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 なぜか上機嫌の菅首相、自然エネルギーで解散?

 日に日に強まる自身への退陣要求をはねのけるかのように、菅直人首相が「延命の切り札」といわんばかりに持ち出したのが、脱原発・自然エネルギー推進という政策テーマだ。退陣どころか、永田町では「首相は秋頃に自然エネルギーをテーマに衆院解散・総選挙に打って出るのではないか」との噂すら囁(ささや)かれ始めた。
 菅首相は六月十四日の閣僚懇談で二〇一一年度第二次補正予算案の編成を指示。また、渋る執行部の背中を押す形で、なかば強引に会期延長も実現させた。
 しかも、六月十六日の脱原発を目指す超党派議員らの会合では、今春、国会に提出した再生可能エネルギー促進法案について、「この法案だけは何としても通さなければ、政治家として責任を果たせない。私の顔を見たくないなら、早くこの法案を通したほうがいい。これからはこの作戦でいこうかと思う」。
 これに対し、経済界や原発利権にあやかってきた自民党議員らは強く反発しているが、首相はそうした再生可能エネルギーをめぐる対立構図を楽しむかのように、周辺にこう語る。「俺は今の政治に挑戦するんだ」。
首相はことによると、再生可能エネルギーを軸にした政界再編を狙っているのかもしれない。六月二十一日には自身のブログでも賢明な登山家になぞらえて、困難な時はリスクを賭さずに迂回して山頂を目指すと、意味深長に書いた。八月も突破。九月の訪米も自分の手で……。
 で、自民党内からもこんな声が聞こえてくる。「菅首相をあなどってはいけない」(石破茂・政調会長)。


 ポスト菅の有力候補、野田財務相の本音は菅嫌い

 内閣不信任案が可決寸前の事態となり、“退陣表明”に追い込まれた菅直人首相と「ポスト菅」の有力候補・野田佳彦・財務相(写真)。バックに財務省がつき、増税志向の財政再建論者である点は共通だが、それ以外は多くの点で対照的だ。
 市民運動出身の菅首相の思想はリベラル。目立ちたがりやのパフォーマンス好きで、政治手法は、細かいことにまで口を出しては「指示」を乱発するトップダウン型。そのくせ、うまく物事が進まないと他人に当たり散らし、自分は責任を取らないから、周囲は敵だらけだ。
 これに対し、松下政経塾の一期生で父親が元自衛官の野田氏の思想は保守で、九条を含めた憲法改正が持論。政治手法は、司々(つかさつかさ)に任せて意見を吸い上げて方針を示す「ボトムアップ」形で、性格は温厚だ。パフォーマンスを好まない地味な存在で、「増税志向」という政策面で批判する議員はいても、小沢氏を支持するグループを含め党内に敵は少ない。
 実は、「菅vs.小沢」の一騎打ちとなった昨年九月の党代表選の最中に母校の船橋高校OBらが地元で開いた財務相就任祝賀パーティーで野田氏は、身内ばかりという気安さからか、「本当は菅さんをそんなに好きじゃない」、「自分が出るわけにもいかないから菅さんを応援している」と本音を漏らしている。
 野田氏が代表選で菅首相を支持したのは、財務相に起用されたことに加え、「反小沢」で利害が一致したから。この点に関しても、最初は小沢氏に取り入って影響力の維持を図り、途中から小沢叩きに転じた菅首相と、一貫して「反小沢」の立場を明確にしてきた野田氏とは対照的だ。


 駆け込み実績狙う? 北沢防衛相の独断発言

 末期症状の菅直人政権で、菅首相のご意見番ともされる北沢俊美・防衛相の突出した言動に省内の戸惑いが広がっている。
 アジア太平洋の外務・国防担当閣僚らが集まり、六月三日にシンガポールで開かれた「アジア安全保障会議」で北沢氏は「南西諸島に物資や機材を集積し、国際災害の拠点にする」とぶち上げたからだ。さらに福島第一原発の事故を受けて「ロボット大国と自負していたが、活用する手だてがなかった。無人機やロボットを積極的に活用する」と「自衛隊ロボ」の保有まで公言した。
 布石はあった。五月三十一日の記者会見でも同じ発言をしている。この時、防衛省幹部は「驚いた。災害派遣や装備の担当課も『寝耳に水』と言っていた。大臣の独断と考えるほかない」と驚きを隠さなかった。
 前出の幹部は「昨年十二月に閣議決定した『防衛計画の大綱』に出てくる『南西防衛』は、自衛隊による対中国包囲網を整備すること。軍事力の活用方法を示したもので、災害派遣とは関係ない。まして原発のない沖縄の近くに原発災害に使うロボットを置いてどうするのか」。
 北沢氏は二〇〇九年に民主党政権が誕生して以来、ただ一人同じ大臣職にいる。「俺が得意なのは政局を読むこと」と公言して憚らず、自民党が国会提出した内閣不信任案に対し、菅首相に辞任戦術を進言して否決に持ち込んだのは公然の秘密。
 政界工作で実力を発揮する一方で、防衛大臣としての成果は乏しい。沖縄の普天間基地移設問題では足踏みを続け、解決の道筋は見えないままだ。そこで菅内閣の末期に、駆け込みで実績を残そうとしたというのが省内のもっぱらの見方だ。


 カギは決断力と実務能力、経済界内の「仙谷待望論」

 東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故への対応への不満で、経済界は完全に菅直人首相を見放した。首相が就任した昨年六月には全面支持の姿勢を強調した米倉弘昌・経団連会長(住友化学会長)も、最近のインタビューでは「早く辞めなければ日本沈没」と酷評した。
 そんな中、財界人の間では仙谷由人・官房副長官(写真)への期待値が高まっている。官邸が何とか持ちこたえたのは「仙谷氏が官房副長官になったことが大きい」(財界長老)というのが経済界の一致した見方。そもそも国家戦略相として経済界と歩調を合わせて新成長戦略やインフラ輸出をまとめ上げたことで、経済界からは「実務処理能力に優れている」(大手商社首脳)と評価されていた。
 仙谷氏が、原発事故の賠償責任をめぐる論議でも「東電国有化」など過激な主張を取らず、東電の経営を維持する立場を堅持した点も、経済界の信頼の一因。金融機関の債権放棄が国による東電支援の前提と公言し、金融市場を混乱させた枝野幸男・官房長官が「弁護士感覚で事態をややこしくしている」(経済団体幹部)と不評を買ったのとは対照的だ。この幹部は「仙谷氏は同じ弁護士でも現実的」と持ち上げる。
 言動がやや粗雑で波紋を呼ぶことが多い仙谷氏に眉を顰める向きもいるが、政界とのパイプが太い財界人は「小沢一郎・元民主党代表や亀井静香・国民新党代表を除けば、大胆な政治決断ができる政治家は仙谷氏だけ」と言い切る。さて仙谷氏が再度の大胆な決断をしたら……。


 ツイッターで脱退宣言、米倉経団連の内憂外患

 一方、首相をこきおろす日本経団連の米倉弘昌会長は、定時総会を経て在任二年目に突入した。副会長陣の半数に当たる八副会長を自ら入れ替え、就任初年度の助走を終えて本格的に「米倉カラー」を打ち出す段階を迎えたはずだった。
 しかし、レームダック(死に体)状態の菅直人政権はもとより、与党・民主党との距離は広がるばかりで、東日本大震災の復興構想に提言も取り入れられない現実は、経団連の政治力、政策実現能力の喪失を意味する。加えて、身内のはずだった会員企業も、楽天の三木谷浩史・会長兼社長から短文投稿サイト「ツイッター」を通じた「そろそろ経団連を脱退しようかと思いますが」とのTつぶやきUも飛び出した。
 米倉会長は「会員の一社一社のことに、いちいちコメントしてもどうしようもない」と無視を決め込むが、三木谷氏のツイートは、経団連の原発事故やその後のエネルギー政策への姿勢を批判すると同時に、規制改革などの政策実現に向けた実現力のなさに不満をぶつけたものだった。
 経団連の政府・与党離れはもはや修復不可能なレベル。実際、経団連総会後のパーティーには野党、自民党の議員が大挙して押し寄せたのに対し、民主党議員の姿は数えるほど。さらに米倉会長は、六月七日開催の、菅首相が議長を務める政府の新成長戦略実現会議を欠席、政権に見切りをつけたと取り沙汰された。
 そんな中、菅首相は、六月十二日に開いた自然エネルギーの普及に向けた有識者会議のメンバーにソフトバンクの孫正義社長を起用するなど、経団連を寄せ付けない。これでは官民一体の復興など覚束ない。


 新SM比率二〇〇%切る? 生保の支払い能力低下

 生命保険業界の保険金支払い能力に“黄信号”が点灯している。金融庁がソルベンシーマージン(SM、保険金支払い能力)比率の算出方法を厳格化し、これを受けて生保各社は五月下旬の二〇一一年三月期決算発表時に新基準のSM比率を公表。現行基準から四〇%程度減らした。
 新基準のSM比率は保険会社の突発的な破綻を防ぐことを目的に導入。特に、資産運用の失敗による破綻事例が国内外で多く出ていたため、国債など安全資産に比べて価格変動の激しい株式や不動産の保有リスクを厳格化した。この結果、日本生命保険のSM比率が現行基準の九六六・二%から約四五%減の五二九・一%になるなど、リスク性資産を保有する生保各社は軒並み減少した。
 中でも三井生命保険は七〇四・八%から四二三・〇%に、朝日生命保険は六〇二・六%から三六一・二%に減少。金融庁が業務改善命令を出す水準に接近した。生保各社は「(支払い能力を示す)物差しが変わっただけであり、財務体質は現行通り問題ない」(大手生保首脳)と反論するが、保険負債が増える中でリスク性資産の圧縮が進まなければ一段とSM比率が悪化する恐れもある。
 国際的には財務健全性の規制を強化する流れにあり、欧州では「ソルベンシー2」と呼ばれるSM比率の新規制を議論中。株式などの保有リスクをさらに厳格に見積もる方針だ。金融庁も二〇一四、一五年のIFRS(国際財務報告基準)導入に合わせて、ソルベンシー2を踏まえた厳格な基準に見直すといわれている。
「一部の生保会社は二〇〇%を割り込む」(生保関係者)との厳しい指摘もあり、「そういう会社を中心に、金融庁が主導して業界再編を行う可能性がある」(同)とささやかれている。


 原発輸出どころではない関西電力のお家の事情

 東京電力・福島第一原子力発電所の事故を契機に、官民一体で受注したはずだったベトナムの原発建設プロジェクトが揺らいでいる。六月一日、同国の次期国家主席に内定しているチュオン・タン・サン共産党書記局常務が来日したが、菅直人首相との会談では原発について何も触れられなかったからだ。
 実はこの首脳会談をめぐって官邸では、事前に経済産業省と外務省のツバ競り合いが展開されていた。原発輸出を所管する経産省は五月に鈴木正徳・製造産業局長を訪越させ、プロジェクト推進に変更がないことをアピール。首脳会談の声明文には「原発の安全性を確保して推進」という文言が載るはずだった。
 前経産事務次官の望月晴文・内閣官房参与も後押ししたが、これに外務省出身の河相周夫・内閣官房副長官補が“待った”をかけた。「時期が良くない」という主張に菅首相も同調、結局、経産省が用意した文言は全文削除となったのである。
「首相はしょせん市民運動出身の政治家。本音は反原発だ」と経産省幹部は苦り切るが、対照的にベトナム側の原発建設への意欲は根強い。サン書記局常務は滞在中、密かに北海道電力の最新PWR(加圧水型軽水炉)である泊三号機を視察したほど。
 視察の意味は、ベトナム原発の炉型が東電の推進するBWR(沸騰水型軽水炉)からPWRへ転換される布石といえ、その場合、今後の原発輸出はPWRを建設・運転してきた関西電力が担うことになる。実際、オール電力で旗揚げした国際原子力開発の武黒一郎社長(元東電副社長)は近く辞任し、後任選出は関電に要請されているという。ところが、肝心の関電からは「政府にやる気がないものを押し付けられても……」と困惑の声しか聞こえてこない。
 その関電は東電の原発事故の余波で、定期検査を終えた自社原発が再稼働できず、夏場に向けて供給不安に陥っている。八木誠社長(写真)は九日、企業や家庭に電力消費の一五%削減を要請したが、大阪府の橋下徹知事に「関電の言い分には乗らない」と突っぱねられた。というのも、橋下知事は関西七府県で組織する関西広域連合を軸に省エネを計画して今夏の需給見通しを関電に尋ねたが、「答えられない」と袖にされた経緯があるからだ。
 八木社長は、辞任する東電の清水正孝社長から電気事業連合会会長を引き継ぎ、青森県に再処理工場を建設中の核燃料サイクルも推進する立場になった。今や原発サイトに使用済み核燃料が最も溜まっているのは関電で、再処理工場が竣工しなければ原発は止まってしまう。自社の安定供給に大わらわで、とても原発輸出どころの騒ぎではない。他電力からは「関電に東電の代わりが務まるのか」と不安の声も上がっている。


 全面可視化で頭を抱える検察幹部

「生ぬるいぞ! それじゃあ、否認事件は立件できないじゃないか!」
 検察改革の一環として地検捜査に採り入れられた「全面可視化」のDVDを見た検察幹部は、あまりの“弱気”の取り調べに、思わずこう声を上げたという。
 全面可視化とは、捜査の全過程を録音録画することを指す。証拠を改竄してまで厚労省元局長を罪に陥れようとした大阪地検事件を機に、「法務・検察」は江田五月法相の指示を受けて、全面可視化の試行に踏み切った。その第一弾が、六月十三日に起訴した不動産ファンド元役員の特別背任事件。逮捕直後に「言い分」を聞く「弁解録取」の場面から始まり、約二十日間の聴取の様子がすべて収録された。
 検察捜査といえば、特捜部が作成したシナリオに沿って供述調書を取り、そのシナリオを拒否すれば、時に暴行、壁に向かって何時間も立たせ、罵詈雑言を浴びせかけたかと思うと情に訴えるなど、「密室捜査」を利用して、それこそ何でもやるのが常識だった。
 全面可視化ではその手は使えない。初試行の捜査でも、検事が供述を誘導しようとすれば、「検事さんはそう思うかもしれませんが、私は違うと思います」と元役員が述べるなど、言い分は認められ、無理な供述調書が作成されることはなかった。
 だが、その分、捜査は手ぬるくなる。見立て(シナリオ)を否定された検事はカメラを意識して、強く出ることがない。元役員の供述通りに調書の記載の追加や訂正に応じていた。第一弾なので、検察は容疑者が罪を否認する案件ではなく、罪を認めた案件を選んだ。立件が可能なので、容疑者の言い分を認めた。
 だが、現実の特捜捜査は否認事件が大半。政治家や高級官僚といった、権力を持ち知恵も能力もある連中が相手なので、これまでは否認を覚悟で捜査に着手。「あの手この手」で責め立て、自白調書を取ったうえで起訴に持ち込むのが常だった。
 しかし、別件逮捕や長期拘留、家族への圧力といった「あの手この手」を封じられ、カメラの前で「さぁ、罪を認めなさい」と優しく“下手”に出ても、罪を認める者はいない。
 検察改革の要望はわかるが、それに沿うと捜査ができない……。検察幹部の悩みは深い。


 経済同友会代表幹事の長谷川氏に「幻滅」の声

 四月二十七日に期待されて就任したばかりの長谷川閑史・経済同友会代表幹事の周辺から「幻滅」の声が漏れ始めた。武田薬品工業社長を辞めぬまま二足の草鞋を履くという姿勢には当初から懸念の声が上がっていたが、就任後に見せた取り組みの数々に「真面目にやる気があるのか」(同友会OBの一人)と先行きをいぶかる声も出ている。
 まず関係者を唖然とさせたのが、同友会の代表幹事室にテレビ会議装置を持ち込んだことだった。「社長業をやりながら財界活動もということらしいが、さすがに同友会内で顰蹙を買った」(大手紙記者)。
 しかも、代表幹事は数人のベテランスタッフを自社から呼び寄せるのが通例だが、長谷川氏が連れてきたのはまだ三十代という若手社員一人。「これでは先が思いやられる」(前出の同友会OB)。
 もともと長谷川氏は、硬派テレビプロデューサーだった、お気に入りのブレーンA氏を起用したかったようだが、「AさんのT身体検査Uの結果に問題が多く、断念した」(通信社キャップ)という。
 もちろん、代表幹事として敏腕を発揮しているのであれば、こんな雑音も出てきはしまいが、これまでのところは「実際に何をしたいのか掴めない」(前出の大手紙記者)。
 そんな長谷川氏が週に二回ほど出社する武田薬品にも大騒動が持ち上がっている。主力の糖尿病治療薬に欧州各国が発がん性の副作用のリスクを指摘し始めたほか、米国販売を予定していた肥満防止薬には米FDA(食品医薬品局)が難色を示し、そのめどが立たない状態。財界の若手論客と持ち上げられる長谷川氏の二兎追い戦略は、早くもきしみ始めているようだ。


 浜岡原発停止の背景に基地汚染恐れた米の要請

 菅直人首相が静岡県の浜岡原発を廃炉にするよう中部電力に要請したことの背景に、米政府の圧力があったことがわかった。
 菅首相が五月の連休明けに発表した浜岡原発の停止要請は、事前調整もせず極めて唐突だったが、ルース駐日米大使は事前に、浜岡原発の恒久停止を「ホワイトハウスの要望」として官邸に強く求めたという。
「米政府は福島第一原発事故を見て、東海地震、東南海地震が発生すれば、浜岡原発に巨大津波が押し寄せ、再び電源喪失、水素爆発、炉心溶融に陥る事態を恐れた。民主党政権の危機対応能力も低いと判断した」(消息筋)
 米政府は、浜岡原発が放射能漏れ事故を起こすと、横須賀の米海軍基地が汚染されて将兵に危機が迫り、第七艦隊の機能が麻痺することを恐れた模様だ。原子力空母ジョージ・ワシントンなどは出港を余儀なくされ、中国軍の日本近海での活動が活発化する。
 福島第一原発事故の処理では、日米間の不協和音が見られ、菅内閣は米国の専門家を官邸に常駐させるよう求めたルース大使の要請を無視。結局、原発技術では世界最高峰の米側のアドバイスを受けず、水素爆発や炉心溶融を招来した。情報公開もお粗末で、米側は情報を米側に通知しない菅内閣への不信感を強めた。
「米政府は事故後、福島第一原発から八十?圏への立ち入りを避けるよう米市民に通達したが、事故が拡大すれば米国人の日本退去勧告も検討していた」(日米関係筋)といわれる。


 金融庁の検査に怯える各農協の組合長

「金融庁の検査官から経営方針についていろいろと聞かれると思いますので、事前に十分勉強しておく必要があると思っています。農水省に比べ金融庁の検査は大変厳しいと腹をくくっています」(某農協理事)
 こう農協幹部が心配するのは、早ければ七月から実施される農協への金融庁検査である。
 これまで農協の検査は都道府県と主務官庁である農水省が所管してきた。しかし、昨年六月の閣議で、預金者保護とガバナンスの徹底を図るため、金融庁を加えた「三者要請検査」に移行することが決まった。対象になるのは、地域の金融システムや地域経済に与える影響が大きい「貯金量が一千億円以上の農協」「貯金量が当該都道府県内農協の貯金量の平均以上の農協」、そして「不正・不祥事の再発が認められる農協」だ。
 金融庁の検査は、都道府県の要請を受け各地の財務局が実施することになるが、問題は立入検査終了時に行われる役員面談である。
「実際にヒアリングを受ける代表理事組合長は地元の名士が就いているケースが多く、金融について疎い人も少なくない。突っ込んだ質問を浴びせられれば立ち往生してしまうかもしれない」(農協関係者)と危惧されているのだ。このため、予行練習を兼ねて、系統金融機関内で金融庁検査を想定した「模擬ヒアリング」が行われているものの、組合長の心配の種はつきない。
 一九九八年には一千八百組合を超えていた農協も、合併・再編を経て七百を切る寸前まで減少。一方、合併に伴い一農協当たりの貯金量が拡大し、ペイオフ解禁もあり、金融システム上の影響は高まっている。


 人工衛星生産を倍増、三菱電機が見せる強気

 三菱電機が、二〇一三年三月末の完成をメドに鎌倉製作所の人工衛星生産棟を増築、現行の年間生産能力四機を八機に倍増する。
 同社の宇宙システム事業部では「今後さらに成長が見込める市場に、評価を受けてきた立場として一段の注力をというのは当然でしょう」と言う。今回の人工衛星生産倍増計画を契機に、宇宙関連事業で二〇二〇年度には、総売上高一千五百億円を目指す。「当社の世界に冠たる部門にしたい」としている。
 しかし「本当に?」と思わざるをえない点もある。同社の売上高規模は三兆六千億円規模。一千五百億円は〇・〇四%水準にすぎない、それで「世界に冠たる」とはいかがなものなのか。当の宇宙システム事業部のスタッフも、「そう言われれば、〇・〇四%という比率は、たとえていえば宇宙を漂うゴミ程度かもしれませんね」と言う。しかし、間髪をいれずに次のように語る。
「今後は海外向けの商用衛星に一段の力を注いでいく。人工衛星に求められる電機関連の技術は極めて広範であり、超高度なものが要求される。この分野に人・金・物の経営資源を積極的に投下するということは、他の事業分野の質的向上にもつながっていく。指摘されるような雑音もあるだろうが、人工衛星分野で世界での地位を確たるものにすることで、当社の技術力のT旗印U、ステータスにしたい」
 あくまでも強気の姿勢のようだ。


 異端児スカイマークが東証一部上場狙いで増資

 異端児として知られる西久保慎一社長(写真)に率いられるスカイマーク。同社が東証マザーズに上場したのは二〇〇〇年五月のことだったが、以来、スカイマークは低空飛行が続き、赤字決算の期も多かった。
 その風向きが変わったのはリーマン・ショック後だ。世界的な景気後退の中の節約志向の高まりで同社の「低価格路線」がウケに入って、業績が向上。特に前期決算の前年比伸び率は驚異的だった。同社が一段と注目されたのは、JALやANAも導入していないエアバスの超大型機、A380を昨秋、発注したからだ。
 昨年末の講演の際、西久保氏は「新株発行は当分予定がないが、A380導入までファイナンスをしないわけでもない。東証一部への市場変更も予定しており、その時にファイナンスしたいと思っている」と語った。
 同社が予定する、A380の機材を使っての欧州線就航は二〇一四年。向こう三年のスパンを考えると、東証一部上場に備えた増資などのファイナンスはまだ先かと思われたが、去る五月に公募増資を発表した。早々に手を打ち始めたのは、海外も含めた投資家からすれば、マザーズ市場よりも東証一部のほうが安定的で、株価の値動きもマザーズより小さくなって安心感が増すから。
 さらに、ANAが出資する格安航空、ピーチ・アビエーションが今年度下期から「半額運賃」を武器に国内線に参入し、シンガポール航空が長距離線の格安航空設立準備に入ることなど、低価格が武器のスカイマークをめぐる競争環境が激化してきていることもあるのだろう。
 西久保氏は「東証一部への移行とA380機導入の件はまったく別々で動いている」と語っていたが、自らの持ち株比率も株の放出で下げ始め、着々と東証一部に照準を合わせているようだ。


 ドコモvs.ソフトバンク、「接続料」めぐる泥仕合

 NTTドコモとソフトバンクが、携帯電話の「接続料」をめぐって泥仕合を演じている。互いに一歩も退かず、決着は総務省の電気通信事業紛争処理委員会という「お白州」に。
「接続料」は、異なる通信事業者間で通信が行われた場合に発信側が着信側に支払う回線使用料。各社がそれぞれ設備コストなどから算出し設定。双方が相殺して精算する。
 ドコモは常々「ソフトバンクの接続料が高すぎる」として算定根拠を求めていたが、ソフトバンクが情報開示に応じないため、五月十八日、紛争処理委に斡旋を申請した。当初の設定額どおりなら、二〇一〇年度はドコモが百五十億円程度の支払い超過になるという。
 これに対し、ソフトバンクは六月九日、加入者数が少ないうえ使用する周波数帯の違いで設備投資が増えることを理由に「接続料が高くなるのは当然」と、ドコモの主張を一蹴。逆に「ドコモこそ接続料に端末の販売促進費などを含んでいるため割高だった」と過去の過払い分の返還を求めて斡旋を申請した。
 ただ、双方とも「接続料」の算定根拠は「企業秘」。真相は藪の中だ。
 このケンカ、実は意外に根は深い。今やスマートフォンが主戦場となっているモバイル市場は、「iPhone」を擁する「挑戦者」のソフトバンクが圧倒。十四カ月連続で月間純増数トップの座を維持している。一方のドコモは出遅れが響き、五月はイー・アクセスにも抜かれ四位に転げ落ちてしまった。「このままではメンツが立たない」というわけだ。
 利用者そっちのけのツバ競り合いは、どちらに軍配が上がることか。


 薬漬け、賄賂専門業者…… 複雑怪奇な中国医療事情

 中国では医療制度改革が新たな国家目標だが、最近は医療を利用した金儲け主義の横行が目立っている。
 先日、中国湖北省武漢市で、医師への賄賂を専門に行う企業が摘発された。日本でも医学界の賄賂は珍しいことではないが、賄賂専門会社というのは聞いたことがない。
 摘発されたのは、医療投資管理会社の名目で活動していた武漢国杏医療投資管理公司。表向きの業務は病院などへの投資や管理、バイオ技術や医療機器の研究開発だが、実は医師に対する賄賂が専業。クライアントの依頼で、湖北省や湖南省の医師を視察・研修の名目で上海、蘇州、広州、北京などへ観光旅行させていた。依頼したのは医療用ソフトや備品などを扱う会社だった。自社で動いて発覚する危険を避け、別の会社に依頼する巧妙な手口。内部告発がなければ発覚しなかったという。
 中国の事情に詳しい某医師は話す。
「中国では、医師のほとんどが医学校を卒業後に就職した病院で一生涯勤務するため、基本的に病院間の人事交流はありません。歯科を除き、勤務医が日本のように診療所を開業することも少ない。勤務医の給与は安いため、患者からの謝礼、薬品納入業者からのバックマージン等が公然と存在しているそうです」
 さらに、薬漬けによる金儲けも横行している。中国衛生部の発表では、二〇〇九年に中国で使用された点滴はなんと百四億本。単純計算では中国人一人当たり八本という馬鹿馬鹿しい計算になる。患者は病院に行くたびに点滴をされ、特に抗生物質が濫用されているという。
 日本と似てみえるが、貪欲さはあちら側に軍配が上がるようだ。


 脱原発で割りを食う独エネルギー各社

 ドイツのメルケル首相(写真)は昨秋、シュレーダー前政権の脱原発政策を見直し、原発の稼働延長に踏み切った。「代替エネルギーの確保に時間がかかる」というのが表向きの理由だが、同首相が率いる中道右派政権がエネルギー大手を含む産業界を支持基盤としている事実と関係があることを疑う人はいなかった。しかし、福島原発の事故が起きると、メルケル首相は高まる一方の反原発の世論に抗し切れず、二〇二二年までの原発全廃を決めた。
 たまらないのは、原発を運営しているRWE、エーオン、EnBW、バッテンファルのエネルギー大手四社。専門家の試算によると、ドイツの原発十七基のうち即時廃止が決まった八基による収益は年十五億ユーロ(約一千七百億円)。全十七基では同四十億ユーロ(約四千六百億円)となっている。これがすべて二二年までに消えてしまう。
 また、原発廃止に伴って化石燃料への依存度が増せば、二酸化炭素(CO2)排出権を購入せざるをえなくなる。一三年以降、四社で年四十億ユーロ近くを負担する必要が出てくるとみられており、経営を圧迫するのは必至だ。
 エネルギー会社の将来の展望に不透明感が増す中、四社の株価は急落。特にエーオンとRWEの株価は東日本大震災が起きた三月中旬以降、二〇%も下落。これに伴いドイツでは、戦略企業であるエネルギー大手が外資の傘下に下ることへの懸念が強まっている。市場では、仏エネルギー大手GDFスエズやロシアの天然ガス独占企業ガスプロムが強い関心を示していると伝えられている。


 部品供給不足で再認識、米国経済に積み重なる不安

 先に発表された米国の五月の雇用統計を見ると、失業率が九・一%と前月から〇・一?上昇。非農業部門就業者数は五万四千人増と、予想(約十七万人増)を大幅に下回る結果となった。ウォール街のエコノミストらは「影響は年内に収まるだろう」としながらも、「東日本大震災で日本からの部品供給が滞り、製造業、特に自動車産業が工場を一時閉鎖したことが影響した」と指摘する。
 これを裏付けるように四月の貿易統計では輸入が〇・四%減の二千百九十二億四千万?となり、特に日本からの輸入は八十八億二千八百万?と二〇一〇年五月以来の低水準で、前月からの減少幅(三十億一千九百万?)は統計上過去最大を記録した。品目別では自動車・同部品、工業用原材料の落ち込みが目立った。
 米連邦準備制度理事会(FRB)が発表した六月の景況報告(ベージュブック)も、全米十二地区のうちニューヨーク、フィラデルフィア、シカゴ、アトランタの四地区で景気が減速したとし、その理由としてやはり「部品供給不足で自動車生産が落ち込んだ」点を挙げている。
 米経済の不安要因はこれ以外にもある。その一つが、赤字国債の発行上限の引き上げをめぐる与野党の攻防だ。八月二日までにこの上限が引き上げられなければ政府機能は一部停止に追い込まれる。スタンダード・アンド・プアーズなど有力格付け機関がそろって、現在最上級の米国債の格付けを引き下げ方向で見直すと発表したのも、こうした米国の財政赤字への懸念からだ。


 米中ネット検閲“戦争”で米国が開発中の新システム

 チュニジアの「ジャスミン革命」に影響されて、中国の民主化を求めるデモの呼びかけが今春以降、ネット上で流布。内外の注目を浴び、参加者が路上に集まったが、中国当局は厳戒態勢を敷いて封じ込んだ。その後ネット管理はさらに強まり、多くの海外サイトが閲覧できず、T不穏Uな文言の入った書き込みは打ち込めなかったり、すぐ削除される。
 中国のネット検閲を回避するツールとして使われてきたVPN(一般回線での通信に専用線同様のセキュリティーを保障するために開発された技術)を当局がT封鎖Uするケースが広がっている。VPNはビジネス用途で広く使われているが、中国ではネット検閲回避ツールとして一般のネットユーザーにも普及している。中国当局はVPNの取り締まりを強化、中国で人気があるVPNプロバイダー数社のウェブサイトが中国本土から閲覧できなくなった。
 さらに、VPNの使用自体に支障が生じている。中国の最高研究機関である中国科学院でも、VPN利用によりネット接続がダウンする事態が発生。同院は「一部ユーザーが検閲回避技術を利用して海外の違法サイトに接続していることが判明。ネット警察に察知されたため、中国科学院のIPアドレスが一時的にブラックリストに入れられた」と説明している。
 これに対抗して、米国は「影のインターネット」と呼ばれる通信システムを開発中だ。米国務省は、持ち運び可能なスーツケース型無線ネット基地局の開発費として二百万?(約一億六千万円)を予算化した。
「影のインターネット」システムはこうしたケースへの対応を想定したもので、既存とは異なる新たなネットワークを速やかに構築することが可能となるという。


 三峡ダム決壊の恐れを報じた英「エコノミスト」

 世界最高水準のメディアの一つとされる英誌「エコノミスト」が、「三峡ダムに決壊の恐れ」と報じて物議を醸している(六月十八日号)。
 長江のほぼ真ん中、重慶と武漢の間に位置する三峡ダムは高さ百八十五?、水位が百七十五m。六十五万kwの発電機が二十六基並び、二〇〇六年から発電が開始された世界最大規模の水力発電所だ。
 この三兆円を投じた世紀の大工事のため、上流域の農民ら百十三万人が雀の涙ほどの保証金で強制的に移住させられ、多くが重慶に流れ込んでスラム街があちこちにできた。
 生態系の異変や水質汚染などの環境破壊、さらには地下水脈の流れが変わった空洞部分に水が流れ込んで地滑りし、地盤沈下を引き起している。それも激震を伴うため有感地震だけでも四百回以上起こり、一説には四川省地震の遠因ともいわれている。地質学者も、これほどあちこちで山崩れが起きるとは想像していなかったらしい。
 ところが問題はまだこれからなのだ。昨夏、豪雨が続き決壊の恐れが出てきたため、貯水した水を大量に放流した。そのために下流域が浸水してしまったのだ。今年は六月まで干ばつで流域七百万?が被災した。果たして夏はどうなるのか。
 工事前から科学者が反対したのは、もしダムが決壊すると下流域で数十万人が犠牲となることだった。党中央部は密かに対策チームを設置し、そうしたシミュレーションを繰り返してきた。近く下流域三十万人に強制退去、移転させるという対策が国務院でも温首相出席のもとで討議されたと「エコノミスト」誌は報じた。 ダムが決壊すれば湖北省武漢を水浸しにし、南京を襲うばかりか、おそらく一千四百km下流の上海にまで山津波を運ぶと予測されている。


 ついに秒読み段階に入った中国の不動産バブル崩壊

 中国の不動産価格が公式統計で五%前後下落したと、新華社が公式に報じた。過去一年間で四回も利上げし、預金準備率を六回上げ、強引な金融引き締め政策を講じた成果がようやく現れてきたようだ。
 大都市の外国人居住用賃貸マンションは今や四割引きでの更新が常識で、売りマンションは空き室だらけ。北京だけでマンション在庫が十万戸(六月現在)といわれる。デベロッパーの株価も急激に下がりつつあり、バブル崩壊は秒読み段階となった。
 GDPの実に三〇%を不動産が占める中国。当局はなんとかハードランディングを回避させ、金融機関の不良債権の爆発を防ぐことに躍起だが、銀行自体がダミーを通じて不動産投資を繰り返してきたこともあり、防御にも限界がありそうだ。
 この状況に戦々恐々となっているのは中国人だけではない。ロシア、中東、中南米、アフリカに悪影響が及び始めている。建材の原料、鉄鉱石、原油、ガスなどを中国へ大量に輸出してきた国々だ。
 現実にロシアでは木材、原油関連の落ち込みが激しく、ブラジルなど中南米では鉄鉱石輸出が減じ、豪州は石炭、鉄鉱石、ガス不振で通貨価値が下落した。中国の大規模投資で経済成長著しかったアンゴラ、スーダン、ナイジェリアにまで不況風が吹き始めた。日本でもすでに東日本大震災以後、自動車関連部品、精密機械部品などが中国工場で生産できず、コマツの株価下落がそのことを象徴しているが……。







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