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彼我に圧倒的差がない今の北朝鮮に圧力のみで対応するのは無理がある。安倍首相もトランプ大統領も考えるべきだろう(写真/ホワイトハウス)

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東郷和彦(とうごう かずひこ)
1945年1月10日生。68年東京大学卒業、同年外務省入省。98年条約局長、99年欧亜局長、2001年在オランダ大使等歴任。現職は京都産業大学教授、世界問題研究所長、静岡県対外関係補佐官。

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■特別寄稿――東郷和彦(京都産業大学教授・世界問題研究所長)


安倍政権の内政対応で懸念する
取り返しのつかない外交遅延


■外交は情け容赦なくおのれの論理と力関係で動く。外交で着実な成果を上げてきた安倍首相が幾多の内政問題に苦慮していても、北朝鮮問題や対露外交には全く顧慮されない――

内政問題に批判集中で
名状しがたい不安感


 2012年末に2回目の政権をとってから、総じて安倍内閣は順調な歩みを進めてきた。経済を先行させ、政治と安保は後出しさせながらかなり見事な交通整理をし、ひとつひとつ片付けてきた。経済社会問題に当初喧伝されたほどの成果が見られないという不安こそあれ、おおむね今年の春までは、このまま3期9年を全うする順風が吹いているかに見えた。
 ところがこれまで順調に推移してきた内閣支持率の数字に、17年3月以降、黄色信号が点滅し始め、6月から7月にかけて、これはひょっとすると赤信号ではないかと考えさせられ事態が起きた。安倍内閣を全体的に支持しているとみられる読売新聞の調査を見ても、2月には66%あった支持率が3月に10ポイント下がって56%と下降が始まり、4月、5月には60%、61%とやや持ち直したものの6月には49%、7月には36%へと急落。不支持率も2月は24%だったが7月には52%と支持率を大きく上回る数値となった。他の報道機関でも、7月は、毎日新聞の支持率が26%(不支持率56%)、時事が支持率29.9%(不支持が48.6%)と、政権安定のバロメーターの30%を切ったのが注目された。
 3月に支持率低下が始まった契機は「森友学園問題」であり、5月以降急激な低下につながった契機は加計学園をめぐる「獣医学部新設問題」であり、6月、7月の東京都議選以降は「稲田大臣発言」が事態に拍車をかけたと分析された。
 以上のように日本国民の意識とマスコミ報道の大半が、いくつかの国内問題に対する安倍政権の対応に対する強烈な批判に集中した状況に、私は、名状しがたい不安を感じた。批判の内容が的外れだと思ったからではない。国内政治問題への関心の集中により、日本が直面する国際政治問題、特に、北東アジアの外交・安保問題に取り返しのつかない真空が発生してはいないかとの不安がゆえである。
 声を大にして言わねばならないのは、国際問題は、我が国の国内問題を全く顧慮することなく、情け容赦なくおのれの論理と力関係で動く。問題の座標軸が動いてしまった後に日本が「ちょっと待ってください。日本としてはこういうふうにやりたかったのです」と言っても、いったん動いてしまった座標軸は決して元にもどらない。「すいません。国内問題に忙殺されていたので、対応できなかったのです」と言っても「それはあなたの勝手でしょ」で終わる。この間に失ったもの、あるいは、取りはぐれたものは決して戻ってこない。
 そういう意味で、今年の6月から7月、日本外交の喫緊の国益に関わり、瞬時も注意を怠ってはならなかった問題は、北朝鮮とロシアの2つの問題だったと考える。

北朝鮮問題の平和的解決と
日本の危険水域


 北朝鮮情勢については言うまでもないが、トランプ政権発足後、北朝鮮は12回のミサイル発射実験をくりかえした。振り返ってみよう。

2月12日 北極星2
3月6日 スカッドER改良型
3月22日 実験失敗
4月5日 北極星2(推定)
4月16日 実験失敗
4月29日 実験失敗
5月14日 火星12
5月21日 北極星2
5月29日 スカッド(推定)
6月8日 地対艦巡航ミサイル
7月4日 火星14
7月28日 火星14(改良)

 この間、確実に、ミサイルの飛行距離が伸び、性能が改善されてきた。「火星12」が飛行距離5500キロメートルを超える「大陸間弾道弾(ICBM)」であるか否かについては専門家の間で若干の議論があった。しかし、7月4日発射の「火星14」については、ティラーソン米国務長官、米国防総省ともに発射後まもなくICBMであることを是認、その後の報道では、飛翔時間37分・到達高度2500キロメートル超の2段式ICBMと伝えられた。
 さらにそれを改良したとされる7月28日発射の「火星14」は、飛翔時間45分・到達高度3700キロメートル超の3段式ICBM(推定)と報じられ、米本土の東海岸からヨーロッパも射程に入ると報じられた。
 北朝鮮のミサイル実験は今、かなりの正確さをもって日本の近海に落下してくる。これだけでも危険極まりない。そんな北朝鮮への対応として安倍政権は、「今は圧力の時」で一貫している。そのための、関係国との提携を模索している。その1つの成果は、8月5日の国連安保理が中国・ロシアを含めた全会一致で採択した北朝鮮制裁決議だった。
 けれども、関係国の足並みが一致しているかといえば、それにはほど遠い。中国とロシアは、「圧力のみ」の政策に賛同したことはなく、常に「交渉も必要」ということを公にしてきたし、韓国で新たに成立したムン・ジェイン(文在寅)政権も対話の必要性を公言し、その方向に向かっての個別イニシアチブを発揮し始めた。
 米側においても「対話」へのシグナルもないわけではなかった。5月18日はティラーソン国務長官は、ムン・ジェイン大統領の特使に対し「北朝鮮の政権交代を求めず、侵略もしない」「キム(金正恩)政権の体制を保証する」「北が核廃棄の意思を示せば米国も敵意を見せる理由はない」と述べた。翌19日にはマティス国防長官は記者会見で「軍事的な解決に向かえば信じられない規模の悲劇になるだろう」と述べ、軍事攻撃については慎重な姿勢を示した。
 だが、現時点で、外交はまったくうまくいっていない。5月の米側の融和発言のあと、北朝鮮は7月にICBMを実験、8月9日には、「北朝鮮の威嚇が続けば、見たこともないような、炎と怒りと力を受けることになる」(トランプ)、「火星12号によるグアム島周辺の包囲射撃を検討している」(朝鮮中央通信)という挑発発言が乱舞しはじめた。
(以下、本誌をご覧ください)
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