かまた必ず国民に見放される」と語ったのも首相への苦言だろう。一時は自民党が大幅に議席を減らせば、小池百合子東京都知事(希望の党代表)と石破氏が手を組む可能性も取り沙汰され、首相周辺には石破派の自民離脱を警戒する向きもあった。しかし、自民大勝でその可能性は消えた。
 一方、今回の衆院選は「1人芝居の小池劇場が失敗し、幕を閉じた」(自民党関係者)とも言える。小池氏が民進党リベラル派を「排除」するとした発言で、民進党は分裂。枝野幸男代表率いる立憲民主党が「反安倍の受け皿」として勢いを増す一方、希望の党は失速。一時は小池氏が小泉純一郎元首相を都知事候補に担いで自らは衆議院選出馬という憶測も永田町には広まった。小池氏は選挙後、「これまでの言動等で皆さんに不快な思いを抱かせたことは申し訳ない」「言葉の選び方については反省している」と陳謝したが、悔やみ切れないだろう。


 小池氏復活のカギは今井首相秘書官にある?

 「小池新党は自爆テロだった」という声が永田町で出ている。それでも小池百合子氏が日本初の女性首相を目指す意欲は衰えていない。選挙後の政界再編のカオスに生き残りをかける。自らの自民党復帰や「希望の党」の連立与党入りも選択肢だ。安倍晋三首相との関係修復も焦点になる。菅義偉官房長官こそ小池氏とそりが合わないものの、安倍首相と小池氏はもともと「あうん」の関係で携帯電話番号も登録し合っている。
 両者の仲を取り持っているのが、官邸のラスプーチンとも言われる今井尚哉首相秘書官(政務担当)だ。元通商産業省(現経済産業省)出身の今井氏は、元同僚が「最近の彼の活躍ぶりは超人的、天才的だ」と舌を巻くほどだ。首相名代で秘密裏に外国を訪問して下工作をしたり、政策以外にも政治家相手に政局まで動かしている。安倍首相も全幅の信頼を置いており、首相の一挙手一投足の振り付け役を任されている。
 今井氏は経産省から三年間、環境省官房総務課に出向していた。小池氏は小泉純一郎内閣で環境相を務めた。小池・今井両氏は「環境」で接点があり、その時の人脈で今も連絡を取り合っている。安倍首相が今井氏を介して小池氏とコミュニケーションをとっても何ら不思議はない。一方、小池氏は米国のヒラリー・クリントン氏が68歳で大統領選に挑戦したことに深く感銘、夢を捨てていないのだから……。


 防衛省が開発する未来兵器、それでも戦争は血が流れる

 防衛省は来年度防衛費から最先端の電子技術を用いた2種類の新型兵器の開発に乗り出す方針を固めた。「高出力レーザーシステム」と「電磁パルス弾」で、実用化すれば戦争の様相は一変する。
 高出力レーザーシステムは、小型無人機や迫撃砲弾といった小型の武器類をレーザー光線で破壊する。光線のため砲弾やミサイルと比べて低コスト。しかも短い時間で発射できる。まるで映画「スター・ウォーズ」の世界だが、問題はどこまでレーザー光線を強めて物体を破壊できるかにある。すでに米国やドイツでは研究が進むが、いずれも実験段階に過ぎず、軍隊に配備するには至っていない。防衛省は来年度防衛費で87億円を投じ、6年かけて開発する。
 もうひとつの新型兵器は「電磁パルス弾」だ。来年度は14億円を投じ、4年かけて実用化を目指す。電磁パルスとは核爆発によって発生する電磁気のことで、交通機関、電力、電子機器などに障害を与え、都市機能を数年にわたってマヒさせることができる。北朝鮮が9月3日に核実験を行ったあと、国営メディアが「われわれの水爆は広大な地域に『超強力電磁パルス攻撃』まで加えられる」と述べたのはアメリカの都市機能を破壊するという脅しの意味だ。
 防衛省の担当者は「自衛隊の場合、核兵器を持つということではありません。電気的に電磁パルスだけを発生させる。核爆発ほどの強力な電磁波を発生させるのは無理なので、離島を占領した敵部隊など戦域での使用に限定する」という。だが、戦場に血が流れる様相は変わらない。


 「レイプ被害」告白の詩織氏、上梓した著書の主張内容

 「安倍晋三首相に最も近い記者」として知られる元TBS記者にレイプされたとして、名前と顔を公表して訴えているジャーナリストの伊藤詩織氏が、10月下旬、一連の過程を綴った『ブラックボックス』(文藝春秋)を上梓した。今年5月、レイプ捜査が不起訴処分となったため検察審査会に異議申し立ておよび記者会見を開いた。9月22日に検察審査会は「不起訴相当」を議決した。同書は事件の全貌に加え、捜査への圧力とそれに屈する捜査現場、そして封印を可能にする司法システムなど、詩織氏の周辺で展開された「日本の歪み」を伝えている。
 その後の人生を考えれば、レイプ被害者が顔を出して告発するケースが滅多にないのは当然。加害者にその心の揺らぎを突かれ、金銭で解決するケースが少なくない。同じ話を何度も繰り返させ、「事件にするのは難しい」と心ない言葉を投げかける捜査員にも直面した詩織氏だが、元TBS記者への怒りが勝り、「泣き寝入りはしない!」と決意した。
 だが、日本の捜査機関も司法システムもそれに応えなかった。安倍首相への忖度が疑われるような警視庁刑事部長の逮捕中止命令。高輪署から警視庁捜査一課への事件の移送。警視庁による示談の勧めと「不起訴」を前提としたようなやる気のない捜査。不起訴になり、検察審査会の審査が「不起訴相当」になっても詩織さんは諦めず、追及を続ける。
 詩織さんは、殺された魂を取り戻す方法は、「真実を追求し、伝えることだった」と書く。日本の司法に投げかけられた重い問いかけだ。


 なぜ? 社長以下皆が騙された積水ハウスの謎

 積水ハウスともあろうものが、地面師グループに騙されるのか──。本誌九月号でも報じた東京・西五反田の海喜館事件。JR五反田駅から徒歩3分の老舗旅館「海喜館」の女将・Sさんに成りすました女が、6月1日、各種偽造書類をもとに売買に成功、まんまと63億円を騙し取った。以降、警視庁は新宿署に捜査本部を置き、売買に関係した人物を呼んで厳しい取り調べを続けており、積水ハウスは社外監査役の篠原祥哲氏を委員長に調査対策委員会を立ち上げ、検証作業を行っている。
 だが、地面師事件の難しさは、成りすまし女以外が、すべて「善意の第3者」を主張すること。今回、Sさんに成りすましたのは、「池袋のK」という女だが、印鑑証明もパスポートもすべてSさんのものを偽造、それを行使したのはKであり、売買の場に立ち会った仲介業者や代理人弁護士が、「私も騙された」と主張すれば、それを覆すのは難しい。「疑わしきは罰せず」が刑事司法の建前だ。
 とはいえ、今回は「積水ほどの会社がどうして騙されたのか」(不動産業界関係者)という疑問が浮上した。
「金額が大きいだけに、売買の場には詐欺事件に精通する弁護士も、怪しい書類を見慣れているハズの司法書士もいた。積水の担当者も複数いて、チェックを行っている」(同)
 捜査関係者や事件を追う記者の間では、「積水内部に地面師グループに内通していた社員がいるのでは」「それがバレ、担当者はすでに自殺している」という怪情報まで飛んだ。だが、自殺者はいない。社長直轄案件として阿部俊則社長は現地視察。三谷和司マンション事業本部長もこの物件を了承しており、以下、不動産担当部長、マンション事業部担当部長、部下の仕入れ担当課長までの縦ラインが、すべて疑わずにいたという。積水ハウスのうかつ過ぎるチェック体制が問われている。


 選挙前に女性問題を起こした公明2議員の影

 衆院選の直前、2人の公明党議員の女性スキャンダルが「週刊文春」の報道で発覚した。同党では7月の東京都議選前にも、候補者と女性飲食店経営者との店内キス写真が週刊誌で報じられたばかりだ。
“文春砲”に撃たれたのは長沢広明前参院議員・復興副大臣(59)と樋口尚也前衆院議員(46)。同誌によると、長沢氏は愛人のホステスに議員宿舎のカードキーを渡して頻繁に泊めていた。また、樋口氏は議員宿舎近くのホテルで、親しい女性と密会を重ねていた。長沢氏は公明新聞記者、衆院議員を経て、2010年から参院議員(比例)。支持母体の創価学会で政治案件を取り仕切る佐藤浩副会長の子飼いで知られる。一方、樋口氏は創価大卒後、創価学会施設の建設を手掛ける清水建設のサラリーマンを経て、12年12月の衆院選で初当選(比例近畿)した当選2回の若手のホープだ。
 婦人部が力を持つ創価学会において、女性スキャンダルはご法度。ベテラン創価学会員によると、長沢、樋口両氏の行動に、婦人部幹部らは激怒しているという。山口那津男代表ら党執行部は選挙への影響を懸念し、直ちに2人を離党させた上、議員辞職、公認取り消しの「処分」とした。長沢氏をカメラの前で詫びさせたが、半分は創価学会向けだろう。公明党は出鼻がくじかれ、学会婦人部もF票(学会員以外の票)取りをやりづらくなったのは間違いない。衆院選で5議席を減らしたのも、こんな実態が影響したか……。


 全銀協の次期会長人事で注目される「ポスト佐藤」

 来年度の全国銀行協会の次期会長にみずほ銀行の藤原弘治頭取が就くことが固まり、メガバンク関係者からは「意外な展開」と驚きの声が挙がっている。
「直近まで次期会長には、協会副会長のみずほフィナンシャルグループ(FG)の佐藤康博社長が就くとの見方が有力視されていた」(メガバンク幹部)ためだが、佐藤氏は5年前と2年前にも全銀協会長に就いており、3回目となる今回は、現業を持つみずほ銀行の藤原頭取に譲ったのではないかとみられている。この禅譲が「ポスト佐藤」を占う試金石になるとの憶測を呼んでいるのだ。
 佐藤氏は2009年にみずほ銀行の前身であるみずほコーポレート銀行頭取に就いた後、11年に持ち株会社のみずほFG社長に就任し、13年にはみずほ銀行頭取も兼務した。その後、親密ノンバンク・オリコの反社勢力向け融資の責任をとって頭取職は辞したものの、現在もFG社長・グループCEOとしてガバナンスを掌握している。
 この間、合併銀行特有の旧行の壁を取り払い、メガバンクで最初に委員会設置会社に移行するなど、ガバナンス改革を推し進めた。銀行、信託、証券を一体運営することにより高いシナジー効果を上げる「OneMIZUHO」は佐藤氏を抜きにしては語れないといわれる。
 その佐藤氏も、トップ在任がみずほコーポレート銀行から数えて8年を迎えた。佐藤氏が次期全銀協会長に就けば、FG社長退任は早くて19年度以降となるはずだったが、藤原氏の就任で18年度内の退任の可能性もあり、俄然「ポスト佐藤」に注目が集まり始めたというわけだ。


 EUの外銀規制で避けられぬ邦銀への影響

 EU(欧州連合)のEC(欧州委員会)による外銀規制が懸念されている。EUの域内で展開する外国の大手銀行を対象に中間持ち株会社(IPU)をつくり、一定の資本を積むことを求めるもので、グローバルな金融システムで重要な影響を及ぼすG-SIBsが対象になるとの見方が有力視されている。このG-SIBsには日本の3メガバンクも入っており、影響が避けられそうにない。
 この問題については、9月14日の平野信行全銀協会長会見でも取り上げられた。平野氏は「仮に今のECの提案どおりになれば、G-SIBsを全部対象にするということで、メガ3行はアメリカの中間持ち株会社と同じようにIPU(中間親会社)をつくらなければならない。一部グループ内での組織の再編、場合によると戦略の変更が必要になる」と懸念を表明。さらに、「グループ全体をグローバルベースで見た時に、資本の効率、流動性の効率が悪くなる。その地域以外で仮に問題が起こった場合、損失吸収能力が低下するという本末転倒の結果となりかねない」とも指摘。全銀協として今年4月と9月にEC、EU理事会、欧州会議等に意見書を提出し、直接訪問もして対話を続けているという。
 3メガバンクは、いわば米欧間の金融規制をめぐる争いのとばっちりを受けかねない状態で、金融当局や全銀協ではECに対し、G-SIBs一律ではなくEU圏内における事業規模あるいは資産規模が大きいところだけに絞ってほしい、引き続き支店は外してほしい、Brexitの問題も絡むため基準日はBrexit後にしてほしい、などの具体的提案もしているという。


 相談役・顧問制度を見直し始めたメガバンク

 資生堂が10月5日、相談役・顧問制度の廃止を発表したが、これは東証が8月に上場企業の相談役・顧問の役割を開示する制度を設けるとし、2018年から東証に提出する報告書で相談役・顧問の氏名や業務内容、報酬の有無などを開示するよう促したことによる。今後、この動きは上場企業全般に広がる可能性が指摘されている。
 この中にあって、注目されているのがメガバンクの動向。口火を切ったのはみずほフィナンシャルグループ(FG)だ。みずほは10月16日、持ち株会社の会長や社長経験者ら7人が「名誉顧問」として在籍していることを開示した。いずれも任期は「終身」だが、社内の規定を見直し、経営に関与しないことを明確化している。また、名誉顧問が会社にとって重要な活動を行う場合には、年間2000万円を上限に報酬を支払うこととしており、塚本隆史氏(元みずほFG社長)に上限額が支払われている。
 一方、金融界が最大の関心を寄せているのがメガトップの三菱東京UFJ銀行の動向だ。同行には、5人の特別顧問と1人の顧問、そして、1人の相談役がおり、本店9階にそれぞれ個室を持つ。任期はみずほ同様に「終身」。この顧問・相談役で構成されているのが「相談役会」で、経営陣は定期的に経営状況を報告するほか、役員人事等の経営の重要事項について事前にお伺いを立てる必要があるとされる。持ち株会社の平野信行社長は、今年度中をメドに「相談役会」の見直しを検討するとしているが、制度自体の撤廃まではいかず、大山鳴動してねずみ1匹となる可能性も指摘されている。


 関電大飯原発廃炉の背景に「大企業の関西離れ」

 関西電力が大飯原子力発電所1、2号機(福井県)を廃炉にする方針を固めた。東日本大震災後、小型の原発の廃炉が進み始めたが、大飯原発のような百万キロワット超の大型原発の廃炉が決まるのは、東京電力福島第1原発を除くと初めて。
 関西電力は表向き「1000億円規模といわれる安全対策の費用が膨らむなか、再稼働しても採算が取れない」(関電幹部)としているが、もっと大きな問題は「関電管内の電力需要が落ちている」(同)ことにある。
 関電の管内の大口需要家はパナソニックやシャープなど電機メーカーやダイハツ工業やダイキン工業などの機械メーカー、武田薬品工業などの製薬メーカーだ。しかし、パナソニックはシャープも含め、リストラで工場の閉鎖・集約が進む。武田も研究所を神奈川県の湘南工場に移すなど、「大企業の関西離れ」が進む。
 関電の2016年度の販売電力量は、10年度に比べて約2割減少している。震災後の節電意識の浸透や、小売りの全面自由化で顧客が新電力に流出したことが主因だ。
 関電はすでに小型原発の美浜原発1、2号機(福井県)の廃炉を決めた。関電は再稼働を決定済みの7基の原発の安全対策で約8300億円が必要になる見込み。大飯1、2号機も動かすと総額は1兆円を超える。
 東日本大震災から6年半。「原発がほとんど動かなくても電力を賄えてきた」(関電幹部)。環境問題の関心の高まりで再生エネルギーの活用が増加、太陽光パネルの価格が下がってきたことも普及を後押しする。今後、関電をはじめ既存の地方電力大手は、生き残りの道を真剣に模索しなければならない。


 中・欧の鉄道車両大手に日立は太刀打ちできるか

 鉄道車両世界二位の独シーメンスと同3位の仏アルストムが鉄道事業を統合すると発表した。シーメンスの同事業とアルストム本体とを統合しシーメンスが新会社の株式の50%を取得する予定だ。
 新会社の売上高は153億ユーロ(約2兆円)。「欧州の顔」として競い合ってきた両社だが、「アジアの支配的なプレーヤーが世界の市場力学を大きく変えた」(シーメンスのジョー・ケーザー社長)。これは2015年に中国の大手2社が統合、発足した「中国中車」を指している。
 シーメンスは当初、業界4位のカナダのボンバルディアと統合交渉を始めていたが、「一帯一路」政策を掲げ、鉄道分野まで勢力を世界的に広げる中国勢は欧州にも進出を計画。国内産業の保護を掲げるマクロン仏大統領は独メルケル首相に接近、「岐路に立つ欧州連合の結束の象徴として独仏連合による新会社を設立しよう」と掛け合ったとされる。
 日本勢では日立製作所が英国を拠点に事業を拡大してきたが、日立の鉄道事業の売上高は5000億円と中車の1/6、シーメンス・アルストムの1/4程度。「最近では車両だけでなく信号や制御システムなど、フルセットで発注するケースが主流」(業界関係者)であり、車両だけでなく地元に根ざしたシステム部門を抱えることが受注競争を勝ち抜く基本となる。「システムまで抱えることになると、日本勢は単独では太刀打ちできない」(大手証券アナリスト)というのが大方の見方だ。シーメンスに袖にされたボンバルディアも含め、中国勢と欧州連合にどう対応するか、日本勢の大きな課題だ。


 小池都政に11月麻痺説、総選挙の反動が始まる

 小池百合子・東京都知事は選挙後、「天国から地獄へ」の道中にある。待機児童やブラック企業をゼロにする「12のゼロ」を打ち立てたが、市場問題をはじめ、都政でも実績ゼロに近い。知事選では満員電車ゼロ、残業ゼロ、介護離職ゼロ、待機児童ゼロ、ペット殺処分ゼロ、電柱ゼロ、多摩格差ゼロの7項目を公約した。これを口実に知事のリコール運動の動きも見え始めた。
「小池与党」の都議会公明党も「是々非々」の対応検討をちらつかせ、素人集団の議員を抱える小池軍団は、「公明ファースト」に変質する恐れもある。
 小池都政のレームダック化を暗示したのは、10月に都民ファーストの中枢議員2人による小池知事に抗議の会派離脱表明だったが、追随者も現れそうだ。2人は小池の圧政を会見やブログ、記事で「希望の党に希望はない」「言論弾圧で羽をもがれ、さあ飛べ! とは言語道断」などと次々と告発、都民ファーストは脱輪状態となっている。
 早々と総選挙前に離党したのは、昨年の知事選から戦ってきた小池側近の2枚看板の音喜多駿(北区)と上田令子(江戸川区)の両氏。ともにテレビなどにも積極出演で知名度も高く、自民からの小池知事や都民ファーストへの批判の矢面に立ってきた。
 両氏は立場を一転させ、「都民ファーストは一部幹部だけで全てを決めるブラックボックスだ」、「マスコミにも出ないよう指示された」(音喜多都議、元幹事長)と暴露し、「調査権、質問権、資料請求権など都議としての仕事が行使できない」、「知事が国政に打ち込むのは納得できない」(上田都議)と厳しく批判を繰り返した。
 希望の党も都民ファーストも議員の自由な発言を規制気味だが、希望も、規約で設置される「ガバナンス長」については議員の行動監視だ、といった批判が出た。
 また、小池ブームに一役買った「築地女将の会」も築地移転政策を徹底的に攻撃。八月に知事宛てに豊洲移転・築地再開発の市場両立の基本方針について再考を求める要請・質問状の文書を提出したが、無視されたまま。築地再開発については「全く具体性がない」と訴え、「食のテーマパーク」の実現性を疑う。
 さらに築地市場の水産物仲卸業者で構成する東京魚市場卸協同組合も、豊洲への移転に慎重な立場の業者が提出した築地市場の跡地の再開発を積極的に進めるための議案を協議したが、採決の結果、反対多数で否決。知事は豊洲移転への賛成、反対の双方から、根深い不信感の板挟みになっている。


 財政問題に警告鳴らすCDS保証率の急上昇

 先の解散総選挙で議論されて然るべきにもかかわらず、各党党首・各立候補者から「一言もなかった」のが「CDS保証率急上昇」が秘めた危うさだ。
 CDSとは、クレジット・デフォルト・スワップの略。国債の万が一(=デフォルト)に備える金融商品で、その場合、損失が補填される。投資家間で取引される。デフォルトの確率が高くなれば、購入時の保証率が上がる。日本の国債を対象にしたCDSの保証率に変化が見られ始めたのは、各メディアが「解散総選挙か」と報じ始めた9月も下旬に差しかかった頃だ。それまで0.3%以下で推移していたものが急激に上がりはじめ、安倍首相が正式に表明した9月25日以降は0.35%を突破する動きになった。
「欧州通貨危機(1992年の英国ポンド危機に端を発し欧州通貨危機)の時期などに比べると、上昇局面とはいえまだまだ低水準」という見方もあったが、上昇を盾に名だたる格付け機関が「日本国債の格下げ/今後の見通しの引き下げ」に向かう可能性を論じる声が高まった。
 投資家の大方は総選挙で与野党とも「プライマリーバランス先送りという財源無視で、耳当たりのよい景気刺激策を打ち出す」と読んでいた。現に安倍・与党は「消費増税による財源で約一兆円分を医療・介護等の社会保障費に当て、プライマリーバランス改善に約4兆円の借金を返済する」というそれまでの公約!?を反故にし「教育無償化・社会保障を充実、実質プライマリーバランス問題先送り」とした。
 10月6日のロイターは第一生命経済研究所の首席エコノミストである熊野英生氏の「財政危機はフィクションではない」とするタイトルで警鐘を鳴らした。当然であろう。日本政府が抱える借金は約1000兆円。仮に今後「借金はしない」「政策費はゼロにする」と宣言したとしても、現行水準の「税収」では借金返済までに15年余りかかるという試算が成り立つ。誰が負担を背負うのか。
 過剰債務に関してはIMFも警戒感を露にしている。10月12日「(政府や民間部門の)過剰債務が金融危機を誘発する恐れがあるため、警戒が必要」とした上で、国別のGDPに対する債務比率を指摘している。日本は388%で、第1位。
 財政問題論議が忘れ去られないことを、切に望みたい。


 「iPhone神話」に陰り、「8」低調、高価格に嫌気?

 九月下旬に発売された「iPhone8」の売れ行きが芳しくない。日本では圧倒的人気を誇ってきたiPhoneだが、アップルの高価格路線にユーザーがついていけなくなったとの見方もあり、「iPhone神話」に陰りが見え始めたようだ。
 調査会社BCNによると、発売から十五日間の累計販売台数は、一代前のモデル「iPhone7」の三分の二にも満たず、「iPhone6」に比べると半分以下にとどまったという。これまでは新モデルが発売されるたびにショップの前に数百人が列をなしたが、今回はそんな光景はほとんど見られなかった。
 その理由として、まず「7」に比べて大きな技術的進化がみられなかったことが挙げられる。サイズも画面もあまり変わらず、強いてあげればワイヤレス充電に対応するようになったことぐらい。しかも、もっとも安い機種でも7万8800円(税別)とあっては、そうそう買い替えるわけにはいかない。
 もう1つは、アップルがiPhone誕生10周年記念として1月に売り出す「?」を待っている購入希望者が多く、「8」はスルーされたとの見立てがある。しかし、「?」も、最安モデルでも11万2800円(税別)ときわめて高額で、ユーザーが競って買いに走るかは不透明。
 iPhoneは、日本での人気は抜群だが、海外では「高機能・高価格」の強気の戦略がユーザーの支持を得られず、新興勢力に押され気味。日本でも最近は格安スマートフォンの普及で3万円台の「中機能・低価格」モデルも人気を集めるようになった。さしものiPhone信者たちも「ふところ具合」を気にしないわけにはいかなくなったようだ。


 マスコミ戦争に敗れた? 朝日OBの山田厚史氏

 今回の衆院選千葉五区(市川市、浦安市)は、候補者が読売新聞、朝日新聞、NHKの有力マスコミ3社の三つ巴の戦いだった。過去3回当選してきた自民党の薗浦健太郎氏は東大卒業後、読売新聞社に入社。千葉支局、市川通信部で合計五年間勤務した際に2年間、市川・浦安市担当をしたのが縁になって、2003年に初めて衆院選に出馬した。
 この薗浦氏と小選挙区を争ってきた旧民主党の村越祐民氏が突如出馬を辞退したことから、「市民連合」(山口二郎法政大教授)や地元の民進党支持者らを中心に後継候補を模索する動きが始まり、白羽の矢が立ったのが浦安市在住の元朝日新聞編集委員の山田厚史氏だった。山田氏は公示直前の10月5日、「義を見てせざるは勇なきなり」と立憲民主党からの立候補を決めた。山田氏は朝日の経済部を代表するスター記者で、1990年代後半の不良債権処理問題では、テレビ朝日系列の「朝まで生テレビ」「サンデープロジェクト」などに出演し、舌鋒鋭く銀行経営者や財務官僚を批判して注目を集めた。
 そこに希望の党から割って入ったのが、NHK松山放送局のアナウンサー出身で、浦安市議を務めてきた岡野純子氏。地元政治家としての実績と小池百合子党首とのツーショット写真を選挙ポスターにして“風”を見込んだものの、小池氏の「排除」発言で一転して逆風にさらされた。
 結局、折からの立憲民主党ブームも六日前決断の「助太刀」(本人)の山田氏には届かず、薗浦氏に大差で敗退。政治家に1歩踏み出したジャーナリストは、さて……。


 大手調剤薬局で頻発する無診察処方箋事件

 大手調剤薬局のクオール、アイセイ薬局に続いて、今度は全国に約400店舗の門前薬局を展開する「メディカルシステムネットワーク(メディシス、東証1部上場)」が処方箋「付け替え請求」事件を起こした。
 同社の東海・北陸地区を担当する子会社「シー・アール・メディカル」で、薬剤師でもある取締役事業部長が従業員とその家族から「欲しい医薬品」を募り、馴染みのクリニックに持ち込んで無診察で処方箋を書いてもらい、自社の調剤薬局五店で調剤させていた。無診察で集めた処方箋は八十枚に上る。
 こういった「付け替え請求」の狙いは、調剤報酬の引き上げにある。調剤報酬には薬局ごとに医療機関からの処方箋の集中率に応じて調剤基本料が定められている。多くの医療機関から処方箋が集まる調剤薬局は「調剤基本料1」で、処方箋1枚につき41点(410円)、1医療機関に集中している薬局は「基本料2」とされ、25点(250円)だった。が、昨年度から「基本料3」が新設され、大手調剤薬局チェーンに対しては一医療機関からの処方箋集中率が95%を超える薬局は20点(200円)に引き下げられた。
 痛手を受けた大手調剤薬局チェーンはその抜け穴として従業員から処方箋を集め、傘下の薬局に付け替えて処方箋集中率を引き下げる不正行為に走ったのだ。基本料3の薬局を基本料1にすれば、年間数百万円を不正取得できる。実際、メディシスでは80枚の処方箋付け替えで5店舗中、3店舗を基本料1に格上げさせていたという。


 金正恩をロシアに亡命させ習近平主席は権力基盤固め

 先の共産党大会を通じて、専制君主型支配体制を確立したかに見える中国の習近平政権の2期目だが、軍事外交的には強硬路線を進めそうだ。
 まず外交面の変化として、14年ぶりに外交担当の副首相を置き、北朝鮮への対応や対米関係を1本化することにしているとみられる。
 当面の課題は、11月初旬のトランプ米大統領訪中で北朝鮮の体制転換を米中の協力の下で行うのか、それとも話し合いが物別れに終わった後、中国のみで軍事力を行使して北に新体制を作るのかで、今はその決断が迫られている。
 その際はいずれも金正恩はロシアに亡命させる可能性が高いが、その際、プーチン露大統領がロシアへの国連経済制裁を解除することを条件にその亡命を引き受ける可能性が高い。仮に朝鮮半島情勢が中国の思惑通りに動けば、中国の東アジアでの勢力拡大がいよいよ懸念される。中国はすでに韓国に対して中韓通貨スワップ協定額560億ドルを3年間延長することを認め、韓国を経済的に影響下に入れようとしている。
 その先に予想されているのが、2020年をめどに台湾を併合する計画だ。これが実現すると、習近平主席の権力基盤は一層強まり、3期目の政権も可能となる。
 日本も当然強硬な反対を展開することになるが、その際は、尖閣列島での紛争を止めて、台湾併合を認めさせる方向での妥協を中国は考えている。日本の国難はこの時点でピークに達する。さて、如何に。


 4選目狙うプーチン氏、国内経済低迷で戦略変更

 来年3月18日のロシア大統領選で4選を狙うプーチン大統領は、選挙戦略の目玉に教育、医療、年金を掲げており、これまでの「地政学的野望」を前面に出したプーチン氏から変身を図りそうだ。
 クレムリンの選対チームが策定中の選挙戦略は、ウクライナ危機に伴う欧米の経済制裁や原油価格下落で経済が低迷していることから、国民の関心が生活苦や民生向上に移っていることを重視。所得増や教育改革、住宅問題解決、介護体制強化、医療水準向上、汚職追放などを最優先課題に掲げる方針という。プーチン氏は11月にも出馬表明する見通しだ。
 プーチン大統領は6月の国民とのテレビ対話でも、「次期大統領の最重要課題は国民の所得増や民生向上だ」と述べ、医療、教育、住宅に直結した問題に取り組む姿勢を強調した。
 ロシア経済は昨年まで2年連続でマイナス成長となり、実質可処分所得も5年連続で減少しているため、国民の不満が高まりつつある。大統領自身、9月の統一地方選前に頻繁に地方を訪れ、地方の不満を吸い上げ、評判の悪い知事を次々に更迭してしのいだ。
「教育、医療、年金が目玉では、どこかの国の政治家と変わらない。地政学的野心や米国への挑戦、旧ソ連圏での膨張を前面に出さないと、プーチン大統領も三流政治家になってしまいます」(モスクワ特派員)
 つまりそれだけ、ロシア経済は閉塞感を高め、プーチン大統領も「苦手」の医療、教育、年金に着手せざるを得ないということだ。しかしプーチン大統領が「プーチンらしさ」を失えば、支持率は低下し、レームダック化が進みかねないだろう。


 欧州委員会がアマゾンに300億円超の追徴課税命令

 欧州連合(EU)欧州委員会はこのほど、ルクセンブルクによる米アマゾン・ドット・コムに対する優遇税制がEU規則に違反する国家補助に当たるとして、同国政府に対し、アマゾンへの追徴課税を命じた。追徴額は2億5000万ユーロ(約330億円)程度になるとしている。同社は受け入れられないとして、徹底抗戦の構えだ。
 欧州委員会のベステアー委員(競争政策担当)は声明で、「同じ税制の対象となる他社と比較した場合、アマゾンの増税額は1/4で済んでいた。これはEUの国家補助規制に抵触する」と指摘。その結果、「同社の利益の約3/4が課税されていなかった」と説明した。EU加盟国が多国籍企業を誘致するため課税を優遇すること自体は違法ではないが、欧州委員会は、特定の企業だけを優遇することを問題視している。
 これに対し、ルクセンブルク政府は「アマゾンは国家補助を受けていない」と反論、訴訟も辞さない姿勢を示した。アマゾンも「ルールに従って納税している」として欧州委員会の指摘を検討した上で法的な手続きを取る可能性を示唆している。
 欧州委員会は昨年、米アップルがアイルランド政府から違法な国家補助を受けていると認定し、最大130億ユーロ(約1兆7000億円)の追徴課税を求めた。欧州委員会は、アイルランドが追徴を履行していないとし、EU司法裁判所に提訴する方針を明らかにした。
 IT大手など米大手企業はEU加盟国での優遇措置を受けるため、アイルランドやルクセンブルクに拠点を設置。ここにきて欧州委員会がそれを問題視し、相次いで追徴課税などを課す方針を打ち出している。米国では、「米企業を狙い撃ちにしている」との反発も起きている。


 ロヒンギャ迫害でミャンマーが反論攻勢

 イスラム系少数民族ロヒンギャに対する弾圧で国際社会から総スカンを食い、すっかり悪者にされた感のあるミャンマーが反論攻勢に出ている。アウン・サン・スー・チー国家顧問のノーベル平和賞剥奪を求める国際世論が高まるに至り、黙ってはいられなくなったようだ。
 スポークスマン役を買って出ているのは国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官。ミャンマー政府はロヒンギャを「ミャンマーの民族ではない」との立場を取り、これを根拠に国籍を与えていない。総司令官は公式フェイスブックでロヒンギャにまつわる「正史」を紹介。1942年に仏教徒2万人以上がロヒンギャに惨殺された歴史は「覆い隠しようがない」と力説し、西部ラカイン州に居住するロヒンギャは「違法に土地を占拠している」と強調した。
 そんな中、ミャンマー政府に思わぬ援軍が現れた。米国の元外交官で、駐ミャンマー代理大使も務めた米平和研究所のプリシラ・クラップ上級顧問だ。同氏は、ロヒンギャの大量出国のきっかけとなった8月のロヒンギャ武装集団と治安部隊の衝突は「外国勢力から資金を受けたイスラムのテロ組織が治安部隊を標的に攻撃した」と持論を展開。パキスタンやサウジアラビアを拠点とするロヒンギャがラカイン州に侵入し、「テロ」を実行したと語った。
 ロヒンギャの武装集団に外国のイスラム過激派が紛れ込んでいるという観測は消えない。とはいえ、わずか2カ月間に約60万人もの難民が発生し、劣悪な衛生状態の中、殺人や性的暴行の犠牲になっているというのは紛れもない事実で、ミャンマーの釈明はむなしく響いている。


 バブル都市の惨状を尻目に習近平が新都心計画を発表

 中国人さえ呆れたのは世界に悪名が轟いた内蒙古省オルダス市郊外カンバシ区に百万都市を謳ったゴーストシティの出現だった。
 百万都市といいながら、住民は2万8000人しかいないゴーストシティの見学に中国全土から「見物客」があとを絶たない。そのため中心部のホテルだけが混み合い、閑散とした住宅街には強制移転させられた建設業者や市関係者が住む。
 胡錦濤時代に「世界一のエコシティ」を建設すると意気込んだ「曽妃旬工業団地」も、唐山の海を埋め立て9割方できたが、追加予算が認められずプロジェクトは中止、今は廃墟の惨状を晒している。中国全土でマンションだけでも8000万戸の空室があり、これからの問題は邦貨換算で3700兆円といわれる負債の爆発だ。
 こういう状況下、習近平主席は真逆のプロジェクト=新都心建設を打ち上げ、「国家1000年の計画であり、必ず実現する」と豪語した。北京の人口集中と公害、交通渋滞。物価高等を解消するには代替都市を建設するのがベストと、北京郊外に「第2の上海浦東」を目指す「雄安新都市」を建設し、百万都市として社会科学院など行政機関と国有企業の本社を強制的に移転させる計画だ。
 この発表直後、雄安県の土地が4倍に急騰し、関連の建設業の株価がストップ高となった。慌てた共産党は不動産業者に通達し、土地の売買を禁止するという暴挙にでた。
 一方、リベラルな学者や知識人が集う社会科学院などでは、「習近平が潜在敵を北京から追い出すというのが真意ではないか」と早くも別な解釈と疑心暗鬼が広がっている。


←10月号へ                 Top                 12月号へ→

ダミー
ダミー
ダミー

(C)2017 株式会社エルネオス出版社. All rights reserved.
〒105-0003 東京都港区西新橋1-22-7 丸万7号館4F 
TEL.03-3507-0323 FAX.03-3507-0393 eMAIL: info@elneos.co.jp