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■北朝鮮問題――濱本良一(国際教養大学教授)


“米中蜜月”は風前の灯で
金正恩委員長だけが高笑いする


■北東アジア政治にはディール外交は馴染まないと、トランプ大統領はわからなかった。一方の習近平主席も北朝鮮への影響力のなさを露呈した

不動産王大統領の
ディール外交は限界


 北朝鮮のミサイル・核開発を最大の脅威と位置づけたトランプ米政権が演出した“米中蜜月”は風前の灯の状態に陥った。北朝鮮の金正恩・労働党委員長と会談したことがない習近平・中国国家主席の、北朝鮮への影響力には当初から限界があった。一党支配という共通の政治体制であり、朝鮮半島の地政学的な背景からも中国が北朝鮮に強く敵対することはないというのが北東アジア政治の常識だ。それがわからないのが不動産王トランプ氏の限界である。損得だけのディール(取引)には馴染まない民族の歴史的怨念が核兵器と複雑に絡み合っている。周辺国の安全保障にも影響が及ぶことを考えれば、一筋縄では解決できないのだ。
 移り気なトランプ氏のこと、これがダメならあれと、返す刀で貿易赤字の解消に対中圧力をかける雲行きになっている。何のことはない、高笑いしているのは金正恩氏だけではないか。そんな構図からは何としても抜け出さねばなるまい。
 今年初めに大統領に就任したトランプ氏は、4月上旬にフロリダ州の別荘マール・ア・ラーゴで習近平氏との初の米中首脳会談に臨んだ。この会談で双方は「100日間」(7月16日まで)で、通商問題だけでなく、北朝鮮問題も解決することで合意し、後者が解決できれば、米側は対中通商摩擦の軽減圧力は加えない方針だったとされる。しかし、このデッドライン1カ月前の6月半ばには風向きは明らかに変わったのである。

中国企業への制裁と
台湾への武器売却


 米司法省は6月15日、遼寧省瀋陽市の貿易会社「明正国際貿易」を北朝鮮と取引のある中国企業と認定し、約190万ドル(約2億1000万円)の没収を求める法手続きを連邦地裁に起こした。中国人を代表権者とする同社は、米政府が2013年に制裁対象とした北朝鮮の貿易決済銀行「朝鮮貿易銀行」が中国内に開設したフロント企業と米司法省は見ているのである。
 事実、同社は15年秋に「朝鮮貿易銀行」に替わって中国内の銀行の口座を利用して、今回の訴訟対象である190万ドルを電信送金し、マネーロンダリング(資金洗浄)した疑いが濃厚である。この資金洗浄には、米国の金融システムが利用されており、米国内法に違反している、というのが米政府の立場だ。
 続いて6月29日には同じくマネーロンダリングに関与したとして中国遼寧省丹東市の「丹東銀行」を制裁対象に指定し、同銀行と米金融機関との取引を禁止すると発表した。同時に、遼寧省本渓市本渓満族自治県に住所を構える李紅白(52)と孫偉(34)の中国人2人と、同省大連市の海運会社「大連寧聯船務」も北朝鮮と違法な取引をしたと見て制裁対象に加えた。中国遼寧省はじめ東北地方は、北朝鮮の隣接省だけに関係は深いのである。
 中国外務省はいずれも激しく反発、「朝鮮貿易銀行は国連安全保障理事会の制裁対象ではなく、米国内法に基づく司法管轄権を他国に適用するのは不公平なやり方だ」(陸慷報道官)と声を荒らげたが、米国には通じていない。
 これがいわゆる「第2次的制裁(セカンダリー・サンクション)」と呼ばれる第3国の企業や銀行を対象にしたもので、トランプ政権が従来から中国側に期待していた1歩踏み込んだ有効性の高い制裁だった。
 習近平政権はこれを機に米国への対応を改め、トランプ政権への警戒感を一段と高めることになる。なぜなら追い打ちをかけるように米国務省は6月29日、台湾に14億2000万ドル(約1570億円)に上る武器売却の承認へと踏み込んだからだ。米国が売却する兵器は、迎撃ミサイル「SM2」や空対地ミサイル、魚雷や早期警戒レーダー支援などで、攻撃性の高いF16戦闘機や潜水艦などは含まれていない。しかし、習近平政権にとって台湾は「核心的利益」と呼ぶ、祖国統一に向けて譲れない一線を意味する。
 台湾への武器売却はレーガン政権以来、歴代米政権が実施しているものだが、トランプ氏の場合は米台断交以降、どの大統領も踏み込まなかった台湾総統との電話会談を敢行しているだけに、中国はトランプ氏に対する抜きがたい不信感を募らせていよう。

米不信を決定づけた
航行の自由作戦


 さらにダメ押しとなったのが、米海軍による南シナ海での「航行の自由」作戦である。米海軍は7月2日、パラセル(西沙)諸島のトリトン(中国名・中建)島周辺で、イージス艦「ステザム」を同島から12海里(約22キロメートル)以内の海域で航行させた。ステザムは航行中に中国軍艦の追尾を受けたが、衝突が発生しなかったのは幸いだった。同島は1974年以来、中国が実効支配しているものの、ベトナムや台湾も領有権を主張している。トランプ政権発足後の5月に続く2度目の同作戦だった。
 7月7日にはグアム島から飛来した米軍爆撃機B-1Bの2機が、東シナ海・沖縄県の上空付近で航空自衛隊のF15J戦闘機2機と夜間合同訓練を実施した。B-1B機はその後、南下して、南シナ海で通算3回目の「航行の自由」作戦を敢行した。
 この間、6月21日にはワシントンで初の「米中外交・安全保障対話」が開催されたものの、北朝鮮をめぐる問題や南シナ海問題で膠着状態に陥ったのは当然の成り行きだった。会談終了後、米側のティラーソン国務長官やマティス国防長官は揃って会見したものの、楊潔 国務委員(外交担当)や房峰輝・中央軍事委参謀長は不快感からか姿を見せなかった。
 ティラーソン長官は会見で、米中両国の企業が、国連の制裁対象に指定された北朝鮮企業と取引すべきでないことを確認した点を取り上げ、「中国は一層強く経済的、外交的圧力をかける責任がある」と、苛立ちを隠せない様子だった。会談で長官は激しく中国を突き上げた姿がうかがえた。

中露首脳会談で
米国離れを宣言


 これらの交渉を受けて7月7、8両日のハンブルクでの主要20カ国・地域首脳会議(G20)を利用して行われた第2回米中首脳会談でも、打開策は得られなかった。
 習氏はハンブルク入りする直前にモスクワを訪れ、プーチン露大統領と7月3、4日の2日間にわたり会談した。ここで双方は、北朝鮮問題の平和的解決を再確認し、北のミサイル・核実験の凍結と米韓合同軍事演習の凍結を同時実施する「双方一時中止」を提起し、米国の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備に反対の立場も打ち出した。習氏はトランプ政権と一線を画す態度を鮮明にしたのである。
 習-プーチン会談が実施された7月4日には北朝鮮が米国の制裁を嘲笑うかのように大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射を成功させており、習氏としては完全にメンツを失ったが、米中の齟齬が露わになっていた分、緩和されたといえるだろう。
 米国は国連制裁に加えて、独自政策を加味して北朝鮮に圧力を加え続けるだろう。中国への依存には限界もあることを思い知ったトランプ氏だけに、当面の対中対応には戸惑いも見られる。
 米中両国のハネムーン状態が2カ月余りで終結した影響は日本にも及ぶだろう。
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