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 再起を期して動き始めた安倍元首相にKYの評

 自民党の安倍晋三・元首相(五六=写真)が再起に意欲的だ。五月十三日、二十年前に他界した実父の故安倍晋太郎・元外相をしのぶ会で挨拶した際、「菅直人首相には震災復興も原発事故対応も任せられない」と菅政権を酷評。その上で、父・晋太郎氏が自民党総裁選に二度敗北したことを引き合いに「安倍家としては一勝二敗。(自分が総裁選に勝つことで)これを三勝二敗にしたいとは言わないが……」と語ってみせた。
 安倍氏といえば、首相在任中に体調を崩したことを理由に突然辞任した経緯がある。しかし、最近ではジョギングにも励んでおり、周囲には「首相時代よりも俺は元気だ」とアピールしている。
 そんな安倍氏の心境について、自民党議員の一人はこう解説する。
「安倍さんとしても、あんな中途半端な辞め方では不完全燃焼だろう」
 安倍氏が当面の戦略の中心に置くのは、衆院での内閣不信案提出だ。そのため、もともと肌が合わない谷垣禎一総裁に対しても、「内閣不信案を必ず提出すべきだ」としきりにけしかけている。これには大連立を画策する森喜朗・元首相ら自民党長老たちを牽制する狙いもある。
 ただ、現状では民主党から多数の造反がない限り不信任案は成立しない。その鍵を握るのが小沢一郎・民主党元代表だが、安倍氏も「小沢氏の力は必要だ」と周囲に語っている。
 もっとも、自民党内では安倍氏を慕う議員からもこんな声が聞かれる。
「安倍さんの復権はちょっと早すぎる。世論は安倍氏が突然政権を投げ出したことへの批判や嫌悪感は消えていないのだから」
 相変わらずのKYということか。


 民主党の次々期エースは細野豪志・首相補佐官

 「菅降ろし」一色の政界で、菅直人首相が今、一番頼りにしている人物は細野豪志・首相補佐官というのが首相官邸関係者の一致した見方だ。
 菅首相の疑心暗鬼から関係がギクシャクしている仙谷由人・官房副長官も細野氏に関しては「細野君は原発事故処理をめぐる事務能力で米側の信頼が最も厚い。ポスト菅が誰になるにせよ、次の次は細野君で決まりだ」と高い評価を下している。
 細野氏は、思い通りに事が運ばないとイラついて周囲に当たり散らす菅首相にも一向に動ずることなく直言する。菅首相もそういう細野氏に信頼を置き、一日に最低一回は細野氏を執務室に呼び、相談を持ちかけたり、アドバイスを受けている。
 一時期、細野氏は小沢一郎・民主党元代表に近いといわれ、小沢氏も常に側に置いて重用していた。それでも枝野幸男・現官房長官は当時、「細野氏は決して親小沢ではない」と語っていたが、その通りになった。
 細野氏は以前、タレントの山本モナさんとの路上キス現場を写真週刊誌に掲載されたことがある。しかし、そのスキャンダルの後も党の組織、企業団体対策委員長や幹事長代理など要職を歴任し、順調に坂の上の雲へ上りつめている。フットワークがよいうえ、先を見通す分析力も優れているという評価だ。
 ポスト菅の候補者は、前原誠司・前外相、樽床伸二・前国対委員長をはじめ群雄割拠。この中から誰が次期首相になるにしても、彼らの後見人である仙谷氏が太鼓判を押すほど、次々世代グループでは突出しているのだろう。


 政界に加え財界官界も「菅降ろし」の強い風

 高まる逆風を解消しようとしたわけではないだろうが、「俺がやる」と海江田万里・経済産業相を押しのけて中部電力浜岡原発の完全停止を発表した菅首相だが、世論調査の支持率は微増しただけで完全にあて外れ。
 米倉弘昌・経団連会長は、「八七%という確率論だけで原発停止要請をするのは唐突感が否めない」と批判。また、東京電力の賠償支援にからみ枝野幸男・官房長官が金融機関に債権放棄を求めたことに対し、細野哲弘・資源エネルギー庁長官は「いまさらそんなことを言うなら、これまでの苦労は何だったのか」と公然と注文をつけた。政界だけでなく、財界・官界からも逆風が強まっている。
 これを見て自民党の各派閥領袖はそろって谷垣禎一総裁に内閣不信任案の提出による倒閣に踏み切るよう圧力をかけ、これに呼応して民主党で造反の動きが出始めた。
 小沢一郎グループは、「マニフェストを次々と反故にした菅首相こそ反党行為。不信任案に賛成しても反党行為にあたらない」とT造反有理Uを掲げて署名活動を進めた。
 また、小沢氏とは距離を置く議員グループも前面に出始めた。「国難対処のために行動する『民主・自民』中堅若手議員連合」はじめ、超党派の「増税によらない復興財源を求める会」、「道州制懇話会」など(巻頭リポート参照)。いずれも菅降ろしに共鳴する議員たちが中軸になっており、与野党のT共同戦線Uといえる。
 西岡武夫・参院議長が大手新聞で「首相即刻退陣」談話を発表(五月十九日)したのは論外だが、ある民主党幹部は、「民主党らしさを否定してまで政権にしがみつく菅総理には退場してもらう」と、首相辞任は必至との見通しを明かした。


 現実味を帯びてきた嘉手納基地統合案

 二〇一〇年五月二十八日、鳩山前首相の退陣と引き換えに日米で合意された辺野古地区への普天間基地移転内容はこの一年、まったく進展を見せなかった。こうした膠着状態を打破するために、日本側に「くせ球」ともいえる提案が米国議会から投げられた。それが、米上院軍事委員会のレビン委員長とマケイン委員、ウエブ委員という大物議員の超党派による普天間の嘉手納基地統合案だ。
 米国サイドからのこの提案には複雑な事情が秘められている。まず国防費の大幅な削減という台所事情だ。リーマン・ショック後の景気低迷を防ぐために、オバマ政権は景気刺激策に多額の国債発行を進めた結果、これ以上の財政赤字は議会で多数を握る共和党が許さない状況だ。
 国務省もヒラリー長官は退任が噂されるなど、もはや将来の辺野古地区への移転問題に取り組む姿勢はまったく見られない。また、ルース駐日米大使も沖縄基地問題は苦手だ。日本サイドも松本剛明・外務大臣には沖縄基地問題は任が重く及び腰だ。北沢俊美・防衛大臣は保身第一で、米国の出方次第という状況だ。
 こうした日米のもと、普天間基地の嘉手納統合案は次第に現実味を増してくる可能性が高い。この案は岡田克也・前外相時に詳細に検討されたが、同一米軍内の空軍と海兵隊の統合、そして騒音問題という二つの難問にぶつかり頓挫した。しかし今回は国防総省の中でも、米軍内の対立は米国サイドで解決していきたいとの雰囲気も出ている。そうなれば、騒音問題で日本がどれだけの対策を立てられるかにかかってくる。


 福島第一原発放水作業で自衛隊は日当42,000円

 東日本大震災で被災した福島第一原発の原子炉建屋への放水作業に当たった自衛官が、一日四万二千円の日当を受けとる見通しとなった。これに対し、同じ作業を行った警視庁の機動隊員、東京消防庁のハイパーレスキュー隊に支払われるのは一日五千五百円にすぎない。
 現行の自衛官の災害派遣手当は原子力災害を含め、施行令で一日一千六百二十円と定められ、特に危険と認められる任務については同三千二百四十円となっている。防衛省は原子炉建屋への放水作業が危険性が高い任務であったことから、引き上げる必要があると判断した。同原発から半径十?圏内で作業した隊員にも一日二万一千円を支給する方向だ。施行令を無視した「お手盛り」と批判されても仕方ない。
 一方、同じ作業を行った警視庁と東京消防庁には東京都の条例が適用され、原子力災害への出動手当は一日五千五百円と既定されている。自衛隊の八分の一にすぎず、放射能被害の危険に身をさらしたにしては少額過ぎないだろうか。東京消防庁は「条例を適用することになります。自衛隊と違いすぎる? 論評する筋合いではない」。警視庁も「えっ自衛隊は四万二千円ですか」と絶句した。
 自衛隊の場合、これまでの日当の最高額は、イラクに派遣され警備任務を行った隊員に支給された一日二万四千円だった。もっとも、宿営地の外に出て活動する隊員には全員に同二万円が支給されたため、「三カ月の派遣で乗用車が買える」と高額手当が隊員には評判だった。仕事をするたび、高額な日当がもらえる自衛隊は恵まれているというほかない。


 小沢氏沈黙の裏に原発との密接な関係

 福島第一原発の事故対策が後手後手に回り、不評で深刻極まる形相の菅首相だが、内心は「高笑い」しているとの噂もある。というのも、党内最大の宿敵である小沢一郎・元代表(写真)が原発推進派で、今回の原発災害で沈黙を強いられ、全く動きがとれなくなっているからだ。
 小沢氏と原発は知る人ぞ知る密接な関係にある。それも「ジョン万次郎の会」(略称・ジョン万会)という一見、原発とは無関係の団体を通してである。ジョン万次郎はご存じのように江戸時代の漁民で、難破して米国の漁船に救助され、かの地へ渡り、帰国後、幕府の通詞として活躍した人物。土佐清水出身で小沢氏とは縁がないのに、その会長には小沢氏が収まり、事務局長は氏の側近中の側近といわれ参院議員を二期務めた平野貞夫氏が務めている。ちなみに、平野氏は万次郎と同郷である。
「ジョン万次郎の会」は、万次郎を顕彰し、日米の草の根交流を図るのが趣旨だが、その協賛企業には、東京電力を始め中部電力、四国電力、関電工などが他の一流企業ともに含まれている。ジョン万会を運営する財団の十人の理事の中には東京電力の勝俣恒久会長も名を連ねている。
 原発の存在する地方自治体に巨額のカネが落ちる「電源三法」は田中角栄首相が発案・制定し、その原発利権は田中氏亡き後、金丸信氏に引き継がれ、それを小沢氏が受け継いだというのが、事情通の一致した見方である。
 小沢氏と原発のT癒着Uについては、党内反小沢派の謀臣ら一部幹部がリークの作戦を練っており、成り行き次第では、「菅降ろし」を企図する親小沢派が目指す両院議員総会の開催も不可能になることが十二分に予想されそうだ。


 手詰まりに陥った日銀の復興支援

 東日本大震災からの復興に向けて多様な金融支援が求められる中、日銀の震災対応に手詰まり感が出ている。今後、追加支援に二の足を踏むようだと与野党からの風当たりが強まり、復興財源確保に国債の直接引き受け案が注目されてくる。
 日銀は金融市場の安定化のため、震災直後の三月十四日から即日の資金供給を開始。同二十二日までに民間金融機関の手元資金量は過去最高の四十一兆円まで膨らんだ。一方、福島原発の成行きに外国為替市場は動揺し、主要国の通貨当局と協調介入に踏み切るなど、金融不安の連鎖を防ぐことに注力した。
 また、被災地の金融機関向けに年〇・一%の低利融資制度の導入も決めた。復興が本格化し資金需要が発生することに備えるためだ。白川方明総裁(写真)は、制度導入を決めた四月七日の政策委員会・金融政策決定会合後の会見で「需要が増えることを想定し、現金の引き出しに応える」と効果を強調していた。
 しかし、景気が一段と悪化した場合の新たな手だては残っていない。政策金利の無担保コール翌日物金利はゼロ金利状態で、金利を引き下げる余地はない。残るは「金融資産買入基金や低利融資制度の増額など、既存の手段を拡充するしかなく、手詰まりに陥っている」(市場関係者)。
 日銀は秋以降に部品や電力の供給制約が和らいで景気は緩やかに回復すると判断しているが、消費者マインドが冷え込む中で、果たして回復するのかどうか疑問視する声もある。復興支援で機能不全に陥れば国債の引き受けも現実味を帯びてくる。


 賠償スキームをつくった三井住友の次期エース

 民主党政権は五月十三日、東京電力の賠償支援スキームを決定した。政府が新たに「機構」をつくり、ここに参加が義務付けられた電力各社が資金を拠出し、それをもとに福島第一原発事故の被災者の賠償に充てようという構想だが、このアイデアをひねり出したのは、実は東電のメインバンクである三井住友銀行だ。
 三井住友銀の今回の東電問題の危機意識は強かった。中でも獅子奮迅の働きをしたのが、旧三井銀行系のエースといわれる車谷暢昭・常務執行役員だ。車谷氏は、東電が賠償問題で資金繰り破綻する恐れをいち早く認識し、行内の俊秀を集めて預金保険機構を真似て「原子力賠償機構」をつくることを提言し、独自にスキームをまとめた。菅直人首相のブレーンは「五月十三日当日、三井住友は『うちの勝利だ』と舞い上がっていましたよ」と打ち明ける。
 車谷氏が知恵を絞って秘策をひねり出した動機には、奥正之・現三井住友フィナンシャルグループ社長の後を継いで今春誕生した宮田孝一・同社社長―國部毅・同行頭取体制の次代の有力後継者の地位に就きたい思惑があるからだとみられている。奥、國部、車谷三氏は今の三井住友を仕切るトロイカ体制を組んでいる。
 そして、今回の東電問題では車谷氏がかかわった三井住友案が政府案に昇格したことで、次代のエースとしての地歩は固めた模様だ。ただ気がかりなのは、民主党内で反発が出て政府のスキームがすんなり実現するかどうか微妙な点である。


 振興銀の受け皿はイオン銀で決まり!?

 預金保険機構(預保)は四月二十五日、昨年九月に破綻した日本振興銀行の預金や資産を「第二日本承継銀行」に譲渡した。この承継銀行は最終的な受け皿銀行が決定されるまでのブリッジバンク。金融庁と預保は三月に引き受け先を公募し、その選定を進めている。
「日本振興銀行の受け皿選びは今夏にも決定する予定だが、東日本大震災への対応から、例年六〜七月に実施される金融庁の幹部人事が延びる影響もあり、年末までずれ込みそうだ」と金融庁関係者は語る。
 受け皿の公募に手を挙げたのは、イオン銀行や投資ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズなど五陣営。それぞれ振興銀を引き受けた後、どのような銀行として活かしていくのか事業計画を預保に提出している。金融庁と預保はその計画を分析・評価し、最終的な受け皿を決める。
 実は、金融庁には本命の譲渡先がある。「ブランドの高さや信頼感からみて、ぜひイオン銀行に引き受けてほしい」(同)というのが本音だ。
 しかし、「安易に引き受ければイオン銀行といえどもババを引く可能性もある」(メガバンク幹部)と懸念する声も上がっている。「そもそも振興銀の資産(貸出債権)は、経営破綻した商工ローンSFCGから譲渡されたもので、決して優良先とはいえない。イオン銀行は融資を伸ばす意図があるだけに気掛かりだ。また、引き受ける人材の大半も旧SFCGの社員であった者。はたしてうまくいくのか疑問」(大手信用情報機関)というのだ。
「公募に手を挙げた先には、銀行免許を買うことだけが目的のところもあろうが、すでに免許を取得しているイオン銀行にはそのメリットもない」(メガバンク幹部)。優良取引先であるイオングループが振興銀というババをつかんでほしくないと関係者は気を揉んでいる。


 副社長と対立を演出? 豊田社長のしたたかさ

 トヨタ自動車の豊田章男社長と小澤哲・副社長が国内のモノづくりに関して意見対立を見せた。
 五月十一日の二〇一一年三月期決算発表の席で、豊田氏が「製造業は雇用を守るのが責務。日本でのモノづくりにこだわり、日本の製造業の灯を消さないよう頑張る」と強調。小澤氏は「円高に加え自由貿易協定(FTA)、環太平洋連携協定(TPP)の遅れで国際競争力が落ちている。一企業の努力では限界。国内モノづくりの厳しさを社長に進言したい」と海外生産の強化を訴えた。
 トヨタも円高進行、東日本大震災による部品調達難、電力不足などで国内生産は深刻な打撃を受けた。しかも前三月期の単独決算は二年連続で営業赤字となり、今期も赤字になればトヨタブランドに深い傷がつく。財務担当の小澤氏が「一段の円高で取引先が生産拠点のリスク分散から海外強化に動き、空洞化に拍車がかかる」と指摘するのもうなずける。
 しかし、両者は事前に練られたシナリオに沿って役割分担を演じた節がある。社長が国内のモノづくりの重要性を強調する一方、副社長が当初六月としていたFTA、TPPへの参加判断を先送りした政府の弱腰を叱咤することで、トヨタも海外移転を加速するぞと、居並ぶ大勢の記者を前にして暗に示したとみられるのだ。
 就任から満二年を迎える豊田社長は、リーマン・ショック後の赤字、リコール問題、そして今回の大震災という大きな困難の中で、外部の反応を計算しながら社内外に発信するというしたたかさを見せ始めている。


 核燃料のトイレがない、日本の原発に“排泄”の悲劇

 原発事故の賠償支援策が閣議決定され、批判が続出している。「東電救済」が大前提で、株主や社債権者や融資銀行に責任を取らせることなく、賠償原資は電気料金と公的資金というのだから当然だろう。
 批判を恐れた政府はガス抜きに必死だ。菅直人首相や枝野幸男・官房長官が、核燃料サイクルの見直し、自然エネルギーへの注力、発送電一体の現電力行政の再考などを口にするのはそのためだ。もっとも本当にできるかどうかは疑問だが、核燃料サイクルがこのまま進行できないことだけはハッキリしている。
「(使用済み核燃料が)あれほど大量にプールに詰まっている状態とは思わなかった」
 共産党の志位和夫・委員長と五月十七日、会談した菅首相はこう述べたという。認識不足もはなはだしい。日本には最終処分場がなく、かといって核燃料を再処理して使う目的の青森県六ヶ所村の再処理工場は三兆円近くを費やしても技術を確立できず、二十回近くも稼働を延期している。つまり、日本の原発にはトイレがないのだ。
 年間一千?も排出される使用済み核燃料がどれだけ危ういものかは今回の事故で証明された。だが日本には、「核のゴミ」を処分する最終処分場がない。それは「核燃料サイクル」で再生して使うという“神話”がまかり通っているためだ。
 再処理燃料を最終的に使うのは高速増殖炉の「もんじゅ」だが、これも事故ばかりで実用のメドは立っていない。つまり核燃料サイクルは破綻、それを認めたうえで最終処分場建設を急がねば、今後も危険な「核のゴミ」を各原発が持ち続けることになる。


 セメント業界を悩ます原発に汚染された下水汚泥

 東京電力福島第一原発が垂れ流す放射性物質が東日本の飲み水の安全性を脅かしているが、悪影響は上水だけでなく下水にも及んできた。
 福島県郡山市の下水処理場「県中浄化センター」で四月二十八日に採取した汚泥から一??当たり二万六千四百ベクレルの高濃度セシウムを検出。セメントの副原料として同センターの汚泥を使っていた住友大阪セメントは五月上旬、栃木工場(栃木県佐野市)の生産を停止した。また福島県国見町の「県北浄化センター」の汚泥からも高濃度セシウムが検出され、太平洋セメントは埼玉工場(埼玉県日高市)など二工場で一時、出荷停止を余儀なくされた。
 混乱に輪をかけたのは国土交通省。どの程度までセメントに放射性物質が混じっても安全か明確な指針がなく、原発サイトから排出される瓦礫に適用される「一??当たり百ベクレル以下」という指針を援用することを五月中旬に急遽決定した。
 そもそもセメント会社が下水汚泥を受け入れるのは自治体などから相応の廃棄物処理費をもらえるからで、放射性物質が混じるとなると話は別。減益を覚悟の上で副原料を汚泥から割高の粘土などに切り替える必要が出てきた。
 一方、下水処理場も苦境に追い込まれる。汚泥の保管スペースには限りがあり、新たな処分方法を早急に考えなければ「迷惑物質」がどんどん積み上がっていく。


 住生活Gの海外事業担うGE出身の新社長

 住宅設備機器の最大手の住生活グループは、事業の軸足を海外に大きく踏み出そうとしている。現状で総売上高の数%台にすぎない海外売上高比率を、二〇一五年の最終年度までに一〇年度実績の何と二十五倍に当たる一兆円に引き上げる中期経営計画を発表した。
 住生活Gの一一年三月期の連結売上高は一兆二千百四十九億円。五年間でこれにほぼ匹敵する稼ぎを海外で取り込むというのだから、まさに歴史的な挑戦だ。計画実現へのアプローチは、傘下の事業会社であるトステムの“伝統”、M&A(企業の合併・買収)戦略の加速で、中国、アジアを中心に数千億円を投資する。
 しかし、それだけにとどまらない。八月一日付で、日本GEの会長を務める藤森義明氏を社長に迎えるトップ人事を発表。住生活Gがグローバル戦略に突き進む本気度の表れといってもよい。日本GEは、世界有数の複合企業(コングロマリット)、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の日本法人であり、藤森氏は米GEの上級副社長としてGE本体のアジア・太平洋地域のビジネスで高い実績を上げてきた。
 今回の藤森氏の起用は、創業家出身の潮田洋一郎会長が「経営管理のノウハウを移植してほしい」と語るように、GEで培ってきたトップマネジメントの経験を住生活Gの事業戦略に反映させることにある。海外事業でグループの総合力を引き出し、住生活Gを内需型からグローバル企業に“完全脱皮”させられるか、その手腕に期待がかかる。


 化学業界再編のキーマンは小林・三菱ケミカルHD社長

 「三菱マンらしからぬ剛腕。間違いなく今後の化学業界をリードしていく人物だ。古巣の人には怒られそうだが、三井化学も合併してもらったらいいと考えている」と三井化学の元首脳が語ったことがある。プライド高き元三井マンにそこまで言わせるのは、今では少なくなったサムライ経営者、三菱ケミカルホールディングスの小林喜光社長(写真)だ。
 同氏は三菱化成工業出身だが、四年前の社長就任以来、注目度が増している。注目は持論の「日本は過当競争の業界が多く、企業数が多過ぎる」という再編論。実際、持ち株会社である三菱ケミカルは、傘下に三菱化学、三菱樹脂、田辺三菱製薬、三菱レイヨンを擁し、売り上げでは東レの二倍のスケールと、化学業界では抜け出た存在だ。
 東日本大震災では三菱化学の鹿島事業所(茨城県)が被災したが、小林氏は危機になればなるほど事業間口の広い総合力が効いてくると強調。これまでは、選択と集中は右肩上がりのうちは効率経営上有効だが、事業がビハインドになったり、今回のような大規模な天災が起こるとマイナス面が強く出やすいと説く。
 小林氏がただ者でないのは、化学業界で突出した規模を誇りながら、ヘルスケア関連を含め、さらなる規模拡大に貪欲なこと。同社では今年度から向こう五年の間に、М&A資金として五千億円を計画している。有利子負債額が利益剰余金の三倍あり、財務基盤が強固とは言い難いが、あらゆるケミカルビジネスで他社を圧倒していけば、収益は後から自然についてくるということか。
 小林氏はこの五月から、経済同友会の副代表幹事にも就任した。同友会は長谷川閑史氏(武田薬品工業)が新代表に就いたばかり。武田薬品は三菱ケミカルの五位株主(三・四%)で、長谷川氏の強力なサポート役が小林氏ともいえる。ことによると、医薬品トップの武田が三菱ケミカルとアライアンスを組むことだって絵空事ではないかもしれない。


 新刊本すべて電子書籍化、注目集める新潮社の決断

 電子書籍ブームのきっかけとなった「iPad」の日本発売から一年。激戦、乱戦、混戦が続く中、新潮社は新刊書籍のすべてを電子化して発売することを決定。先行する米国のビジネスモデルを取り入れた「決断」に、出版界の注目が集まっている。
 新潮社が明らかにした電子本発行のスケジュールは、新刊書籍の発売から「半年後」(著作者がOKしない作品は除く)。価格は八割程度に抑えるという。
 大手出版社で「すべての新刊を電子化する」という試みは画期的だが、ポイントは「同時発売」ではなく「半年後」というタイムラグだ。
 米国で電子書籍が急成長した理由は、価格を新刊本より大幅に値下げしたうえに、新刊本の発売と同時に電子本を配信、読者の支持を得たからだ。そうした事情を承知したうえで、あえて時間差を設けたのは、新刊本発行から三年後に発売するドル箱の「新潮文庫」への影響だ。
 電子本が伸びても、文庫本の売り上げが落ちたら元も子もない。もとより、新刊本が売れなくなってはもっと困る。しかし、電子本を出さないわけにはいかない。堂々巡りの末に出てきた回答が「半年後」ということになったようなのである。
 電子書籍の国内市場は、「電子書籍元年」といわれた二〇一〇年度で約六百五十億円。出版市場が急速に収縮する中、一四年度には一千三百億円に倍増するという。
 成長性を当て込んで、出版社はもちろん、書店、印刷会社、通信会社、メーカーに広告代理店まで、雪崩を打って電子書籍市場に参戦。「本格決戦」に向け、水面下で激しいせめぎ合いを繰り広げている。


 読売社長人事の裏に渡辺会長と内山氏の確執?

 読売新聞、日本テレビ、巨人軍などを包括する読売グループ本社の人事が難産の末、決着した。
 今回の人事のT目玉Uは、渡辺恒雄・代表取締役会長・主筆を半世紀にもわたって支えてきた股肱の臣で、ナンバー2の内山斉・同グループ社長兼東京本社社長を形式的な経営戦略会議議長に祭り上げ、後任に白石興二郎・東京本社専務・論説委員長を指名したことだ。
 これにより渡辺会長は、「読売中興の祖」の正力松太郎・元社長、「販売の神様」の務台光雄・元名誉会長に続いて、「生涯現役の最高実力者」として同グループに君臨することになる。ただ、東日本大震災により読売の発行部数一千万部台割れが必至の中、政治部偏重となる人事は社内的に不安と動揺を招いており、同グループ凋落の兆しとも受け取られている。
「読売はこれまで(政治部出身の)ツネさんと(経済部出身の)ウジさん(氏家斎一郎・日テレ会長)で、新聞は政治部、テレビは経済部と棲み分けてきた。ウジさんの死去で今後は政治部主導だな。来年には日テレの役員に赤座弘一・メディア局長を送り込む話もある」(同社幹部)
 ただ、渡辺、内山両首脳の対立は「経営方針をめぐって」(別の幹部)との指摘もある。「一方は新聞偏重、部数重視、宅配死守。他方はネットや動画、他の媒体も活用すべきだと。決着がつかず、最後は内山社長が折れたようだ」(事情通)。しかも、内山社長は販売、経理、広告、制作、事業局など、随所にT内山シンパUを擁しており、「新人事の定着には難問山積」(同)の見方も出ている。


 東日本大震災を機に「病院船」建造の動き

 東日本大震災では、医療現場でのスタッフ、医療設備不足で、あまたの救える命が失われた。災害時や紛争時で地上の医療が機能不全に陥った時、どう対応するか。今回の震災を受け、国家の危機管理としても災害医療の整備が重要性を増している。
 その一つとして注目されているのが「病院船」の建造だ。阪神淡路大震災の折には、米軍の病院船マーシーが神戸に派遣され、医療支援を行った。今回は、マーシーの派遣はなく、空母ロナルド・レーガンが医療支援を行った。地震や津波の災害が多く、海洋国家である日本では、洋上から被災地にアプローチできる病院船は必要不可欠といえる。
 四月には民主、自民・公明などの議員が超党派で「病院船建造推進議員連盟」(衛藤征士郎会長)を設立し、五月には今年度の第二次補正予算に調査費を計上するよう首相官邸に要請した。ちなみに、病院船の建造にはおよそ五百億円かかるという。
 こういった議員の動きに対して医療界も乗り気で、日本医師会も病院船の建造に賛成の意向を示した。原発事故への対応や、今後起きると予想される大災害への対応に、病院船はできるだけ早いうちに造るべきという考えだ。
 病院船はヘリコプターやホバークラフトを搭載し、患者を被災地から病院船に搬送し、災害医療に必要な検査機器、医療設備が完備した手術室やベッドも装備される。もちろん、救急医療のドクターなどスタッフの充実も必要だ。当面は自衛隊の医官や防衛医大の医師が中心に乗船することになろう。


 米中の震災支援合戦は「トモダチ作戦」の圧勝

 未曾有の東日本大震災で各国から熱い支援が寄せられたが、ここでも世界の次世代覇権国家の座を争う米国と中国の熾烈なバトルが展開された。米国は日米安保条約締結の同盟国とあって空母まで派遣、動員された兵員など二万人、総額八千万?(約六十七億円)に上った。福島原発事故でも極秘裏に調査し「重大性」を認識、在留米人への八十?圏外への退避を指示したほどだ。この大規模支援は「トモダチ作戦」と命名され、日米メディアで大絶賛された。
 一方、震災支援を日中関係修復の好機と見た中国も初動は早く、地の利を生かして積極的支援を提案したが、米国の意向を受けた官邸や外務省からその多くに待ったがかかった。数百人を派遣しようとし物資や機材とともに出発の空港で待機したが、「受け入れ態勢が整わない」ことを理由にわずか十五人に制限され、緊急的な措置として提案した病院船の派遣も断られた。また被災地で極端に不足していたガソリンや重油、合計二万?の提供を申し入れタンカーを出したが、なんと荷揚げされたのは九州や四国の港。東日本の港には横づけできなかった。
「政府や東京電力は中国に支援されていることを報道されたくないようだ」と、ある外交筋は語る。日中韓首脳会議で来日した中国・温家宝首相の東北被災地入りも、当初、日本政府は難色を示したが、同首相の強い意向を受け、しぶしぶ受け入れることになったようだ。
 トモダチ作戦が功を奏し、年度末の成立が危ぶまれていた「駐留米軍思いやり予算の特別協定」が民主、自民などの賛成多数で可決成立。有効期限は従来の三年から五年に延長され、今後五年間、日本は米軍に現行水準(約一千八百八十億円)を支払い続けることになった。日中二大国の震災支援アピール合戦は米国の圧勝といったところだ。


 菅首相退陣要求はポーズ? 創価学会幹部人事の意味

 公明党は、四月の統一地方選が終了するや、菅直人首相に再び退陣を求め、菅政権との対決路線に戻ったが、政界では「ポーズでは」との声も漏れ始めた。というのも、支持母体の創価学会で注目すべき幹部人事があったからだ。
 その人事とは、佐藤芳宣・青年部長が退き、後任に棚野信久・男子部長が昇格したもの。青年部は池田大作・名誉会長(写真)への忠誠心が特に強いとされ、選挙となれば婦人部と同様、集票マシンと化す中核組織。間近に国政選挙を控えていれば、集票力の低下を懸念し、主要な人事はいじらないのが創価学会の慣例だ。青年部長を代えたということは、裏を返せば創価学会は、万が一にも衆院解散は当面ないと読みきったと考えられる。
 内閣支持率は二割台に低迷している菅首相だが、政界では「どんな状況になっても自分からは辞めない」(民主党筋)との見方がもっぱら。となると、菅首相が早期に宰相の座から降りるケースは、野党提出の内閣不信任案に民主党内から大量の造反が出て可決される以外にない。常識ではその場合、東北三県で統一地方選が延期され、現行の衆院定数配分が違憲状態にある現状では退陣以外にないと思われるが、一部でささやかれるのは「権力に執着する菅首相なら解散を選びかねない」(民主党中堅)というもの。創価学会の幹部人事が意味するのは、民主党内の「菅降ろし」は広がらず、菅政権は当面続くと判断したということだ。


 東アジア大使を一新するオバマ政権の新外交戦略

 二期目の再選戦略を進めているオバマ大統領だが、外交面でも米国にとって最重要地域になりつつある東アジアで大使人事を一新する方向だ。
 まず中国だが、ジョン・ハンツマン大使からゲイリー・ロック商務長官に交代させることを決めている。ハンツマン氏も共和党の大統領候補の一人と目される大物だが、米中戦略対話で見られたように、米国側は人民元の切り上げ問題や人権問題については満足できる状況ではない。そこで、オバマ政権の現職の閣僚で通商問題に詳しい中国系のロック氏を北京に送り込むことにした。
 韓国は、職業外交官で朝鮮半島問題を専門にしていたキャサリン・スティーブンス大使が八月に退任する予定だ。今後の朝鮮半島の激変に備えるには大物政治家が次期大使に就任しオバマ政権と連絡を密にしたいとの李明博・大統領の意向を受けて、目下ホワイトハウスと国務省で人選を急いでいる。現時点では、米議会下院外交委員会東アジア太平洋小委員長を経験したジム・リーチ氏が有力視されている。三十年の下院議員のキャリアを持ち、共和党員だが、前回の大統領選挙ではオバマ氏を支持した経緯がある。
 日本はルース現大使が来年春には東京を離れ、カルフォルニアで弁護士の仕事に戻るのではとの噂が広まっている。東日本大震災後の大使の活躍は目覚ましいものがあったが、一方で普天間基地の移転問題などは全くお手上げ状態となっている。オバマ大統領の再選が確実視されるようになれば、来年前半には交代して大物政治家が東京に送り込まれて一挙に基地問題を解決したいとの考えがワシントンサイドで広がっている。


 EU全域に波紋広げるデンマークの国境審査

 「人とモノの移動の自由」──。欧州連合(EU)が掲げる基本理念に域内小国のデンマークが反旗を翻している。同国政府は自国の安全を守るという理由で、国境に車のナンバープレートの自動検知器などを設置し、税関検査の実施に踏み切ることを表明、ドイツおよびスウェーデンとの国境管理を一部復活させる方針を示した。この措置は欧州諸国を出入国審査なしに往来できるシェンゲン協定に抵触しかねず、デンマークへの風当たりは強まっている。
 フレデリクセン財務相は「ここ数年、われわれは麻薬や人身売買など、国境を越えた犯罪に悩まされてきた」と説明。こうした犯罪を防ぐのが狙いで、シェンゲン協定には違反していないと主張している。
 シェンゲン協定では、「国家の安全保障や社会秩序への重大な脅威」が迫っている時は、各国が一時的に国境審査を復活できる条項がある。しかし、デンマークとドイツの国境にそのような「脅威」の兆候はない。EUの執行機関である欧州委員会のバローゾ委員長はラスムセン首相に書簡を送り、厳しく糾弾。EU各国からも批判の声が相次いだ。
 ただ、北アフリカや中東で起きた政変のあおりで移民が欧州に押し寄せる中、デンマーク以外の欧州諸国でも国境審査の強化を目指す動きが広がっている。フランス政府はイタリア経由で入国を目指してきたチュニジア移民を仏伊国境で足止めさせているし、デンマークを批判したドイツでも、与党の一部政治家はポーランドやチェコとの国境審査の復活を求めている。今後、EU全域で移動制限が強まる可能性もありそうだ。


 重慶書記一人に崩される中国の権力バランス!?

 暴れん坊の薄熙来・重慶書記(太子党)を黙らせるために、北京へ呼び戻せという観測が権力中枢で挙がっているという。
 薄氏は重慶市内のど真ん中に巨大な毛沢東像を建立し、市民の怨嗟の的だったマフィアを退治してみせた。これで国民的支持が高まったが、共産党内では「格好つけやがって、パフォーマンスだけさ」と冷淡に反応。汚職摘発を真面目にやったら共産党幹部は皆、牢獄へつながれてしまう。
 そこで団派は次期首相候補の李源潮氏を団長に十数人の幹部を動員して重慶を視察した。これに、香港誌「開放」は「李源潮が次の重慶書記になるのではないか」と伝えた。
 中国政治に変化の兆しを見るのは世界中のチャイナ・ウオッチャーの共通認識だが、現在の権力状況は、胡錦濤率いる団派にシノペック、中国海外石油(CNOOC)経営者ら「資源派」が連合し、守旧派で江沢民率いる「上海派」と対立している。
 高級幹部の息子らが集まる「太子党」はどちらかといえば利権のにおいを嗅いで上海派になびくうえ、事なかれ主義で、挑発的な薄氏の態度もホンネでは気に入らない。三派のバランス均衡を崩しかねないのが薄熙来氏の暴走という位置なのだ。
 これらの要素に「中東民主化」というジャスミン革命の余波が加わる。GDP世界二位、外貨準備世界一位、自動車販売も世界一などと宣伝しても庶民の敵は物価高、手の出ない不動産価格。猛烈なインフレを退治できない党への不信が蔓延している。
 当局は金利、預金準備率操作でインフレ抑制を試みるが、効果は上がらず、人民元はいずれ急騰の可能性ありと読まれている。経済政策に無力なのは胡錦濤も温家宝も薄熙来も皆同じ。権力闘争の根は深い。


 米次期大統領選余話で注目される二人の人物

 オバマ大統領(写真)が二〇一二年大統領選挙への再出馬を早々と表明したあと、米国政界は「次の共和党候補が誰になるか?」が関心の的。
 本命とされるロムニー前マサチューセッツ州知事か、ダークホース的なペイリン前アラスカ州知事か、それともほかに誰かいるかと下馬評が盛り上がる。が、これとは別に二人の人物が注目されている。
 まず、次の国防長官に横滑りが決まったパネッタCIA長官。米国で最大の予算を使う国防長官は政治的にも巨大パワーを持つ。国防長官は最大の利権でもある。それゆえ民主党政権でもクリントン時代には共和党系のコーエン氏が就任したし、オバマ大統領はブッシュ前政権のCIA長官だったゲーツ氏を選んだ。民主党系の人物を選ぶとペンタゴンや退役軍人会がそっぽを向くからだ。
 もう一人はFBI長官に異例の二年延長が決まったボブ・ムラー氏だ。ムラー氏はCIA長官へ横滑りが取り沙汰されていたが、オバマ大統領は五月十三日、FBI長官任期十年を延長し「あと二年やってくれ」と異例の人事を発表した。〇一年テロ事件以後、テロ対策、テロリスト予防にムラーの辣腕が遺憾なく発揮された実績が買われた形である。
「支持率が五割を割っても、共和党が小粒ぞろいなら再選が射程に入ったとみるオバマは、国防、CIA、FBIに共和党も納得する人事を敷いて、むしろ共和党の無力化を図っている」とワシントン事情通は言う。


 タイ貢献党勝利なら軍部クーデター勃発は必至

 タイの下院総選挙が始まった。七月三日が投票日。世論調査では、タクシン元首相が事実上の党首であるタイ貢献党が人気の面で一歩リードしている。
 アピシット首相率いる民主党は、タイ貢献党と似たような低所得者層対策を公約に挙げて盛り返しに努めている。民主党の公約によると、最低賃金は二年間で二五%上昇、低所得者層の電気代は無料、低所得者が家を購入するとローンは無利子など、盛りだくさんだ。
 しかし、民主党の支持基盤はバンコクの中産階級および富裕層。農村と都会の低所得者層を地盤とするタイ貢献党の支持者のほうが有権者の数から見ると圧倒的に多い。そこで結局は僅差になってもタイ貢献党が選挙で勝利するとみられている。
 問題はタイ貢献党が政権を握った時に起きる。タイ貢献党の幹部はすでに軍部によるクーデターがあると読む。国王はもちろん、特に王妃の側近と軍部が、タイ貢献党が権力を握ることを好まないのだという。
 クーデターがあると、どうなるか? タイ貢献党の幹部の一人は、市街戦に発展すると言う。
「タクシン元首相は今度の政権奪取に賭けている。もしクーデターがあれば、アラブ諸国で起こったような大衆蜂起が起きるだろう。タクシン元首相は数千人の死亡者が出ることも辞さない覚悟だ」
 タクシン元首相は十一月に帰国を予定している。そうなると、政権が変わってから三〜四カ月のうちにクーデターが起こる可能性がある。
 福島原発事故の影響で、日本における工場建設を諦め、タイに進出することに決めた日本企業は多い。だが、その進出熱に市街戦の冷や水をかぶせられることになりそうだ。



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