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 「長崎原爆の日」式典の「平和宣言」にも“忖度Uか

 8月9日の「長崎原爆の日」の平和祈念式典で田上富久市長が読み上げる「平和宣言」に、安倍晋三首相への「忖度」が働いているのではないか──。地元・長崎市の被爆者らによる市民団体などが「平和宣言」から政府に対する批判が消えたことを疑問視して、「首相が意欲を燃やす憲法9条改正に警鐘を鳴らす文言を盛り込んでほしい」と市長に「要請書」を突き付けた。市長に背後から強く働き掛けたとして、閣僚経験はないものの県内では有力な自民党の衆院議員の名前が市民の間で取りざたされてもいる。
 長崎の「平和宣言」はこれまで、平和主義に立脚して集団的自衛権の行使容認や安全保障法制の制定に関して政府に慎重な対応を求めるなどして、出席した首相をたじろがせたことがあった。しかし、昨年、政府批判のトーンが急に弱まった。今年もまた、3回開かれた起草委員会で複数の委員が9条改憲の動きへの懸念を明記するよう求めたものの、市が示した「最終案」に盛り込まれなかった。
 最終案は、核兵器禁止条約に関する記述がほぼ半分の量を占めた。しかし、政府が禁止条約に反対し、交渉に参加していないことを記してはいない。また、特定秘密保護法、安全保障法制、「共謀罪」法にも触れていない。このため、地元の長崎新聞は「論説」で「市長は基本的にあらゆる政府批判をしたくないのだろうかと勘繰りたくなる」と指弾。市民団体の要請書も「安倍政権の意向に対する市の『忖度』があると判断せざるを得ない」としている。
 要請書は「9条改憲反対の声を被爆地・長崎から強くあげていくべきだ」「被爆地の切なる願いがまったく消えてしまっている」と訴える一方で、「市の姿勢の変化」を指摘している。「起草委員会から、集団的自衛権行使解禁に否定的であった3人のメンバーが突然外されたことが象徴的」だという。また、平和祈念式典での被爆者代表による「平和への誓い」についても、「代表の選定が、被爆者5団体による持ち回り方式から、市の設置する選定審査会によるものへと変更された」と指摘する。
 市が次々に手を打ってきたことで、「平和宣言」も「平和への誓い」も当たり障りのない内容になる。田上市長の姿勢が劇的に変わったのは確かだ。加計学園をめぐる疑惑における文部科学省のように告発する職員が市からも現れないと、その理由、経緯は明らかにならない。「平和都市」を自任してきた長崎市は今後、「忖度都市」と呼ばれるようになるのだろうか。


 都議選7回連続全員当選、それでも喜べない公明党

 東京都議選で公明党は前回同様、擁立した23人全てが当選した。全員当選の記録を7回に伸ばし、支持母体の創価学会内は「国政においても、地方政治においても、公明党の存在感はますます際立ってきている」(原田稔会長)と意気上がるが、結果を詳細に分析すると、必ずしも手放しでは喜べないのが実情だ。
 公明党の総得票は73万4697票。創価学会の機関紙「聖教新聞」は前回(63万9160票)から「約10万票近く上回った」「素晴らしい勝利」などと支持者に向けに成果を強調するが、そもそも投票率が7.78ポイント上昇し、投票総数自体が増加。増えた中には、新たに候補者を立てた北多摩3区の分(約3万票)も含まれている。
 また、公明党は前回に引き続いて候補者を立てた20選挙区のうち、「17選挙区で得票を伸ばした」(公明新聞)とアピールするが、得票率(17.97%)は前回(19.53%)から1.56ポイント低下させている。さらには、同党の候補者は宣伝用のポスターに小池百合子知事の写真を大きく載せ、選挙戦では小池知事の応援を受け、「小池人気」の恩恵に預かった面もある。仮に、連立を組む自民党との信義を重んじて、小池知事率いる「都民ファーストの会」との選挙協力に踏み切らなければ、全員当選できたかはわからない。これを考慮すれば、「公明の底力が発揮された」(聖教新聞)と言える状況にはなく、むしろ「底力=集票力=は低下した」と見るのが妥当だ。
 公明党・創価学会が素直に喜べないもう1つの事情は、「卑劣な実績の横取り」(同)などと激しく非難してきた共産党に新宿区、杉並区の2選挙区で得票が下回ったことだ。対共産党では、「完勝」はならなかった。「常勝」を掲げる創価学会は、組織の威信を保つため、候補者を立てたら必ず当選させるのが選挙の基本戦略。今回も、世田谷区の現職1人を北多摩3区に回したが、結果的に世田谷区で2人当選できる得票を挙げていた。対する共産党は小池知事に是々非々の立場で臨み、前回から2議席増の17人が当選。公明党との議席差を縮め、それこそ、底力を見せつけたといえる。
 新宿区の候補者は告示直前、創価学会の婦人部員との「店内キス」の写真が流出し、週刊誌に取り上げられた。緊張感の乏しさを露呈した上、政敵? の共産党に得票争いで敗北し、組織の威信を大きく傷付けた。本人と創価学会の責任者は、「針の筵」状態がしばらく続く。


 北朝鮮弾道ミサイル迎撃にイージス・アショア導入へ

 北朝鮮が断続的に発射を続ける弾道ミサイルに対し、防衛省は8月に公表する来年度防衛費の概算要求に新型迎撃ミサイルのイージス・アショアの導入に向けた関連経費を盛り込む方針を固めた。
 イージス・アショアはイージス護衛艦に搭載されている迎撃システムを地上配備型に改良したもので、米政府とNATOはイランの弾道ミサイルに対抗して、ポーランドへの配備を進めている。
 日本のミサイル迎撃システムは、日本海に配備したイージス護衛艦の搭載する艦対空ミサイル「SM3」で迎撃を試み、失敗したら地上配備の地対空ミサイル「PAC3」を使って2段階で対処する。イージス・アショアはこの迎撃体制を強化する。
 防衛省は米軍が韓国に配備したTHAAD(高高度迎撃システム)と比較検討してきたが、迎撃範囲が広く、1〜2機で日本全国をカバーできるイージス・アショアに固まった。
 ただ問題も少なくない。1つは、強烈な電磁波を出すレーダーを地上に置くことによる人体や日常生活への影響だ。イージス護衛艦の場合、航行中はレーダー波を出すため乗員は甲板へ出ることを許されていない。
 それほど強烈な電磁波を出すイージス・アショアを既存の自衛隊基地に配備するのは不可能に近く、あらたな用地確保が欠かせない。配備が見込まれる日本海側の近隣住民から理解を得るのは容易ではない。
 価格の問題もある。導入方式は米政府が日本政府に販売する対外有償軍事援助(FMS)となるが、FMSは、(1)契約価格、納期は見積もりであり、米政府はこれらに拘束されない、(2)代金は前払い、(3)米政府は自国の国益により一方的に契約解除できる、という一方的な売買方式だ。
 すでに多くの武器類をFMSで購入している防衛省はイージス・アショアを通じてさらに米側の「言いなり」になることを求められる。
 イージス・アショアは実験施設がハワイのカウアイ島に置かれ、米政府は設置に約1000億円を投じた。日本が導入する場合は開発費用の一部負担を求められるうえ、1発30億円もするミサイルは別料金。用地の取得費用も含めれば、初期投資だけでも数千億円にのぼるとみられる。
 防衛省はすでにミサイル防衛に1兆4000億円を投じた。イージス・アショアの導入により、さらに費用が増すのは確実だが、それでも100%迎撃するのは不可能だ。1発でも撃ち漏らし、それが原発に命中したとすれば、通常弾頭であっても原爆落下と同様の未曾有の被害になる。
 北朝鮮が望む米国との米朝平和協定の締結が実現しない限り、日本が安心できる日は来ないことになる。


 3期目の森金融庁長官に凄腕の「助さん・格さん」

 辣腕行政で知られる森信親金融庁長官が異例の3期目の行政を担うことになったが、その長官補佐役の金融庁参与に水戸黄門流の助さん、格さんと言っていいような民間金融を知り尽くした凄腕の人材を置いたため、金融関係者は戦々恐々状態だ。
 その2人というのは、三菱UFJフィナンシャル・グループ元副社長の田中正明氏と三井住友銀行元副頭取の高橋精一郎氏。田中、高橋両氏とも現役時代は、金融経営の現場でその手腕が認められ、ナンバー2ともいえる副社長、副頭取ポストまでのぼりつめただけに、森長官と並んでの辣腕ぶりは保証済み。
 中でも田中氏は、三菱UFJフィナンシャル・グループでロジックがしっかりしていて怖がられる存在だった。そのあたりが見込まれ金融庁の有識者会議のメンバーになったが、その会議で“信託銀行に利益相反リスク問題あり”という民間金融機関にとって急所ともいっていい問題を指摘して信託銀行関係者を震え上がらせた。
 高橋氏も同じく動じないところがあって、専門分野の金融市場の改革問題については鋭い問題意識を持ち、現役時代から森長官からアドバイスを求められるほどだった。
 攻守ところを変えて、今後は金融行政サイドから森長官の補佐役となって、金融の改革課題に関してノウハウを伝授するのは間違いない。その意味で、森長官にとっては頼りになる存在で、文字通りの助さん・格さんといえる。しかし民間金融機関側が戦々恐々なのは、森長官が過去2年間、金融行政面では大胆な行政を行ってきており、その仕上げともいえる3年目で、今回の強力な助っ人を脇に置いて何をするのか見えない部分も多いからだ。
 森長官自身は、これまで金融マニュアルで当局の考えを周知徹底させるというやり方をやめ、金融機関が切磋琢磨の競争で生き残りを図ると同時に、顧客本位の金融機関に変われと要求してきており、そこに今回の参与の2氏が厳しいアドバイスをするのは間違いないところ。
 普通ならば、民間金融機関側は次期金融庁長官候補と目される監督局長の遠藤俊英氏、金融国際審議官の氷見野良三氏のいずれに決まるのだろうかと関心を示すのに、現時点ではもっぱら森長官が助さん、格さんと一緒に何をしようとするのか探るのに躍起だ。


 JA全中会長選挙で小泉進次郎議員に「NO!」

 7月5日に開票された全国農業協同組合中央会(JA全中)の会長選結果に農林水産省が揺れている。現職の奥野長衛会長の後継と目された須藤正敏氏(JA東京中央会)を、守旧派の中家徹氏(JA和歌山中央会)が88票対152票の大差で破った。日欧EPA交渉が大詰めを迎える最中での選挙で、都市型農協と田舎農協の戦い、東西対決という構図もあり注目されたが、当事者さえ「ここまで差がつくとは意外だ」(農協幹部)と驚きを隠せない。
 また、別の農協関係者は、「JA全中・全農改革の旗を振ってきた小泉進次郎氏(自民党農林部会長)と、小泉氏を黒子として支える農水省の奥原正明事務次官にとって非常にショックな選挙結果だろう。JAの総意として小泉改革にノーを突き付けたようなものだからだ。政府に理解を示してきた奥野路線からの転換は避けられない。両者の間合いは確実に変わってこよう」と語る。
 中家氏は開票直後の記者会見で早々と、政府主導の農業改革について、「改革は必要だが、守らなければならないものもある」と釘を刺した。
 中家氏はJAグループが創設した中央協同組合学園(現JA全国教育センター)の1期生で、同学園校友会会長。「恩師でもある宮脇朝男元全中会長を尊敬してやまないゴリゴリの協同組合主義者」(農協関係者)だ。
 その中家氏を陰で強力に支援したのは、JA全農の中野吉實会長(JAさが中央会前会長)というのが農協関係者の共通した見方だ。中野会長は「日本の肥料農薬は韓国の2倍、3倍高い」と小泉氏から糾弾され、昨年の全農改革を押し切られた経緯がある。今回の全中会長選でそのお返しを果たしたようなものだ。
 農協改革を強引に進める安倍政権と中野氏との確執は2015年に実施された地元佐賀県知事選にまで遡る。自民・公明の与党が推す前武雄市長の樋渡啓祐氏が、農協が推す元総務省官僚の山口祥義氏に敗れたのだ。農協改革を争点に保守分裂選挙といわれた同知事選には、官邸から多忙を押して菅偉義官房長官が現地入りしたが、一敗地にまみれた。
 小泉氏が進める農協改革の最終着地点は、協同組織の農協を株式会社化させ、金融部門を分離することにあるとみられている。税制など各種の恩典がある協同組織を株式会社に転換し、儲け頭の金融を分離して農協は生き残れるのか。中家新会長の手腕が問われるが、来年には衆院選もあり、自民党内から農協を敵に回すことに異論が噴出しかねない。


 「失速」示すデータ続々、ニッポン科学技術の危機

 「最近の日本の科学技術研究はあまりにもお粗末、このままでは国力の衰退を招く」。こんな声が研究者の間で急速に高まっている。日本の基礎科学研究がこの10年間で失速していることを数字が物語っているからだ。
 ネイチャーインデックス2017日本版によると、日本の論文出版数は12年から16年にかけて6%も減った。15年と05年を比較すると、14分野中11分野で減少し、日本が強いといわれる材料科学や工学では10%以上も減少。この結果、全世界8000以上の大学、研究機関の全論文中の日本のシェアは7.4%から4.7%に下落した。日本の論文総数が2000年から横這いなのに対し、中国の急増が目立つ。06年に中国に抜かれ、08年にはドイツにも抜かれてその差は広がる一方で、国別の被引用度の高い論文シェアでも4位から10位へと大きく後退。まさに危機的な状況だ。
 なぜそうなったか。最大の要因は04年度に国立大学を独立法人化したことにある。研究者の雇用環境が大きく変わり、正規雇用の「任期なし教員」と非正規で短期雇用の「任期付き教員」とが明確に分かれたことにある。人件費、研究費などの財源が全く別になったからだ。短期雇用者の財源は特定プロジェクトなどに向けられる競争的資金で賄われているため、研究者が自らのプロジェクト用に資金獲得競争に走る傾向が強い。それは人件費が抑制され、予算も十分とはいえない中で、1〜3年の短期間で研究成果を求められるという厳しい状況を生んでいる。
 実はこの任期付き教員が全体の4割を占めるほど急増している。とりわけ40歳以下は07年から13年までの間に2倍以上も増えた。そのことは任期なし教員の高齢化がますます進むことになる。だからこそ若手研究者の頭脳を活かすための研究開発予算を増やし、安定した雇用を保証することが重要だ。
 6月に公表された平成29年版科学技術白書でも論文数の停滞、国際的シェアの低下に危機感を示し、(1)研究費・研究時間、(2)若手研究者の雇用・研究環境、(3)研究拠点群──の3つの「劣化」が原因とし、その対応策を挙げている。
「科学は未来への研究投資」という。短期的に成果を出す民間資金とは異なり、国の予算は国力を高める長期的な基礎研究に使う必要がある。研究人材の裾野を広げるためにも、早急に若手研究者が雇用を心配せず研究に没頭できる環境を整備すべきだ。このままでは将来のノーベル賞受賞者は生まれない。科学技術立国が単なるお題目であってはならない。


 東芝とWDの契約内容判明、差し止め訴訟は無理筋

 東芝の半導体子会社「東芝メモリ」売却が難航している。四日市工場の生産で協働関係にあるウエスタン・デジタル(WD)が、「東芝メモリ」の分社化と売却に猛反対し、国際仲裁裁判所と米裁判所に売却差し止めを申し立てているためだ。
 しかし、知られていない事実がある。関係者によると、「東芝とWDの合弁契約の条文には、WDは半導体事業の分社化・売却に反対できないと記されている」という。さらに、この関係者は、「実は東芝メモリの分社化については、昨年末に両社間で合意がなされている。ただ契約書にサインしていないことから、WDは分社化は認められないと主張し始め、裁判所に提訴した。だが、米国の民法では口頭の合意が認められているためWDの主張には無理がある」とも言う。
 国際仲裁裁判所の仲裁調停には2〜3年かかることが予想されるため、短期間で判断が示されるカリフォルニアの上級裁判所に差し止め請求を行うことで、WDは東芝メモリが他社に売却されることを食い止める戦略だが、米国の弁護士によれば、東芝とWDとのジョイントベンチャー契約にはそれほどの拘束力はないという。実際このジョイントベンチャー契約には、本契約の下に、製造、設備投資、オペレーションなど事業分野別にそれぞれサブ契約があり、工場棟ごとに別々の契約が結ばれるルールになっている。現状は5棟目まで契約が結ばれているが、6棟に関する契約はまだ。しかも、WDは工場の半分を利用できる権利しかなく、そこに露光装置をリースできるにすぎない。工場の土地・建物、作業者などのインフラは全て東芝が持つ。東芝が離れて一番困るのはWD自身にもかかわらず裁判所に提訴した。WDのごね得は許されない。


 タカタ倒産の裏で創業家が密かに資産保全か

 負債総額1兆7000億円を抱え製造業として戦後最大の倒産となったタカタだが、その裏で創業家は資産保全を図っている。キーパーソンは高田重久社長の母で女帝と呼ばれる高田暁子氏(タカタ財団理事長)だ。
 創業家には「TKJ」と「エスティー」という資産管理会社があり、タカタの主要株主となっている。倒産に伴い両社が保有するタカタ株は無価値となるが、その一方で、暁子氏は倒産という最悪の事態を想定して密かに資産を移管していた。
 タカタの創業家3代目の高田重久会長兼社長は経営破綻直後の会見でも「何が悪かったのだろう」と語るなど、まだ事態の顛末に納得がいかないようであった。タカタの6割の株式を保有する創業家。ピーク時には2000億円を超えた株式の時価総額は一瞬にして「紙屑」と化し、年間10億円以上の配当は雲散霧消した。自問自答する心中は察するが、会見では最後まで死亡した顧客への謝罪の弁は聞かれなかった。
 しかし、その一方で暁子氏は昨年8月に「ドーンインターナショナル」(東京・港区、資本金300万円)という別の資産運用会社を設立し、創業家が保有する不動産などを移管している。登記簿によれば、暁子氏が所有する港区六本木5丁目の6階建てビルなどが移管された模様だ。
 このドーンの資産は、民事再生法では回収資産とはならず、まさに創業家の隠し資産として残る。タカタ株が紙屑となった投資家にとっては納得がいかない事態だろう。


 名門ニコン買収にもホンハイが触手を伸ばす

 苦境打開を目指すニコンは「構造改革は第2段階に移行する」(牛田一雄社長)とした。カメラ事業は配置転換などを実施したが、今後は人員削減も視野に入れるという。また、電子回路のパターンを半導体に焼き付ける「ステッパー」と呼ばれる半導体露光装置メーカーの草分けの1つだが、こちらも低迷する。ITバブルの頃には世界シェアの半分を占めていたが、ITバブルの崩壊と台湾・韓国の半導体メーカーの台頭で、攻守が逆転した。
 一方、期待が持てるのがFPD(フラット・パネル・ディスプレー)露光装置だ。薄型テレビのガラス画面に、何色を映すかを制御する超薄型のトランジスタを焼き付ける装置で、スマートフォンからテレビ、医療機器などへと利用が広がる有機EL向けの装置の出荷も増える見通しだ。米アップルが年内に発売予定の新型「iPhone(アイフォーン)」の画面に有機ELを採用するのも追い風でニコンへの引き合いも強い。
 このFPD関連事業の取り込みを狙って、キヤノンのほか、凸版印刷など国内勢のほか、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業もニコンに接近している。特にホンハイは「条件によっては買収しても構わない」(大手投資銀行幹部)との話もある。
 ニコンの時価総額は7400億円程度まで落ちており、「経営権を取るには安い買い物になっている」(大手証券アナリスト)状態で、有機ELの関連技術取得に意欲を燃やすホンハイはM&Aのダークホースだ。かつての「名門」が自主再建を果たすのか、それとも買収の憂き目に遭うのか、注目される。


 苦境が続く百貨店業界で独り気を吐く高島屋

 2000年以降、百貨店は再編の嵐で、大手の中で独立路線を守っているのは高島屋のみ。同社には、関東には日本橋、新宿、横浜に大型店がある一方、関西にも大阪、京都に大型店を擁しているが、このバランスの良さは業界一。加えて中間の名古屋には、JR東海と組んだ駅ビル内の店があり、こちらもいまや地元の松坂屋を抜いて地域一番店の名を確たるものにしている。
 また、24年前に出店したシンガポール店が大きく稼いでいる。前期の17年2月期は55億円の利益を叩き出しており、高島屋グループでも屈指の孝行息子だ。海外でこれだけ稼いでいる店舗を持つ百貨店は高島屋以外ない。
 大手百貨店の中で、最も古き良き百貨店のビジネスモデルを貫いてきたのが三越伊勢丹HDだが、遊休不動産の活用など、不動産事業にも大きく舵を切ると表明されている。百貨店でいう不動産事業とは、その多くは商業デベロッパーを指す。ららぽーとなど、多くの大型ショッピングセンターを運営している三井不動産が典型例だ。
 高島屋は従来の百貨店に加え、グループ企業の東神開発という商業デベロッパーがある。ここが専門店を誘致するショッピングセンター型の店舗を運営し、百貨店との組み合わせ型も多く、これも業績面で効いているのだ。玉川高島屋SCしかり新宿のタカシマヤタイムズスクエアしかり。さらに、同社では今後、金融事業にも注力していくという。事業ポートフォリオでみても、バランスの良さはやはり百貨店一だろう。


 造船立て直しで中韓の後塵を拝す日本

 中国や韓国勢の受注競争の激化で世界的な「船余り」がなかなか解消されない。日本船舶輸出組合が発表した16年の受注量は約372万総トンで、15年の1/6の水準と、リーマン・ショック直後の09年の受注量よりさらに約200万総トン下回っている。
 こうした中で、世界シェアトップの韓国では政府主導で経営危機に陥っている大宇造船海洋の資金支援を決定した。同社の経営再建については、「法的整理もやむなし」との声もあったが、同社の経営破綻で生じる失業者の増大を嫌った政府が韓国産業銀行などに約6700億円規模の金融支援をさせることで再建することが決まった。中国も同様で官民一体で造船振興に取り組んでいる。「ゾンビ企業の復活が続けば安値受注の解消は遠い」(大手証券アナリスト)とされるが、日本勢は有効な一手を打てずにいる。
 川崎重工業は昨秋、社長直轄の構造改革会議を立ち上げたものの、結局は主力の坂出工場(香川県)にある2つあるドックのうちの1つを閉鎖するだけにとどまった。かつて川崎重工との造船事業の統合を検討していた三井造船も不振が続くが、M&Aなど提携を進めやすくするため、「持ち株会社体制へ移行するだけの化粧直しにとどめた」(同)。国内最大手の今治造船と提携した三菱重工業も「専業の今治に対するプライドから事業統合の議論がなかなか進まない」(造船関係者)という。
「今の日本の重工業メーカートップは日本の高度成長期に造船王国の名をほしいままにしていた“過去の栄光”が染みついていてプライドが高く、他社との提携や統合に踏み切れない」(大手証券アナリスト)。国内各社の経営判断が問われている。


 カジノ学部と民間出資で大阪市立・府立大が統合?

 公立大の頂点に立つ大阪市立大学と大阪府立大学の急ぎ過ぎといわれる合併構想は文部科学省の指導でやや遅れているが、あっと驚く「改革案」も水面下で検討されている。
 大学を経営する大阪市と大阪府の首長が「大阪維新の会」出身で、大阪でのカジノ、万博の誘致も府・市共に積極的。特にカジノを核にした統合型リゾート(IR)の分野では、すでに大阪商業大学がアミューズメント産業研究所を設け、カジノ法制制度比較分析研究を行い、大学院でも実務ストラクチャーや実現手法を学ぶ特別教育研究コース(IRマネジメント)を設けている。
 一方、賭博の依存症対策にはIR学部のほかに医療(医学・看護)学部が必要で、受け皿は地元行政とのパイプも格段に太い府・市経営の統合大学がベストという見方が多い。それに名門の市立大は、大阪商大に比べ圧倒的に格や知名度が高く、IRを研究する場にふさわしいというのが一部推進派のロジックだ。
 とはいえ、学部の新設ついては加計学園問題などで、官邸、文科省、内閣府も懲りているが、今回はどうなのか?
 府立大と市立大は今春、新法人設立準備室を共同で設置。2019年4月に統合することを目指し、人事給与制度や電算システム統合に動く。統合をめぐっては、準備を進める議案が府議会と市議会ですでに可決された。松井一郎知事と吉村洋文市長は法人統合を先行させ、22年4月に大学そのものを統合した新大学を開校する方針を確認した。昨春以降、関係四者らのタスクフォースが発足し、新大学のビジョンを明示した。
 さまざまな意見を聴きながら検討を進めるというが、大阪や関西の経済力や活力に資する学部・学科の新設・再編がポイント。経済界経由の出資を促すため、「統合型リゾート(IR)学部」などを視野に入れたウルトラC的な選択肢も囁かれる。
 このように現状の統合ビジョンなどには、学長トップダウンの経営方式の採用や大阪の経済再生に資する研究といった、学者から見ればキナ臭いテーマであふれる。
 来年は18歳人口が再び減少に転じる「大学2018年」問題が始まる。大阪の公立統合大は、関係者の「トップ忖度」で行政と財界のしもべとなってしまうのか。


 獣医学部新設計画の中身は加計学園より京産大に軍配

 加計学園の獣医学部新設問題によって東京都議会選挙で自民党は惨敗、内閣支持率急落で、閉会中審議、さらに安倍晋三首相の予算委員会出席に追い込まれた。
 そもそも獣医学部新設は15年6月に閣議決定された「日本再興戦略(改定2015)」に獣医学部新設が盛り込まれたのが発端。新設には今までの獣医学部にはない獣医師養成計画などの4条件が必要とされた。加計学園と組む愛媛県今治市は急遽、「今治市と広島県」を戦略特区に指定してもらい、昨年1月に獣医学部新設を内閣府に申請。2カ月遅れて京都府と京都産業大学が「関西経済特区」に新設を申請し、秋にヒアリングを行ったが、その直後に「広域的に獣医学部が存在しない地域に1校に限り」認めるという条件が追加され、国家戦略特区諮問会議で今治市に認められたという経緯だ。
 加計学園の獣医学部建設は「総理が平成30年4月開校とお尻を切った」のに合わせて急ピッチで進んでいたのに対し、京都産業大学は「新設を認められた今治市に割り込んで立候補するにはもう遅過ぎた」と語る。だが、最も留意すべきなのは両大学の獣医学部新設計画の中身ではなかろうか。京都産業大学が振るい落とされたのは新設計画の中身が悪かったのか、それともやはり「総理の御意向」によるものだったのか。
 ある関係者によれば「内閣府で行われたヒアリングでは京都産業大学のほうが加計学園より具体性がある計画だった」というのである。
「加計学園側の説明は今までの獣医学部にはないライフサイエンスに加え、人獣共通感染症などに対処するため公衆衛生分野及び産業獣医師の養成など、もっぱら抱負を語り、四国と広島、岡山、兵庫県には獣医学部がなく、獣医師が不足していることを訴えている。一方、京都産業大学側も同様にライフサイエンス研究の必要性を強調しているが、それに加えて11人の獣医師が教授や教員になり、すでに獣医学部に近い教育を行っていた」(同)
 具体的に挙げれば、京都産業大学は04年に関西北部で鳥インフルエンザが流行したのを機に06年に「鳥インフルエンザ研究センター」を設立し、国内各大学、東南アジアの大学と鳥インフルエンザウイルスの共同研究を進めている。さらに10年には「動物生命医科学科」を設置し、糖尿病ラットの作成など、ライフサイエンス研究に不可欠な1級実験動物技術者を輩出しているし、京都大学のiPS細胞研究との提携も可能だ、と強調。提案内容や体制では京都産業大学のほうに軍配が上がりそうなのである。
「広域的に獣医学部のない地域」「平成30年開学」とわざわざ規制条件を加えたのは、やはり「御意向」重視と見られても仕方がないようだ。


 国交省が訴え始めた持ち主不明土地の流動化

 全国で九州よりも広い約410万ヘクタールもの国土が、相続未登記などで所有者がわからなくなっている可能性があるという推計結果が、国土交通省の「有識者」の研究会から公表された。そして同時に土地の所有者の死後、長年にわたって放置され、「公共事業の妨げになる事例も出てきている」と国交省が大げさに訴え始め、マスコミも同調した論陣を張る。
 キャンペーンの背景にあるのは、所有者不明の土地がリニア新幹線推進や震災復興工事の妨げになる事例が出始めたからだ。狙いは土地収容や公的な土地利用をしやすくする所有者不明土地の流動化対策だ。
 都知事選では小池百合子知事に大敗した増田寛也元岩手県知事(元総務相)が「所有者不明土地問題研究会」の座長を務める仕掛け人の1人になっている。増田氏は国交省官僚の出身で、「地方消滅論」が地方予算を増やした功績がある。「国交省一家ぐるみ」の戦略で次の仕掛けもある。例えば、「資産評価政策学会」なども辣腕ライターや傘下の不動産鑑定士、土地家屋調査士、行政書士らを巻き込み、周知運動を始めたようだ。
 法的にも処分が極めて困難な不明地だが、実際は、所有者不明の土地は最終的には国(国庫)に帰属することが民法に書かれている。だが、国が引き取ったためしはない。
 不明地は2束3文で、土砂崩れや事故などが起きやすく管理コストも高いので「タダでも絶対にいらない」というのが国交省・財務省の本音なのだ。ちなみに、所有者がわかる相続でも、相続税代わりの土地の物納が認められることはほとんどない。
 国交官僚は、法律・権利にうるさい法務官僚とのバトルを避けつつ、不明地の最終処分は問題空き家と同様に自治体・地域に丸投げしたいのが本音だ。受け皿となる「所有者不明土地収用センター」といった機関設立のアイデアも浮上している。だが、「岩盤規制」とも見える不明地の処分を阻む現行法制では、予算や権限が付かずに管理など行政責任だけが付いて回る可能性が高い。このため腰が引けまくっているのだ。
 そうした中、「持ち主不明は大いに結構だ」、「塩漬けがちょうどいい」という意見もある。地方は人口急減時代に入り、タダでも引き取り手がおらず、あり余る田舎の土地は公物、いらない不動産は自然に返す、でよいのではないかという声もある。
 ところで、公共事業の土地買収のために、国交省は不動産鑑定士制度を設けたという説がある。そうした状況を忖度した高値の鑑定価格(買収価格)でバブルを煽った。その挙げ句、今は役所から公的地価の鑑定の仕事をもらって食いつなぐのが地方の鑑定士の多くの姿だろう。
 支持率急落中の安倍政権が、アベノミクスの景気対策のご本尊の政府投資(公共工事)に再点火するのではという見方がエコノミストに広がった。これを「忖度」したのか、公共事業関連株は平均株価2万円超えに一役買っている。


 海外では事件・事故より心筋梗塞や脳卒中にご用心

 夏は海外旅行に出かける日本人が増えるが、渡航先で病気や事故などで命を落とす人も増加する。外務省の海外での日本人死亡原因調査(海外邦人援護統計=2015年)によると、死亡者は533人。死亡原因で最も多いのが病気で406人、2番目が自殺で46人だった。
 海外ではテロや事故、災害に巻き込まれて亡くなる人が多いという印象が強いが、意外なことに病気による死亡が全体の約8割、自殺が約1割で、この2つで9割を占める。自殺の原因の多くがうつ病ということを合わせて考えると、海外で亡くなる人の大半が病気ということになる。
 病死した原因には、日本だったら助かったと思われるケースが多いという。例えば、病気になったがどこを受診していいかわからず、迷っているうちに手遅れになってしまった、受診はしたが適切な治療を受けられなかったケースがあるという。
 旅行や海外渡航などに関係する医療は「旅行医学」と呼ばれているが、日本では2000年代初めに学会「日本旅行医学会」が発足した新しい分野だ。旅行医学に詳しい医師によると、海外での死亡原因は、脳卒中と心筋梗塞がツートップだという。これまで、海外での病気というとマラリアや寄生虫などによる感染症を真っ先に思い浮かべたが、最近はマラリア、コレラ、下痢での日本人の死亡はゼロだ。
「紛争地帯や熱帯の開発途上地域に行く人は別だが、一般の旅行者が注意すべきは、脳卒中と心筋梗塞、交通事故」と、先の医師はアドバイスする。
 死亡統計などのデータから、海外旅行で死なないために不可欠な安全対策は、自分の健康情報と渡航先の医療情報を確認することが重要だという。旅行医学会では「安全カルテ」を作り、持病やアレルギーの有無、服用薬などの個人のカルテを英語と日本語で作っておくことを提案している。安全カルテには成人用、学生用、小児用の3種類があり、学会で購入することができる。


 ネット配信は“本来業務”NHKの目論見に猛反発

 2019年にも番組のネット同時配信を目指すNHKが、ネットも放送と同様に「本来業務」にしたいと言い出し、民放界はもちろん、監督官庁の総務省からも「調子に乗りすぎ」と総スカンを食っている。
 この発言は7月4日の総務省「放送を巡る諸課題に関する検討会」の席上。放送とネットで同じ時間帯に同じ番組を流す「常時同時配信」について、ネットで番組を見る世帯から新たに受信料を徴収する計画を説明する中で飛び出した。
 これまで「ネットは放送の補完業務」と位置づけていただけに、180度の大転換。検討会に居合わせた日本テレビの石沢顕常務が「いきなり本来業務と位置づけるのは無理がある」とすかさずクギを刺した。
 翌5日には、TBSの武田信二社長が記者会見で「NHKが『本来業務』と言い切ったことに大変な違和感がある」と厳しく批判。フジテレビの金光修専務も7日の記者会見で同様に断じた。高市早苗総務大臣も7日の記者会見で「放送法上、放送と通信(ネット)は全く別の概念だ」と、ネットだけで番組を見る世帯からも受信料を得るために、ネットを「本来業務」に位置づけることに否定的な見解を示した。
 四面楚歌に慌てたNHKは、上田良一会長が「ネットは放送の補完という考え方に変わりはない。(検討会での発言は)ゆくゆくは本来的な業務になることもあり得るという意味合い」と火消しに躍起となっている。
 だが、NHKが目論む「ネット受信料」新設の野望は、衣の下から鎧がのぞくどころか、衣を脱ぎ捨てて鎧を見せつけた格好。20年の東京五輪に向けて前のめりになるNHKの猪突猛進は危なっかしい限りだ。


 欧州委が米グーグルから立て続けに巨額制裁金

 米グーグルは6月末、インターネットでの検索結果に自社の買い物サイトを目立つように表示しているのは欧州連合(EU)競争法(独占禁止法)違反だとして、欧州委員会から24億2000万ユーロ(約3000億円)の制裁金を科された。これは欧州委が1企業に科した制裁金としては過去最高額。ただこれで打ち止めではなく、別の案件でもこれと同額か、それ以上の制裁金を科される可能性が出てきた。
 6月末の欧州委の決定で問題視されたのは、同社の商品比較サイト「グーグル・ショッピング」。検索結果について同サイトを他社サイトよりも優遇していることから、「支配的な地位の乱用」と認定された。
 欧州委のベステアー委員(競争政策担当)は、グーグルは消費者の選択の自由を奪っていると批判。同社が90日以内に違法行為をやめなければ、同社親会社のアルファベットの1日当たり世界売上高の最大5%相当を、追加の制裁金として科す可能性があると警告した。
 ただ、欧州委はグーグルをめぐっては商品比較サイトだけでなく、スマートフォン用基本ソフト(OS)「アンドロイド」や、検索連動型広告「アドセンス」に関しても、競争法違反の疑いで調査中。ここにきて、欧州委はアンドロイドについても、支配的な地位を乱用して競争を阻害している可能性があるとして、先の制裁金額を上回る規模の制裁金を科すのではとの観測が浮上。米国では、欧州委はシリコンバレーのIT大手を政治的な意図に基づいて狙い撃ちにしているとの批判も出ている。


 北朝鮮への軍事作戦に米国防省内で2つの動き

 朝鮮半島で北朝鮮による挑発行為が続いているが、それに対しトランプ政権の対応は、中国とロシアの協力が得られていないため、手詰まりの感がある。マティス国防長官も表面的には今は軍事力行使よりも平和的な対話を模索すると述べているが、実は国防総省内では2つの動きが加速している。
 1つは、軍事作戦の早期作成だ。3月から4月にかけて、空母の派遣など軍事力行使のための動きをエスカレートさせたことがあったが、その時に得られたさまざまな軍事情報をもとに、現在北朝鮮に対する先制攻撃の軍事作戦を完成させようとしている。
 その詳細は当然明らかにされてはいないが、核施設の破壊、在来型兵器の破壊、指導部への直接攻撃を、同時に空爆とミサイル攻撃を短時間で実行するとしている。この計画を実行する武器がステルス爆撃機で、約150機を投入、新型の超大型貫通爆弾MOPを大量に使用する予定だ。また、潜水艦発射巡航ミサイルによる北朝鮮の指揮本部を瞬時に破壊するとし、1200発のミサイルが使われる予定だ。
 もう1つは、韓国に配備されたTHAAD(高高度迎撃ミサイル)システムで、ミサイル迎撃能力の一段の効力強化を目指している。北朝鮮が核弾頭付きのミサイルや生物化学兵器を搭載した弾道ミサイルを打ち上げてもすぐに迎撃、撃墜することで、結果的にそれらのミサイルは北朝鮮領土内に落ち、ミサイルを無力化することができるというわけだ。
 今後、さらなる重大な挑発行為があれば、米国が軍事作戦に出る可能性はあるだろう。


 “米国第一”の米大統領に独与党が強烈メッセージ

 ドイツのメルケル首相が率いる保守与党のキリスト教民主同盟と姉妹政党のキリスト教社会同盟が9月の総選挙を前にまとめた選挙綱領から、「米国は友人」という表現が外された。首相与党がトランプ政権と距離を置く姿勢を明確にしたことで、米独の関係冷却化は避けられない状況だ。
 2013年の前回総選挙時の民主・社会同盟の選挙綱領では、米国は欧州域外におけるドイツの「最も重要な友人」と明記するとともに、「米政府との友情」はドイツの国際関係の「土台」と強調していた。ところが、今回の綱領には「友人」も「友情」もなく、米国は欧州域外におけるドイツの「最重要パートナー」と記すにとどまった。
「友人」を外したのは、メルケル首相の難民対策を批判する一方、「米国第1主義」を貫こうとするトランプ政権へのメッセージと受け止められている。トランプ大統領は大統領選の選挙運動で、移民や難民に寛容な政策を推進したメルケル首相を「ばかげている」と批判。ドイツを破滅に追い込んでいると糾弾していた。
 環境問題に強い関心を寄せるメルケル首相は、地球温暖化対策の新たな国際枠組みであるパリ協定からの離脱を表明したトランプ大統領に、極めて批判的でもある。
 欧州では英国がEU離脱を決める一方、フランスで若いマクロン大統領が就任。相対的にドイツの存在感が高まっており、メルケル首相は欧州の盟主としての地位を固めている。米国の自国優先主義に反発する国際社会のリーダーとなりつつあるメルケル首相の与党に見限られ、トランプ大統領は国際的にますます孤立を深めそうだ。


 露骨な反日米と親中国をアピールするドイツの思惑

 7月7日、G20(主要二十カ国・地域首脳会議)がドイツのハンブルクで開催された。「反グローバリズム」を掲げNATO加盟国に防衛負担増を迫るトランプ米大統領への反対デモが暴徒化、乱闘で警官160人が負傷する騒ぎとなった。
 ところで、G20を伝えるドイツのメディアがいかに偏向していたか、ご存じだろうか?
 第1に、安倍晋三首相を完全に無視した。まるで存在さえしていないような画面構成だった。
 第2に、トランプ氏への八つ当たり的な冷遇ぶり。記念写真撮影でトランプ氏は一番端。冷遇ぶりがきわまった腹いせにトランプ氏はG20本会議を欠席、替わりに娘のイバンカさんを座らせ、その間に自分はプーチン露大統領と話し合っていた。
 テレビニュースはメルケル首相と中国の習近平主席がニコニコ握手し、親しく会談する場面ばかりを流し、独中蜜月を強調。かくして日米を袖にし、熱烈歓迎を習氏にのみ行ったドイツの思惑はどこにあるのか。
 苦境に立つフォルクスワーゲンが中国で年間300万台を生産(ドイツより多い)、ウルムチ、成都、広州など中国に8つの工場を展開し最大のマーケットである。ついでBMWも瀋陽に第2工場を建設した。ベンツも然りで、これほど中国市場にのめり込んでいるのもドイツの地政学的判断である。
 ドイツにとって安全保障上、正面の敵はプーチンのロシア。したがって、その背景地にある中国とは「遠交近攻」策を用いて当たろうというわけだ。


 ロシアが危険視するIS戦闘員の帰国

 シリアとイラクにまたがる過激派組織「イスラム国」(IS)が支配地区を次々に失い、陥落しつつある中で、戦闘員らが自国に帰還し、今度は本国でテロを行う可能性が高まっている。とりわけ、ISの中核だったチェチェン人などロシアのイスラム過激派の報復が懸念され、ロシア情報機関が警戒している。
 ロシアはISへの空爆により、ISの創始者だったバグダディ容疑者を殺害したとされる。「そのためISの残党にとって、空爆を繰り返したロシアは最大の報復対象です。彼らは徐々に帰国し、ロシアを標的にした大型テロを計画しているといわれている」(カイロ特派員)。プーチン大統領自身、「ISが中央アジアとロシア南部を不安定化させる新たな計画を練っているという情報がある」と指摘。「テロリストがロシアで活動しようとしている」と懸念を示した。
 ISに参加したチェチェン人は3000人以上とされ、戦闘能力が高いため、ISの軍事部門の中枢を担っていたようだ。ロシア当局はこれらチェチェン人部隊の帰国を阻止する水際作戦を行っている。
 死者約20人を出した4月のサンクトペテルブルクでの地下鉄爆破テロの実行犯はキルギス出身で、シリアでISの訓練を受けたと伝えられた。ロシア都市部ではイスラム教徒の流入が進み、テロの温床となりつつある。インドネシアやフィリピンでも、IS帰還兵によるテロが頻発している。「ISはかつてのアルカイダのように、ネットワークを構築して世界でテロを実行する」(西側外交筋)との分析もあり、IS陥落はテロの新たな拡散につながりかねない。


 政治問題化しかねないベトナムの二輪車規制

 目覚ましい勢いで成長を続けるベトナムでは、公共交通の整備が進まない中で、移動の足として二輪車が欠かせず、国民2人に1台に当たる4500万台が各地を走り回っている。それに伴って都市部では交通渋滞が深刻化。ハノイやホーチミン市では10年ほど前から、渋滞緩和のための二輪車規制が浮かんでは消えてきた。ただ、市内のバス路線はあるものの、時間が不規則などの理由で不評。このため、これまで当局は強硬策を採れなかった。
 ここにきて姿勢を転じたのは、出退勤する人たちで朝夕の渋滞がひどくなり、市民の間に倦怠感が高まっているのと、ハノイの大気汚染は悪化する一方で、健康不安が問題となっているせいだ。ただし、いきなり全面禁止にすると市民生活や経済活動の混乱が必至のため、規制は段階的に実施する。
 20年までには狭い道路が入り組む「旧市街」と呼ばれる地区の週末の乗り入れを禁じる。ナンバープレートの番号によって特定の曜日に中心部を走行できなくし、新規プレートの発行枚数を抑えるなどの措置も講じた上で、30年にはオフィスや商店などが立ち並ぶ地区から二輪車を完全に締め出す方針だ。
 しかし、ハノイ市民は規制には総じて批判的だ。通勤・通学や生活への影響は避けられず、二輪車に代わる交通手段もない現状では、実現は不透明との見方がくすぶる。共産党が一党支配するベトナムでは、二輪車規制も党上層部らが議論した上で指示している可能性が大きい。そうした背景事情を考えれば、二輪車規制の行方は政治問題になり、頓挫した場合、ハノイ市の上層部が責任を問われる事態も予想される。


 AIIBの不振で画策、中国のADB乗っ取り

 AIIB(アジア・インフラ投資銀行)の債券格付けをムーディーズなどがAAAと太鼓判を押し、中国はご満悦だ。ところが融資審査などのスタッフはまだ100人も集まらず、韓国人副理事は辞任し、インドはパキスタンへの融資に正面から反対した。発足1年で業務は低迷し、習近平国家主席の野望が挫折している。
 参加表明は日米を除く世界70カ国以上だが、資本金1000億ドルのうち17年7月までに振り込まれたのは68億ドル。参加表明はしたが議会がOKしない国もあれば、議会承認を得ても、批准がないと振り込めない国もあるためだ。これらの国が資本金を振り込むには、各国で国会承認ならびに批准手続きを経てからとなる。資本金を中国国内で調達することは可能だが、人民元をドルに交換する必要があり、厳しい外貨両替制限を自ら破戒する真似もできないというジレンマに陥った。
 こうなると、中国は次にADB(アジア開発銀行)の乗っ取りを狙うのではないかと国際金融界に疑心暗鬼が広がっている。
 マニラに本店を置くADBは1966年に創設され、資本金は日米両国が仲良く15.65%ずつ。中国は6.46%。スタッフは2800人を超え、専門職に日本人が120人。しかも歴代総裁9人はすべて日本人が務めており、中国に主導権を渡すとは考えにくい。
 しかし発想が異なる中国人は「上に政策あれば、下に対策あり」という原則だから、何をしでかすか予測不能だ。ADB乗っ取り説の策源地は、こうした裏の金融ビジネスに慣れた香港の金融街だ。


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