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汚染水漏れが指摘されたH4エリアタンク
(写真/東京電力)
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■福島原発事故


原発汚染水漏れに2年余りもの不作為
遮水壁工事で鹿島が大成を出し抜いた謎

■原発事故後に予見されていた地下水問題を放置し続けた罪は政府と東電にある。急遽浮上した汚染水対策でゼネコンの提案合戦を制したのは、これまで及び腰だった鹿島の凍土方式だった──


 東京電力の福島第1原子力発電所事故による汚染水漏れは、放射能によって海洋を汚染し、一時は東京五輪開催に暗雲を招くほどの国際問題に発展した。原発の連続爆発事故後の早い段階で、地下水が原発に浸透する恐れが指摘されていたにもかかわらず、2年間余りも放置され続けてきた点で、政府と東電の無為無策の罪はなじられても余りある。当初、大成建設が先行していたと思われた遮水壁の工事は突如、鹿島建設が有利となり、ゼネコン関係者もいぶかしむ。
               ◇

事故直後に判明した
原発直下の地下水流



 経済産業省の原発事故収束対応室が8月8日に明らかにしたのは、福島第1原発には日量1000トンの地下水が流れ込んでいることだった。このうち400トンが原発建屋に流入し、残る600トンが原発内のトレンチ(配管や電線を通す地下の空間)に溜まった高濃度の汚染水に交じって海に流入していた。今年2月、基準値の5000倍もの放射能に汚染されたアイナメが同第1原発の専用港で見つかるなど、周辺の魚が汚染されている報告が相次ぐのは、恒常的に汚染水が地下を通じて海に流れ込んでいるからだろう。
 実は、こうした事態は事故後間もない民主党政権下の2011年6月には予見されていた。中堅ゼネコンの三井建設出身の馬淵澄夫・衆議院議員は事故直後の同年3月26日、菅直人首相の首相補佐官に命じられるとともに、福島第1原発からの放射能汚染の拡散を防ぐ「中長期対策プロジェクト・チーム」のリーダーに起用された。馬淵氏は、原発建屋を覆うカバリング工事や核燃料プールがむき出しになっていた四号機の耐震強化工事の対応に当たるとともに、真っ先に念頭に浮かんだのが地下水対策だったという。
 横浜国大工学部卒で三井建設でも設計にかかわってきた馬淵氏からすると、太平洋に面した崖を25〜30メートルも切り崩して地面をえぐるようにして建てた同原発は、まるで地下水に水没しているように思ったという。大地を削ったぶん、地下水位は地面すれすれにあると考えられる。さっそく政府と東電でつくる対策統合本部の中で東電に地下水対策を求めたが、当時は原子炉の冷温停止さえままならないうえ、損害賠償などにかかわる「東電救済スキーム」の行方が定まらなかったことから、東電首脳陣は乗り気ではなかった。言を左右してやりたがらない。
 馬淵氏が原発立地後のトラブル情報を調べさせると、案の定、地下水の水漏れの報告事例が数十件もあった。着工時に同原発で働いた東電OBたちは口々に「水との戦いだった」と打ち明けた。地下の浸透水層を調べてみると、阿武隈山系からしみわたってきた地下水が、福島第1原発の下を通って1日6センチから8センチの速さで海に流れていたことが分かった。このままでは原子炉の下に溜まっている高濃度の放射能汚染水と地下水が交じり合って、やがて海に到達する。計算すると、174日で海に流れることが分かった。


雲散霧消した
防水壁建築構想



 そこで馬淵氏が東電の武藤栄・副社長に命じたのは、原発の地下の四方(周囲約2キロメートル)に深さ30メートルの粘土製の「遮水壁」を設けることだった。これにより山側から流れてくる地下水から原発を隔離し、汚染水と地下水が交じり合って海に漏出することを防ぐことができる。原発爆発事故から3カ月後の11年6月上旬には、こうした遮水壁のおおまかな概要が決まり、受注に乗り気だった大成建設に見積もりを出させると、工費は約1000億円台とはじき出された。馬淵氏は武藤副社長にプレス発表をするように命じている。
 ところが、ここで東電が巻き返しにかかった。
 この当時、東電は原子力損害賠償法3条1項の「ただし書き」の規定を発動してもらい、事故の賠償債務から逃れようとしていた。それに対して財務省は財政支出の増大を恐れて東電に債務をかぶせようとする。数兆円という賠償費用、さらには廃炉費用の負担がどうなるかわからず、仮に全額を東電がかぶれば東電は経営破綻するという見方があった。
 武藤氏が作ったとされるこの当時の内部文書には「平成22年度の有価証券報告書の監査期間中であり、会計監査人から当該費用(1000億円レベル)の記載を求められる恐れが高い。市場から債務超過に1歩近づいたとの厳しい評価を受ける可能性が大きい」とある。だから馬淵氏に言われて遮水壁建設のプレス発表をするとしても、臨むスタンスは「あくまでも実現可能性調査としての設計着手であって、着工時期や費用は不明」と記載されている。用意したQ&Aは、記者に何を聞かれても「現時点では不明」「何とも言えない」とごまかすように記されていた。
 この直後、馬淵氏は首相補佐官から更迭され、政府の要職を去った。すると大成が提案していた遮水壁構想は雲散霧消してしまった。


大成の提案は退けられ
鹿島の凍土方式が採用



 それから約2年後の今年4月、東電が設けた地下貯水槽から汚染水が漏れていることが分かった。地下貯水槽は東電にとって低コストで水を溜めることができる切り札的な存在だったが、それがうまく機能していないことが明るみに出たのだ。さらに汚染水を入れた円筒形タンクからの水漏れも表面化し、いやいや取り組まざるをえなくなったのが、馬淵補佐官時代に提案されていた、四方を囲む遮水壁だった。
 自民党に政権交代し、安倍政権が長期政権化すると見込まれる。事業者の東電任せで後景に退いていた経産省も前面に出ざるをえない。すると、遮水壁に及び腰だったゼネコンが相次いで提案合戦をするようになった。大成建設が前から持論の粘土による遮水壁を提案すれば、もともと同原発の建設を請け負ってきた鹿島建設は別の方式の凍土方式の遮水壁を提案する。原発の四方に凍結管を配し、そこから冷却材を注入することによって地中の土を固める方式だ。さらに安藤ハザマは砕石を流し込んでセメントで固める方式を提案、清水建設も提案合戦に加わった。
 鹿島はもともと東北地方での土木工事に強いという定評があったうえ、福島第1原発の元請けだったにもかかわらず、事故直後は同原発関連の工事を引き受けることに、「非常に消極的だった。明らかに腰が引けていた」(統合対策本部にいた当時の高官)といわれていた。むしろ大成と清水がさまざまな提案に前向きで、事実、馬淵補佐官時代に遮水壁の見積もりを持ち込んだのも大成だった。
 大成が優位とみられていた中、政府が採用するのは大成の粘土方式ではなく、鹿島が提案した凍土方式になりそうだ。凍土方式は「技術的な課題が多く、長期間耐用できるか疑問」と経産省の汚染水対策委員会の中でも指摘されているにもかかわらず、大成の粘土方式を打ち破った。自民党の長期政権が確実視される中、鹿島が権益維持を狙って巻き返しを図った──遮水壁問題にかかわってきた民主党の有力議員はそうみる。
 それまで2年間も放置されてやる気がなかった遮水壁が急遽、取り上げられるとともに、やはり及び腰だった鹿島が前面に出てくることに「きな臭さ」を感じる向きは政界に少なくない。しかし、専門家が集まった経産省汚染水処理対策委員会ですら半信半疑の工法で十分に対処できるかは未知数だ。鹿島が採用されるプロセスを今後、検証する必要がありそうだ。
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