ダミー
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 首相のお友達シロウト集団、「安保法制懇」の実態

 集団的自衛権の行使容認を目指す安倍晋三首相が頼りにするのが、自ら設置した私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再検討に関する懇談会(安保法制懇)」だ。首相は四月にも提出される報告書を待って、現在は違憲とされる集団的自衛権行使を容認する運びだが、この安保法制懇そのものが問題視されそうだ。
 首相の私的諮問機関は、学者や専門家が議論し、意見をまとめて報告するが、法令に基づく審議会と違って法的根拠はない。首相の意に沿った人物を集め、思い通りの報告書を出させる「隠れ蓑」となりがちだ。
 安保法制懇は、その典型例といえる。メンバー14人は全員、講演や論文で集団的自衛権の行使を容認する考えを明らかにしている。「法的基盤の再構築」を掲げるのに、法曹資格を持った法律の専門家は1人もいない。それらしいのは憲法学者の西修・駒沢大名誉教授ただ1人。西氏は自他ともに認める改憲論者で、現在の憲法でも集団的自衛権行使は合憲と主張する憲法学界の少数派。
 審議会の指針では、役所出身者の委員への起用はできる限り避けると規定されているが、安保法制懇には外務省と防衛省・自衛隊のOBが4人も入っている。厳格であるべき憲法解釈を論じる資格のあるメンバーとはとてもいえないのだ。与党・公明党の山口那津男代表すら「首相の私的諮問機関という位置付けだから、政府の取り組みでもなければ与党の取り組みでもない」と指摘する。
 だが、安保法制懇の議論を見ると、「(憲法九条は)国際紛争を解決するため武力を行使してはならないというが、これは日本と他国との間の紛争のことで、第三国における(日本の)武力行使を禁じたものではない」(北岡伸一・座長代理)と珍説を披露。驚くべきことにメンバーから異論は出なかったというのである。
 こんなシロウト集団に乗せられて「戦争のできる国」と化すなら、日本は法治国家の看板を外すべきだ。


 出直し市長選で公明党罵倒、捨て身の橋下氏の勝算

 「『常勝関西』といわれてきた公明党の流れを何とか断ち切るため、ありとあらゆる手段を講じる」──2月8日の日本維新の会の会合で、大阪市長を辞任した橋下徹・共同代表は、出直し市長選に際し公明党への敵意をむき出しにした。
 持論である「大阪都構想」の制度設計を話し合う法定協議会で、大阪市を特別区に分割する区割り案を4つから1つに絞り込むとの橋下氏側の提案に自民、民主だけでなく頼みの公明党も反対。これで2015年4月の都制移行が事実上困難になり、橋下氏が突然、市長辞任を表明したのは2月1日の党大会。橋下氏は12年12月の衆院選で、公明党が候補擁立した大阪、兵庫の計6つの小選挙区で維新の会が擁立を見送った引き換えに、公明党が都構想の賛否を問う住民投票実施には協力するとの合意があったと暴露。「公明党は約束を違反した」と批判し、さらに、「議席欲しさに都構想を進めるといっておいて反故にするのは人の道に反する」と公明党をこき下ろした。
 対する公明党も「約束はなかった。こちらも維新の会を応援した」と反発。しかも、出直し市長選に自民、公明、民主、共産といった主な野党が候補擁立を見送るとなれば、橋下氏の捨て身の戦略は不発に終わる。
 だが、それでも橋下氏側は強気だ。
「そもそも大阪維新の会が絞り込もうとした区割り案だと公明党の議席は減る。だから公明党の抵抗は予想済み。橋下氏はもうルビコン川を渡ったということだ」(橋下氏側近)
 すでに風前の灯となった都構想を、ならば国政から、と公明党との全面対決を仕掛けたというわけだ。「要するに橋下氏は国政進出に照準を合わせたのだろう」。別の野党の長老の1人はこうつぶやいた。


 安倍首相の中国嫌いで日中民間交流は先細りに

 最近、安倍晋三首相の中国嫌いがエスカレートし、首相官邸関係者の話では安倍首相が会議で中国と聞くだけで逆切れしかねない反応も。その官邸関係者の話では安倍首相を取り巻く「ナショナリストのお友達」らが吹き込む中国情報が影響しているという。ただ、首相官邸中枢の対中姿勢が続けば今後、政府間のみならず、政治とは無縁のはずの民間への影響を懸念する声が広がっている。
 安倍首相の頑なな姿勢は、中国側の尖閣諸島の領有権をめぐる問題にとどまらず防空識別圏空域の設定問題、昨年末の靖国神社参拝への手厳しい批判などによるが、外務省など霞が関の主要官庁は局長クラス以上の高級官僚の対中接触、交流が事実上、ストップ状態だ。このため、鳥インフルエンザのような緊急課題を別にして、日中間で時間をかけた政策協議が必要な問題に関し、現場官僚の間では戸惑いが出てきている。
 民間の交流事業を進めてきた関係者の1人は「カウンターパートの中国は共産党政権なので、民間交流とはいえ政治が介在する。われわれもやむなく中国当局にパイプのある村山富市・元首相や鳩山由紀夫・元首相らに頼んで中国とのルートを閉ざさないようにしている。でも、現状は異常だ」と憤慨している。


 オバマ訪日前に新展開? 中国の尖閣「強硬策」

 「東シナ海の天候が“小康状態”となる3月中旬以降、中国が尖閣諸島に対する強硬策に出る」「中国の行動をアメリカも了承している」。こんな噂が年初めから流れている。
 2010年秋の中国漁船衝突事件以来、中国による尖閣諸島の領有権主張はエスカレート。いまや中国公船による領海侵犯は300回以上に達し、日常化している。中国側はこれを「主権維持行為」と呼んでいる。
 昨年11月下旬、中国は尖閣上空を含む広大な東シナ海空域に「防空識別圏」を設定。アメリカから「一方的な現状変更は認めない」と反発されながらも、「海洋強国」への前進、尖閣諸島の支配権獲得に向けた歩みを着々と進めてきた。
 中国の強硬な姿勢の一方、オバマ政権は及び腰である。中国の「防空識別圏」設定では、直後にB52爆撃機を当該圏内に飛行させながら、自国の民間航空会社には中国側の求めに従って飛行計画を提出することを認めた。日本政府が日航、全日空に飛行計画提出を撤回するよう求めたこととは対照的である。
 実は、尖閣諸島が事実上、「空白」であることが安全保障面の不安定化を招いているとの判断がアメリカ政府にはある。日本が国際的に「実効支配」しているといっても、尖閣諸島には有人施設もなく、地図上の線引きを根拠にしているにすぎない。
 一方、尖閣諸島の中の2つの島、久場島と大正島は日米地位協定に基づき、米海空軍の射爆場として「施設提供」され、建前上は米軍管理下にある。実は一九七八年以来、演習に使用されていないのだが、アメリカ政府は台湾有事をにらむ足がかりとして手放そうとしない。
 この現状に、米中が密かに「棲み分け」する可能性があるというのだ。しばしば中国側活動家が上陸した魚釣島を、「軍隊ではない」漁民集団や民間人、さらには公的機関の要員が「武力行使によらず」に占拠した場合、米軍は自衛隊と共に久場島、大正島に展開するとしても、魚釣島奪回作戦に出るかどうかは不透明である。むしろ尖閣諸島を二分してのにらみ合いに入る可能性が大だ。
 アメリカにとってはむしろ、この方が「空白」を埋めたことになり、最終的に情勢安定につながるともいえる。領有権問題は、韓国が竹島を占拠している状況に等しいものとなる。アメリカ政府の立場は「領土主権に関わる問題は2国間交渉で解決すべきで、干渉しない」というもので、中国による「魚釣島占拠」と主権帰属問題は別次元との扱いだ。
 以上のシナリオが現実化すれば、日本政府はきわめて厳しい状況に置かれる。しかし、その可能性が高いことは複数の国の外交筋から日本に伝えられてきたものだという。
 オバマ大統領の4月訪日を前に劇的な展開が起こるかもしれない。


 財務省はなぜか外貨準備の内訳を非公開

 米財務省が今年になって公表した「国際資本動向統計」で、日本と中国の米国債保有残高が昨年11月に過去最高に達したことが明らかになった。「世界最大の外貨準備を誇る中国と、第二位の日本がせっせと米国債を買い増すことで、借金大国の米国を支える構図が改めて浮き彫りになった」(メガバンク幹部)格好だ。
 中国の米国債保有残高は、11月に前月比百22億ドル増加の1兆3170億ドルに、また日本は、同120億ドル増の1兆1860億ドルに膨れ上がった。いずれも過去最高額で、「米国では10月に債務不履行(デフォルト)が土壇場で回避されたことで、米国債が安全な投資対象として再び認識された」(市場関係者)ことが主因。だが、依然として米国債投資には一抹の不安がつきまとう。
 日本は中国に次ぐ外貨準備1兆2668億ドル(13年12月末)を保有しているが、その大半は米国債で占められるとされる。いわば米国の経常赤字を、日本と中国が対米証券投資という形でリファイナンスしている格好で、米国はこれにより消費大国をつくり上げてきた。
 しかし、不思議なことに、日本の外貨準備の運用については「外貨証券」の総額が開示されているだけで、どの国のどういった証券に投資されているのかといった内訳は一切公表されていない。米国債が大半を占めるであろうというのは、あくまで米国資料からの推測にすぎない。
 では、なぜ財務省は外貨準備の内訳を開示しないのか。一説には「戦後、一貫してドル安・円高が進み、日本が投資した米国債が減価し続けたことが一因ではないか」(エコノミスト)と言われる。米国債に投資しては損をしてきた日本の実情を国民に知られることを行政が嫌ったためではないかというものだが、いずれにしても日本の巨額な外貨準備が米国債に張り付いた状態は、日米両国の同盟関係を象徴していたわけだ。
 ところが、それがアベノミクスの円安で一変しつつある。ここにきて「(日本は)為替に過度に依存すれば長期的な成長はない」(ルー米財務長官)と、円安を牽制する声が上がっていることは、従来の日米間の同盟関係が微妙に変化しつつあることの表れかもしれない。


 日米関係は分岐点に立つ、安倍・オバマ両氏のすれ違い

 日米同盟の強化が叫ばれながら、実際は日米両首脳の間には微妙なずれが生じている。オバマ大統領は今年の一般教書演説で中国の脅威や北朝鮮の核に一切触れなかった。アジア重視の外交との政権公約から大きく後退し、紛争の火種を抱える北東アジアにコミットメントしないという意思表示だ。
 一方、安倍晋三首相も通常国会の施政方針演説ではオバマ大統領の名前に触れず、ロシアのプーチン大統領の名を何度も口にした。また最近、米国議会上院議員で共和党大統領候補の切り札でもあるマルコ・ルビオ氏が安倍首相を官邸に訪問し懇談したことも、オバマ大統領の気持ちを逆なでしている。その際、ルビオ氏は安倍首相の安全保障分野での取り組みに強い支持を伝え、靖国参拝にも不満を述べなかったことが、オバマ政権と全く反対の対応であったからだ。
 日米同盟の強化には、TPP(環太平洋連携協定)が米国で11月に予定されている中間選挙までに実質合意できることが不可欠だ。その鍵を握っているのが米国議会での大統領貿易促進権限(TPA)法案の承認だが、現在、難航している。
 一方、日本も集団的自衛権の権利行使容認問題という難しい問題を抱えている。この問題には反対勢力も多いが、解決しなければ、尖閣列島防衛をめぐり日米間の協力体制がスムーズにいかなくなることになる。
 分岐点に差し掛かっている日米同盟を正しくハンドリングするために四月の大統領訪日の際、両首脳間で改めて意思疎通を図ることが重要となってきている。


 首相外遊先での通訳トラブルで難問

 安倍晋三首相が今年1月22日、スイスのダボスでの世界経済フォーラム年次総会で行ったスピーチ後の、メディアへの発言部分の通訳トラブルが国際的に波紋を呼んだ。これを機に、首相の外遊時などに対応する専門通訳官の確保や今後の育成をめぐり国内にも波紋が及んでいる。
 現に、政権与党・自民党の外交部会関係者は「外交上の2国間首脳会議での公式通訳はもとより、首相が外遊した際の民間団体や大学でのスピーチなど、あらゆる場合に対応する専門通訳官を確保すべき。問題の背景をよくわかっていない民間通訳に委ねるのは危ない。ダボス会議での教訓を生かすべきだ」と述べる。
 ダボス会議での首相発言を通訳した民間通訳は外務省が業務委託したもので、よかれと思って発言にない部分を余分に通訳し、それが意外な波紋を呼んでしまった。実は、安倍首相が昨年訪米して民間の会合でスピーチした際にも、外務省が現地で業務委託した民間通訳がトンチンカンな通訳を行い、会場にいた日本人関係者から「ひどすぎる」と問題視したケースがあった。
 このため、首相官邸でも外務省に対し、首脳クラスの公式行事以外のスピーチなどに関して、これまで民間通訳に委ねていた業務を外務省でやるよう検討しろと打診している。
 しかし、外務省にとっては「われわれは外交官で、通訳屋ではない」というプライドに加え、人員不足問題があり、難題なのだという。


 名護市長を駆り立てる? 基地・原発反対運動家たち

 米軍が使用している沖縄普天間飛行場の名護市辺野古への移設問題は今後も予断を許さない展開になりそうだ。昨年12月末に沖縄の仲井眞弘多知事は辺野古への移設を容認した。だが、その後、県議会の反対に合い、百条委員会を設置されるなど進退が極まる状況で、秋の県知事選挙まで本人の気力も含めて任期が全うできるかどうか危惧されている。
 また、1月15日の沖縄県名護市長選挙も受け入れ拒否を主張した稲嶺進市長が容認派の対立候補に4200票差で勝利したため、反対派の勢いが増している。
 ただ、この選挙は受け入れ反対派が相当数、県内外から名護市に移住して有権者が増え、稲嶺氏の勝利に貢献したという分析もある。もし、古くから名護市に住む人だけの判断だったら……。
 いまや現実としては多くの強硬な基地反対派が沖縄に集結し、今後の辺野古への具体的な移設作業を実力で阻止する構えだ。また、都知事選挙で細川護熙氏を担いで敗れた原発反対グループもその後、沖縄に移ってこの動きに同調しているという情報もある。本来は有能な地域行政マンとして評価が高い稲嶺市長もこれに押され、基地反対一本槍の強硬姿勢をより強固に見せ始めている。
 そのため、2月中旬にキャロライン・ケネディ大使が沖縄を訪問して面談した際には、基地反対の状況を説明するために訪米したいとの考えを表明したり、その後、移設作業を阻止するために道路の造成工事などで市長権限を行使するとの意向を繰り返している。
 国の安全保障にかかわる基地問題で地元首長の突出した行動は、背後にいて選挙を勝利させた基地・原発反対運動家の戦術に沿う。それだけに、行政を司る自治体の長を選ぶ選挙が、安全保障対応一色になったことに戸惑う声がある。


 莫大な費用を浪費する除染作業を見直すべし!

 現在、福島県では国の直轄事業以外に36市町村で除染作業が行われており、15000人の作業員が従事している。
 国の除染目標は1ミリシーベルト以下。当初の目安は5ミリシーベルト以下だったが、「子供の安全」を心配する地元が反発し、2011年10月からこの目標に定まった。ただ、IAEA(国際原子力機構)は昨年10月、現地視察で「国際基準の1〜20ミリシーベルトは許容範囲」と見解を明らかにしており、「厳し過ぎるのではないか」という声も上がっている。
 現実問題として費用は莫大だ。被曝線量を1ミリシーベルト以下まで下げるとすると、除染費用は2兆5000億円から5兆円と指摘されており、負担は重い。国がこれまで予算計上しているのは1兆1500億円なので、最大で5倍近い。
 今年も「3.11」が近づいた。風化させてはならないし、影響の出やすい子供への配慮は必要だが、1ミリシーベルトが「目標」から「安全基準」に変わり、それ以下になるまで作業を進めようとするのはおかしい。普通に日常生活を送っている地域の家や、運動公園、買い物客が行き交う商店街など、ほとんどの人が心配していない地域の除染までする必要があるのだろうか。
 必要視されていないから、除染作業員に対する住民の態度は冷たい。感謝されることは少ないし、家の周りをうろつくと嫌われ、トイレを借りることもできない。大半が「早く済ませて早く帰れ」といった扱いを受けている。苦労をして人を集めて過酷な作業を託し、なのに誰もありがたがらず、巨額の費用だけ消費されるのが今の除染の実態だ。どの範囲でどこまでやるか、冷静に見直すべきだろう。


 次期経団連の布陣確定、審議員会議長も異例人事

 榊原定征・次期経団連会長(東レ会長)を支える布陣が確定した。2月10日の会長・副会長会議で、新味のない人選の中、ナンバー2のポストで、会長の“お目付役”とされる審議員会の新議長はやや意外性をもって受け止められた。三井不動産の岩沙弘道会長の起用だ。
 岩沙氏は2008年から12年まで、御手洗冨士夫・前会長(キヤノン会長兼社長)、米倉現会長の下で副会長を務め、12年に審議員会副議長に就き、現在、筆頭副議長にある。審議員会議長は副会長経験者が就くのが慣わしで、岩沙氏の経団連活動への貢献度からすれば順当な起用とも考えられる。しかし、発足時から製造業を主体とする経団連にとっては、ナンバー2のポストもほとんどが製造業の出身者で占められてきた。さらに、不動産・建設業界の出身者は不祥事が絡むケースも懸念され、主要ポストからは外す暗黙の了解があった。それだけに岩沙氏の起用は異例の人選なのだ。
「榊原・経団連」を支える布陣は、現在の米倉会長自らが指名した次期会長を見据えた人選であることはいうまでもない。東レと同じ三井系企業出身の岩沙氏をお目付役に起用し、経団連会長会社としては企業規模などで見劣りする榊原次期会長を支援する体制を整える思惑があるとの指摘もある。ただ、今の経団連は、現役副会長からでなく副会長を退任した榊原氏を次期会長に起用する異例の人事を断行したように、人材面で神経を尖らせる余裕もなくなったというのが、偽らざる姿のようだ。


 消費税増税前に始動する中小企業救済スキーム

 「東京はミニバブルのようですが、地方はアベノミクスの恩恵はない。人口は減少するばかりで、廃業するところも少なくありません」
 近畿圏のある商工会幹部は溜め息交じりにこう語る。中企業金融円滑化法が終了した後も、金融庁や中小企業庁の手厚い指導もあり、中小企業の倒産は大きく抑制されているが、「依然として転廃業が必要とみられる中小企業は全国で五〜六万社ある」(大手信用情報機関)。これら経営不振にあえぐ中小企業の多くは、金融機関から借り入れ条件の緩和を受けながらも、依然として過剰な債務から脱しきれないジレンマを抱えている。
 そうした過剰債務にあえぐ中小企業の再生を後押しする施策が2月から動き出そうとしている。「特定調停制度を活用した事業再生支援スキーム」だ。日本弁護士連合会が最高裁判所や中小企業庁と約1年をかけて協議し、昨年末に合意に達した制度で、1月中旬に全国銀行協会などの金融団体に通知した。
 このスキームは、中小企業から支援要請を受けた弁護士や公認会計士、税理士等の専門家が経営改善計画を策定し、事前に金融機関と調整の上、簡易裁判所に特定調停を申し立てるもの。3カ月をめどとする比較的短い期間で終結できるほか、最大の利点は、一定の要件で金融機関の債権放棄に対して損金計上(無税償却)を認めると同時に、借り手側である中小企業に対しても債務免除益の課税負担の軽減を認めることにある。さらに信用保証協会に対しても、同スキームによる債権放棄の場合には、代位弁済の求償権の放棄に応じられるようになる。いわば司法、金融機関、税務当局が一体となって、中小企業が抱える根雪のような過剰債務を一掃しようという施策だ。
 一方、企業倒産は15カ月連続で減少している。東京商工リサーチが2月10日に発表した1月の全国企業倒産件数は、前年同月比7.5%減の864件と、1月としては1991年以来、23年ぶりに900件を下回る歴史的低水準となった。
 しかし、倒産件数のうち7割は依然として負債1億円未満の小規模・零細企業が占め、苦しい経営状態が続いていることに変りはない。4月の消費税増税を前に、経営不振にあえぐ中小企業の重荷を一掃できるのか。特定調停制度を活用した事業再生支援スキームが生かされるかどうか、注目される。


 「年金貯金」運用見直しは株高維持への出来レース?

 日本の年金マネーがこの春、日銀の異次元緩和を超えるインパクトをもたらす──。株式市場でこんな観測が流れ始めている。安倍政権が、世界最大級の公的年金基金「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」が持つ積立金120兆円の運用先を見直し、株の運用額を大幅に引き上げようとしているためだ。
 GPIFは、国民年金と厚生年金の掛け金から給付額を差し引いた余剰資金を厚労省の下で運用する機関で、いわば「年金貯金」の管理人。これまでの運用は、リスクの小さい国債が7割(国内60%、海外11%)を占め、株式(国内12%、外国12%)は低く抑えられてきた。実際の運用率にはプラスマイナス5〜8%の調整幅があり、昨年9月末の国内株式の比率は上限値(18%)に迫る16.29%で、ほぼ“頭打ち”の状態となっている。
 これをどうにか増やしたい政府に“お墨付き”を与えたのが、有識者会議が昨年11月に出した「国債中心の運用見直し」提言だった。
 厚労省幹部が語る。「有識者会議の座長の伊藤隆敏・東大教授はアベノミクスの支持者。ほかの6人の委員の3人は証券会社の関係者で、結論は決まっていた。『株は長期保有すれば安全』などという理屈だった」
 金融界の関心は、国内株式の運用率の拡大幅。伊藤教授は「国内、外国株ともに20%が世界標準」などと発言しており、その通りになれば国内株だけで金額にして四兆円を超える増額だ。「公務員年金など他の公的年金や企業年金も追随するため、株式市場への流入総額は2倍近くになる」(金融アナリスト)ともされる。
 そのタイミングについて、自民党幹部は「厚労省が公的年金基金の『運用目標利回り』を公表する瞬間」と言う。目標利回りは、5年に1回公表される年金の「財政検証」の中で物価などが考慮されて見直されるが、今年はちょうど改定年。「今の目標利回りの4.1%より高くなれば、『目標達成のためリターンの高い株の割合を増やせ』というゴーサイン。株価は跳ね上がる」(同幹部)。
 前述の厚労省幹部はこう語る。「公表のタイミングは例年なら2月中だが、今回はワケあって3月末になるだろう」
 3月末は、株価の下落が懸念される消費増税の直前のタイミング。「安倍政権の狙いは、支持率と連動する株高の維持」(野党幹部)との見方が広がるが、さらに公的年金の投資対象を「ベンチャー投資」や「未公開株」、「先物取引」まで広げることも検討中という。国民の知らぬ間に、年金を元手にした壮大なマネーゲームが始まろうとしている。


 モンゴルの次はミャンマー、HIS澤田会長の投資熱

 旅行代理店大手「エイチ・アイ・エス」の澤田秀雄会長は「スカイマークエアライン」、九州のテーマパーク「ハウステンボス」等々の事業への挑戦で知られるが、2008年に一般社団法人「アジア経営者連合会」を設立、理事長として日本とアジアの新興・中堅企業の経営者が出会う場を設定している。
 エイチ・アイ・エスの個別の成功例がモンゴルのハーン銀行。03年、国営銀行民営化の2番目の入札に参加し、8億円で購入した。豊富な鉱物資源を誇り有力な投資先のモンゴルだが、当時は脆弱なインフラと、市場経済が国民に理解されず、発展も疑問視されていた。
 しかし「実業家も政治家も30〜40代、資源もあるこの国はこれから伸びる」と確信した澤田氏の“読み”は当たり、ハーン銀行はすぐに黒字転換。今やモンゴル各地に支店を置く国内最大級の銀行に成長した。
 同様に資源豊富なロシアのカムチャッカ地方に本店を置くソリッド銀行に40%を出資するなど極東も視野に。ソリッド銀行をカムチャッカ最大の銀行に育てる方針だ。
 その澤田氏が、アジア経営者連合会の“仲間”とともに、今年、集中してパイプを築き、先行投資する方針なのがミャンマーである。人口6000万人と市場規模は大きく、親日家が多いうえ、軍政が終わって三年が経過、まさに資本市場がこれから育とうとしている。澤田氏は、銀行業、旅行業、観光業などで培ってきたノウハウを生かす方針だ。
 ミャンマーは、インフラ整備も含めてすべてがこれからとあって、投資意欲は過熱気味。麻生太郎・副総理は、安倍晋三政権誕生直後にミャンマーを訪問、円借款再開を伝え、安倍首相も企業経営者を引き連れ36年ぶりに首相訪問するなど、国を挙げた対応が活発化している。
 ただ、国の支援を受けた事業はどこか本気度が欠ける。澤田氏はアジアのベンチャー仲間との交遊から、まずはモンゴルの発展に寄与する事業を成し遂げようとしている。


 セブン&アイ創業者2人の息子がネット・店舗融合

 国内流通業で初の売上高10兆円が目前のセブン&アイ・ホールディングス(HD)。そのセブン&アイHDが現在、力を入れているのが「ネットと店舗の融合」戦略だ。
 ネット分野では今後5年かけて、1000億円程度を投資しインターネット販売を強化。グループ各社が販売する商品のほぼすべてに当たる計約300万品目をネットで手軽に購入できる仕組みを計画している。現在、グループのネット販売サイトで約150万品目を扱っているが、新システムを導入し、店頭でしか買えなかった商品なども加えて対象を2倍程度に拡大する。スーパーのイトーヨーカ堂、百貨店のそごう・西武、コンビニのセブン‐イレブン・ジャパンなど約20社が扱う衣料品や雑貨、食料品などを同じサイトで1度にまとめて購入できるようにする。
 ネットで注文した商品はセブン?イレブンなどグループ店舗で受け取れるようにする。
 店舗やネット通販などあらゆる販路を組み合わせた手法をセブン&アイHDでは「オムニチャネル」戦略と呼ぶ。この陣頭指揮をとるのが同社会長である鈴木敏文会長の次男である鈴木康弘・セブンネットショッピング社長だ。康弘氏はグループのネット事業の統括責任者も兼務する。昨年末、セブン&アイはバーニーズジャパンなど有力小売業への出資を発表。さらにカタログ通販大手のニッセンホールディングスも手に入れた。今後、商品の共同開発やニッセンの商品の販売店舗をイトーヨーカドー内に出店させることを検討する。
 ネットで扱う商品を充実させ、オムニチャネル戦略を軌道に乗せるのが大きな目的だ。同社は店舗からの食品の宅配も強化中だ。「将来はネットで購入した商品を一緒に届けるサービスも検討する」(鈴木会長)。
 康弘氏と並んで頭角を現したのがヨーカ堂創業者・伊藤雅俊・名誉会長の息子、伊藤順朗・取締役だ。ネット分野を康弘氏が担う一方、リアル店舗を受け持つのが伊藤取締役だ。
 雑貨専門店「フランフラン」を展開するバルスへの出資では若年層向けの品揃えを拡充する。また、サントリーや日清食品などと組んでプライベートブランド(PB=自主企画)商品も増やす。セブン‐イレブン・ジャパンを中心にグループの17000店で販売するPB「セブンプレミアム」では4〜6月に、高品質を謳ったシリーズのセブンゴールドを一部刷新。他のコンビニより割高だが、「あえて差別化を打ち出すことでスーパーなどからの客を引き込む」(セブン&アイ幹部)考えだ。
 都内の有名店でしか買えない商品でも地方のコンビニの店頭で受け取れる企画も展開。バレンタインデーでは、そごう・西武で扱う著名ブランドのチョコを広島の店舗で受け取れるようにした。セブン&アイのネット通販サイトで申し込む。
 鈴木会長は昨年11月下旬のセブン‐イレブン・ジャパンの40周年記念式典で、「第2ステージに入った」と宣言した。鈴木会長、伊藤名誉会長の“次の世代”がこれをどう牽引していくのかが注目される。


 念願の「打倒楽天」へ、孫正義氏が授けた秘策

 ソフトバンク・ヤフーの「楽天潰し」が始まった。ヤフーは昨年10十月、ECサイト「ヤフーショッピング」への出店料やロイヤリティ料の無料化に踏み切った。それまではテナント数40000件を有する楽天の後塵を拝し続け、ヤフーへの出店は20000件にすぎなかった。もう1つの覇者アマゾンの存在感も大きく、ヤフーのEC事業は見劣りしてきた。
「それが、今まで1度も抜けなかった楽天を初めて抜いたのです」と、ソフトバンクの孫正義社長(写真)は溜飲を下げる。無料化効果でヤフーへの出店希望者は90000件(申し込み者数ベース)を突破。日本最大のECサイトに躍り出る目算だ。
 もともと孫氏は、楽天の三木谷浩史・会長兼社長を快く思っていないといわれる。プロ野球参入やM&A戦略、政治家へのロビイングなど、孫氏が手掛けたことをいつも三木谷氏が真似るからだ。
 ソフトバンク・ヤフーの「楽天追撃」姿勢が強まったのは、2012年4月にヤフーの社長を保守的な井上雅博氏から若手のホープ、宮坂学氏に交代させてから。同年暮れには孫氏が宮坂氏に対し、楽天との形勢を一気に逆転する秘策として無料化検討の指示を出す。
「思い切って『ゲームのルール』を変えないとだめだよ」──。孫氏はそう宮坂氏に注文をつけた。
 NTTのISDNを蹴散らし、高速通信網ADSLを一挙に普及させる大逆転ができたのは、孫氏が無謀とも思える通信モデムの無料配布に踏み切ったからだった。ガラケー全盛期にNTTが見向きもしなかったスマホの可能性を悟り、アップルのiPhoneを獲得して飛躍。さらに、狭い国内市場のシェア争いしかしてこなかったNTTに地団太を踏む思いをさせたのが、米スプリントの買収だった。それまでの業界序列を一気にひっくり返し、いまやソフトバンクは世界3位の携帯事業者だ。同じようなルールチェンジを国内のEC事業でも求め、逡巡してきたヤフーがついに決断した。
 対する楽天の三木谷氏は「今のところ、ヤフーにはまったく影響を受けていない」と静観する。ヤフーの公表する90000件はあくまでも「申し込み者」段階なので、今後、本当に出店に耐えうるのか、不正な業者はいないのか、審査が必要になる。
「楽天は何かと審査が厳しすぎるといわれています。安心・安全の出店を目指していきたい」と三木谷氏。
 数ではなくて質で勝負といいたいようだが、本音は警戒しているだろう。高いプライドで等閑視していると、NTTグループの二の舞である。


 社内格差広げる賃金体系、マルハニチロ事件の深層

 マルハニチロ・アクリフーズ農薬混入事件は1月25日、同社契約社員(6カ月更新の期間工)の男性容疑者(49)の逮捕で、原因究明へ新たな局面に入った。
 新聞などは当初、その原因として、現場労働者の管理体制の不備をもっぱら強調していた。その中で、同容疑者が新賃金体系に対して日頃から不満を持っていたという報道が散見され始めた。事件の深層の一端に触れるような興味深い視点だ。
 アクリフーズ広報室によると、同群馬工場の契約社員に対する賃金体系の変更は2012年4月からだという。
 その内容がすさまじい。
 1つ目が、勤続年数に応じて増加されていた賞与や時給を、各自の「能力」に応じたものにした。この結果、勤続年数が短い契約社員が、勤続年数の長い契約社員よりも多い賞与・時給を受けとる可能性も出てきた。2つ目が、早出手当や遅出手当をなくし、役職手当を新設した。3つ目が、契約社員の退職金制度を廃止した。正社員の「能力制」と決定的に違う改変として特筆すべきものだ。これらの新賃金体系が、時給900円という低賃金水準の契約社員全員に適用された。
 同群馬工場の従業員294人の内訳は昨年12月1日現在で、正社員64人(21.8%)、契約社員194人(66.0%)、パート11人(3.7%)、派遣社員25人(8.5%)。同工場従業員の労働組合は、正社員を対象にしたマルハニチロユニオン(日本食品関連産業労働組合総連合加盟)があるが、契約社員が加入できる労働組合はない。正社員には、会社負担のある社会保険(年金、医療保険など)が完備し、基礎的賃金も厚い。
 新賃金体系導入は、権利も弱く労働条件も低い、66%を占める契約社員に犠牲を集中させる形になっている。そこには、総人件費切り下げという会社の本音が見え隠れする。
 新賃金体系が、勤続8年で妻と1人の子供を持つ同容疑者にどんな打撃になったかは、想像にかたくない。同容疑者は給与水準について「やってられない」などと不満を漏らしていたという。食品に農薬を混入することは絶対許されない凶悪犯罪だ。しかし、安全管理の強化ばかりを強調していていいのか。
「だいじな人に食べさせたい」(アクリフーズの標語)というなら、現場で働く人を「だいじ」にしなければ、本当の意味で心のこもった安全な食品を作ることはできないだろう。


 サイバーエージェントとあの堀江氏が合弁会社設立

 粉飾決算事件で実刑判決を受け、昨年仮釈放された旧ライブドアの堀江貴文・元社長が、1990年代からの盟友であるサイバーエージェントの藤田晋社長の助力により、「7gogo」(ナナゴーゴー)という新会社を立ち上げた。
 インターネット上の広告代理店からスタートしたサイバーエージェントは、より利幅の厚いネット上のメディア事業に憧れてきた。その一環で始めたブログサービス「アメブロ」は、芸能人などタレントの開設したブログが人気を呼び、ネット界でそれなりの存在感を得るに至った。
 一方、堀江氏は、旧ライブドアを吸収した韓国系企業LINE(ライン)の大成功に興味津々。遅ればせながら、スマートフォン上でラインと同じようなメッセージアプリがまだまだ受けるのではないかと、取らぬ狸の皮算用をしてきた。
 ビジネス感覚の勝る藤田氏は、さすがに今頃、後発のスマホのメッセージアプリは勝ち目がないと思っていた。そこで両者が折り合ったのは、スマホ上で有名人・タレントが一般の人とチャットするというアイデアだった。アメブロとラインの折衷型のサービスである。
 早速、サイバーエージェントと、堀江氏の会社SNSの合弁で、新会社ナナゴーゴーを設立。近くアップルストアやグーグルプレイで無料ダウンロードできるようにし、100万人程度の利用を見込んでいる。
 堀江氏としては、「手腕」がなまっていないか試される新ビジネス。それにしては、著名タレントを餌に収益を得るという2番煎じ的手法でどこまで通用するのか、注目だ。


 泥沼でもがくミクシィ、新社長も9カ月で退任表明

 かつて和製SNSの王者として君臨したミクシィがスマホの波に乗り遅れ、もがいている。創業者の笠原健治氏は2013年夏に業績不振の責任をとって退陣、後事を託された朝倉祐介社長も就任からわずか9カ月の2月半ばに退任を表明した。一世を風靡したネット企業の老舗は、断末魔の様相を呈してきた。
「やるべき仕事は全うした。ミクシィは事業再生フェーズから再成長のフェーズに移っていく」と、朝倉社長は退任の理由を説明した。だが、この説明を額面通りに受け止める向きは少ない。
 たしかに、広告収入の急減で当初の16億円の赤字転落予想は、朝倉社長の指揮下で2億円の黒字が見込まれるまでに驚異的な業績改善を果たした。ただ、牽引したのは、13年秋に登場したスマホゲーム「モンスターストライク(モンスト)」の大ヒットで、本業のSNSではない。これでは、多少持ち直したとはいっても、予断を許さない病み上がりの体と言われても仕方ない。
 朝倉社長は、ミクシィに買収されたベンチャー企業の創業者で、いわゆる「外様組」。在籍は2年余にすぎず、ミクシィへの思い入れは少ない。問答無用のリストラや相次ぐM&Aは、「生え抜き組」との間に軋轢を生んだといわれる。このため、イヤ気がさして、泥舟からの早期脱出を図ったともささやかれている。
 次期社長には事業本部長の森田仁基・執行役員が就任するが、フェイスブックやLINEの後塵を拝し、今さらゲーム会社に業容変更しても立て直しは容易ではない。盛者必衰は世の習いとはいえ、一時輝いた時代がもはや懐かしく感じられる。


 国際メジャー入りへ、丸紅が売電事業で躍進

 総合商社の丸紅が、IPP(売電事業)で着々と国際メジャーへの階段を上っている。
 2010年にカナダの風力発電事業に出資。12年には、すでに稼働を開始していた米国での風力発電事業で、フランス大手電力EDFのグループ企業との間で参画を契約。また同年には、16年稼働予定のインドネシアでの地熱発電プロジェクトで長期売電契約を締結。13年には、タイの国営石油・ガス会社の傘下企業と、タイおよびミャンマー、ラオス、カンボジア等、周辺国のIPP事業の共同開発(共同発掘)で契約──といった具合である。
 丸紅の13年3月末のIPP規模は8910メガワット(1メガワット=1000キロワット)、21カ国で長期の売電契約を結んでいる。これを拡大するための策を次々に展開しているわけだ。IPPは、「自前で発電設備を建設、運営し、電力を電力会社に売る事業」だが、現実的には売電電力の調達法は多岐にわたる。
 その意味で、丸紅が今年1月に米国エナノック社と設立した合弁企業は興味深い。エナノックは、工場やビルなど顧客企業向けの節電サービスで世界最大手の企業。電力会社の電力需給に応じ、顧客企業に節電を要請し節電電力を買い取り、電力会社に売る。丸紅・エナノックとの合弁会社設立で、「5年後をメドに顧客企業に対し、原発1基分に相当する100万キロワット(1000メガワット)の節電要請体制を構築する」とした。
 この合弁会社設立の報道に接したアナリストは、「実現すれば、穀物に次ぐ国際メジャーの地位を獲得する、大きなステップになる。総合商社にあって国内5位の同社が、その立場を止揚することになる」と評した。穀物分野では、取扱高で国内商社中1位の丸紅は昨年6月、米国穀物3位のガビロン社を買収した。それによって丸紅の年間の穀物取扱高は四千万?となる。この値は、世界首位の穀物メジャーとして君臨している米国カーギル社の取扱高と肩を並べることを意味する。
 丸紅は今期、中間期時点で予想収益を下方修正している。最大の要因は皮肉にも穀物分野。買収したガビロン社が肥料市況の悪化から想定外の不振となったためである。しかし、下方修正後の最終純益は過去最高圏に踏みとどまっている。
 丸紅でも、こう語っている。
「ガビロン社の買収が国際メジャー入りを意識したものであることは事実。エナノック社との合弁は注力しているIPPの拡充、そしてその延長線上にIPPメジャーの姿がないといったら嘘になる」
 丸紅に「ザ・商社」復活の勢いを感じる。


 「ハゲタカ」が日本撤退か、サーベラスらが資産売却

 日本の有力企業を食い尽くしたハゲタカがここにきて、新たな動きを見せ始めている。
 米投資ファンドのローンスターは、保有するホテル・レストラン運営の目黒雅叙園の売却に向け、入札手続きに入っている。2月末までに入札申し込みを行い、3月上旬に優先交渉者を決め、6月をめどに売却する意向という。売却額は1300億円程度となる見込みである。雅叙園の入札は過去3回行われているが、不動産市況の低迷から、売り手と買い手の希望額が折り合わず不調に終わっているが、アベノミクス効果で市況が回復しており、今回は成立する公算が高いとみられている。
 同じ米投資ファンドのサーベラス・キャピタル・マネジメントは、保有する国際興業株式約55%すべてを創業家に1400億円で売却する方向で協議に入った。サーベラスは、同じく約35%を保有する西武ホールディングス株式についても同社の早期上場で合意しており、今春にも西武HDが上場するのに合わせ保有株式の大半を売却するとみられている。
「この2案件の売却が完了すれば、目ぼしい新規投資は見当たらず、サーベラスは事実上、日本市場から撤退することになる」(市場関係者)
 サーベラスが、過剰債務を抱え経営危機に瀕した国際興業を傘下に収めたのは2004年11月。主力取引銀行であった旧UFJ銀行や、りそな銀行などから債権3500億円を半値で買い叩いて取得し、100%減資させたうえで出資する形で経営権を握った。それから10年弱を経て、国際興業は再び創業家一族の小佐野隆正氏が支配する持ち株会社「国際興業ホールディングス」に戻ることになる。
 しかし、この間、サーベラスは経営再建の名の下に、国際興業が筆頭株主(約40%)であった帝国ホテル株式を三井不動産へ、八重洲富士屋ホテルを住友不動産へ売却したほか、勝沼ゴルフコース、三島ゴルフ倶楽部といった有力ゴルフコースも売却、貸出資産も米国金融機関に肩代わり融資させる形で実質的に回収。その一方で、売却益のほとんどは特別配当の形で吸い上げられた。
 すでにローンスターは東京スター銀行の再上場で、サーベラスはあおぞら銀行の再上場で巨額の売却益を手にしている。日本の有力資産を食い荒したハゲタカは飛び去ろうとしている。


 電子書籍の大本命が一転、大日本印刷子会社の苦悩

 大日本印刷の電子書籍事業が混迷を深めているようだ。電子書籍事業を手掛ける子会社、トゥ・ディファクトで退職者が相次いでいるという。
 経産省出身で、CCC常務やカネボウ社長を経て社長に就任した小城武彦氏が昨年退任。実質的なナンバー2、服部達也COOも去った。管理職でも退職者が続出。人材難から、3つの部長職を大日本印刷出身の加藤嘉則社長が兼務するほど。
 大日本印刷の電子書籍事業は、かつてはアマゾンに対抗できる国内勢の大本命とみられていた。グループに書店大手の丸善、ジュンク堂、文教堂を抱え、紙の本と電子書籍を併せて販売する体制を築くことができる。2010年にはNTTドコモと業務提携。万全の態勢でアマゾンを迎え撃つはずだったのだが。
「当初の期待には程遠いですね」。そう電子書籍業界関係者は打ち明ける。「傘下の書店との協力関係は、現場の書店員の反発などで実現にかなりの時間を要しました。ドコモとの提携は、両社の思惑の違いから提携後すぐに実質的に破綻しています」
 戦略ミスも大きかったという。
「電子書籍は、まず利用者に手に取ってもらうのが大切というのが常識です。楽天など大手は初期投資と割り切って、多額の広告費を投入してきました。ですが、トゥ・ディファクトは目先の収支を重視するあまり、しばらく販促費を絞っていました。結果、シェアで大きく出遅れた。小城社長が責任を問われるのも当然でしょう」(関係者)
 国内電子書籍の大本命と謳われながら、アマゾンという巨大な外敵に対抗する前に自壊するのか。


 口腔機能回復医療で「寝たきり高齢者」減らせ

 超高齢社会に突入した日本で、今後最も懸念されるのが「寝たきり」高齢者の問題だ。介護だけでなく医療現場でも、寝たきりの高齢者が増加することで、受け入れ施設や介護・医療スタッフ不足が予想される。
 特に、団塊世代が医療や介護が必要になる10年後は「2025年問題」といわれ、医療・介護の大きな不安要因。高齢者人口は3500万人と推定され、特に医療費が増加する75歳以上の後期高齢者が急増する。胃ろうや経管栄養につながれた高齢者の増加、スタッフ不足などで「寝たきり」高齢者も急増するといわれているのだ。
 それを少しでも食い止めようと、今、新しい高齢者医療の仕組みづくりが模索されている。その1つが「口腔機能を回復する医療」だ。簡単に言えば、口から食べられる医療の推進で、歯科医など8000人が加盟する日本顎咬合学会の取り組みもその1つ。咬合咀嚼機能を維持することで高齢者も元気になり、医療費も節減できる。そのためには口の健康を維持する医療が重要だという。学会で発表されている臨床例では、?んで食べられる義歯を装着し、?む訓練をすることで胃ろうが外れたり、脳梗塞の後遺症で歩行困難の高齢者が歩けるようになったり、あるいは、経管栄養で寝たきり状態の高齢者が海外旅行に出かけるまでに回復した例などが紹介されている。
 最期まで口から食べ、人間の尊厳を保ち、しかも医療費がかからないという医療が、今ある医療を上手に活用することで実現可能なのだ。


 新ジャンル開拓で勢いづく三井ガーデンホテル

 三井ガーデンホテルといえば、全国展開はしてはいるものの、これまではビジネスホテルの域を出なかった。だが、同ホテルを運営する三井不動産ホテルマネジメントでは、シティホテルとビジネスホテルの中間という、これまで明確なカテゴリーが存在しなかったジャンルで攻勢をかけ始めている。きっかけは、三井ガーデンホテル銀座プレミア。昨春、リニューアルしたのだが、タイミングも良かった。アベノミクスで株価が上がり、円安が進んで外国人のビジネスマンや観光客が銀座を訪れる機会が増えてきたからだ。
 この勢いを駆って、この3月には大阪と京都で相次いでプレミアクラスのホテルを出す。さらに来年早々には、銀座プレミアの近隣エリアにもう1つホテルが誕生。こちらは、同社とシンガポールのホンリョングループが運営するホテルチェーン、ミレニアムとの初の“ハイブリッド”になる。ホンリョングループは三井不動産本体と、住宅関係で40年余になるビジネス関係があったという。また、東京五輪が開催される2020年までに、都内でさらにホテルを出す構想もあるらしい。
 この戦略にシフトした要因は、景気以外にもある。昨秋、ホテルの食材偽装問題が次々と露呈したが、宴会を含む料飲部門というのはマネジメントが難しいからだ。調理現場は原価を下げたうえで、お客を納得させる味を出さねばならず、営業部門もできるだけ高品質な食材を使用していることをアピールせねば、お客を引っ張ってくるのが困難だ。従来よりもワンランク上のポジションを取りにいく三井ガーデンホテルは、東京五輪まで過熱するだろう外資系を含めたホテルラッシュの中で、一味違った存在感を見せてくれるかもしれない。


 国家分裂が現実味持つウクライナの国情

 1991年に悲願の独立を果たしたウクライナだが、地政学的にロシアとEUの綱引きに遭い続ける。ロシア系住民の多い東部はロシアへの、ポーランドなどの影響が強い西部はEUへの統合を目指し、政治対立が繰り返された。これが経済を停滞させ、貧困や失業で国外脱出者が絶えない。1月の騒乱ではデモ隊と警官の衝突で死者も出た。
 ウクライナの政界では、「誰が大統領になっても統治は困難。国民投票で協議離婚を考えたほうがいい」とする意見が出ている。ロシアの評論家、パベル・フェルゲンハウエル氏は「プーチン政権内部で、ウクライナを2分し、親ロシア派の東部と南部で独立させる構想が検討されている」ことを明らかにし、その場合、東ウクライナは事実上、ロシアの保護国になると明かした。
 東西の分断構想は西欧にもあり、オーランド・フィゲス・ロンドン大学教授は「フォーリン・アフェアーズ」誌最新号で、「ウクライナはチェコスロバキアの分裂を参考にし協議離婚すべきだ」と提案した。チェコとスロバキアは冷戦後の1993年、国民の意思で合法的に分裂し、その後も友邦として良好な関係を維持している。
 ただし、国家分裂の悲劇としては旧ユーゴスラビアの例があり、対応を間違えると内戦や流血の惨事となる。ウクライナの場合、領域が画定していたチェコスロバキアと異なり、国境の線引きで難航し、混乱する恐れもある。
 しかし、現状のままでは来年初めの大統領選に向けて東西の対立がさらに拡大するのは必至。国際管理による国家分裂構想が浮上する可能性もある。


 中国富裕層の移民申請をカナダ政府が拒否の波紋

 カナダ政府が中国人富裕層46000人の投資ビザ申請をはねつけ、2月12日の在米中国語紙「多維新聞」は「中国富豪美夢破砕」と報じた。従来80万カナダドルを5年間、無利子で投資する人に「滞在ビザ」を発給してきた。このためバンクーバーは「ホンクーバー」とあだ名されるほど香港からの移民で溢れるが、このビザ発給が46000人も拒否されたのだ。
 1970年代までのカナダ移民は欧州が大半だった。80年代にはインド、パキスタン、フィリピンからの就労目的の移民が増え、90年代にはアジアからの移民が60%を超えた。カナダ政府は富裕層に投資を呼び掛け、滞在ビザを出してきた。これで中国の富裕層の申請に拍車がかかり、滞在ビザはやがて永住ビザ取得につながった。2011年統計でカナダへの移民全体の11.5%が中国人となった。アメリカでも似たようなシステムで中国人社会や韓国人社会が肥大化したのは周知のとおり。そんな中でのビザ申請拒否だ。
 カナダ政府は苦情の殺到に対応し、「移民を抑圧することはない」と声明を出す一方で、「従来のビザ条件は、新しく制定を検討している『イミグラント・インベスター・ベンチャーキャピタル・ファンド』が代替するだろう」としている。
 カナダの移民政策変更の動きは大英連邦に共通している。英国では「中国移民に帰国してもらおう」という市民運動がロンドンで起きた。「外国人を叩き出せ」というのはイタリアの北部同盟である。欧州各地も移民排斥の保守勢力がぐんと支持を伸ばしている。オーストラリアでも新政権誕生後、対中政策を大きく変更する見通しである。この動きはさて、どう理解すればいいか。


 英国が中国人観光客誘致でフランスに危機感持つ理由

 「歩く財布」と呼ばれるほど、海外のショッピングで散財する中国人観光客の誘致をめぐり、パリとロンドンはここ数年、激しいつばぜり合いを展開してきた。そのフランス政府は1月27日から中国人に対するビザの発給期間を大幅に短縮、これまで10日以上必要だったものが48時間以内となった。
 これに危機感を抱いたロンドンの観光業界は、英国政府に「植民地的な官僚主義を改めてほしい」などとしてビザ緩和措置の陳情を開始した。しかし、移民制限のため入国管理強化を進めるキャメロン政権の政策との間に齟齬が生じる案件だけに、内務省をはじめ当局の対応は及び腰。当面、ロンドンはパリの後塵を拝することになりそうだ。
 現在、中国人観光客によるフランスへの経済効果は年間5億ユーロ(約700億円)とされるが、今回の規制緩和で3年後には10億ユーロまで増加すると期待している。フランスには年間8300万人の外国人観光客が訪れているが、このうち中国人は140万人にすぎず、今後の拡大の余地はまだ大きいとみている。
 ライバル、英国ももちろん、これまで中国観光客の誘致に手をこまねいていたわけではない。公認旅行代理店を通じたツアー客には4〜5日でのビザ発給を表明した。ただ、英国の旅行専門家は「62%もの中国人旅行者が個人旅行を希望しているとの調査もあり、公認代理店だけの優遇措置は効果が薄い」と指摘。政府に緩和対象の拡大などを強く求めている。


 パナマ運河拡張工事中断で海運業界は通行料が心配

 太平洋と大西洋を結ぶ海上交通の要の1つであるパナマ運河の拡張工事が中断し、海運業界がやきもきしている。米国の東海岸からパナマ運河経由で液化天然ガス(LNG)を日本などアジア諸国に運ぶ計画も浮上しており、成り行きが注目される。
 現在のパナマ運河は1914年に完成。年間に13000〜14000隻の船舶が通航。重量ベースで世界の海運の約5%を担っているが、水平式で大型船舶の航行が可能なスエズ運河と違い、閘門(こうもん)式のため航行可能な船舶の大きさが限られている。
 そこで、現在の約3倍の規模のコンテナ船が航行できるように水深や水路幅を拡張しようというのが今回の拡張計画だ。2009年にスペインやイタリアなど欧州企業中心のコンソーシアム(企業連合)が31億2000万ドルで受注。当初、14年中の完成を目指していたが、工事の遅れから15年にずれ込むことがすでに決まっていた。
 それがここにきて、追加費用をめぐる企業連合側とパナマ運河庁との間の交渉が難航。企業連合側は、工事を完成させるには追加費用として16億ドルが必要としてパナマ側に負担を求めているが、パナマ側は「契約と異なる」として拒否している。
 パナマのマルティネリ大統領は、「工事は何としてでも15年中に完了させる」と宣言。施工業者の変更も辞さないと、強硬姿勢を崩していない。現在の企業連合との交渉が長引いたり、実際に施工業者の変更が行われたりするようなら、完成はさらにずれ込む恐れがある。
 一方、パナマ運河の通航料は過去5年間で最大2倍に引き上げられたが、工事の遅れによりさらに値上げされかねない。日本政府もこうした点を警戒、パナマ政府に善処を要請している。


 韓国の北朝鮮情報が充実、背景に大物脱北者がいる?

 最近、韓国政府による北朝鮮情報の収集・発信の充実ぶりが目立つ。金正恩・労働党第1書記の「後見人」とみられてきた張成沢氏の粛清劇では、韓国の情報機関・国家情報院が昨年12月初旬、世界に先駆けて「失脚したとみられる」との見解を明らかにした。11月末に張氏の側近が処刑されたとの噂が北朝鮮で広まったことを捕捉し、分析した上での判断で「残念ながら日本は情報収集で後れを取った」(日本政府関係者)と脱帽させた。
 韓国はある時期から、国境を越えて北朝鮮と人やものが頻繁に往来する中国や、政党・政治レベルの交流や在日朝鮮人ルートを通じて情報を集める日本にリードを許してきた。 しかし、累計2万人を上回る脱北者が韓国入りし、南北軍事境界線に近い開城工業団地に進出した韓国企業で働く北朝鮮労働者も5万人を超える。彼らを通じて各種の北朝鮮情報が流れ込むようになった。また、張氏粛清時の情報入手のスピードと精度の高さなどから「北朝鮮の内部事情に精通した大物が脱出し、韓国入りしたようだ」(日本の朝鮮半島研究者)との見方が広がっている。
 核・ミサイルに加えて拉致問題の解決を至上命題とする日本は「韓国と対北関係の情報交流を進めたい」(政府関係者)のが本音だ。安倍晋三首相の靖国神社参拝や歴史問題、竹島をめぐる対立などによる日韓関係の冷え込みが障害となっていることを苦々しく感じる政府関係者も少なくない。




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