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 4月からの日米経済対話、成功の鍵は世耕氏外し

 2月の日米首脳会談を受けて4月中旬に始まる見通しの日米経済対話。日本が有利に進めるための鍵は「世耕弘成経済産業相をいかに外すか」が安倍政権内の共通認識になっているという。
 対話のトップは麻生太郎副総理兼財務相とペンス副大統領に決まっているが、問題は実質的な協議の場。仮に、世耕氏を対話の主要メンバーにすると、必然的に米側の相手がロス商務長官となりかねず、「世耕氏ではとても太刀打ちできない」(自民党有力議員)とみられるからだ。ロス氏はいくつもの企業を再建した熟練の投資家で交渉力は折り紙つき。幸福銀行(現関西アーバン銀行)を買収、再生させるなど、日本の内情も熟知している。対して世耕氏は、昨年12月の日露首脳会談に向け、ロシア経済協力担当相として交渉に当たり、協力カードをいくつも切りながら焦点の領土問題での前進はゼロ。「目立ちたがり屋だが、交渉力は乏しい」(政府筋)との評価が定着した。
 そもそも、日米首脳会談の前、対米貢献策の1つとして、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資金を対米投資に充てると一部で報じられ、菅義偉官房長官が激怒。世耕氏ら経産省がネタ元と疑われ、同氏に対する安倍晋三首相や菅氏らの信頼も低下した。世耕氏が省内の全室に昼間も鍵をかけ、取材の窓口を広報室に一本化する「情報統制」を敷いたのも、「情報管理の徹底を首相官邸にアピールするため」との見方がもっぱらだ。現在、同省の職員間で施錠を確認し合う際の合言葉は、長嶋茂雄氏の警備会社のコマーシャルにひっかけて「セコウしてますか?」。世耕氏は国益のためにも、鍵の管理に専念したほうがいい?


 スティグリッツ教授の説く「国債無効化」論の危険性

 安倍首相の消費税増税延期の理論的バックボーンになってきたノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ・コロンビア大教授が3月14日、経済財政諮問会議に出席して安倍政権の今後の経済運営について意見を述べた。驚かされたのは、政府・日銀が保有する巨額な国債を無効化することで、政府の債務は「瞬時に減少し、不安が和らぐ」と主張したことだ。そのために、債務を永久債や超長期債に組み替えることで、「政府が直面する金利上昇リスクを移転できる」と説いている。消費税を上げずに国債を無効化することで、国民の将来不安が取り除け、消費が喚起されて経済が上向くという理論だ。
 だが、スティグリッツ氏の理論には危険性も伴う。日本はGDP(国内総生産)の2倍を超える財政赤字を抱え、先進国で最悪の財政状況下にある。その日本で国債を無効化すると宣言した場合、市場はどう反応するか。もし政府の思惑とは逆に、財政健全化を放棄したと捉えられた場合、国内の資産が海外に流出するキャピタルフライトを招き、円は暴落し、金利が急騰する懸念もある。
 確かに、日本国債の9割以上は国内で保有され、国債市場の暴落(金利の上昇)は起こりにくい構造にある。しかし、国債を大量に保有するのは金融機関や個人。国債の信認が失われた際の反応は未知数だ。
 スティグリッツ氏が主張する理論は、いわば政府・日銀の負債をチャラにするという徳政令であり、うかつに与(くみ)するのは危険かもしれない。借金の返済に魔法がないことは国も個人も同じである。(本誌42ページ参照)


 「小池・公明」共闘に自民党国会議員は戦々恐々

 今夏の東京都議会選挙(7月2日投開票)で、小池百合子東京都知事が率いる「都民ファーストの会」が都議会公明党と選挙協力で合意したことに、首都圏選出の自民党国会議員が焦りの色を強めている。国政レベルで安倍政権を共に支える自公協力関係に影響を与えることを懸念しているためだ。
 一方、公明党幹部は国政における自公連携への影響を打ち消すのに躍起だ。山口那津男代表は「自公連立政権こそ、国際社会の信頼を得る唯一の道だ」と公言。また、公明党都議団側も「選挙協力はあくまで都議会レベルの話。国政とは次元が異なる」と、自公連立政権への影響を強く否定している。
 しかし、東京都内選出の自民党国会議員は国政選挙への影響を深刻に受け止めている。ある若手の自民党議員は「国政に影響がないわけがない。実際に自民党の都議が減れば、衆院選での実働部隊の力が弱まることになる。その上、自公の選挙協力がギクシャクすれば当然、選挙にも影響する」と言い切る。
 また、「小池新党が国政選挙で候補を立てたら公明党はそちらに乗るかもしれない」(都下選出の自民党中堅議員)との疑心暗鬼もある。3月に都民ファーストの会は、国政に関する勉強会「国政研究会」を発足。これについては「小池新党」の国政進出への布石ではないかとの憶測も広がっている。
 このため、東京以外の神奈川、千葉、埼玉各県の選挙区の現職や新人は「自分の選挙区に小池新党の動きはないか」と神経を尖らせている。小池・公明連携で首都圏選出の国会議員らはまさに戦々恐々状態だ。


 米の対北朝鮮政策に軍事オプションの現実味

 トランプ米政権の対北朝鮮政策に軍事オプションが含まれることが明らかになりつつある。就任後、初の外遊先として日本、韓国、中国を選んだティラーソン国務長官は「すべての選択肢はテーブルの上にある」と述べ、武力行使も排除しない姿勢を示した。
 これより先、マティス国防長官が最初の訪問先として日本と韓国を選んだのも対北朝鮮がトランプ政権にとって外交面で最大の懸案であることを示している。
 金正恩委員長が元旦の朝鮮中央テレビで「大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発が締めくくりの段階にある」と主張したのを受けて、マティス氏は「(北朝鮮の)どのような核攻撃も圧倒的に対応する」と強硬な態度で臨むことを明言した。
 北朝鮮はすでに5回の核実験を成功させ、3月には米韓合同演習に対抗するように連射した中距離弾道ミサイル4発のうち3発を日本の排他的経済水域に落下させ、在日米軍基地を牽制してみせた。
 挑発を繰り返す北朝鮮に対し、中国を訪問したティラーソン氏は「20年以上、北朝鮮を抑止する試みは成功しなかった」と述べ、トランプ政権下での政策転換を示唆した。
 米国の歴代政権はオバマ前大統領の「戦略的忍耐」という言葉に代表されるように核・ミサイル開発の放棄を米朝対話の交換条件とするという「待ち」の姿勢を20年以上にわたり続けてきた。逆にいえば20年以上前には軍事オプションを検討したことがあるということである。
 北朝鮮が核開発を進めるため核拡散防止条約(NPT)脱退を表明した1993年、米国は寧辺にある核開発施設の空爆を検討した。第2次朝鮮戦争に発展するとみて損害を見積もったところ、米兵5万人が戦死し、朝鮮半島で100万人の死者が出ることが判明した。また日本政府に対米支援を断られ、自衛隊の支援も受けられないと分かり、米国は空爆を断念した。
 日本が当時と現在で違うのは、安倍政権になって「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)を改定し、さらに安全保障関連法を制定して米国による北朝鮮攻撃を全面的に支援できる態勢となっている点である。
 防衛省幹部は「軍事オプションを交渉材料として使うならまだいい。しかし、金委員長もトランプ大統領も想定不能。自衛隊に北朝鮮のミサイルに対処するミサイル防衛システムがあるとはいえ、万全ではない。第2次朝鮮戦争が勃発すれば、日韓両国は滅亡の危機を迎えかねない」と話している。


 企業の長老支配に問題提起、経産省の思惑と実効性は?

 東芝に限らず大企業のいたるところで最高顧問、特別顧問、名誉会長、相談役などの功成り名を遂げたOBのアドバイスと称する言動が、現経営陣の経営のホコ先を鈍らせるどころか、方向を誤らせるケースも出て問題が噴出し始めている。
 そんな矢先、経済産業省の委嘱した有識者研究会で企業の長老支配問題に関する報告書案がまとまり、経産省は問題提起という形で企業社会にアピールする予定でいる。
 研究会に参加した関係者によると同報告は、コーポレートガバナンスを貫徹することが企業の持続的成長をもたらすという視点に立つ。企業経営の現場でCEOやCOOといった最高経営責任者の立場で力を発揮した人たち、あるいは社長、会長と称される人たちが、リタイア後も企業の最高顧問、特別顧問、相談役などのポジションに就き企業から報酬を得る場合、報酬の裏付けとなるミッションを明確にすべきだ、というのがポイント。
 特に委員会等設置企業では社外役員などが関与する指名委員会、報酬委員会などがそのミッションのルールづくりに関与する。最高顧問といえども現役経営陣の妨げにならないアドバイスにとどめ、対策などの報告を求めたり、あるいは強要するものであってはならないように明文化する。さらに実体が伴わない形だけの顧問ポストづくりにしないように人数を制限し、報酬額を過大にならないものにするためにミッション内容も何らかの形で開示していくなどになる見通しだという。
 長老支配に苦しむ企業の経営現場にとっては、経産省のコーポレートガバナンス改革を大義名分にしたいところだろう。だが、法的な裏付けがない。その上に、金融機関を監督する金融庁と違って、経産省の場合は特別の監督権限を持っていない。いわゆる「行政指導」を審議会や有識者会議などを使って、無言の圧力をかけるだけなので、どこまで実効を伴うかが最大の問題となる。
 経産省としては、不透明な企業の長老支配をなくすことで現役経営者が企業活力を維持できるように経営のガバナンス環境を整備する狙いだが、下手をすると行政の民間企業経営介入になるし、アドバルーンの揚げ方が難しいところ。
 ある経産省幹部は「最近、わが省もメディアとの関係がしっくりといっておらず、メディアの力を背景に企業のガバナンス改革を、と言ってもうまく呼応してもらえるか分からず、悩ましいところ」と述べている。


 森友学園の国策捜査はトカゲの尻尾切りか

 国会を揺るがせている森友学園疑惑は、籠池泰典理事長の証人喚問を経て、検察、警察といった捜査当局が、数々の疑惑解明に乗り出すことになった。それを受けて、これまで国会の答弁などで籠池発言に翻弄されてきた安倍晋三政権は、今後、反撃に転じる。
 実際、籠池氏は幾つもの違法の痕跡を残しており、すでに出版社社長が鴻池祥肇元防災担当相に対する「贈賄申し込み罪」で告発するなど、事件化へ向けた動きが出始めている。大阪府や大阪市は、補助金不正受給に伴う詐欺や補助金適正化法違反、私文書偽造、偽計業務妨害などでの告発を検討、証人喚問での証言が明らかな虚偽であれば偽証罪での告発も考えられる。
「籠池氏は“虎の尾”を踏んでしまった。国有地を8億円安く購入しただけなら、国土交通省という国と組んでいるわけで、その背後に安倍首相の影も見え、捜査当局は手を出しにくい。ところが、安倍首相からの100万円の献金を口にして、国家を敵に回した。これから検察による国策捜査が始まる」(ヤメ検弁護士)
 本来、捜査対象となるべきは、資金不足の森友学園に小学校設置認可を出した大阪府官僚であり、不当に安く国有地を払い下げた国交省官僚だ。そこに右派系団体の日本会議元幹部である籠池氏に頼まれた政治家が口利きをしていれば、政治家の罪も問える。検察が動きやすい「政官業の癒着」の構図だった。
 証拠改竄の大阪地検事件以降、「死んだふり」を余儀なくされた大阪地検特捜部にとって、まさにそれは起死回生を狙える事件である。「重大な関心を持って見守っている」と、大阪地検幹部は森友学園報道が大きくなるにつれ、司法記者などにそう明言するようになっていた。
 しかし「潮目」が変わったのが3月16日。与野党議員と面会した籠池氏が「昭恵夫人を通じて安倍首相から100万円の寄付を受けた」と、証言してからだ。官邸は参考人招致を偽証罪の加わる証人喚問に格上げする一方、法務省を通じた検察への指示で、まず「籠池事件」として捜査に着手することになった。
 もともと検察というのは国家秩序を最優先する組織。森友学園疑惑を解明することで国民の期待に応えるつもりだったが、籠池氏の二転三転する証言に国政が振り回され、首相まで疑惑の構図に巻き込むような発言を繰り返すに及び、まず籠池氏の罪の追及から始めることになった。
 籠池氏本人も認めているように「叩けば埃の出る体」である。場合によっては政界にまで司直の手は伸びずに、籠池氏の個人犯罪で終結する可能性も十分にありそうだ。


 第2の森友学園事件? 加計学園の大学新設手法

 安倍晋三首相の後援者が愛媛県今治市に新設する岡山理科大獣医学部の用地として、約17ヘクタール、約37億円相当の土地を無償譲渡し、さらに総事業費192億円のうち半分の96億円を市が負担する──。
 すでに今治市議会が、3月3日に補正予算案で可決。工事は始まっているものの、岡山理科大の認可過程と補助金の支給決定過程に問題があれば、騒動となる可能性を秘め、「第2の森友学園」とはやされる。
 違いは「安倍首相とは1度も会ったことがない」という森友学園の籠池泰典理事長に対し、岡山理科大を経営する学校法人加計学園(岡山市)の加計孝太郎理事長は、「どんな時も心の奥でつながっている友人」と安倍首相が公言する仲であることだ。
 獣医学部新設は52年ぶり。新設されなかったのは、獣医師の数が需要を満たしていると文部科学省や農林水産省が判断していたため。今治市では規制を解くために、国に構造改革特区の設置を何度も提案しながら認められなかった。
 それが第2次安倍内閣の誕生とともに動き出し、2016年11月、今治市は国家戦略特区となり、獣医師養成系大学設置の規制が緩和され、公募で、唯一、手を上げた岡山理科大の学部新設が決まった。
 加計理事長に籠池理事長のようなスキャンダルが発覚しているわけではないが、加計学園に対する政治的な配慮による大学新設が、地域に貢献していない例がある。04年、同学園が千葉県銚子市に設置した千葉科学大学である。誘致したのは野平匡邦市長(当時)で、野平氏は1997年から99年までは岡山県副知事で加計理事長とは旧知の仲だった。
 誘致に当たって銚子市は好条件を提示。用地約15ヘクタールを無償譲渡し、校舎建設費などで約78億円の補助金を提供した。しかし銚子市はその後、財政悪化に苦しんでおり、政治力を使った加計学園の進出手法への批判は今も残る。
 千葉科学大学の経営を側面支援しているのが安倍首相で、前述の「心の友発言」は、同大学の10周年式典に、安倍首相が岸田文雄外相を伴って出席した際のスピーチなのである。そんな交際が「加計学園は安倍首相と親しい」という印象を文科省他の官僚に与える。
 そうした「忖度」が森友学園は事件につながったとみられるが、加計学園はどうか。そんな連想が生まれるのも無理からぬことだ。


 「オプジーボ」をめぐって医師と歯科医が職域論争

 高額薬価で大騒ぎになったがん免疫療法剤「オプジーボ」をめぐって今度は医師と歯科医師間の「職域論争」が起こっている。
 オプジーボが先頃、「再発または遠隔転移した頭頸部がん」への適用が追加されたのに伴い、厚生労働省が扱う医師の要件を定める「最適使用推進ガイドライン」を薬事食品衛生審議会に内示したのだが、そのガイドラインに歯科医師が同剤を扱えるようになっていたことから、医師側から反発の声が上がっているのだ。
 ガイドラインでは頭頸部がん治療ではがん専門医師や耳鼻咽喉科医師と共に、「5年以上の口腔外科の臨床研修と、そのうち2年以上のがん薬物療法を含む口腔外科のがん治療の臨床研修を満たす医師または歯科医師」と書かれていた。口腔外科は歯科医の分野であり、すでに口の中にできたがんに対しては口腔外科の歯科医が切除手術や第1選択肢のプラチナ製剤の抗がん剤治療をしている。
 ところが、これに反発したのが医師側だ。「オプジーボは第1選択肢の抗がん剤に効果が認められない場合に使う第2選択肢の抗がん剤だ。歯科医師にオプジーボを使う治療を認めるのは歯科医にがん治療の道を開く行為で、歯科医の専門領域を逸脱する」と反対したのだ。
 今回のガイドラインでは副作用を考慮して「歯科医師は医師と緊密な連携の下で治療する」と注記しているものの、医師側は「たとえ連携を謳っても、第2選択肢の抗がん剤まで歯科医師に認めたら医師と歯科医師との区別がなくなる」と猛反発しているのだ。
 ある関係者は「医師は口の中を見ないし、歯科医は口の中しか見ない。お互いに領域にこだわっているほうが問題だ」というのだが。


 東芝の半導体事業の買収に鴻海・ソフトバンクが意欲

 東芝が計画している半導体分社化に伴う出資交渉に台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が意欲を見せている。郭台銘董事長は分社化が決まった東芝の半導体メモリー事業について「我々は東芝の経営を助け、資金をつぎ込むことができる」と出資に強い意欲を示す。
 東芝の半導体事業をめぐっては米韓台10社程度が名乗りを上げており、鴻海がこの争奪戦を勝ち抜くために考えたのが、ソフトバンクとの連携だ。ソフトバンクグループはこのほど、シンガポールに置く投資資産運用会社を鴻海との合弁に切り替えると発表した。ソフトバンクの子会社に鴻海の中国子会社が6億ドル(約675億円)を出資して株式の54.5%を持つ。
 その鴻海の子会社というのが中国最大のファウンダーである富士康科技集団(フォックスコン)だ。ソフトバンクは今回の合弁会社設立に関して、「フォックスコンの国際的なプレゼンスとネットワークに、当社の投資に関する知見を組み合わせて投資活動に新たな視点を取り入れる」としているが、「狙いは完全に東芝の半導体事業。鴻海はシャープを買収したことで液晶テレビなど最終製品の開発から製造、販売まで手掛けられるようになった。フォックスコンも同様で、単なる半導体の受託製造から、設計・開発機能を手に入れることができる」(大手証券アナリスト)ためだ。
 また肝心の買収資金は「ソフトバンクが近く立ち上げる10兆円ファンドからの拠出も期待できる」(鴻海幹部)との声もある。


 三越伊勢丹大西社長を追撃、怪文書の凄い内容と効果度

 3月の三越伊勢丹HDの大西洋社長の突然の辞任について、「昨年末から社内外に飛び交っていた大西氏の経営手腕を疑問視する2つの怪文書が理由だ」と書きたてられた。
 気になる怪文書の中身だが、まずはメディア各社が持っているB5版1枚のコンパクトな作品から。「社長になった時から、いつかとんでもないことになるという不安を多くの人が感じていた」で始まり、中段では大西氏がメディアに登場しPRした事業を、次のようにこっぴどくこき下ろしている。
「新聞雑誌にも面白おかしく書かれているが、まだ氷山の一角だ。内部はもう相互不信の疑心暗疑の地獄。みんなの反対を封じて強行した新宿本店の改装。何年も言い続けているが成果も出ず不良在庫があふれる仕入構造改革。何でも手を出す新規事業等々。間もなく隠しきれなくなる大赤字プロジェクトが数えられない。ますます狂ったように自滅の道を駆ける社長と無能側近達」
 そして最後は、怪文書の活用を訴える懇願調のSOSで結ぶ。
「マスコミの皆さんにすがりたい。みんなが吃驚する話はいくらでもあります。ここまで来たら自力では直せない。組合も、社員の殆ども、取引先も、幹部たちまでがそれを望んでいる」
 怪文書をよく受け取るフリー記者は、「どれも『吃驚』(びっくり)の表現があり、パソコン変換で下位に来る頻度が少ない表現を使っている。出回っている怪文書の書き手は同じ」と分析。訴訟対策なのか、役職を挙げても固有名詞を挙げずに批判。まさに、怪文書作成のプロのような仕上がりだ。
 もう1つの怪文書は「もう収集(収拾の誤り)つかなくなっている。役員以上は全員1日も早く辞めてほしいとところ構わず言っている」「やけくその恐怖政治。会長もすべて社長のせいにして見放した発言で批評に徹する」と畳みかける。
「皆の反対を許さず、強行した免税店、思い付きと外部の食い物になっている投資の数々、海外も支離滅裂な出店」などは、「失敗は隠しても隠しきれない」と言い切る。トップの孤立無援ぶりを「組合幹部、お帳場顧客……等々全方面のステークホルダーから孤立」などと饒舌に描く。「お帳場」という伊勢丹マンは使わなかった「三越語」が使われている。
 また「ハーレムのように秘書を増やし、現実逃避の講演が年50回以上」「何冊も現役社長が本を書いて社員に配った。社員が破って道に捨てている」、というくだりは、マスコミ好きの社長へのあてつけだろう。最後は「いつどこから火を噴いてもおかしくない。私も含め社員全員が反省も忘れ放心状態」で終わる。
 後任社長が決まらない段階でリークされ、会長が社長に辞任を迫る異常事態で、労組も社長会見で地方店閉店を示唆したことを抗議していたという。怪文書の予言がまさに現実になったようだ。


 沸き立つ地銀再編、次の目玉は中京銀行

 三井住友フィナンシャルグループ(FG)とりそなホールディングス(HD)が3月3日、系列の関西の地銀3行を経営統合することで基本合意したことにより、地銀業界がにわかにきな臭くなっている。
 両メガバンクが主導する今回の再編では、三井住友系列の関西アーバン銀行、みなと銀行と、りそな系列の近畿大阪銀行を、新設する共同持ち株会社にぶら下げる。統合後は総資産ベースで一挙に地銀6位へ浮上する。
 これに地銀業界が浮足立つのも無理はないのだが、実は伏線がある。三重県を地盤とする三重銀行(四日市市)と第三銀行(松阪市)が2月28日に統合を決定。三重銀行は三井住友が5.75%出資する系列地銀で、第三銀行はみずほが2.6%出資して大株主に名を連ねる。つまり、メガバンクが主導の再編という点で同じ脈絡にある。
 地銀統合の最大の要素は、人口減少によるマーケットの縮小。そこにマイナス金利政策に伴う地銀の経営環境の悪化が加わり、再編に活路を見出さざるを得ないという差し迫った事情がある。特に関西地域は2府4県に地銀10行がひしめく激戦地区で、メガバンクなど大手銀行との競合も激しい。
 一方、メガバンクにとっても国際的な自己資本比率規制の強化(バーゼル?)から、リスク資産の整理は避けられず、系列地銀株もその埒外ではなくなってきている。
「次の再編の目は、ずばり名古屋を地盤とする中京銀行だ」と、あるメガバンクの幹部は指摘する。中京銀行の筆頭株主は、39.24%出資する三菱東京UFJ。「もともと中京銀行を実質子会社化したのは旧UFJ」(関係者)。しかし三菱東京UFJの主導権は旧東京三菱側にあり、中京銀行を手放すことに抵抗感は低いとみられている。
 次いで、再編の可能性が高いのが東北地方の地銀で、同じくメガバンクが大株主の地銀が焦点となる。「三菱東京UFJが大株主の岩手銀行や、みずほが大株主である青森のみちのく銀行などが取り沙汰されている」(地銀幹部)という。


 復活したミタルが狙う新日鉄住金の買収

 3月13日、鉄鋼最大手の新日鉄住金による日新製鋼の株式公開買い付け(TOB)が成立、子会社化したと発表した。もはや国内で敵なしと思われる新日鉄住金だが、海外に目を転じると「決して安泰ではない」(大手証券アナリスト)という。
 中国では政府の主導による鉄鋼メーカーの再編が進み、大手2社が経営統合し、新日鉄住金を抜き世界2位のメーカーが誕生。さらに脅威なのが、「世界首位のアルセロール・ミタルが復活、買収攻勢をかけ始めた」(新日鉄住金幹部)のだ。
 ミタルの粗鋼生産量は新日鉄住金の倍以上で、すでにイタリア政府が一時国有化している高炉大手イルバの買収計画を発表している。同社は2016年12月期の最終損益で、5期ぶりに黒字を確保。鉄鋼市況がどん底だった15〜16年に比べて回復し、自動車や建設向けの値上げも浸透する中で、息を吹き返してきたのである。
 中国でも大手の宝鋼集団(上海市)が武漢鋼鉄集団(湖北省)と統合、ミタルに次ぐ世界2位の鉄鋼メーカーとして生まれ変わった。そして、南米に拠点を持つ大手テルニウムが独大手ティッセン・クルップからブラジルの高炉メーカーを買収した。
 こうした巨大鉄鋼メーカーの相次ぐ買収攻勢に新日鉄住金は、合金メッキなど腐食しにくい表面処理した鋼板とステンレス鋼に強い日新製鋼を傘下に入れて対抗するが「海外での展開力など、ミタルとの差は歴然」(大手証券アナリスト)だ。
 かつてミタルは住友金属工業との統合前の新日鉄の買収を画策。その危機感が住友金属との統合に新日鉄を駆り立てた。しかし、ミタルは「表面処理の技術や超ハイテン(超高張力鋼板)などの品質面、さらに東南アジアの商圏を獲得するために、新日鉄の買収を諦めていない」(大手投資銀行幹部)とされる。まだ経営危機から立ち直っていない鉄鋼メーカーの買収を進めながら、「高付加価値鋼板のノウハウ獲得に向け動く」(同)という。
 ミタルの買収攻勢を退けるため、かつて新日鉄住金は株式の持ち合いなどで防戦したが、最近は「株式の持ち合いなど株主の利益に反するやり方は国際会計法上、許されない」(同)とされる。今後の新日鉄住金の対応策に注目が集まる。


 RIZAPが招聘した強力な助っ人の素顔と役割

 フィットネスクラブ運営のRIZAPグループにやってきた強力な助っ人が注目されている。1人はソフトバンクの孫正義社長の社長秘書として孫氏の無理難題をこなしてきた鎌谷賢之氏。もう1人は「ユニクロ」のファーストリテイリングで業務情報システム部統括部長だった岡田章二氏だ。鎌谷氏は1月、新設されたグループ経営戦略室長に就任し、岡田氏は昨年11月、最高戦略責任者(CSO)兼最高情報責任者(CIO)に就いている。
 テレビの派手なCMですっかり認知度が高まったRIZAP。先行するフィットネスジム業界がしのぎを削る中、トレーナーが入会者に対して1対1で付き添って、トレーニングや食事指導をすることが受け、業界の台風の目として急成長してきた。
 03年に前身企業が設立され、06年に札幌証券取引所の新興市場アンビシャスに株式を公開。いまや全国に100店舗を展開し、会員は約7万人もいる。顧客単価が平均30万円と高額で、連結売上高は1000億円に達する。
 ところが多くの急成長の新興企業にありがちの好事魔多し。業績が順風満帆になると同時に証券会社や取引先金融機関の持ち込むM&A案件に瀬戸健社長がホイホイと首を縦に振り、ジーンズメイト、マルコ(女性用ランジェリー)、三鈴(女性むけアパレル)、馬里邑(同)や日本文芸社(出版)、SDエンターテインメント(ゲームセンター運営)など、本業のジムとは無関係に見える企業を相次いで買収。それによって業容は拡大したものの、「いったい何をやる会社なのか」(証券アナリスト)と方向性や戦略が見えにくくなってしまったのである。
 折しも「週刊新潮」などで高額の料金が批判されるなどバッシングを受け、瀬戸社長も反省。そこで外部人材を積極的に起用して体質改善を図ることにした。新興企業で頭角を現した腕利きをはじめ、公認会計士や弁護士などプロフェッショナルを相次いでヘッドハントしているのだ。
 その1人が「ユニクロ」で20年以上もシステム部門にかかわってきた岡田氏で、急膨張する業績と急拡大した傘下企業を含めて横串のITシステムを構築し、内部管理体制の拡充に努める役を担う。
 もう1人の鎌谷氏は孫氏の側近として知られ、孫氏の主なM&Aにすべて立ち会うだけでなく、まるでショーのように念入りにつくられた孫氏のプレゼンテーションの資料づくりにも深くかかわってきた“懐刀”。鎌谷氏はいったんソフトバンクを離れて予備校運営のナガセに転じたが、そのナガセから引き抜かれた。急膨張したグループ企業の整理や、より戦略性を高めたM&A、さらには東証への鞍替えなどによる信用力の強化に傾注するとみられている。


 老舗カルビーと湖池屋は社長交代で近代化が進む

 老舗ながら古臭いイメージもつきまとう菓子メーカーが、相次いで“近代化”されてきた。
 代表がカルビーと湖池屋だ。先に動いたのはカルビーだった。ポテトチップスの市場占有率では湖池屋を圧倒しているカルビーだが、創業家の松尾ファミリーが経営していた時代は垢抜けなかった。そこを改革したのが、伊藤忠商事やジョンソン&ジョンソンを経て、現在会長兼CEOを務める松本晃氏だ。
 同氏はプロ経営者の1人に数えられているが、カルビー入りしてから業績を上げ続け、東日本大震災が起こった6年前の3月11日に株式上場を果たし、株価も上げ続けてきた。
 一方の湖池屋は、もともと創業家の小池ファミリーが長野県諏訪市出身。諏訪湖の「湖」の字を充てて湖池屋としてスタート。1962年、日本で初めてポテトチップの量産化に成功した。が、今では後発のカルビーに圧倒的な差をつけられている。
 その湖池屋に転機が訪れたのが昨年だった。9月末、キリンビバレッジの社長を辞任していた佐藤章氏を社長に迎えたのがそれだ。同氏はかつてキリンビバレッジの緑茶「生茶」や缶コーヒー「ファイア」の生みの親として知られるカリスママーケッター。キリンビバレッジ社長に就任後、お茶カテゴリーで「別格」といったエッジの効いた新商品を輩出したが、業績的には低迷から抜け出せず、志半ばで辞任に至った。
 佐藤氏が来るまでの湖池屋は、社名もフレンテにしてみたり、2011年5月に日清食品ホールディングスと資本業務提携したりしたが、パッとしなかった。そこで佐藤氏はまず、社名をもう1度湖池屋に戻し、「コイケヤ」とカタカナ表記だったロゴを六角形の中に湖の文字を表したシンプルなものに変えた。これだけでもずいぶんとイメージが変わるものだが、そこはメーカー、商品そのものが変わってこそだ。
 そこで、湖池屋では佐藤氏がネーミングした「PRIDE POTATO」を今年2月に投入。国産ジャガイモのみ使用し、商品袋の形状やデザインも凝った。少し高価格帯で売り出したにもかかわらず、バカ売れし、一時的に生産休止の事態に。
 この商品は、湖池屋が“プライドを懸けた”ものにも引っ掛けているといわれ、ネーミング的にも洒落が効いているとの声が多い。果たしてこの後、佐藤氏の2の矢、3の矢の戦略がいつ出てくるのか大注目だ。


 USJ入場者を倍増させたマーケッターの新天地は

 ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下USJ)で、社長以上に有名だったのが、今年1月末をもって退任した森岡毅氏。同氏は執行役員でチーフ・マーケティング・オフィサーを務めていた。
 USJ開園は01年。東の東京ディズニーランドの対抗軸となるべくオープン。07年には株式上場も果たしたが、皮肉にもそこから入場者数が再び減り始める。09年には早々にMBOで上場廃止となった。
 そのどん底の翌年、10年にP&Gから転じてきたのが森岡氏である。大学時代から数学を得意としてきた森岡氏のマーケティング力は抜群で、その象徴が14年にオープンして大ヒットとなった「ハリー・ポッター」のアトラクションである。
 おかげで、森岡氏がUSJに着任して五年で、入場者数は700万人強から1400万人へと倍増した。同氏は年齢的にも40代半ばと、まだまだこれからだったが、前述の通り突然の退任で大きな話題となった。
 その後、USJの大株主だった米国のコムキャストが株を買い増して100%子会社化することが判明したため、森岡氏は、自由度が低くなることを案じて辞めたのではないかという憶測が広がった。瀕死状態だったといってもいいUSJを、月別の入場者数で東京ディズニーランドを抜くまでに押し上げ、USJの付加価値を上げることで入場料の値上げを何度もこなしてきた森岡氏だけに、同氏が不在となった今後のUSJを不安視する向きは多い。
 しかし森岡氏本人は、「仮に自分がいなくなったとしても、昔の入場者数に逆戻りしてしまうなら、自分が仕事をしていなかった証拠であり、普遍的なシステムを組み、人を入れ替え、トレーニングでスタッフ個々人にも自信をつけさせてきた」と、かつて語っていた。
 コムキャストとしては、森岡氏が築いてきた勢いがあるうちに、USJの再上場を企図するかもしれない。だが、上場すれば常に株主の目にさらされ、目先の利益確保を重視しなければいけなくなる。前述の上げ潮だった時期に上場し、そのわずか2年後に上場廃止となるという悪循環に再び陥らないという保証はない。
 世間では、USJの今後の行方よりも、森岡氏が次にどんな新天地を選ぶかへの関心のほうが高いという状況だ。業界筋の分析によれば、森岡氏がUSJに転じた同じ10年に、ハウステンボスの社長に就いた澤田秀雄氏は年齢も65歳だが、再び祖業のHIS社長に復帰するなど多忙を極める。いっそ、森岡氏がハウステンボスの次期社長になったらどうかと夢は膨らむばかりなのだが、さて森岡氏の新天地は──。


 あのアクトビラが好調WOWOW参加に

 テレビ向け映像配信サービス「アクトビラ」が、スタートからちょうど10年の節目で、BS放送WOWOWの傘下となる。映像の視聴端末がパソコンやスマートフォンに広がり、強力なライバルがひしめく中、「テレビメーカー目線」のサービスが敗北したことを意味する。
 アクトビラはパナソニック、ソニー、日立、東芝、ソニーの5大テレビメーカーが大同団結して設立、2007年2月に「デジタルテレビ向けポータルサービス」としてスタート。各社は海外勢に駆逐されたパソコンの轍を踏まぬよう、テレビに特化したネットサービスで付加価値を上げることにしたのだ。
 新たに発売するテレビのリモコンに「アクトビラ」のボタンをつけ、テレビをネットに繋げば直ちに利用できる「仕掛け」を用意したが、スマホの急速な普及の一方でテレビのネット接続が進まない。テコ入れしても劣勢は挽回できず、いつしか忘れられた存在になってしまった。
 アクトビラを買収したWOWOWは、加入者増が続き280万件超の好調。単なるBS放送事業者から総合エンターテインメントメディア企業への脱皮を目指す。アクトビラのネットサービスのプラットフォームや運営ノウハウを生かしテレビ向けの高画質で新しい映像配信サービスを展開するという。テレビをネットに繋ぐ時代がようやく訪れた今、アクトビラの名が世情をにぎわすか。


 福島で「周産期死亡」増、医学誌掲載論文の衝撃

 東日本大震災による福島原発事故から6年。原発周辺の立ち入り禁止も多くが解除されたが、今後心配されるのが放射線被曝の健康への影響だ。子供の甲状腺がんの増加が次第にはっきりしてきたことに加え、医療専門家向けの医学雑誌「メディシーン」のインターネット版に発表された論文が衝撃的だ。
 題名は「日本における死産、周産期死亡および乳幼児の死亡─2001年から2015年にかけてのトレンド分析」。大阪の小児科医らのグループ「医療問題研究会」のメンバーとドイツの生物統計学者ハーゲン・シュアブ博士らが共同で発表した。
 論文は、厚労省の統計を基に分析したところ、01年から順調に減少していた妊娠22週から生後1週までの周産期の死亡率が、原発事故から10カ月後の12年から事故周辺地域で突然増加しているという。放射線被曝が強い福島とその近隣5県(岩手・宮城・茨城・栃木・群馬)では、15.6%も死亡率が上昇。その傾向は14年まで続き、15年以降は減少に転じている。つまり、事故10カ月後から2年間、流産や出産直後の赤ん坊の死亡率が上がったということだ。
 日本全体の周産期死亡は若干の増減はあるものの、年々減少してきた。それが、一定の期間だけ15.5%以上も増加するというのは、医学統計上明らかな変異があることを意味する。千葉・東京・埼玉では6.8%の増加がみられ、その他の地域では増加していないことから、周産期死亡の主な原因に放射線被曝が考えられると結論付けている。チェルノブイリ後のドイツなどの調査でも、同様な結果が認められたという。
 この現象は、津波や地震による影響がなくなる10カ月後から起きており、安易な楽観論は禁物だとわかる。厚労省や政府は福島の健康被害にもっと真剣に向き合うべきではないか。


 メルケル首相も戦々恐々、総選挙へのサイバー攻撃

 4年に1度の総選挙を9月に控えるドイツで、有力政党がサイバー攻撃への対策を十分に取っておらず、ハッキングに対して脆弱であることが明らかになった。
 昨年の米大統領選では、ロシアが民主党候補だったクリントン元国務長官に打撃を与えるため、陣営の選対本部長や同党全国委員会幹部にサイバー攻撃を仕掛け、メールの内容を内部告発サイト「ウィキリークス」で暴露した疑いが浮上している。
 メルケル首相の4選がかかるドイツ総選挙でも、外国勢力が盗んだ情報を利用して干渉する可能性があり、サイバー攻撃対策を担う連邦情報技術安全局のシェーンボーム局長は、政治的動機に基づいたサイバー攻撃の恐れがあるとして、各党に注意を促している。
 中でも脆弱ぶりを露呈しているのは、今回の総選挙で国政進出を狙う新興の右派政党「ドイツのための選択肢」(AfD)。使用しているソフトウエアは結党した2013年当時のままで、容易にハッキングできる状態となっている。
 2大政党の一角である社会民主党との連立による政権復帰を目指す野党の「90年連合・緑の党」も、古いソフトウエアを使用しており、サイバー攻撃が懸念されている。同党は安全対策を外部のプロバイダーに任せきりで、AfDと同様、情報技術安全局の警告には耳を貸していない。
 危険にさらされているのは政党だけではない。メルケル首相の与党・キリスト教民主同盟系のシンクタンク、コンラート・アデナウアー財団やドイツ内務省、人口と経済規模が同国最大のノルトライン・ウェストファーレン州政府も旧型のソフトウエアを使用していた。更新したのは、情報技術安全局の警告を受けてからのことだった。
 難民に寛容な政策が批判を浴びたメルケル首相の保守与党は、反難民を訴えるAfDに支持者を奪われ、支持率は下降気味。ロシアのプーチン大統領との関係がぎくしゃくしているメルケル首相は、ロシアの干渉を許さないためにも、サイバー攻撃を警戒する必要がありそうだ。


 ホワイトハウス内で続く韓国の軍事政権化論議

 失職後も身の潔白を訴え続ける韓国の朴槿恵前大統領の姿には国民の多くが失望している。それは5月9日に予定されている大統領選挙では確実に野党候補、特に文在寅候補に追い風となっている。
 しかし、親北政策を主張する文氏が当選すれば、一気に朝鮮半島情勢が不安定化する可能性が高い。米国も高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の配備を急いだり、無人偵察機の投入を予定しているが、近い将来の激変に間に合わない可能性が高い。
 ホワイトハウスはすでに2月末の国家安全保障会議で対北朝鮮に対し、あらゆる選択肢を取ることを決めている。その中には、4月末まで続けられる米韓共同軍事演習の間に北朝鮮が核実験など重大な挑発行為を行った場合には北朝鮮の中枢を急襲する報復措置も視野に入れている。
 現に、この作戦を可能にするために垂直に離着陸できるステルス型のF35B戦闘機とビン・ラディン暗殺を実行した米海兵隊の特殊部隊の配備も終えている。ただし、韓国内での政治情勢が最大の問題で、文大統領が実現すれば対北朝鮮に情報が筒抜けになる可能性があり、政局の安定を図るためには、軍部が政権を握るほうがベターではないかとの議論がホワイトハウスで続いている。


 トランプ政権に暗雲、国内外で手詰まり状態

 新政権発足時の最大のハードルとされる連邦議会での演説や予算教書の提出を何とか無事にこなせたものの、政策遂行への迷走が目立ち始めた米国トランプ政権の行方に厳しい見方が増えてきた。
 外交政策では、北朝鮮の挑発が続いており、トランプ政権も何らかの対応策を取らざるを得ない状況だが、先制攻撃を対北に仕掛けるまでには至っていない。先制攻撃が高い対価につくことはすでにトランプ大統領には何回もレクチャーされており、対コストの面で割に合わないと考える彼のビジネス哲学からすると踏み切れない状況だ。
「親露反中」の当初の方針は共和党主流派が親露に賛成せず、一方で中国の巧妙な切り崩しに合い、実態はかなり変わってきている。欧州との関係も百戦錬磨の独メルケル首相に押されがちで、NATO重視とこれまでのスタンスを変えてきた。
 国内では連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が目の上のたんこぶ的存在となっている。3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で金利を引き上げ、トランプ政権の今後の景気刺激策に水を差した。年3%になるまで金利を上げるFRBの計画は、「トランプノミクスは考慮の対象外」という姿勢だ。
 トランプ政権が二国間の貿易収支を最優先させ為替戦争と貿易障壁を自ら作っていく姿勢を変えない限り、世界の主要国との軋轢は深まると予想されることも、トランプ政権の今後の政権運営に悲観的な見方が広がる理由となっている。


 「ロシア・ゲート」調査で米露のスパイ狩り加速化?

 トランプ政権とロシアとの不明朗な関係をめぐる「ロシア・ゲート疑惑」を米議会が調査する構えだが、ロシアでもこれに関連した不可思議な動きが続いている。
 1つは、トランプ氏が2013年の訪露時、モスクワの高級ホテルで複数の売春婦と戯れたことをロシアがビデオに撮っているとする英国の元情報機関幹部の報告書のネタ元とされるロシア人が、昨年12月末、変死体で発見されたことだ。
 この人物は、国営石油会社ロスネフチのセチン社長の補佐官を務めるオレグ・エロビンキン氏。20年間情報機関に勤務しており、報告書は情報源を「セチン社長に近い筋」としていた。報告書は昨年12月中旬にメディアで公表され、死亡はその直後。英紙は「何者かに殺された可能性がある」としており、機密情報を英国に提供したことから、機密情報漏洩で抹殺された形跡もある。
 もう1つは、米国の情報機関が昨年11月、ロシア情報機関による米国へのサイバー攻撃に関する報告書を公表した後、ロシアでサイバー・インテリジェンスを担当していた連邦保安局(FSB)のドミトリー・ドクチャエフ少佐ら6人が逮捕されたことだ。
 ロシア当局は、同少佐らが「国家反逆罪」で逮捕されたとしており、米情報機関にサイバー攻撃の情報を売り渡していた可能性があるという。
「米国では情報機関がメディアにトランプ氏の情報をリークしていることが問題視されているが、ロシアでは情報を米側に売った人物が摘発されている。恐ろしい展開になりつつあります」(モスクワ特派員)
 米議会でロシア・ゲートの追及が進めば、ロシアでも米スパイ狩りが加速化するかもしれない。


 ISが過激な煽動、中国を「血の川」にせよ!

 中国新彊ウィグル自治区は特別警戒態勢に入った。重武装の人民武装警察が街の辻々やバスターミナル周辺を念入りに警戒し、モスクの出入りには荷物と身体検査も行われている。長距離バスの乗客は1人ひとりビデオ撮影され、イスラム帽をかぶった通行人は北京や上海でも身体検査が強行されている。
 それというのも3月初旬にIS(イスラム国)がウィグル語のビデオを作成し、秘密ルートを使って中国に送っていたことが分かったからだ。このビデオには「中国を『血の川』とせよ」と過激な煽動がなされ、「過去の中国共産党のウィグル人弾圧の復讐をなせ」としていた。
 01年のニューヨーク同時多発テロ直後から米国はアルカイダ殲滅を目指す「対テロ戦争」を宣言し、アフガニスタンで捕虜としたイスラム過激派をグアンタナモ収容所で取り調べた。ここに中国籍のテロリストが数十人含まれていた。当時、中国は「イスラム過激派に走ったウィグル人などはおよそ1000人」と見積もっていた(銭其?元外相の回想録にも明記されている)。
 ロシア、トルコが参戦し、シリアでのIS殲滅戦争が始まると、ISは兵士を温存するためアフガニスタンとスーダンに拠点を移動させ、リビアに訓練基地を移動した。この過程で中国籍のウィグル戦士は300人から100人余に減少、200人前後がアフガニスタンへすでに移動して新彊ウィグル自治区へ潜入したか、あるいは潜入の機会を狙っているとされ、このタイミングで冒頭の過激なビデオ番組が流されたことになる。


 トランプ大統領の娘婿と中国大手生保の関係

 トランプ大統領の娘婿で首席補佐官を務めるクシュナー氏と中国の大手生保との密接な関係が問題視されている。
 クシュナー氏と関係が深いとされるのは「安邦保険集団」で、クシュナー氏の家族が経営する不動産会社「クシュナー」が保有するニューヨーク・フィフスアベニューのオフィスビル(41階建て)に安邦保険集団が投資することで、クシュナーは4億ドル(約460億円)もの法外な利益を得るとみられている。
 クシュナー氏は大統領の主席補佐官就任に合わせ、事業から退く形をとっており、利益相反に抵触することはないと主張しているが、中国との密接な関係が問われている。
 というのも、この安邦保険集団のオーナーである呉小暉(ウーシャオホイ)氏は、中国共産党の中枢に深く食い込んで同社を急成長させた立志伝中の人物だからだ。マスコミ嫌いの呉氏は表に出ることは少ないが、呉氏は3回結婚しており、要人の娘と結婚することで地位を上げてきた、政商的な顔を持っている。
 浙江省温州市平陽県の商工局の役人であった呉氏が頭角を現すのは、浙江省の副省長や杭州市市長を務めた共産党幹部の娘と結婚した1990年代以降のこと。そして、3番目の妻に中国の改革開放路線を主導した故?小平氏の孫娘をめとってからの躍進ぶりは目を見張るものがある。
 現在は、3番目の妻とも離婚したとされる呉氏。呉氏は結婚を通じて得た「紅いコネクション」を武器に、海外の有力企業の買収を加速している。次のコネクションは米国大統領人脈ということか。


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