ダミー
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 ライバルが次々と脱落でご機嫌な麻生副総理

 このところ、麻生太郎・副総理兼財務相の機嫌がいい。理由は2つある。消費税対応の補正予算、来年度予算の2つを淡々とこなし、財務省の信頼も厚い。もう1つは、ポスト安倍をうかがう実力者が次々と“脱落”して行くからだ。
「特定秘密保護法案の強行採決で、安倍総理の支持率は急減だ。一部では、総理の体調不安もささやかれている。万一の場合の再登板なら『満を持して』となるな」(永田町筋)
 来年度予算で2兆円の国債費減額に成功し、アベノミクス効果での円安、株高に象徴される景気回復による税収増だ。この状況が続けば、春先の消費税増税後の景気も小康状態で、いよいよ経済特区、カジノ解禁など「第3の矢」のフル稼働が予想される。
 ただ、国内政治は難題が多い。猪瀬直樹・東京都知事の“想定外”の早期辞任により、「各党とも、春先までの出直し知事選を想定。候補を絞り込みつつあったが準備不足」(永田町筋)で、自公推薦候補が勝つ公算は流動的だ。さらに、徳洲会事件で徳田毅・衆院議員が辞職すれば、鹿児島2区でも補選が行われる。カネのスキャンダルでの補選だけに、ここも自民候補が勝てる保証はない。
「党内で安倍首相への支持が高かったのは、選挙に勝ったから。もし、年明けからの選挙で連敗なら一気に熱は冷める。副総理が最近“沈黙の麻生”と呼ばれて無駄口を叩かなくなったのは、そうなった時に備えてのことだよ」(自民党幹部)
 いつか来た道をまた通る?


 江田氏の大義名分に疑問符、新党待ち受ける大きな困難

 みんなの党を離党した江田憲司議員らのグループは果たして政策を基軸とする野党再編の核となり得るのか。直後に立ち上げた勉強会「既得権益を打破する会」には52人もの野党議員が集まり、江田氏は間もなく、先に離党していた柿澤未途議員を加え、15人で新党を立ち上げる構えだが、この江田新党には大きな困難が待ち受けている。
 江田グループの集団離党の引き金は、特定秘密保護法をめぐる渡辺喜美代表の行動だという。みんなの党結党の原点である「脱官僚」と「政界再編」を2つともかなぐり捨て、官僚制の強化につながる法案に賛成し、巨大与党にすり寄る渡辺代表とは袂を分かつほかなかったというのが、江田氏の大義名分だ。
 だが、この大義名分は本物だろうか。江田氏によれば、「秘密保護法制そのものは必要であること」と「現状の法は不十分であること」の2点で一致しているというが、衆参の採決に際して15人の議員たちは賛成、反対、棄権とバラバラだった。さらに、渡辺代表が自民党にすり寄った結果、衆議院特別委員会の採決で党が賛成に回るという決定的段階に至っても、江田氏らは離党の動きを見せなかった。江田氏は「国会会期中は政局に走らないのが自分の政治信条」と言うが、ゴリ押しで法案の成立に猛進する与党の前に、なんら有効な抵抗をなし得なかったことの説明とはなり得まい。
 離党の大義名分に疑問符が付く以上、江田新党に対して「政党交付金狙い」ではないか、「比例代表で当選した14人は議員辞職すべきではないか」という類の批判がやむことはない。


 江田新党の鍵握る民主党・細野氏の動向

 その江田憲司・衆院議員らの新党結成が今後、野党再編につながるかどうかの鍵を握るのは、民主党の細野剛志・前幹事長の動向だ。
 12月10日、江田氏が民主党、日本の維新の会両党の議員ら参加者52人でスタートさせた勉強会の設立総会で挨拶した細野氏は「この会は新党の設立を目的とするものではない」と発言。さらに、当面は民主党を離党する考えのないことを強調した。民主党、維新の会の「改革勢力」と連携して新党結成を目指す江田氏とは一線を画す立場を示した形だ。
 そもそも現時点での細野氏の基本戦略は、15年9月まで2年近く任期を残す海江田万里代表を早期辞任に追い込み、党代表選を来年夏の通常国会後に前倒しで実施させて、自ら立候補し次期代表を目指すというもの。このあたりを細野氏の側近はこう解説する。「細野氏が代表選で勝利すれば、党首として野党再編を主導する。仮に敗れれば、細野グループを率いて離党することが現実味を帯びてくる」。
 しかし、江田氏の新党関係者らは「細野氏が寄り合い所帯の民主党を維持したままでは、野党再編には展望が開けない。それより来年の早い時期の離党に動くべきだ」と、細野氏の早期離党に期待する。また、海江田執行部と距離を置く民主党議員は「民主党はもう限界だ。細野氏は退路を断って離党すべきだ」と指摘。また、細野氏が「師弟関係」にあった前原誠司・前国家戦略担当相と袂を分かったことを踏まえて、「2人の関係を修復させるための橋渡し役を果たしたい」と言い切る。
 そうした中、安倍内閣の支持率は急落しており、年明け以降、野党再編の動きは一段と活発化することが予想される。


 防空識別圏設定を可能にした中国の航空力

 尖閣諸島の上空を含む東シナ海に防空識別圏を設定した中国に対し、日本政府は厳重抗議した。日本が1969年に設定した防空識別圏を中国はどの空域にも設定していなかった。なぜこの時期、この空域に設定したのか。
 中国が設定した防空識別圏は日中中間線を無視するだけでなく、中国の排他的経済水域である200海里(370キロ)を越え、沖縄トラフ(海溝)にまで及んでいる。
 昨年12月、中国は国連に対し、大陸棚は中国の領土であり、したがって沖縄トラフまでは中国領だとする申請を一方的に行っており、防空識別圏の設定は沖縄トラフまでの海域を実効支配する狙いといえる。
 尖閣諸島について、中国は1992年に領海法を制定し、中国領と宣言した。その後、目立った動きはなかったが、日本が尖閣を国有化した昨年九月以降、尖閣付近に頻繁に公船を侵入させるようになった。急速な経済成長により、中国領との主張を補強できる海洋進出能力が格段に高まったからだ。
 今年7月、5つの海洋監視機関を併合した「海警局」が誕生、ばらばらだった監視船の運用が一元化され、長期にわたる尖閣進出が可能になった。また、航空力は中国空軍が旧式のJ7戦闘機に代わり、イスラエルのラビを原型にしたJ10戦闘機、ロシアのスホイ27を模したJ11戦闘機を保有したことで航続距離が伸び、今回の防空識別圏をほぼ活動範囲とすることができるようになった。
 政府関係者は「空軍力が強化され、緊急発進体制が完成したことで防空識別圏を設定したのだろう。この空域の警戒監視を大義名分に中国空軍がいつでも航空自衛隊の航空機に対して緊急発進できることになった。紛争勃発の主導権を握ったといえる」と分析する。東シナ海は波高く、その上空は暗雲が渦巻いている。


 中朝両国で弱体化するシビリアン・コントロール

 そんな防空識別圏設定の後、バイデン米副大統領が日中韓3国を歴訪したが、結局、日本が要望した、「撤回しろ」というメッセージを中国に伝えなかった。そのことで中国による新たな軍事的攻勢を抑えられるのか、日韓サイドに疑念が残った格好だ。中国が設定した防空識別圏には係争中の尖閣諸島が含まれており、米国は日米安保条約第5条の下で明確なコミットメントをしている点で、米国は中国に対し、撤回すべきとの論理を貫くのは当然だった。
 その後も米国はこの問題にオバマ大統領やケリー国務長官が明確な態度を示していないため、今後、中国は南シナ海でも対フィリピンやベトナムの上空に新たな防空識別圏を設定する可能性が高い。そうなると、いよいよ中国の覇権主義に対し米国とそのアジアの同盟国がどう対応するか、真価が問われる年となる。
 一方で、中国共産党指導部の中では、この時期、米国とその同盟国との対峙が本当に中国の国益に必要なのかどうか疑問視する声も強い。今回は当中央軍事委員会副主席で初めて空軍として中国人民解放軍の制服組トップとなった許其亮・空軍司令官の持論である防空識別圏の拡大を習近平・国家主席が承認した格好となっているが、それは単に空軍の権益拡大に資するだけであり、それをそのまま承認してしまったというシビリアンコ・ントロールの反省も党指導部内で生まれ始めている。
 そして、シビリアン・コントロールの観点からすれば、北朝鮮問題も見過ごせない。軍から党・内閣への資金の移動を嫌った軍部の助言を入れ、有能な官僚集団を形成していた実力者・張成沢・国防委員会副委員長を失脚・処刑させた北朝鮮も、今後は軍が暴走し、それを金正恩・第1書記が止められなくなる可能性が高くなっている。
 正恩氏の「後見人」とされてきた人物の粛清は世界に衝撃を与えたが、これにより「正恩氏の恐怖政治による独裁体制が完成した」(北朝鮮情勢に詳しい消息筋)との見方が強まっている。経済重視の「実務派」だった張氏の勢力は一掃され、朝鮮人民軍の強硬派の力が今後強まって、対外的な緊張が高まる恐れがある。
 張氏の影響力が高まり、多くの人間が彼の顔色を窺う状況に「ほかならぬ正恩氏が最も危機感を抱いたのではないか」(韓国の北朝鮮研究者)。経済利権などを奪われて不満を募らせる軍部などと結託して張氏の粛清に踏み切った正恩氏の心中は「いずれ自分が蔑ろにされることを警戒した」(同)というのが妥当な読み筋だ。
 血の粛清劇を経て、これまで経済立て直しと民生向上に重点を置いてきた北朝鮮の針路が修正される可能性がある。「労働新聞」は処刑当日の紙面で「衛星は今後も打ち上げられる」と、長距離弾道ミサイルの開発を続ける姿勢を打ち出した。新たな核実験なども予想される。「軍強硬派の台頭で対外関係が緊張する」(北朝鮮消息筋)ことへの備えが必要だ。
 経済苦境の折、多額の費用の投入を避けるため、軍の強硬派の中では、朴槿恵・大統領の失政で混乱が続く韓国に対し、思い切って38度線を突破したほうが、より費用が少なく効果的だとの声すら強まっているのだ。


 公明党が“猪瀬降ろし”の急先鋒となった内部事情

 猪瀬直樹・東京都知事を辞任に追い込んだ都議会で、自民党に追随するのが通例の公明党がいち早く辞任を要求したことに驚きの声が上がっている。
「即刻、知事の職を辞するべきだ」。12月9日の都議会総務委員会で、公明党の東村邦浩氏は猪瀬知事に辞職を迫った。「猪瀬嫌い」が多い都議会自民党もそこまでは求めなかっただけに、公明党の突出ぶりが際立った。問題が発覚した直後、党本部では「いずれ知事は辞任に追い込まれる」(幹部)とみながらも、「まずは本人の説明を聞いてから」(若手)と様子見を予想する声が大勢だった。
 もし議会解散、都議選となっていたら、公明党や支持母体の創価学会は目も当てられない。2012年12月の衆院選、6月の都議選、7月の参院選と「3大選挙」に何とか勝利、11月には創価学会の総本部が完成し、支持者拡大へ新たなスタートを切ったばかりだからだ。ここで再び都議選で動員をかければ、創価学会員から不満の声が漏れるのは必至。そもそも、先の都議選での23人全員当選は、危機感を抱いた創価学会のドン、池田大作・名誉会長が最終盤に選挙事務所に車で現れる演出までして勝ち取ったものだった。
 不思議なことに、創価学会の機関紙「聖教新聞」は、猪瀬知事が現金受領を認めた記者会見や、東村都議が総務委で知事に辞任を求めたことを1行も報じていない。「締め付けが弱まり、都議会が独走」「支持者向けの役割分担」。都議団と創価学会の温度差にも憶測が飛び交っている。


 普天間→辺野古移設でカジノ・リゾートが誕生へ

 在日米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設が日の目を見ることになりそうだ。仲井眞弘多・沖縄県知事は2014年度政府予算の沖縄関連分を精査したうえで辺野古沿岸部の埋め立て許可する方向で、政府は沖縄の要求に対し満額回答する予定。それを受けて、安倍晋三首相とキャロライン・ケネディ駐日米国大使が共同記者会見し、「辺野古移設」を正式に発表する。
 日米間の懸案だった普天間移設が急展開したのは第2次安倍政権になってから。菅義偉・官房長官が仲井眞知事との太いパイプを築き、辺野古移設の見返りに沖縄振興策など、たっぷりと飴を与えたことが大きい。一連の交渉過程で仲井眞知事が菅官房長官に提示した要求は大きく分けると3点。1つは、普天間飛行場に配備が完了した米海兵隊垂直離着陸輸送機「オスプレイ」の一部県外訓練。第2は、日米地位協定運用の見直しだ。在日米軍兵士の犯罪は、現行では米側による裁判の確定判決を日本側に通知するだけだったが、未確定判決や軍の懲戒処分、不処分の通知の義務付けも要請。この2つは日米間ですでにクリアされた。
 仲井眞知事は3つ目に沖縄本島北部の振興策を提示。普天間飛行場の移転が完了した場合、その跡地にカジノを主とした統合型リゾートを建設するという中身である。
 安倍首相が最高顧問を務める通称「カジノ議員連盟」は、カジノ解禁ための「カジノ法案」を議員立法で昨年末の臨時国会に提出、通常国会で成立する運びだ。安倍政権の成長戦略の1つで、経済効果は6000億円(日本経団連試算)。全国20以上に及ぶ自治体のカジノ誘致合戦の中で、菅官房長官は沖縄を優先順位第1位にすると予想される。


 すでに条件は揃った? 日銀追加緩和に期待大

 日銀の追加金融緩和に対する期待が膨らんでいる。市場関係者の間では「2014年4月の消費増税を見据え、同3月までに追加緩和に踏み切る可能性が出ている」との声が聞かれる。すでに、上場投資信託(ETF)などリスク性資産を買い増すといった選択肢も浮上している。
「海外経済が想定よりも悪くなれば、何らかの影響が出てくる可能性がある」。きっかけの1つが、黒田東彦総裁が12月2日に名古屋市で講演したこの発言だ。特に欧州経済の下振れや、増税後の国内経済の冷え込みを警戒。「上下双方向のリスクが顕在化すれば躊躇なく調整する」と語り、緩和の可能性を否定しなかった。また緩和期限が14年末ではないとし、期間の長期化を示唆した。対ドルの円相場はジリジリと下落し、同月13日の東京外国為替市場で、5年2カ月ぶりの安値となる1ドル=103円90銭近辺を付けた。
 欧州中央銀行(ECB)は金融緩和を強化しているほか、米連邦準備制度理事会(FRB)も緩和縮小を先送りにする可能性が高い。日銀の緩和効果が薄れる恐れから「次の一手を打つ必要に迫られている」(大手銀行為替ディーラー)といわれる。
 また現状の政策では目標の2%の物価上昇率に達しない可能性が高く、追加緩和は必至。増税対策を名目に行えば、「戦力の逐次投入を否定したことを非難されることがなく、日銀にとっても渡りに船」(同)。
 次の布石として有力視されるのがリスク性資産の買い増しだ。資産効果を高めて投資意欲を呼び起こす考えで、消費マインドの低下を防ぐ政策としては適切だ。果たして黒田総裁は追加緩和に踏み切るのか。


 三村日商新会頭が抱えるアベノミクスの「負」

 日本商工会議所は11月21日、岡村正会頭の後任に、新日鉄住金の三村明夫・相談役名誉会長を選任し、全国の中小企業を束ね、率いる「三村・日商」が本格スタートした。三村新会頭は就任に際し、「新たな日本再出発の礎を築く」をスローガンに掲げ、日本の企業数のほぼ3割に当たる127万会員を新たな成長ステージに導く司令塔を担うことを宣言した。しかし、長期化するデフレ経済下で、日本経済を支えてきた中小企業の体力は細り、さらに地方経済の疲弊度は深刻化する一方で、日本再出発への道のりは険しい。
「アベノミクスの効果は浸透していない。まして2020年東京オリンピックの恩恵なんて、まったく考えられない」――都内のホテルで開かれた三村会頭の就任後の記者会見は、同席した各地方を代表する副会頭が異口同音ながら、こんな共通認識を示した。さながら、東京一極集中への“恨み節”の大合唱だった。
 政権奪回後ほぼ1年がたった安倍晋三政権が打ち出す経済政策「アベノミクス」は、給与や設備投資を増やす企業に対する法人減税など、たしかに企業寄りの政策のオンパレードだ。しかし、赤字経営が大部分で法人税を収めていない中小企業には、ほとんどその恩恵にあやかれない、無縁な世界で、「第1の矢」として放った日銀の異次元金融緩和による資産効果も限定される。中小企業、地方経済にとっては、まさにアベノミクスから取り残されたといった悲壮感だけが漂う。さらに、オリンピック招致を勝ち取ったことから、オリンピック特需への期待に沸く東京がお膝元の東京商工会議所とは、その温度差が広がる一方で、地方からは怨嗟にも似た声が響く。
 そうした中小企業、地方経済の深刻な地盤沈下に、三村会頭が打ち出した基本方針は、旧新日本製鉄(現新日鉄住金)の社長時代に徹底して貫いてきた「現場主義」「双方向主義」であり、全国514商議所、127万会員のネットワーク活用で日本経済の再生に挑む。就任早々に、地方経済の実情を把握するため、全国行脚に繰り出す意向も示した。
 たしかに三村会頭は旧新日鉄の社長、会長を務め、新日鉄と住友金属工業の合併の推進役として名を馳せた。さらに、経団連で副会長を務め、会長候補にも取り沙汰された経済界の重鎮でもある。前の自公政権で経済財政諮問会議の民間委員を務めるなど、政府審議会の委員の実績も多い。しかも、日商会長就任に先立った東商会頭就任に当たっての東商の“組閣”では、新副会頭にかつての日商・東商会頭の出身企業である旭化成の伊藤一郎会長、IHIの釜和明会長を起用し、人材難で新会長の人選に苦しむ経団連も羨む重厚な布陣を引いた。
 三村会頭のリーダーシップは「申し分ない」(日商事務方)。しかし、大企業と中小企業、中央と地方との体力格差は歴然とした事実であり、まさに全国の商工会議所、中小企業を率いる立場として、その乖離した溝を埋め、日本再出発につなげるリーダーシップの真価が問われてくる。大企業寄りと批判もされるアベノミクスで取り残された中小企業、地方経済を復活に導く政策をいかにして誘導できるかが、最優先の課題なのは論を待たない。三村会頭は「格差是正は非常に難しい。難しいのを前提にしながら、アベノミクスのメリットを日本全体に浸透させたい」と語った。覚悟の船出は、課題山積だ。


 過剰貯蓄やっと市場へ? 成長戦略の柱に「投資」誘導

 政府・自民党は成長戦略の金融面の柱に「投資」を据える。120兆円に及ぶ公的年金や準公的資金の運用に海外のインフラファンドを解禁、安倍政権の東南アジア戦略と連係させるほか、確定拠出年金の限度額引き上げ、少額投資非課税制度(NISA)に複数口座の開設を認めるなど、来年度の税制改正等に国内金融資産の投資優遇策が盛り込まれた。
「貯蓄から投資へ」を合言葉に安倍政権は、1600兆円に達する個人金融資産の「投資」への誘導策を推進してきた。6割が預貯金であるこの巨額資金を運用する金融機関は安全確保を優先している。
 アベノミクスが想定する成長戦略を成功させるためには、ある程度リスクを覚悟した「投資」が必要になる。「貯蓄から投資へ」のスローガンは政権が目指す成長戦略と裏表の関係にあり、個人が保有する潤沢な資金を成長分野に投入しようという大胆な試み。一歩間違えば個人資産の毀損につながる危険な戦略だが、リスクをとらないかぎり新たな成長や収益は望めないというのがグローバル化した経済の現実。デフレ脱却という面でも避けて通れない戦略だ。
 そのための方策として来年度から始まる100万円を限度に株式や投信を購入する個人投資家を対象にNISAを導入した。現在、口座開設が進んでいるが、株式市場が上昇傾向を強めていることもあって応募が殺到している。自民党も税制改正で現在、1人1口座に限られている口座開設要件を早くも緩和、来年度から複数の金融機関での口座開設を認める。
 確定拠出年金(日本版401k)の拠出限度額も早ければ2014年10月に8%引き上げられる。複数の企業年金がある企業の場合、上限が毎月2万7000円(現行2万5500円)、401kだけの企業は同5万5000円(同5万1000円)になる。対象となる企業型401kは現在1万7000社が導入、資産残高は7兆円規模だ。
 公的年金の運用に海外のインフラファンドが解禁され、国内でも道路や橋、港湾、空港といったインフラ整備に個人投資家の資金を投入するインフラファンドの開設を認める。同ファンドはREIT方式で設定される模様だが、日銀が追加緩和の一環としてこのファンドを買い入れの対象にする可能性もありそうだ。
 デフレが続いたこともあって、日本ではこの20年、「過剰貯蓄」と「過少投資」が続いてきた。成長戦略の前提は投資の拡大。企業と個人の投資拡大が成長戦略の鍵になる。


 政権交代で大きく後退、独法改革は風前の灯火に

 行政改革推進会議が検討している独立行政法人の改革案の内容が大きく後退する。独立行政法人改革は民主党政権下の目玉施策で、102法人を64法人まで削減する大胆な内容(12年閣議決定)であった。しかし、政権交代を機に大きく後退、現在百ある独立行政法人を統合や廃止などで86に再編するマイナーチェンジに着地しそうだ。
「独法改革は、14年4月からの消費増税に理解を得るため、無駄を排除していますよとアピールする意味合いがあるのだろうが、結局、第1次安倍政権時の再編案を踏襲したような内容に落ち着きそうだ」(某中央官庁幹部)と指摘される。第1次安倍内閣では101の独法を85に再編する方針を閣議決定した経緯がある。その後、民主党に政権が移り、事業仕分けもあり、徹底した無駄の排除から独法の多くが統合、廃止される方向が示された。しかし、再び自民党が政権に返り咲き、第2次安倍政権では「(民主党の方針を)ゼロベースで見直す」とされていた。
 今回の独法改革で廃止されるのは、日本万国博覧会記念機構と原子力安全基盤機構の二法人で、原子力安全基盤機構は原子力規制庁が吸収する。一方、民主党政権下で統合される予定であった国立美術館や国立文化財機構など3法人は統合が見送られる。
 さらに、最大の改革対象と目されていた都市再生機構(UR)の分割・民営化も「民営化などありえない」(太田昭宏・国交大臣)と雲散霧消。民主党政権下で岡田克也・副総総理が改革を主導した経緯もあるだけに、野党から失望の声が上がっている。しかも、URが抱える13兆円にのぼる巨額な負債処理問題も、「保有資産の一部切り売りがある程度」(中央官庁幹部)とみられており、実質的に先送りされる公算が大きい。
 そもそも今回の行政改革推進会議のメンバーが決まった時点で、大幅改革路線からの転換は十分に予想されていた。「会議の議論では独立行政法人のモデルとなった英国のエージェンシー制度との比較が行われるなど、そもそも論が蒸し返され、改革を進める意思が希薄だった」(関係者)と指摘される。また、独法改革案を前に、政府関係者からは元の特殊法人へ先祖返りする独法も出るのではないかとの声が上がっていたが、実際、日本貿易保険は政府全額出資の特殊会社に鞍替えした。まさに骨抜きの独法改革といっていい。
 独法には数多くの官僚が天下っている。その統廃合は官僚の天下りポストの減少に直結する。自民党政権の復活とともに官僚の巻き返しが功を奏したといえそうだ。


 憶測生むキリン「一番搾り」、リニューアルのタイミング

 キリンビールが12月に入り決めた、主力のビール商品「一番搾り」の刷新が波紋を広げている。ビール業界では、市場で存在感のある主力商品であっても、消費者を飽きさせないため定期的に商品をリニューアルするのは当然のこと。ただ、腑に落ちないのは今回のタイミングだ。通常、12月は、ビール各社がシェアナンバーワンをめぐって熾烈な競争を繰り広げる時期。例年なら「売り」に全社の力を投入している真っ最中なのに、いったいなぜこの時期に「商品刷新」なのか。
「一番搾り」のリニューアルは実に5年ぶり。その理由を、キリンビールは来春の「消費税増税をにらんだもの」と説明する。だが、切り替えは早々と12月中旬から実施するというから、いかにもとって付けた感じのする理由だ。
 しかも、驚いたことに商品の内容を思い切って変えるというのだ。アロマホップの比率を1割増やすというのがその柱だが、ホップはビールの生命線である苦みの成分。そこに手を入れれば、当然、賛同する消費者もいるだろうが、離反する消費者も現れるのが常識。同時期に「スーパードライ」をリニューアルするアサヒビールが泡だちの調整であることに比べると、キリンビールのリニューアルは大きな冒険になる。やはり、それなのになぜ、ここであえて断行するのかは腑に落ちない。
 ビール業界は毎年(1〜12月)、年間のシェアトップをめぐり、泥まみれの競争を繰り広げる。「シェアトップ」の実績が顧客に安心感を与え、それがまた売り上げ増につながるためで、書き入れ時の夏(7〜8月)と忘年会シーズンの12月は、倒れる営業マンも続出するほど販売合戦が激しさを増す。
 そんな大切な時期にキリンビールはなぜ、商品をリニューアルするのか。どうやら答えが見えた。すでに敗戦色が出始めているからだ。
 1〜9月のビール類の課税済み出荷量のシェアでは、アサヒビールが前年同期と同様の37.4%を確保し首位を守ったのに対して、キリンビールは0.8ポイント下落し、35.9%。秋以降、キリンビール側が大きく巻き返した形跡はなく、「キリンビールの負けは動かないかもしれない」(ビール業界関係者)情勢。「ならば」と、味も含めた商品リニューアルで、新顧客をつかむ賭けに打って出たというわけだ。
 戦後、キリンビールは半世紀近くも業界でトップの座に君臨、「営業なんかなく、ビールを店に割り当てているだけ」と揶揄されてきた。現在、キリンビールの親会社であるキリンホールディングス(HD)の三宅占二社長もそんな営業の出身で、今の劣勢は信じられない気持ちかもしれない。自身は14年3月で社長就任から4年たち、後進に道を譲る時期に差し掛かっている。「これでは花道なき引退になりかねない」と、胸中穏やかでないだろう。


 米倉経団連会長が見せたコンプライアンス感覚

 経団連は「企業行動憲章」を定め、会員の企業行動に対し高い倫理観を求め、不祥事未然防止の徹底を強く訴えてきた。しかし、その率先垂範役である米倉弘昌会長の出身母体である住友化学のシンガポール現地法人社員による不正行為が発覚した。マラリア対策向けの殺虫剤入り蚊帳の契約をめぐり、社員2人が2003年頃からカンボジア国立マラリアセンターの幹部に多額の現金を供与していた問題で、同社はこの2社員を解雇した。
 ところが、この問題を受けた米倉会長の発言が、ある種、開き直りだと物議を醸している。問題は、11月25日の定例記者会見で「カンボジアでは、入札の際にお金を出せと極めて不可解なことを言われていた。理解に苦しむ」と釈明し、同国の特異な制度論にすり替えたことだ。米倉会長は「アジアでも日本と同じコンプライアンス(法令順守)を徹底する」と取り繕ったにせよ、謝罪はなく、企業行動を厳しく律する立場としてその品位を疑わせた。
 問題となった蚊帳は、アフリカのタンザニアで工場を建設、生産し、同国のマラリア対策に多大に貢献したことでも知られ、日本企業による貧困国でのBOP(ボトム・オブ・ピラミッド)ビジネスの模範生と囃された。さらに、05年1月にスイスで開かれた世界経済フォーラムの総会(通称・ダボス会議)で、米女優のシャロン・ストーンさんが蚊帳購入で寄付を呼びかけ、その場で100万ドルを集め、出席した米倉会長もご満悦だったというエピソードも残る。
 カンボジアでの不正行為はそんな“美談”に泥を塗り、米倉発言でさらに評判を落とした。経済界にあっては昨秋以降、みずほ銀行による反社会的勢力への融資問題や、ホテル、百貨店などの食材表示偽装問題など、不祥事が後を絶たない。そんな最中の米倉発言だけに、経済団体の元事務方からは「経済界を束ね、自ら律する立場としては、いささか無神経。これでは企業倫理の徹底はおぼつかない。企業への国民の不信感は募るだけ」と憂慮する声も挙る。任期を半年残すだけとなった米倉会長にとって、「史上最低の経団連会長」との評にダメを押しかねない。


 堤清二氏の逝去を機に動き始めた堤義明氏

 セゾングループの総帥で、作家・辻井喬としても知られた堤清二氏がこのほど亡くなった。独特のセンスで同グループを率い、西武百貨店は高島屋や大丸を超える勢いまで業容を伸ばした。
 しかし、バブル期の不動産開発がたたり、グループの西洋環境開発が多額の不良債権を抱えて破綻。セゾングループの総帥の職も追われた。
 そして晩年、清二氏が力を入れたのが、異母弟の堤義明氏がトップを務めた西武鉄道グループをめぐる問題だった。同鉄道グループは、株主の虚偽記載問題で義明氏らが証券取引法違反などで上場廃止に追い込まれ、みずほ銀行の副頭取だった後藤高志氏が同鉄道の社長に送り込まれた。再建の途上で、米投資ファンドであるサーベラスの出資を得て傘下のプリンスホテルなどの再建に当たり、それ以降、義明氏は一切、公の場に顔を出さなくなった。
 清二氏は実弟の猶二氏とともに、西武鉄道の大株主だったコクドの所有権をめぐり、義明氏や後藤氏と争っていたが、裁判ではことごとく敗訴し、最近では雑誌などで、義明氏や後藤氏の「西武鉄道グループの不法占拠」を訴えていた。
 世間的にも知られる清二氏の逝去で、「異母兄弟間の騒動も裁判も終息し、義明氏が西武鉄道グループの経営参画に向け動き始めた」(西武ホールディング関係者)という。西武HD率いる後藤氏は最近、筆頭株主のサーベラスと経営権をめぐり対立したが、この際、後藤氏が頼ったのが義明氏で、「サーベラスが仕掛けたTOB(株式公開買い付け)でタッグを組んで阻止した」(同)という。仮にサーベラスのTOBに西武HDの大株主である義明氏が応じれば、同HDの発行済み株主の過半近くがサーベラスに移る可能性があったため、「後藤氏は義明氏に大きな借りをつくった」(同)といわれている。
 そして、以前から後藤氏と義明氏の間には“密約”があったのではないかとの話もある。その密約とは「西武HDが再上場した際に後藤氏が退任し、義明氏が実質的に経営に参画できるような形で復帰する」というものだ。後藤氏が義明氏を放逐する形で同グループの経営再建に邁進している間、義明氏が一切口を挟まなかったのも、再上場後のこの“密約”があったからだといわれる。
 サーベラスとの確執など、騒動に事欠かない西武HDだが、清二氏の亡き後、どう動くのか、注目される。


 新卒採用が過熱気味で倫理憲章は有名無実化?

 企業の新卒採用活動、学生側から見れば就職活動が早くも過熱気味だ。2008年のリーマン・ショック以降、企業は採用を抑制する動きを強化。学生にとっては冬の時代が続いてきたが、今年は風向きが変わりそう。アベノミクス効果なのか、新卒採用に意欲的な企業が急激に増えており、偏差値上位大学を中心に学生を奪い合う構図が久々に復活。“フライング”も例年になく多くなっている。
 経団連が定める「採用選考に関する企業の倫理憲章」によると、就職活動の解禁日は大学3年の12月1日。この日から企業は説明会など学生へのPRを始め、面接といった実際の選考開始は4月1日以降とすると申し合わせている。
 経団連加盟企業の中にも倫理憲章に署名していないところがあるが、少なくても上場企業なら紳士協定として守るべき基準だとする意見が表向きは多い。だが、一部の業種はすでに10月頃から「先輩の話を聞く会」「内定者との座談会」などの名目で実質的な説明会を始めている。そこで内定を約束する、いわゆる内々定を出す企業すらある。
 特に各大学の就職課が問題視しているのが、保険とコンビニ業界。今度の春に入社する内定学生を使って、目ぼしい大学3年生の連絡先を集めているほか、ローソンはイベントを装った実質的な説明会で一部の学生に「選考試験の免除」を与えているという。
 実は、これらよりもっと早い段階で企業が学生に接触するケースもある。夏に実施するお試し就労体験、いわゆる「インターンシップ」がそれ。「インターンで優秀な結果を出した学生には、口止めした上で内定を出している」(ITの有名企業)。経団連の倫理憲章に署名していないソフトバンクが1昨年、夏のインターン学生を対象に採用試験をして11月に内定を出したのは、関係者の間では有名な話だ。
 経団連に加盟していない企業や外資系企業はもっと奔放。ユニクロは大学1年生にも内定を出すことで知られており、アマゾンや欧米系の証券会社は秋に説明会を実施済みだ。
 政府は昨年、「学生の学業専念」を理由に採用活動の後ろ倒しを経済界に要請。経団連はこれを受け入れ、来期(16年3月卒業予定の学生対象)から倫理憲章を修正し、説明会解禁を12月から3月に、選考解禁を4月から8月に変える。だが、今の企業の動きを見る限り、看板倒れになるのは目に見えている。
 となれば、学生もアンテナを張り巡らし、正確な情報を独自に集めるしたたかさが必要だ。素直なだけでは馬鹿を見る。


 外国人旅行者向けに無料Wifiは筋違い

 2020年東京五輪の開催決定を受けて、外国人旅行者向けに「無料の公衆無線LAN(Wifi)」を拡大する動きが広がっている。
 観光庁が11年10月に外国旅行者に行った「旅行中困ったこと」のアンケートで、最も不満が多かったのは「無料Wifi」環境の36.7%。これを受けて、「観光立国」を標榜する政府は「無料Wifi」推進の音頭をとったが、整備は遅々として進まなかった。というのも、日本のWifi環境は有料サービスが主流で、利用者は一部のビジネスマンに限られていた。しかも、携帯電話やスマートフォン(スマホ)の通信ネットワークが全国に普及しており、Wifiを利用しなくてもデータ通信には事欠かなかったからだ。
 このため、欧米のように、集客のためにWifiの費用を負担して利用者に無料で提供する事業者はなかなか現れなかった。マクドナルドが好例で、米国では全米1万1000店舗以上で簡単に「無料Wifi」に接続できるが、日本は有料のうえ手続きも煩雑で、事実上利用できない。
 ところが、東京五輪が決まったとたんに、にわかに「無料Wifi」の拡充を求める声が高まった。
 総務省は、関係業界の企業・団体を集めて連絡会を稼働させ、10月から半年間かけて、国内外の現状調査や外国人旅行者のニーズ調査に乗り出した。国土交通省と東北観光推進機構は12月、外国人旅行者を対象に東北全域1万1000カ所で「無料Wifi」を開放する方針を発表した。
 訪日外国人の利便性が高まるのは結構なことだが、費用の一部は税金で賄われることになりそう。納税者が利用できないような施策は「筋が違うでしょ」となりかねない。


 TPP参加をにらむ中国携帯電話事業育成の狙い

 日米など12カ国による環太平洋連携協定(TPP)交渉は難航し、実質合意は越年したが、その交渉の進展をにらみながら、将来のTPP参加に向けた戦略を着々と推し進めている国がある。中国である。
 中国はTPP参加に対し慎重な立場を崩していないが、TPPに乗り遅れることに焦りを募らせているとも指摘される。
 中国がTPP参加を見越し、最重点分野として体制整備に着手しているのが、「携帯電話と燃料電池のチャイナスタンダードの確立」(大手商社幹部)である。中国工業情報化省は12月4日、中国移動通信集団など国有携帯3社に第4世代(4G)携帯電話サービスの事業免許を与えた。3社は北京や上海など大都市で商用サービスを開始し、年内に全国100都市に通信網を広げる計画だ。
 中国の携帯電話利用者は12億人超で世界最大。しかし旧式の第2世代(2G)の比率が依然7割を占める。このため、中国政府は巨費を投じて、一気に先進国並みの高速通信網の整備を進める。
 国有携帯3社に中国政府が4Gを認める背景には、TPPをにらんだ中国の戦略がある。TPPに参加することは、日米が主導する投資や商取引ルールに与(くみ)する必要が生じ、覇権を目指す中国としてはリスクが大きい。そのためTPP参加前に独自の「チャイナスタンダード」を構築し、対抗する考えなのだ。その象徴が携帯電話事業で、「携帯事業におけるチャイナスタンダードを確立するため、国有携帯3社を育成している」(大手商社幹部)とみられている。


 家電市場にPBで風穴、イオンの低価格攻勢

 小売り業界では二〇一四年四月の消費税増税による消費者の買い控えの対策を進めているが、スーパーマーケットが力を入れているのがプライベートブランド(PB=自主企画)商品の拡大だ。中でも来年四月でPB商品の発売四十周年を迎えるイオンは、一三年度にPB商品の売上高を一二年度比四割増の一兆円にする計画を明らかにするなど、PB戦略に積極的に取り組んでいる。ここへきて特に同社が力を入れているのが家電分野の品揃えである。
「イオンは一三年春から、スーパーでの売れ筋商品である調理器具や掃除機、理美容関連商品を中心として同社のPBブランド『トップバリュ』で小型家電を増やしていて、すでに電気ケトルなど約四十品目に上っています。PB商品の特徴は、消費者のニーズが高い機能に絞り込むことによって、ナショナルブランド商品と比べて平均で三割程度価格を安く提供できる点です。イオンのGMS(総合スーパー)の店舗数は全国に約四百三十店舗ありますが、そのうち家電を扱っているのは約二百店舗といわれます」と流通担当記者は解説する。
 イオンでのPB家電販売はこの二年で二桁の伸びを示しているといわれ、同社では一五年度に現在の五倍の二百品目に拡大させ、一五年度のPB家電の売上高を百五十億〜二百億円にしたいと意欲を見せている。家電販売では今後ますます価格競争の激化が予想されるが、イオンをはじめとするGMSによるPB家電の販売強化は量販店などへも大きな影響を与えそうだ。


 通信料が激安で注目、SIMフリー版携帯端末

 11月22日、アップル社がiPhoneの「SIMフリー」版の販売を開始した。アップルのウェブサイトからしか買えず、容量が16GBのものでも7万1800円と高価だが、ランニングコストを劇的に下げることができる。
 SIMフリー端末用にSIMカードを販売する通信会社のプランでは、通信量や通信速度に一定の制限がかかるものの、安いプランなら月額1000円前後。出先での簡単な調べもの、地図検索がメーンのビジネスユースなら、SIMフリー端末がお得だ。通話はできないが、通話とメールをガラケーにという2台持ちなら、月額3000円以内で収まるだろう。
 イニシャルコストが気になる向きには、グーグルのネクサス5なら、16GBモデルで3万9800円だ。また、NTTドコモの中古端末で、ICカードの入っていない、いわゆる「白ロム」の端末を選ぶ選択肢もあり、こちらは2万円から4万円程度。なぜ、ドコモの端末なのかといえば、SIMカードのネットワークは、どの通信会社もドコモのネットワークを借り受けている形だからだ。
 これからは高い通信料金に嫌気がさして、通信キャリアの2年縛りといった契約をやめる人がかなり増えそうだが、そうなると、これまで殿様商売をして巨額の利益を稼いできたドコモ、au、ソフトバンクは厳しくなる。もっとも、ドコモは前述したような既得権益があるため、ほかの2社に比べれば影響は軽減される。海外ではSIMフリーが当たり前だが、日本でもようやくその日が到来したようだ。


 大和ハウスの先見の明、シルバーエイジ研究所

 大和ハウス工業の収益動向は、好調な住宅業界にあっても一頭地を抜いている。「2016年3月期の中期経営計画での目標の純益1000億円を射程内に入れた」とされる。そうした中で、「当社の中でも重要な事業として着実に成長している」(IR室)というのが、高齢者向け介護施設・医療施設建設部門。
 同社は1988年、「シルバーエイジ研究所(以下、シルバー研究所)」を設立している。「介護保険法」が成立(97年12月、04年4月施行)する9年前である。シルバー研究所は現在、建築事業推進部営業統括部の所属組織。IR室は、「来るべき高齢化社会に備えた、高齢者向け介護施設のありようや、介護環境、医療機関を研究する機関として設立した、いわばシンクタンク」と説明する。
 ではシルバー研究所は実際に今、どんな役割を果たしているのか。要約すると、介護施設などの建設予定地の調査に始まり、諸般の環境調査等を経て、基本計画を作成。それに基づき地元自治体との協議を行うなど、設計、施工の水先案内人を務めるのだ。
 すでに88年から13年8月までに、同社は2600件の成約実績を積み重ねている。内容は次のような具合である。「(介護療養病床を含む)病院:99件」「(介護老人保健施設を含む)老人保健施設:99件」「特養老人ホーム:38件」「在宅系介護施設(デイケア・サービス施設、認知症高齢者の共同生活施設、各種施設を整えた小規模多機能型施設、有料老人ホーム、ショートステイ施設)等:1333件」「その他、サービス付き高齢者専用賃貸住宅・診療所・調剤薬局など:1031件」。
 時の流れを先読みして対応策をとった成果といえよう。


 NHK次期会長人事にJR東海会長・葛西氏の影

 NHKの次期会長に日本ユニシス特別顧問の籾井勝人氏が就任することになった。籾井氏は三井物産時代、主流の鉄鋼部門が長く、米国法人の社長を務めた後、副社長に就任。その後、日本ユニシスに転じ、社長を歴任した。
 松本正之会長は任期が切れる前に異例となる退任を表明、経営改革などで成果を上げたのにもかかわらずの辞任に「抗議の辞任」「嫌気がさした」と指摘する声は多い。その松本氏の批判の矛先が、「裏で動いていた松本氏のJR東海時代の上司である葛西敬之会長」(NHK関係者)というのは公然の秘密だ。
 葛西会長は安倍首相の財界の支援団体「さくら会」の発起人の1人。「原発や防衛問題などの報道姿勢への不満から交代を求める声が官邸周辺などにあった」(NHK幹部)という。葛西氏は自らを「安倍氏の後見人」であると自負しており、NHKの報道姿勢に悩む安倍氏の相談に乗っていた。その声を受けて葛西氏が松本氏に退任を迫り、後任選びが本格化したようだ。籾井氏が就けば、福地茂雄氏(アサヒグループホールディングス相談役)、松本氏(元東海旅客鉄道副会長)に次ぐ、3代続けての外部登用となる。
 安倍首相の支援団体「さくら会」には葛西氏のほか、かつてNHKの経営委員長を歴任した数土文夫・JFEホールディングス社長(現東京電力社外取締役)も名を連ねる。葛西氏は数土氏にも声をかけて籾井氏の次期会長就任を勧めたとされる。
 NHKの会長人事は12人の経営委員のうちの9人以上の賛成が必要となるが、哲学者の長谷川三千子氏ら首相に近いとされる4人を送り込んだ。この人事は、首相と官房長官の菅氏、さらにこの両者に思想的にも近い葛西氏が「周到に用意した」(NHK幹部)。
 その葛西氏は悲願であるリニア新幹線の早期実現と、新幹線の海外輸出に安倍氏を担ぎ、米国や東南アジアなどに売り込んでいる。安倍氏の経済外交を「陰で操っている」(経団連幹部)ともいわれ、「あまりの癒着ぶりは目に余る」(同)ともいわれる。「経済政策以外にもメディアへの介入の度が過ぎれば、世論からその政権への癒着ぶりを刺されかねない」と、JR東海では懸念する声が出てきている。「権力志向が強い」(JRグループ幹部)とされる葛西氏が今後どう振る舞うかが注目される。


 アフガン里帰り小麦種子が世界食料危機の救世主に?

 米軍撤退で長年の紛争に一応の決着がつこうとしているアフガニスタンで、耐干性や耐病性を持つ同国在来小麦遺伝資源を使った育種技術研究開発事業が本格化している。横浜市立大学木原生物学研究所が保存していた種子と近代品種を掛け合わせることにより、高収量、高品質な新品種と育種技術を開発し、アフガンの戦後復興に食料面で貢献することを狙った、夢のある事業だ。
 日本の植物遺伝学の第一人者として知られる故木原均博士は1955年に京都大学カラコルム・ヒンズークシ学術探検隊を率いて、小麦の起源を突き止めるため、パキスタン、イラン、アフガンを現地調査。各国で採取した在来の小麦種と、その祖先ともなった野生の小麦種を日本に持ち帰った。その遺伝資源は現在も同研究所が保管し、品種改良に生かす研究を続けている。
 紛争の始まる30年以上前のアフガンは自然の豊かな農業国で、大地には青々とした在来種の小麦畑が広がり、100%の自給率を誇っていた。人類最古の作物・小麦原産地の東端に位置し、厳しい環境の中でも、風土に合った、乾燥に強い在来種が育っていた。しかし、その後の長い戦火で灌漑設備は破壊され、土地も荒廃、小麦の遺伝資源もタリバンに捨てられ、蓄積された知財のほとんどは喪失状態。外国から持ち込んだ品種では灌漑の整備されていない地域の生産量は落ち込んだままだ。
 そこで期待されているのが、木原博士が58年前にアフガンで採取し、日本に持ち帰った遺伝資源。かつて現地で育っていた種子なら、その地で生き抜く力も備えているからだ。横市大の坂智広教授を代表とするチームは国際協力機構(JICA)の協力を得て、11年秋、アフガン在来種を首都カブールの農業試験場に播種、見事発芽した。12年、13年も圃場を国内各地に拡大し、生育研究を継続中だ。
 悩みの種は、圃場に行くにもマシンガンを持った警備員の同行が必要な治安状態で日本からなかなか現地に入れないことだが、留学生を日本に呼んでアフガン人研究者を育てつつ、テレビ会議で実務打ち合わせを行うなど懸命な研究が行われている。
 新品種が開発されても、それに対抗して新種の病原菌が登場するのが植物の世界。坂教授によると、既存病原菌の脅威にさらされていないアフガンは、優良な遺伝子の宝庫である可能性が高いという。世界の農業は今や、いくら肥料をやっても収穫量が上がらない限界に直面し、今世紀半ばには食料危機に陥るとも懸念されている。アフガン遺伝資源の活用が世界の食料危機の防波堤になる夢も併せて見たいものだ。


 結局は骨抜きにされたボルカー・ルール

 連邦準備制度理事会(FRB)、連邦預金保険公社(FDIC)など米国の5つの金融監督当局は12月10日、銀行の自己勘定取引を規制する「ボルカー・ルール」の最終案を公表した。しかし、全面実施期限は2015年7月21日に先送りされ、実質的に骨抜きの様相を呈している。
 ボルカー・ルールの根幹をなす自己勘定取引では、銀行が証券、デリバティブ、商品先物、オプションの短期的な自己勘定取引を行うことは禁止されたものの、例外措置として、(1)引き受け業務、(2)マーケットメーキング、(3)ヘッジについては取引が認められている。
 具体的には、引き受け業務で銀行の持ち分が「目先の妥当な顧客需要見通しを超えない」限り、公募または私募の公開に利用するための証券保有は認められた。また、マーケットメーキングでは、顧客のために「定期的に売買を行う用意ができている」証券の保有が認められた。つまり、自己の勘定を用いた投機的な取引は禁止されるものの、顧客の需要に基づく取引であればリスクが伴う業務であっても認められるのだ。
 また、銀行がヘッジファンドやプライベート・エクイティ・ファンドへの出資等についても、ファンドの総資産の3%以上の出資を行うことは禁止されたが、当初、懸念されたファンドへの出資そのものの禁止は回避された。しかもファンドの定義そのものも緩和されている。
 一方、懸念された邦銀への影響も、邦銀が外国で融資する際に必要なドル調達に支障が出る可能性がある程度で、懸念された外国国債の取引は認められた。結局、リーマン・ショックから5年が経過し、経済が持ち直す中、金融改革への意欲も薄れたということであろう。


 ウォール街に再降臨した乗っ取り王、アイカーン

 今、ウォール街ナンバーワンの資産家にランクされたカール・アイカーンが世界の乗っ取り王といわれる。個人資産200億ドル、過去13年のパフォーマンスは年率23.8%、何しろ2000年にアイカーン・エンタプライズに出資した投資家らは財産を十八倍にした。
 この高度な財テク技術が注目され、「野蛮な資本主義者」と罵倒の声もあるが、本人は「『活動する株主』といってほしい。眠る資産を有効活用して株主に配当をしない経営者こそ無能である。資本の活用が雇用を増加させ、経済を活性化するのだ」と開き直っている。
 アイカーンはニューヨーク生まれで、ユダヤ人家庭に育った。祖父の影響が強く、プリンストン大学在学中はロングアイランドでボーイのアルバイトに精出しながらトランプを覚えた。賭けの技術を磨いたという。そして投機家の道を歩み、誰とも徒党を組まず、自らを「一匹狼」と称している。ニューヨーク5番街の最高級マンションに住み、幾多の企業の社外取締役を兼ねている。
 かつてTWA(トランスワールド航空)を乗っ取り、その後もテキサコ、デル、JCペニー、ヒューレットパッカードなど、錚々たる企業の大株主として活躍。08年のリーマン・ショックで企業乗っ取り屋も消えた時には彼も埋没していた。
 久しく音沙汰はなかったが、米国の景気が持ち直し、企業が利潤を上げるようになると、野蛮資本主義者=アイカーンがウォール街に帰ってきた。彼が最後(?)の賭けに出た対象はアップルである。


 ロシア五輪で有終の美? プーチン大統領が画策

 2月のソチ冬季五輪を主催するロシアが、24年の夏季五輪をサンクトペテルブルクに誘致する構想を内部で進めている模様だ。
 コザク副首相は最近、「ロシアの北の首都であるサンクトペテルブルクは夏季五輪を主催する能力がある。この野心的構想は政府内で検討している」と発言。ポルタフチェンコ同市市長も「夏季五輪立候補は十分あり得る」と表明した。
 24年といえば、プーチン大統領が18年の次回大統領選で再選されれば、6年の任期の最後の年となる。「長期政権を見込むプーチン大統領は任期最後の年に郷里のサンクトペテルブルクで夏季五輪を開催し、有終の美を飾ろうとするかもしれません」(モスクワ特派員)
 ただし、東京五輪に続く24年五輪は強豪候補地が目白押しだ。東京に敗れたイスタンブールとマドリードはもちろん、パリが百年ぶりの開催を狙い、現時点では最有力とされる。米国のワシントン、ダラス、サンディエゴ、カナダのトロントも名乗り出ている。
「国際オリンピック委員会(IOC)は、ソチ五輪の準備の遅れや、ロシアの同性愛者迫害に伴うボイコット運動にイライラし、安定開催を重視している。サンクトペテルブルクは無理でしょう」(運動部記者)
 今年4月の日露首脳会談で、安倍首相はプーチン大統領に東京招致で支持を要請。大統領は「ロシアの3人のIOC委員に投票させる。他国の友人の委員にも働き掛ける」と表明した。サンクトペテルブルク誘致に乗り出すなら、日本に全面支援を要求しそうだ。


 中国の対アフリカ投資が象牙密輸横行の遠因に

 2012年に英国の空港で没収された象牙は50件、80.7キロとなり、10年の3.3キロに比べ、2年間で約25倍という記録的な伸びを示している。ほとんどの象牙が、アフリカから中国、ベトナムに向かう飛行機の経由地となっているロンドンで没収されているという。
 空港関係者は「アフリカで働いている中国人労働者が手っ取り早い金儲けのために、象牙やサイの角を小分けにして小包で本国に送ろうとして没収されるケースが、このところ増えている」と話している。
 12年8月9日には、これまでの最高となる15キロの象牙がヒースロー空港で没収された。ナイジェリアから広州、香港向けに発送され、「工芸品見本」とラベルが張られた荷物には、象牙の腕輪、ビーズ、表札、ペンダントなど数百点が、スキャナーを欺くためにアルミホイルで包んで隠してあった。闇市場での価格は1万5000ポンド(約250万円)と見積もられている。
 英当局は摘発のため特別チームを編成。さらに、アフリカや香港の税関員に訓練を行い、発送地と目的地での水際作戦の強化を図っているが、アフリカでの密猟そのものを防止する抜本策の必要性が指摘されている。
 絶滅の危険のある野生動物の取引は、厳しい規制にもかかわらず増大する一方で、市場規模は年間120億ポンドに上るとの推計もある。動物保護活動が盛んな英国内でも、「ニシキヘビがテムズ川で発見された」「禁止されている野生動物の肉がロンドン市場で売られていた」といった例が1995年以来、3万件余りも報告されている。


 温州商人が虎視眈々、五輪開催の東京の不動産

 日中関係の険悪化に業を煮やした日中友好諸団体は相互交流を深めようとイベントの開催に躍起だが、笛吹けど踊らずの状態だ。こんな折、毛沢東の出身地、湖南省のビジネスマンが東京で「日本湖南省発展促進会」を結成。これを機に湖南省政府幹部多数が来日、日本企業の投資促進を目的にジェトロなどを訪問した。
 続いて日本浙江省総商会が12月1日に東京で旗揚げ。超高級のシャングリラホテルにおよそ160人が参加し、主賓の鳩山由紀夫・元総理も駆けつけ祝辞を述べた。駐日中国大使館から経済担当公使が参加、日本側からは日中友好会館理事長、日中協会理事長、静岡県知事代理、日本中華総会会長らが参加した。
 この団体は、在日浙江省華僑(浙江商人)間の相互理解と協力により日本において新しい創業を含む商圏拡大と発展が目的という。ところが浙江省総商会長に選ばれたのは林立・温州総商会長兼務。この人選から真の目標が東京五輪を前にしての不動産投資にあることが浮かび上がる。
 温州といえば、泣く子も黙る「中国のユダヤ人」で、不動産投機で有名。豪放で、しかもえげつない手口で中国全土ばかりか世界各地に活躍し、特に米国、カナダで不動産を買い漁った猛烈ビジネス軍団である。
 しかし温州では地下銀行が猖獗(しょうけつ)を極め、シャドーバンキングの倒産などによって温州市内の景気は最悪、そのうえドバイでの不動産投機で大やけどを負った投機家が多数いる。浙江省全体も北部は寧波など上海経済圏だが、中部から南部(温州は最南端)の景気は息切れが激しい。だから東京五輪前に稼ぎ場を求めての団体結成ではないかと囁かれている。



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