ダミー
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 「文句あるなら追い出せ」二階幹事長発言の深謀遠慮

 自民党の二階俊博幹事長(78)は東日本大震災に絡む失言で自派の今村雅弘前復興相が更迭された際、「いきなりですよ、いきなり」と安倍晋三首相への不満を口にして注目された(本誌80ページ参照)。だが、二階氏の発言にはもっと重要なものがあった。同派所属の無所属議員の次期衆院選での公認問題に関し「文句があったら私を自民党幹事長の席から追い出してみろ」と述べことだ。
 二階派には、小泉龍司(衆院埼玉11区)、長崎幸太郎(山梨2区)の2人の無所属議員が「特別会員」として所属しているが、両選挙区には比例復活した現職議員がおり、復党できないでいる。今村氏が更迭された翌日の4月26日、二階氏は講演で「(2人を)公認する決意だ」と述べた後、「文句があるなら…」と言ってのけたのだ。
 衆院選の公認を決めるのは総裁と幹事長。その幹事長ら党役員を決めるのは総裁たる安倍首相だ。二階発言は9月頃の人事を念頭に「次期衆院選で2人を公認する。それが嫌なら自身を交代させてみろ」という安倍首相へのメッセージでもある。
 二階氏は国会議員秘書、和歌山県議を経て衆院議員になった叩き上げで、「手練手管に長けた政治家」(自民党関係者)という評価がもっぱら。野党、地方政界に人脈が太く、味方にすれば心強いが、敵にすると厄介。首相は、昨年9月の内閣改造・党役員人事で「イエスマン」の谷垣禎一前幹事長を続投させる腹だったが、谷垣氏の自転車事故でやむなく二階氏を総務会長から横滑りさせた。首相と二階氏の仲は、互いに利用しあう「戦略的互恵関係」といえる。
 自派の閣僚が失言で更迭されて政権の足を引っ張ったとあれば、領袖として首相に頭を下げるのが常人の感覚。それを、更迭を逆手にとり、自派の議員の公認を求め、自身の処遇にからめて首相にすごんで見せるあたり、二階氏のしたたかさ、深謀遠慮は相当なものだ。


 在韓米国人に出された韓国からの「避難訓練」通達

 先頃、在韓米軍の家族を含む関係者に、6月上旬に予定される韓国から退去する「避難訓練」の通達が出た。これが現地の家族の間では韓国に戻ることのない避難訓練だと推測されており、そのまま沖縄や佐世保の米軍基地内にとどまる可能性が高い。また、6月上旬は先のフロリダの米中会談で両首脳が約束した3カ月以内の猶予期間で対北制裁を強化するという期限切れにもあたる。この間、米朝間ではオスロで一度協議を行ったが、北朝鮮はICBMの完成と核弾頭搭載への一本道を進む決意を変えていない。政権が不安定で、弾劾の可能性もあるトランプ政権から体制の保証を取り付けても意味がないと考えているからだろう。
 一方、韓国で発足した文在寅政権は外交安保政策で政権内高官ポストには同盟重視派よりも自主外交派を多く起用する予定で、バランサー外交を展開する意図が見え見えだ。
 北朝鮮のミサイル発射を資金面で支えているのは、中国東北部で事業を幅広く展開している朝鮮族のIT実業家たちだといわれている。金正恩政権は彼らに北朝鮮での事業活動を特権的に与える代わりに、経済制裁の網の目をくぐり、現金で資金を中国から北朝鮮に入れさせているという。朝鮮半島と中国東北部の朝鮮民族を合わせると人口は約2億3000万人。面積も広大だ。この朝鮮経済圏の存在が、北の暴走を支えている一面もあるとみられる。


 ロス商務長官が目論む日米貿易不均衡解消策

 そんな朝鮮半島情勢下、実業界出身者で固めるトランプ政権内で急速に浮上しているのが、この機に乗じて対日貿易赤字を一挙に解消したいとする考えだ。このアイデアの中心人物がロス商務長官だ。ロス氏は、アメリカ車は今後も日本で飛躍的に売れることはなく、赤字解消の切り札とならないことを熟知。ならば朝鮮半島の軍事的危機を利用して日本に一機約1100億円とされるTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)の配備と1機約660億円とされる最新鋭ステルス戦闘機F−35の売り込みを図るほうが得策だと考えている。車の台数を積み上げるよりも短期間に貿易不均衡が解消され、日本政府も検討を進めているという。
 一方でこうした長期的な兵器売買は、安定政権下で進められるもの。それがトランプ大統領がコミーFBI長官を解任したことで、一挙にトランプ政権の前途に黄色信号が点ってきた。疑惑の核心である大統領選挙でのトランプ陣営とロシアサイドとの結託は、米連邦議会の多くの議員が弾劾に値すると考え始めている。つまり、民主主義の担い手と自負してきた米国が大統領選挙で外国勢力の介入を許したという致命的なものであり、それが今後、立証されていけば、トランプ政権は急速にレームダック化し、政策が遂行できなくなる可能性もある。6月の米下院の補選で共和党が負けるようならトランプ弾劾、ペンス副大統領の昇格とライアン下院議長で最強の共和党政権が現実味を帯びる。その時には、TPPにも戻って来ると安倍官邸周辺では見ている。


 文科省官僚グループが「加計学園問題」で反乱

 学校法人「加計学園」(岡山市)が国家戦略特区に新設する獣医学部に関し、「官邸の最高レベルが言っている」と、安倍晋三首相の関与を伺わせる文書が流出、森友学園に始まった、官僚らが「安倍首相」を忖度する問題は別次元に発展した。
 森友学園問題はカネのない籠池泰典前理事長が、「安倍晋三記念小学校」と、首相の名を「冠」にして資金を集め、認可を取ろうとしたもので、財務省官僚の忖度問題は発生したものの、軽率な昭恵夫人はともかく、安倍首相の責任は追及されにくい。
 だが、加計学園問題はレベルが違う。理事長の加計孝太郎氏は安倍首相の米国留学時代からの友人で40年来の仲。ゴルフや飲食を繰り返しており、献金などもあれば、文教政策でアドバイスを受けることもある。そんな友人の獣医学部新設の夢を、役所への口利きで叶えてやり、補助金などで遇したとすれば、それは私的なことに国家権力を行使したことになる。
 しかも文章は明らかに、文部科学省の官僚が組織的な思惑で計画的に流出させたものだ。5月17日にスクープしたのは朝日新聞だったが、ほかに新聞1社と放送局にも渡され、民進党にも流れるシステムだった。また、文書はこれだけではなかった。菅義偉官房長官が「日付も名前も入っていない」と怪文書扱いすると、翌日、朝日新聞は特区担当の内閣府幹部と文科省幹部の日時と氏名が入った文書を公開した。
 加計学園問題は「第2の森友」といわれたが、森友学園では財務省も大阪府も検察庁も、籠池氏を悪人に仕立てて安倍夫妻を守ろうとしているのに対し、加計学園では天下り問題で3月末に歴代3事務次官ら43人が処分を受けた文科省の官僚の一部が安倍政権を告発する側に回っただけに、様相はまったく異なっている。
 官邸は防戦に必死だ。19日には記者会見を開き、「総理のご意向」などとある文書に関し、「該当する文書の存在は確認できなかった」と松野博一文科相は述べ、これ以上の調査は行わないと明言した。調査封印宣言だが、個人のパソコンを調べておらず、大量の文書が残されている可能性がある。
 官邸は文章流出の“犯人”をある程度特定している。それは処分を受けて退任した政権批判のOBグループだという。今後、不満分子グループの意図と、それに連動する朝日新聞や民進党の出方を探りながら、神経戦が続くことになる。


 膨大な個人情報を操るグーグルやFBの脅威

 改正個人情報保護法が、5月30日に施行され、同意なく個人情報が第3者に提供されないよう保護が徹底された。一方で、ビジネス化の範囲は広くなり、「匿名加工」という条件をクリアすれば、「層」としての個人情報が売買され、販促などに利用できる。
 住所氏名年齢といった個人を特定する情報を加工すれば、例えば、特定の地域に住む20歳代男性のデータ(趣味嗜好、活動履歴や行動範囲など)が、業者に与えられる。そうすると新型車を販売するカーディーラーは、車好きで行動的な若者に合った車のターゲティング広告を、彼らに打つことができる。
 では、そうした個人情報を最も持っている業者はどこか。グーグルやヤフーなどの検索エンジン、フェイスブック(FB)やLINEなどのSNS業者である。そうした業者は、サービスをタダで提供、その際、ログイン情報を得ることができ、そこで得た個人情報をネット広告などに展開する。
 彼らが有する個人情報は半端ではない。中でも突出しているのはグーグルとFBで、世界レベルでは月間利用者数が10億人を超すサービスをグーグルは7つ、FBは3つ持つ。そこで蓄積される情報は、サイト閲覧履歴、GPSでの行動履歴、音声認識、友人知人の趣味嗜好など雑多にして大量で、それが消されることなくクラウドに保存される。グーグルで7兆円、FBで3兆円という莫大な広告収入は、彼らが持つこの情報に与えられたものだ。
 日本で、そうした情報の匿名加工販売が許されれば、両社のビジネスチャンスがさらに広がる。個人を特定できなくとも、年齢、趣味嗜好、住居の範囲、行動履歴をもとに、「層」としての把握は可能。そうなると、支持政党、信仰している宗教、収入、投資に関する興味など、特定地域に住む人たちの踏み込んだ推定値が把握できる。そのための人工知能やデータ加工技術が、長足の進歩を遂げている。
 だが、問題点も少なくない。すでにEUや米では、FBの持つ情報をもとに選挙対策を行うコンサルティング会社が出現。大量のデータを分析加工、支持政党と投票行動を予測、選挙戦終盤に、地域を絞り込んだ選挙運動で優位に立ったという。英国のEU離脱と、トランプ氏の逆転勝利の陰の主役といわれている。
 個人情報は個人のものであると同時に国家の財産でもある。それを私企業に過ぎないグーグルやFBに独占させていいのかという批判が噴出しているのだ。


 自衛隊の駐屯で変わった与那国島の「住民意識」

 日本最西端にある沖縄県の与那国島に陸上自衛隊沿岸監視隊が新規編成されて1年を迎えた。人口増は当然としても、思わぬ弊害が島に持ち上がっている。
 誘致に動いたのは外間守吉町長だった。台湾との交流で島の活性化を図る特区構想を日本政府に却下され、自衛隊で「島おこし」をしようと計画し、実現させた。
 外間町長は与那国駐屯地であった開設1周年記念式典で「隊員と住民との交流も盛んに行われている」と笑顔で挨拶したが、この言葉に島が抱える新たな問題が潜んでいる。
 隊員160人とその家族が移り住んだことで島の人口は自衛隊配備前と比べ203人増え、1693人になった。与那国小学校の場合、学齢期の子供たちが転入・入学したことで減少が続いていた児童数は前年度の50人から69人に増え、複式学級が解消された。
 防衛省は「島に溶け込ませる」との方針から、与那国町の要請を受けて、島に9つある班に160人の隊員を割り振った。先月、祖内地区の公民館であった総会に出席した約20人のうち、半数が隊員だった。
 隊員たちがほぼ100%の出席率なのに対し、住民の出席率はあまりにも悪い。与那国島は自衛隊配備をめぐり、賛成、反対で真っ二つに割れ、住民投票まで行った過去がある。
 欠席したのは自衛隊に反対し、今も割り切れない思いでいる住民ばかりではない。賛成した住民の多くも出席していないのだ。住民の1人は「(地区の活動も)自衛隊がやっているからいいだろうとの思いがある」と率直に話す。町長の言葉通り、地元との交流が盛んに行われた結果、住民が自衛隊に依存する傾向が早くも出始めた。
 選挙となるとさらに深刻だ。隊員とその家族で有権者の17.4%を占め、選挙に大きな影響力を持つのが確実になった。田里千代基町議は「自衛隊に批判的な町長候補はまず当選できないだろう」と話し、名実ともに与那国が「自衛隊の島」になると指摘している。


 所有者不明空き地再活用でユニークな構想が浮上

 政府部内で最近、大都市のみならず地方でも次第に深刻化している所有者不明の空き地再活用策について、米国先進事例を真似たランドバンクという名前のユニークな構想が浮上している。
 このランドバンクは、米国では2種類ある。1つは、民間の不動産開発企業がランドバンキングビジネスという形で広大な土地の将来開発に投資を呼び込み、その開発による投資収益還元をエサにするリスク投資で、今回の話とは無縁のもの。
 もう1つは、米ミシガン州などの自治体が取り組んでおり今回のヒント事例になる。ミシガン州の場合、米自動車大手GMの生産縮小に伴うリストラで従業員が解雇されて空き家が増え、税金滞納問題が出てきた。そこで州当局がそれら土地家屋を差し押さえたあとの活用策として、ランドバンクを導入したのだ。
 要は、差し押さえた土地家屋を競売手続きを経ずに、再開発計画をしっかりつくった民間企業などに取得の道筋をつけるシステムで、資産税なども免除される。虫食い乱開発や不動産投機を防ぐのが狙いだ。
 日本の場合は土地家屋には所有権が当然からみ、公的権力が勝手に権利関係に手を突っ込むことは許されない。ただ、東日本大震災のような大災害で所有者が行方不明になったりした場合は別にして、大都市や地方で身寄りのない高齢者が死亡して事実上、所有者不明のまま土地が放置されたり、相続税負担の大きさに耐えかねて放置されたままという空き家・空き地が増え自治体も苦慮している。放置の空き家に関しては、自治体が所有者不明で近隣に被害が出ていると確認できた場合、特例で取り壊しができるように法的措置が講じられたが、その後の活用をどうするか、誰が活用の費用負担をするかなどの課題が山積している。
 複数の政府関係者によると、国民の財産権を制約するのに詰めるべき点がいろいろあるが、米国ミシガン州など制度化して成功しているランドバンク事例を参考に、所有者不明がはっきり確認されたものに限って土地収用法などをうまく使って日本版ランドバンクという形で新組織をつくり、公的機関やしっかりしたNPO組織の名前で借り上げて営利目的以外で再活用できるようにすることが可能かどうか検討中という。
 これは、農地の大規模効率運用を狙って農地バンクに耕作放棄地の有効活用を委ねる仕組みをつくったのに似ている。ただ、農地バンクは自治体と農業委員会の2組織が競合してうまく活用が進んでいないこと、さらに米国モデルをそのまま見習って大丈夫なのか、しかも財産権への制約に問題はないのかといった懸念があり、現時点では流動的だ。
 しかし所有者不明のまま近隣に問題を引き起こす空き家・空き地問題は深刻化しており、うまく機能すれば政策ヒット商品化もあり得る。政府関係者は「まだ詰める部分が多いが、


 車谷・三井住友銀行副頭取、英投資ファンドへ転籍の裏

 今春まで三井住友銀行の副頭取を務めていた車谷暢昭氏(59)が、欧州最大の英投資ファンド「CVCキャピタル・パートナーズ」日本法人の会長に就任した。メガバンク幹部が外資系投資ファンドのトップに就くのは前例がない。
 CVCキャピタルは、割安な未上場株式に投資して上場時等に高い利益を上げるプライベート・エクイティ・ファンド(PE)で世界の5指に入る。日本市場には2000年に参入し、信和やすかいらーく、長谷川ホールディングス(おそうじ本舗)などの投資で高い利益を得た。しかし、投資は2年に1件程度と少なかったことから車谷氏を会長に迎え、年1000億円以上のペースへと投資を加速させる方針である。
 車谷氏は、旧三井銀行出身で、“三井のドン”と呼ばれた小山五郎氏の最後の愛弟子。若い頃から将来の頭取候補と目されてきた。太陽神戸三井銀行、さくら銀行、そして三井住友銀行となっても、旧三井出身のエースとして君臨。直近は三井住友フィナンシャルグループ副社長と三井住友銀行副頭取を兼務していた。
 金融庁関係者は、「旧住友銀行出身の國部毅頭取が、持ち株会社の三井住友フィナンシャルグループのCEOに就き、後任頭取に同じ旧住友銀行出身で1982年入行組の高島誠専務が昇格した。80年入行組の車谷氏は居場所がなくなった。背景には旧三井銀行の主力取引先である東芝、そして東京電力の経営危機が影を落としている」と解説する。
 プライドの高い車谷氏は、自らの判断で外資系投資ファンドに飛び込んだという見立てだ。金融界から政財界に広く知己を持つ車谷氏のネットワークが投資に活かされよう。


 セブン銀行が目指すワンストップサービス

 01年4月に設立して16年余、最寄りのセブン−イレブンのATMなどでの出入金は、すっかり市民権を得ている。ただし、一日当たりの平均利用件数がここ数年は漸減。昨年来、現金を引き出さなくてもコンビニやスーパーでデビットカード決済ができるようになり、スーパーのレジで差し出せば、現金をその場で引き出せるようになるサービスも開始される。こうなると、いつでもどこでも現金の出し入れができるセブン銀行の優位性は薄れる。しかも買い物から何からスマホのアプリで完結する世代が一気に増える。現金社会からカード社会、さらにはカードレス社会になっていくことは疑う余地がない。
 そこでセブン銀行では最近、既存のATM事業だけに頼らない新規事業構想を公表した。その一事例が、じぶん銀行(KDDIと三菱東京UFJ銀行の合弁のネット専業銀行)とのコラボレーションだ。この協業で、スマホ内のじぶん銀行アプリを操作してATMにかざすことで、カードなしで現金の出し入れをできるようにした。これはほかの銀行にも広がっていくだろう。
 さらに、ネットオークションの売買代金をセブン銀行のATMで受け取れるようにする。来春にもグループ横断のアプリを世に出すほか、将来的にはセブン&アイ・フィナンシャルサービスと経営統合し、銀行ローン、デビット、海外送金、電子マネー、クレジットカード、保険等をワンストップサービスにしていくことも考えられる。セブン銀行の進化に要注目だ。


 工作機械工業会会長に「東芝系」が就いた理由

 最近まで東芝の関連会社だった工作機械大手、東芝機械の飯村幸生会長が5月31日に日本工作機械工業会の新会長に就任した。業界内でも不思議に思う向きもあり、現に飯村会長は固辞したというが、前会長の花木義麿氏(オークマ社長)が「あなたしかいない」と説得、結局、飯村氏も受け入れた。
 東芝機械は今年3月まで東芝が20.1%保有する筆頭株主で、持ち分法適用会社だった。しかし、東芝が一大不祥事による経営危機乗り切りの一環として、18.1%と大半の東芝機械株を売却した。工作機械工業会は東芝との関係がなくなったタイミングを見計らって、次期会長として白羽の矢を立てたわけだ。
 東芝機械を指名した理由は明らかではない。だが、「工業会が会長人事で常に揉めていることが背景にある」と、関係者は話す。内部規定では副会長から選任とあるが、それが守られたことは少ない。現に前々会長、前会長は共に副会長ではなく、東芝機械も副会長ではない。結局、会長が次期会長候補を挙げ、自ら要請して最終的に指名委員会が内定する。
 飯村会長が就任を固辞したのには理由がある。1980年代に起こったココム(対共産圏輸出統制委員会)違反事件だ。東芝機械は当時のソ連に工作機械8台、NC(数値制御)装置および関連ソフトを不正輸出したとして米国で摘発され、東芝製品の不買運動が起こるなど激しいバッシングにあった。このため親会社の東芝は佐波正一会長と渡里杉一郎社長が引責辞任に追い込まれた。
 だが、今回の東芝の経営危機が大きな転換点となった。東芝が保有していた東芝機械株の大半を152億円で自己株式として取得。完全に東芝グループから離れた。工業会は新会長人事について経済産業省に了承を取り付けたほか、日米関係にも配慮を見せたというが、社名から「東芝」を外す可能性もありそうだ。


 巨額費用の「帳尻合わせ」、東電再建計画は前途多難

 東京電力ホールディングスが5月11日にまとめた新しい再建計画は、長期にわたる巨額の賠償・廃炉費用をひねり出すため収益力の大幅な底上げを図るという、いわば2兎を追うシナリオだ。だがその核となる原発事業などの再編・統合などが思惑通り実現する保証はない。追加コストがさらに膨らみ、経営の屋台骨が揺らぐ事態にも見舞われかねない。
 賠償・廃炉など福島第1原子力発電所の対応費用は総額で22兆円。3年前に再建計画を策定した時点の11兆円から一気に2倍に膨らんだ。東電の負担分はうち16兆円。この支払いのために年間5000億円を確保する必要があるが、今の実力では3000億円にとどまる。
「長期的に4500億円を稼ぎ出す体質」を目標に掲げたのも、時価総額7.5兆円を達成し、国が東電株売却で事故処理費用を捻出するという数字ありきの面は否めない。実力をはるかに超える目標から逆算して何とか帳尻を合わせたのが実態だ。
 収益力強化の目玉は、送配電や原子力の分野で他社との再編・統合を進めることだ。ただ、計画に10年以内に具体化を目指すと明記したものの、収益に貢献してくるのはさらに遅れて「10年後以降」だという。
 この理由を原子力損害賠償・廃炉等支援機構の西山圭太連絡調整室長(東電取締役)は「具体的に(収益に)入れ込むだけの蓋然性がないため」と説明。巨額費用を伴う賠償・廃炉リスクを負う東電と積極的に組もうとする企業は乏しいからだ。
 再建計画では他電力との原発運営の協力の枠組みを作る方針も示したが、東北電力のある幹部は「口出しできる立場にはない。今は自社の女川や東通の原発再稼働に注力したい」と距離を置く。
 国内の電力需要は細り、既存設備の更新費用はかさむ一方だ。東電の業績も足元では堅調に見えるが、円高や原油安による燃料費減少に支えられている面が大きい。電力自由化ですでに11%の顧客が他電力に流れ、経営状況は厳しい。収益改善で最大の鍵を握る原発再稼働にも暗雲が漂う。柏崎刈羽原発には7基の原発があり、再稼働を進めて17年度からの10年間の年平均1600億〜2150億円超の経常利益を確保する計画。ただ新潟県の米山隆一知事は、「きちんとした検証をしない限りは再稼働は認められない」と慎重姿勢を示した。
 東電は新たに参入するガス小売りに加え、人工知能(AI)などを活用した新事業拡大も狙うが、主力事業に比べ小粒。広瀬直己社長も記者会見で「新しい事業には不透明さがある」と述べているほどだ。
 東京理科大の橘川武郎教授は「原発事故の対応費用が膨らむ可能性も高く新経営陣は苦労するだろう」と語る。新経営陣は六月末の株主総会で発足する。会長には川村隆日立製作所名誉会長、社長には53歳の小早川智明氏が就く。13人の取締役のうち10人が新任。原発再稼働では地元自治体、事業再編では他の電力会社との交渉が要になる。
 多くの関係者の利害が絡み合う難題が山積する中で、机上の再建案の実現を委ねられる新体制の行く手はいばらの道だ。


 銀行代理店制度を緩和、自由化で異業種参入促す

 金融庁は「銀行代理店制度」の規制を緩和する方針だ。今年度中にも関連する内閣府令を改正し、来春の適用を目指す。
 銀行代理店制度は、銀行業以外の異業種が銀行の代理店となって銀行業務を営むもので、2006年に一般の事業者にも開放され、新たな銀行形態として期待されていた。しかし、実際に銀行代理店として営業するためには銀行業務の経験者を配置するなどの義務が課されており、コスト面から積極的な参入のインセンティブが働かず、これまでの参入は56件にとどまっていた。
 今回の改正では、参入を希望する事業者のニーズと消費者の利便性向上の観点から、銀行業経験人材の配置義務などを取り払い、原則自由化するもの。また、取扱商品を特定した代理店も可能とするなど、使い勝手のいい制度へと改正する。
 店舗行政に関して金融庁はすでに昨年夏、銀行店舗の営業時間を実質自由化している。それまで「午前9時から午後3時まで」、原則最低六6時間は店舗を開けるよう求めていた規制を緩和した。これにより銀行店舗のありようは大きく変化しつつある。立地条件や顧客のニーズに応じて自由に営業時間を設定することが可能になったことで、24時間営業したり、1日のうちで数時間のみ営業するといった多様な形態が登場しよう。また、従来のように最低6時間開けておかなければならないために赤字であった店舗も、短時間営業で黒字化できる余地が生まれ、不採算店の閉鎖も少なくなると期待されている。今回の自由化で、これまでコスト面などから二の足を踏んでいたスーパーやコンビニなど消費者に近い小売りや、自動車ディーラーなどの金融と親近性の高い異業種の参入もありそうだ。


 三菱地所が戦略転換、「丸の内の大家」脱却へ

 日本を代表するビジネス街である東京・丸の内の「大家」を代名詞としてきた三菱地所が、ビジネスモデルの変革に乗り出す。これを象徴するのが、20年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画に織り込んだ1000億円の投資枠の存在だ。
 同社が投資枠を設けるのは初の試みであり、ビジネスモデルの革新につなげる狙いがある。そこからは4月に就任したばかりの吉田淳一社長による「脱・丸の内の大家」に向けた強い決意がにじみ出る。
 5月11日に発表した中期計画は、20年代における一段の成長に向けたビジネスモデル革新の推進を大きな狙いに据えた。創設した投資枠は期間中のグループとしての総投資額2兆500億円の一部で、グループ横断で新規事業の開発などに充てる。
 吉田社長は同日の記者会見で、少子高齢化の進展や第4次産業革命などの環境変化を挙げ、「新たな価値観が生まれる中、従来と違った事業モデルの構築が必要」と強調した。
 設定した投資枠はM&A(企業の合併・買収)も視野に入れるほか、地方空港の運営委託やカジノを主体とした総合型リゾート(IR)への投資も想定する。会見で吉田社長は新千歳など北海道内7空港の運営を一括で民間委託する空港民営化に「チャレンジする予定」としたほか、19年度に民営化予定の福岡空港の運営にも意欲を示した。
 同社は三菱系企業が集まる「三菱村」と呼ばれた丸の内のオフィスビルから得る安定した賃料収入を事業基盤としてきたことで、「丸の内の大家」と揶揄されてきた。今回のビジネスモデル革新を目指す投資枠の設定は、“殿様商売”からの脱却を目指す歴史的な戦略転換だ。


 小池都知事登場で“無電柱化銘柄”が活況

 株価は森羅万象を映す鏡。昨年6月末に東京都知事選に出馬表明し当選した小池百合子知事は選挙期間中に「東京都の無電柱化」を、「2020年の東京五輪・パラリンピックの開催地として、防災・交通渋滞対策・歩行者の安全に備え進めるのは当然の施策。パリやロンドンなどの国際都市ではすでに電柱は存在しない。景観からしても望ましくない」と公約の1つに掲げた。
 小池都知事誕生に背中を押されたわけではあるまいが、政府も昨年末「無電柱化推進法」を施行。年間7万本ペースで設けられていた電柱の新設を禁じ、減少を国交省に指示した。無電柱化は国策にもなった。
 この小池都知事の出馬表明とタイミングを合わせるように、株式市場では「無電柱化関連銘柄」がにわかに蠢き始めた。例えばコンクリート2次製品で中堅メーカーのイトーヨーギョー。日頃は市場人気の薄い銘柄だが、昨年6月末の株価に対し本稿作成中の時価は70%近く上値に居所を変えている。市場関係者は「狭い道路に適した地中化商品の開発に力を注いでいる点や、独自工法の開発で京都先斗町通りの狭い路地の無電柱化事業参入を目指している点が評価されている」と説明する。社内に地中化工事を請け負う専門チームを立ち上げた関電工も35%余り上昇、電柱業界最大手の日本コンクリート工業も「地中化に必要なコンクリート製品の製販を行っている」として30%近く上昇している。


 新年度入りした日銀考査、狙いは急増のアパマン融資

 「日銀の考査が控えているが、ターゲットは急増しているアパート・マンション融資だろう」──。ある地銀幹部は、近く実施される見通しの日銀考査の焦点をこう分析する。
 アパート・マンション融資については、サブリース大手の「レオパレス21」(東京都)に対し、家賃収入は10年間変わらない契約でアパートを建てたのに、途中で減額されたのは契約違反として128人ものアパートオーナーが集団訴訟を起こしたばかり。
 サブリースは、オーナーが建てたアパートを業者が一括して借り上げ、空室の有無にかかわらず一定の家賃を保証する仕組みだが、供給過剰で空室が増え、保証期間中に家賃が引き下げられるケースが相次いでいる。その根底にあるのが、資産家に対する金融機関の「アパート・マンション経営で節税しましょう。建設資金は当行が融資します」という甘い誘いだ。
 日銀の調査によると、昨年9月末のアパートローンの残高は22兆円で、前年同月比4%増加した。「マイナス金利の中、比較的高い利幅が見込まれ、かつ焦げ付きにくい融資として各金融機関とも積極的にセールスしている」(メガバンク幹部)。
 日銀は、こうしたアパート・マンション融資の急増が金融機関の不良債権予備軍になりかねないと危惧しており、今年度の考査から重点的に調査する方針だ。「入居率が低いアパート・マンション融資については、正常先から要注意先債権に落とすように指導している。特に残高が急増している地域金融機関については、空室率が20%を上回ったら自動的に引当を積むよう求めている」(日銀関係者)という。
 金融庁も「このところ金融機関のアパート・マンションローンなどの賃貸業向け貸出が急増しているが、本当に顧客のことを考えた融資になっているのか検証する必要がある」(金融庁幹部)という問題意識を持っている。昨年11月からヒアリングやアンケート調査を行っているが、これまでのところ焦げ付くリスクは低いとして「シロ」判定している。しかし、日銀の見方は厳しいようだ。


 東芝危機はもはや銀行危機になった

 断末魔に喘ぐ東芝は5月15日に、監査法人の「意見不表明」のまま2017年3月期の連結業績概要を発表、5400億円の債務超過に転落した。PwCあらた監査法人が東芝の内部統制に疑義を唱えて決算の承認を拒んでいるためだが、背景にはこれ以上待てない取引金融機関の追い詰められた台所事情がある。
 東芝は取引金融機関に今年度に1兆円の資金調達が必要と伝えている。昨年末で1兆4512億円の長短借入があるが、このうちコミットメントライン(短期の与信枠)として、主力の三井住友銀行、みずほ銀行、三井住友信託銀行の3行が約4000億円を設定しているほか、三菱東京UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、りそな銀行など主要7行が約2800億円の枠を設けている。この総額6800億円の借入枠が東芝の資金繰りを支える命綱だが、その継続には担保の差し入れが前提となる。東芝は東芝メモリの株式を差し出す意向で、主力行もすでに融資を継続する旨を伝えている。
 だが、より深刻な問題は、6000億円を超える額を融資する地銀など80数行にのぼるシンジケート(協調融資)団の足並みの乱れだ。東芝の取引銀行の中には同社の債務者区分を要注意先債権に落としているところもある。引当負担が収益を圧迫するが、「マイナス金利政策による利鞘の縮小や海外の有価証券投資で含み損を抱えた地域銀行は東芝の先行きに不安を募らせている。一方、担保として差し出されるのは東芝のグループ会社の株式や事業所の不動産でしかなく、融資を継続すれば債権放棄を求められるリスクがある。一部の地銀は東芝の破綻を危惧し始めた」(主力行関係者)という。
 体力の乏しい地域銀行は一刻も早く東芝から足抜けしたいのが本音だ。
 東芝が5月9日に提出した変更報告書によれば、4月28日付で、主力3行など取引先金融機関95社と担保設定契約を締結し、東芝テック、東芝プラントシステム、西芝電機、ニューフレアテクノロジー、芝浦メカトロニクス、チタン工業の保有株をすべて担保に設定した。6社の時価総額は2200億円に上る。東芝は金融機関引き止めに必死だ。
 そうした中、三菱UFJフィナンシャル・グループ(三菱東京UFJ銀行と三菱UFJ信託銀行)が東芝の債務者区分を「要管理先」に引き下げた。いまだ東芝の債務者区分を「要注意先」に据え置いている主力3行(三井住友銀行、みずほ銀行、三井住友信託銀行)へのアテツケとしか言いようがない。東芝を「要管理先」に格下げしたことで、同グループの既存融資は残高維持されるものの、新規融資は原則、難しくなる。三菱UFJは東芝にこれ以上、お付き合いをすることはできないと言っているようなものだ。もし三菱UFJと親密な地域金融機関が追随するようなことになれば、東芝支援の枠組みは危機に瀕する。


 無線LAN「ただ乗り」に無罪確定で収まらぬ総務省

 他人の無線LANのパスワード(暗号鍵)を解読して無断で使う「ただ乗り」問題は5月12日、東京地裁での「無罪判決」が確定した。電波法を所管する総務省は収まらず、「負け惜しみ」ともとれる理屈をつけて「違法」に固執し続けている。
 無線LANの「ただ乗り」をめぐる事件は2014年、松山市の男性が、近所の住人が契約している無線LANに接続するためのパスワードを解読し、自分のパソコンをネットに接続して悪用していたというもの。
裁判の焦点は、パスワードの解読が電波法で無断使用を禁じる「通信の秘密」に当たるかどうかだったが、判決は「パスワードは、通信の内容を知るための手段に過ぎず、通信の内容そのものではない」として、「電波法上は無罪」との判断を示した。
 これに対し、一貫して違法性を訴えていた総務省は、改めて反論。無罪の確定後にもかかわらず、今度は「パスワードを割り出すために他人の無線LAN機器に繰り返しつなぐ行為は、無線通信の秘密の窃用(盗んで使用する)に当たる」と「暗号解読の行為が違法」との見解を表明した。
 だが、これは、無理筋というもの。もともと電波法が想定しなかった事態だけに、現行法で対処しきれるはずもない。
 ただ、いまや7割の人が無線LANの利用経験者といわれるが、自宅で使う無線LANは、セキュリティー対策が甘いうえ、通信方式も古いタイプが多い。パスワードさえ不要というケースも少なくない。それだけに、無罪判決は「ただ乗り」を助長しかねない危うさもある。


 東大病院が東京五輪に向け女性アスリート外来を開設

 3年後に迫った東京五輪に向けて、女性アスリートの健康支援がようやく本格的に動き始めた。今年4月、東大附属病院に開設された「女性アスリート外来」は、女性アスリートに多い婦人科の病気や悩みに対応する専門外来として注目されている。
 3年前にこの欄でも紹介したが、女性アスリートは過酷な練習や間違った知識などで、無月経や骨粗鬆症、栄養不足などに陥ることが多く、それが成績にも影響しがちだ。産婦人科学会でも女性アスリート支援を謳い、産婦人科医でスポーツ医でもある能瀬さやか医師(東京大学附属病院女性診療科)らがこの問題に取り組んできた。
 女性アスリート外来は、世界大会出場クラスのトップアスリートだけでなく、地方大会や学生、一般の競技会に出場するアスリート、障がい者アスリートの支援も積極的に行う予定という。競技会出場のために月経周期を調節したり、月経困難症や月経前症候群などへの対応、さらには、妊娠、出産、出産後の現役復帰といった女性アスリートならではの悩みや問題に対して専門知識の提供やアドバイスを行う。
 診療を行うのは、女性ヘルスケアの専門医や日本体育協会公認スポーツドクター、日本障がい者スポーツ協会公認障がい者スポーツ医、日本アンチ・ドーピング機構公認ドーピングコントロールオフィサーなどの資格を有する医師。
 中でもこれまで遅れていた障がい者アスリート支援は、昨年のリオデジャネイロ・パラリンピックでの調査で女性障がい者は月経の不調があっても受診をしない人が多いことがわかり、力を入れる予定だ。


 朝日の木村元社長が再就職、背景にいるのは箱島元社長

 朝日新聞社の木村伊量前社長が国際医療福祉大学客員教授として4月から同大乃木坂スクールで講義をしている。講義内容は「私たちはどこへ向かうのか〜近代への旅・現代文明への問い」という高尚なもので、毎週月曜日午後6時から50人を定員に講義を受け持っているのだ。「週刊新潮」に突撃取材されると「若い人に何かを伝えることがうれしくて」と頭をかいた。
 木村氏と言えば、従軍慰安婦報道の訂正や池上彰氏のコラム不掲載、さらに福島原発吉田調書報道の責任をとって朝日社長を辞任した、いわくつきの人物。一時は社長を退いた後も、朝日社内で院政をしこうと、後継者には取締役の中で一番凡庸な渡辺雅隆氏を社長に起用した。しかし、それがOBを含む広範な反発を買い、朝日の顧問を辞めるところまで追い込まれ、結局、木村氏自身は朝日社内に影響力を残せなかった。
 その後、親しい元朝日経済部編集委員の人脈で財界に世話になろうとしたようだが、最終的には外務省の世話になって英国のシンクタンクのシニア・フェローに就任していた。いわば海外で無聊をかこっていた格好だが、そこに大学教授として招いたのが、国際医療福祉大だった。
 実は同大の理事には朝日新聞の箱島信一元社長がいる。箱島氏も武富士問題などを起こし、本人の「暗い性格」で朝日社内を異様に委縮させたため、OBや社員からの人望に乏しい。歴代の朝日社長が務める旧友会長にもなれず、築地の朝日本社には席がない。それを憐れんで同大が招いたらしいのだ。
 国際医療福祉大の設立者は医学界で立志伝中の人である高木邦格・同大理事長。高木氏は福岡県大川市の医師の家の3代目だが、医療だけでなく病院経営にも才覚を発揮し、福岡のローカルな病院に過ぎなかったのが、いまや全国展開する高邦会グループを形成。1995年には同大を創設し、今では医学部新設を狙っているといわれる。政界とも付き合いが深く、自民党の故渡辺美智雄氏に依頼されて栃木県に温泉を使った医療施設をつくったこともあり、ミッチー氏とのパイプは太かった。
 同大には読売新聞の社会保障部長OBの水巻中正教授もいる。読売新聞の冠講座「アベノミクスと社会保障の行方」も開講され、読売の現場の記者や部長、編集委員クラスが相次いで登壇している。
 高木氏の人脈は恐るべきものだ。


 政財界の要人がズラリ、船橋洋一氏の人脈力

 現在、日本再建イニシアチブを主宰する船橋洋一・元朝日新聞主筆の人脈力が今さらながらすごいと各界で評判だ。設立して5周年を迎えた同イニシアチブを祝って、東京・六本木の最高級ホテル、グランドハイアットで開かれたパーティーには、安倍晋三首相が駆けつけ、「朝日は嫌いですが、この人は別です」と持ち上げてみせた。岸田文雄外相や小泉進次郎衆院議員も駆けつけたほか、米中両国の安全保障、外交関係者が勢揃い。出席者の1人は「すごい人脈に圧倒された」と感想を漏らしていた。
 日本再建イニシアチブは東日本大震災の直後の2011年9月に設立された。同財団をベースに民間事故調を設立し、そこで収集した情報などをベースに船橋氏が「カウントダウン・メルトダウン」を著して大宅壮一ノンフィクション賞を受賞する如才のなさだ。同イニシアチブの専務理事は近藤正晃ジェームス(ツイッタージャパン社長)、理事には新浪剛史(サントリーホールディングス社長)、江原伸好(ユニゾンキャピタル代表)、評議員には潮田洋一郎(LIXILグループ会長)、長谷川閑史(武田薬品工業会長)ら錚々たる顔ぶれが名前を連ねている。
 さらに注目すべきは、事務局長に朝日新聞の大軒由敬元論説主幹を連れてきていることだ。日本経済新聞の大軒順三社長の息子で朝日入社後は経済部などを歩み、同じ経済部系の船橋氏の知遇を得た。「人柄は温厚で明るいが、記者としてはとりたてて目立たなかった人」(朝日経済部OB)という、いわば軽い存在だが、船橋氏が主筆になった際に論説主幹に抜擢された。「本人も『私でいいのですか?』と驚いたというよ。船橋さんが光り輝きたいがゆえに、目立たない大軒を処遇したのだろう」(同)。朝日からはほかにも編集委員としてはパッとしなかった政治部出身の加藤洋一氏を研究主幹としても招聘している。
 この辺の面倒見の良さが、船橋氏の人脈力・処世術たるところである。某省のある若手課長は「突然、船橋さんと食事でもしないかと誘われたことがある」「ご著書をご恵贈いただき、たいへん驚いた」と打ち明ける。将来は省の中枢に行くかもしれない40歳代の中堅官僚を早い段階からソースとして「青田刈り」しているようなのだ。こうしたきめ細かな人脈形成能力は若い記者たちも見習ったほうがいいだろう。


 宅配混乱も余裕のアマゾン、主役のクラウド事業に舵

 アマゾン・ドット・コムがクラウド事業を武器に急成長を続けている。その破竹の勢いは宅配網が綻びた日本に向けられる。アマゾンはクラウドの追い風に乗り、増収増益で株価は初の1000ドルに乗せる勢いだ。
 日本にいるとわかりにくいが、アマゾンの営業利益の大半は、IT分野で急拡大しているクラウドサービスが稼ぎ出している。これまでのオフィスの備え付けのワークステーションなどIT機器をほぼ不要にしてしまうインターネット経由のソフトサービスだ。米国企業は、マル秘の情報も自社のサーバーで管理せずに外部のクラウドサービスに預けることをためらわない。日本にもその波が訪れそうな気配がある。そうなると、IT機器やパッケージソフトを企業に売り、進歩するIT機器の買い替え需要や保守サービスで儲けてきたNECや富士通など大手メーカーにも大きな脅威になる。
 一方、いち早く儲からなくなったビジネス用のパソコン事業を中国企業のレノボに売り払った米IBMにも、ここにきてアマゾンの雲(クラウド)が立ち込める。
 IBMは何と20・四半期連続減収。原因の1つがアマゾンのクラウドだ。5月中旬、世界的投資家でIBMの大株主だったバフェット氏が、保有するIBM株の約30%を売却したことが明らかになった。IBMに見切りをつけたのだ。
 クラウド時代では、企業の顧客が自前でサーバーやパッケージソフトを購入せずとも、安価にITを活用できる。IBMの牙城のメインフレームや関連のコンサルティング部隊などが不要になる。このクラウド事業でIBMは決定的に出遅れていた。同様に、内向きな問題の対応に明け暮れてきた感のあるNECや富士通も、クラウド対策・進出でアマゾンの「周回遅れ」ともされる。
 クラウドの特性にいち早く、そして密かに注目していたアマゾンのクラウド事業「アマゾンウェブサービス(AWS)」は、自社の巨大サーバーとシステムを他社にも使えるよう提供し、いまや同社の営業利益の7割を稼ぐ。アマゾンはすでに世界でシェア3割強を握る大手クラウド事業の「巨象」なのだ。
 AWSは人工知能(AI)の学習プログラムも無償で公開。資金が限られるベンチャー起業家は、わずかな手元資金でも事業を円滑に始められる。
 アマゾンの日本での売上高は今後4〜5年で3兆円を超す見込み。今後、アマゾンによって「食われる」のはNECなど電機業界になるだろう。「小売りの壊し屋」というアマゾンの現在の姿はやがて「巨象」となるだろう。


 カジノ業界が注目するフジテレビ日枝会長の動向

 フジ・メディア・ホールディングスは(FMH)は5月15日、お台場の本社で決算説明会を開いた。相談役に退く予定の日枝久会長は「IR(カジノ)などで手助けをすることがあるかも」と漏らし、カジノ業界から注目されている。フジサンケイグループの代表職を続投し「グループのイベントの分野は私が担っていくことになる」と堂々と宣言。会長を辞して雑事から逃れ、IR案件に専念するのか?
「当確」といわれた菅義偉官房長官のお膝元の横浜カジノ構想は“横浜のドン”藤木幸夫横浜港湾協会長が「なくてもいい」と言い始めたため、お台場が再度注目されている。
 2013年には日枝氏を中心に、フジ、日本財団、鹿島、三井不動産の4社が安倍政権にお台場でのカジノ計画を提出した。ちなみに安倍首相と日本財団の笹川陽平会長、日枝氏の別荘は富士5湖のご近所同士であり、相互に訪問し、カジノについて語る仲間のようだ。
 カジノを合法化するためのIR推進法は15年末、「超特急審議」で野党の猛反発の中、可決して成立。年度内に実施法案を仕上げる段階。 政府はこのほどIR区域整備推進本部の準備室を内閣に置き、全国でカジノ誘致が始まった。大型カジノ二カ所は、横浜と大阪が有力との観測もあったが、第1号とみられていたのはお台場だった。
 日枝氏は、フジサンケイグループを支配していた鹿内家の鹿内春雄氏が急逝した1988年にフジテレビ社長となる。その前の86年には、お台場開発を進める常務取締役(総合開発室担当)となっていた。社長就任後は29年間も代表取締役(社長・会長)を務め、その権力を欲しいままにしてきた。
 放送業界の17年3月決算では大きな動きがあった。フジテレビ本体(単体)の決算が、テレビ東京の単体の当期純利益より下だったのだ。想定外の「屈辱」の衝撃が、フジの体制一新への要素となった。売上高はフジテレビ2897億円、テレビ東京1713億円とダブルスコア以上の大差だが、当期純利益はテレ東の約41億円に対してフジテは約33億円と完敗だ。
 このため、会見で、日枝氏は「視聴率のアップと営業収益の改善が喫緊の課題だ」とネジを巻き、「新しい中期経営計画の策定を指示した」とも話し、引責辞任説もどこ吹く風で、やる気は満々のようだ。


 離脱を決めた英国人がEU旅券申請に殺到

 英国の欧州連合(EU)離脱決定を受け、EU各国のパスポート申請窓口に英国籍者が殺到している。EUから離脱する前にEUのパスポートを入手し、域内の移動の自由などの権利を確保する狙いだ。
 ドイツ北部ハンブルクでは昨年、英国籍者280人が市民権を申請した。52人だった前年の5倍以上だ。このうち206人は、英国のEU離脱が決まった6月の国民投票後に申請。市当局は、申請者急増と国民投票の間には「明確な関係がある」と分析している。
 西部ダルムシュタットで昨年、市民権を申請した英国籍者は628人。うち521人が国民投票後。前年は年間でわずか100人だった。国籍別では、英国人はトルコ人、モロッコ人に続き3番目。ポーランドやセルビア、クロアチアなどの東欧諸国出身者より多かった。南西部バーデン・ビュルテンベルク州でも昨年の申請者は前年の5倍以上だった。
 ユダヤ教のラビで、両親のいずれもがナチスに殺害された親族を持つジュリア・ニューバーガー英上院議員もドイツ市民権を申請した1人。同議員は「私は誇り高き英国人であると同時に欧州人」と強調。ナチスの負の歴史を学んで育ち、難民を広く受け入れるメルケル首相を「大いに称賛する」と述べて「新しいドイツ」への期待を示した。
 アイルランドでも英国籍者による1カ月当たりの市民権申請は、従来の1年分に相当する数に急増。ポルトガルやデンマーク、スウェーデンでは市民権取得に関する問い合わせが相次いでいる。地中海に浮かぶマルタでも、昨年の市民権申請者は424人で、2015年の204人、14年の152人から大幅に増えた。温暖な気候に恵まれているのに加え、英国の支配を受けた歴史から英語が公用語で、英国と同じ左側通行であることが人気の秘密だ。
 逆に英国のパスポート取得を目指すEU市民も増えている。昨年の申請者は1万3000人以上で前年比35%増。その多くは、他のEU加盟国在住の英国出身の親による子供のパスポート申請で、親の1人は「子供が祖国と呼べる場所を確保しておきたい」と語る。アイデンティティーとは那辺にありやと考えてしまう。


 プーチン自ら暴露した中国・釣魚台の“秘密”

 中国・北京で5月15日に閉幕した現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の国際首脳会議に参加したプーチン大統領が、「釣魚台迎賓館に置かれているピアノは調律不足だ」と“暴露”した。
 前日の14日、中国・習近平国家主席との首脳会談を待つ間の時間潰しに、グランドピアノに向かい、即興演奏に及んだプーチン大統領。黒帯の柔道とは違ってピアノは“二本指打法”というが、周囲にいた人たちによると、プーチン大統領は旧ソビエト時代に流行した「モスクワの窓々」やサンクトぺテルブルクの曲「夕べの歌」を弾いてみせたという。
 プーチン大統領といえば、首脳会談に遅刻して相手を待たせることで有名である。山口県の温泉旅館で開かれた安倍晋三首相との会談でも遅れてきて周囲をハラハラさせたが、今回は相手の習主席にそのお株を奪われ、仕方なくピアノ演奏のパフォーマンスで暇を潰したわけだ。
 記者会見で、演奏の出来栄えについて質問された大統領は「時間があったのでピアノをいじってみた。ただ、ピアノの音程がずれていたのが残念だった。2本指で弾く私でも、弾くのがとても大変だった。私は演奏したとは言えず、ただ2、3本の指で盤を押しただけだ」と釣魚台のピアノの調律不足を指摘したうえで、自分のテクニックを謙遜した。
 中国側にとっては、思いがけぬおもてなしの不備を指摘されたわけだが、まさかゲストの首脳がピアノの即興演奏をするとは考えもつかなかったか。プーチン大統領は、今後トランプ米大統領に会うとしたらどんな曲を演奏するかと記者から問われ、「わからない。彼に会って議論して、その話題によってメロディーを決めるべきだろう」と応じていた。


 地下トンネルに国境軍… 北朝鮮「脱力」現地情報

 緊迫が伝えられる北朝鮮情勢だが、現地は必ずしもそうではなさそうだ。
 まずは地下トンネルだ。北朝鮮の国土の9割は山地で、韓国との国境を含む主要地点には多数の地下トンネルが掘られている。だが、韓国側は近年、新しいものは1つも見つけていない。韓国領土の地下まで延びているものも多数あるとみられるが、韓国側は対策を立てていない。
 また中国は中朝国境に吉林・遼寧軍区と北京軍区の一部部隊約15万の兵力を集結している。目的は「北の核ミサイルの北京攻撃」対策だが、仮にミサイルの主目標が北京だとしたらこの配置はそぐわないだろう。
 習近平主席は、4月11日から解放軍の一級軍区に「4級臨戦体制」を指示。5月には朝鮮西側の黄海で中国海軍の「東海艦隊」が洋上実弾演習を行っているが、西側はそれをキャッチしていない。また5月の一連の「大軍事パレード」が大きく宣伝されたが、実際には平壌市内では緊張感はなかったという。


 伊航空大手アリタリアが経営破綻、解体の可能性

 経営危機に陥っているイタリアの航空大手、アリタリア航空はこのほど、自力再建を断念し、特別管財人の下で事業再建を進める手続きを政府に正式申請することを決めた。事実上の経営破綻で、今後はリストラによる事業の継続や売却を目指すが、会社清算に追い込まれる可能性も取り沙汰されている。
 アリタリアは今年3月、2021年までの5年間にわたる経営再建計画を発表。当初3年間でコストを10億ユーロ削減するとともに、売上高を30%増やして37億ユーロとし、19年末に黒字化を実現する内容だった。従業員も1万2500人の16%に当たる2000人の削減を労組に提示した。交渉は難航したが、削減数を1700人にとどめることで4月14日に暫定合意に達した。
 しかし、同じ14日に実施された従業員による投票で、リストラに対する反対票が8割に達し、再建計画は否決された。アリタリアは計画が承認されることを前提に、20億ユーロの増資も行う考えだったが、自力再建の道は断念せざるを得なくなった。最終的に、同月25日に開いた取締役会で、特別管財人の下で再建を目指す方針を決定した。
 アリタリアは当面、予定通り運航を継続するとしている。しかし、運転資金は早晩、枯渇する可能性があり、再建を目指すには何らかの救済策が必須となっている。
 ただ、アリタリアをめぐっては、ドイツの航空大手ルフトハンザが買収に関心を持っているとの観測が浮上したが、ルフトハンザ側はこれを即座に否定。また、アリタリアの大株主であるイタリアの大手銀行インテーザ・サンパオロが、ルフトハンザを巻き込んで救済を検討しているとも報じられたが、こちらも否定。かつてアリタリアと提携していた欧州航空大手エールフランスKLMも、救済には関与しないと突き放している。イタリア政府も国有化の憶測を否定しており、身売り先が現れなければ、アリタリアは最悪の場合、解体に追い込まれる可能性がある。
 アリタリアは戦後の1946年、イタリア政府などが出資して半官半民企業として発足。57年にイタリア航空と合併し、フラッグキャリア(国を代表する航空会社)としての地位を築いたが、経営は慢性的な赤字が続いている。08年には最初の経営危機に直面。投資家グループの支援でなんとか乗り切り、09年にはエールフランスKLMと資本提携し、再建を目指した。
 しかし経営は一向に改善せず、13年に2回目の経営危機が訪れた。エールフランスKLMに追加出資を要請したものの断られ、14年になってアラブ首長国連邦(UAE)の新興航空会社エティハド航空の出資を受け、出直しを図った。
 ただ、エティハドの出資比率は49%にとどまっている。欧州の航空会社への出資を通じて業容の拡大を図ってきたエティハドだが、イタリア特有の不透明な政治情勢や対立的な労使関係もあり、アリタリアの経営を掌握するのに手間取ったようだ。しかも、欧州ではアイルランドのライアンエア、英国のイージージェットなど格安航空会社の台頭が目覚ましい。エティハドは競争の激化を過小評価したとも指摘されている。


 米中が貿易不均衡是正で「100日計画」に合意

 米国と中国はこのほど、貿易不均衡の是正に向けた「100日計画」の具体策で合意した。まずは100日間に絞って貿易不均衡の是正につながる措置を順次実行していくというもので、4月のトランプ大統領と習近平国家主席との首脳会談に基づく成果だ。
 中国は03年、米国でBSE(牛海綿状脳症)が発生して以来、米国産牛肉の輸入を長年にわたり禁止してきたが、100日計画に基づき、国際的な安全基準を満たせば直ちに輸入を開始する。中国では経済発展に伴う所得の増大を背景に牛肉消費が拡大しており、渡りに船ともいえる。
 中国はまた、外国の格付け会社による中国国内での格付け業務を容認する。米金融大手2社の債券引き受け業務も認める。
 これに対して米国は、LNGの対中輸出を歓迎すると表明。中国は温室効果ガスの排出が石炭・石油に比べて相対的に少ないLNGの輸入を拡大する方針を打ち出しており、米企業による輸出拡大は朗報となる。
 一方、中国が推進するシルクロード経済圏構想「一帯一路」をめぐっては、共に重要性を認識するとの点で一致。トランプ政権は、北朝鮮問題で中国側の譲歩を引き出すため、一帯一路構想に何らかの形で乗ることを模索しているとみられる。日本政府はこれまで、中国の覇権主義を警戒して同構想に批判的だったが、米中の歩み寄りを受けて対応の修正を迫られる可能性がある。米中両国は今後、貿易不均衡是正のため、1年間の長期的な計画も策定する。夏には米国で「包括経済対話」を初開催し、協力を強化する方針だ。
 米国にとって、中国は最大の貿易赤字相手国。しかし、北朝鮮問題もあり、今のところ対中強硬措置は控えている。百日計画にも、実施が比較的容易な措置がまず盛り込まれた。難題は先送りされており、今後の協議の展開が注目される。


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