ダミー
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 大連立構想で亀裂が入った菅首相と仙谷官房副長官

 反小沢路線を推進してきた菅直人首相(写真)と仙谷由人・官房副長官の関係が抜き差しならない関係となっている。きっかけは東日本大震災後に浮上した民主、自民両党の大連立構想だった。
「それは駄目です。大連立は岡田克也・民主党幹事長と石原伸晃・自民党幹事長の正規ルートでやる……」
 大地震の発生直後、大連立実現への仲介を依頼した加藤紘一・自民党元幹事長から、仙谷氏と大島理森・自民党副総裁の間でも大連立で連携の動きが進んでいることを指摘され、菅首相は不快感を示した。
 首相は、参院での問責決議を受けて今年初めの内閣改造で官房長官ポストから外した仙谷氏を、震災後に官房副長官に起用して震災被災者対策を担わせた。大震災と福島原発事故という一旦緩急の事態に直面した首相にとって、強い援軍を得たはずだった。与党内からも「これでようやく官邸主導の形ができる」と安堵の声が聞かれた。
 しかし、現実に進行していたのは相互不信。菅首相は、仙谷氏が自分に一切相談せずに民・自大連立を画策したことを「菅降ろし」の萌芽と疑念を募らせた。実際に仙谷、大島両氏の間では「菅抜き」を前提にした大連立論が語られていた。震災前から、「仙谷氏は菅首相の統治能力の欠如を見抜き、ポスト菅に思いを巡らせていた」(民主党ベテラン議員)。
 首相にしてみれば、政権延命の手段であるはずの大連立構想が退陣への歯車を回すための装置となる事態は、さすがに想定外。そのためか、一時ささやかれた仙谷氏を復興担当相に昇格する構想は語られなくなった。しかも、「首相は仙谷氏を復興政策から外そうとしている」(首相周辺)との見方がもっぱらだ。
 その一例が、復興対策について与野党の党首らが首相に助言する「非常事態対策院」構想の頓挫だ。構想を練ったのは、亀井静香・国民新党代表、村上正邦・元自民党参院議員会長、小沢一郎・民主党元代表の懐刀である平野貞夫・元参院議員の三氏。対策院は与野党の党首が同意した上で国会決議で設置し、政府、政党、地方自治体、経済界、労働界、言論界の代表者で構成する。原発事故対応や復興の基本方針、政策立案を行う。政府は提言を丸呑みし、菅首相の続投を前提にしている。
 三月下旬、亀井、村上両氏は仙谷氏と会談、仙谷氏は賛意を示し「これは枢密院と同じだなあ」と言ったという。枢密院は旧憲法下で天皇の最高諮問機関として創設された。仙谷氏は菅首相に対策院構想を提案したが、菅首相は「自民党が乗らんだろう」と一蹴。亀井氏は四月二日、菅首相に直訴したものの拒否された。復興対策を主導したい菅首相が対策院に権限を奪われることを嫌ったのが理由といわれている。
 民主党内には、仙谷氏に対し、菅首相に退陣の「鈴付け役」を期待する向きもあった。しかし、それは首相との間で相互信頼が存在することが前提であって、ここまで首相との関係が冷え込んだ仙谷氏に鈴付け役を求めるのは難しそうだ。


 「トモダチ作戦」に失敗した公明党の統一地方選

 公明党は四月十日に投開票された統一地方選前半戦の大阪府議選と横浜市議選でそれぞれ現職一人が落選し、統一地方選での全勝記録が早々と「二」で途絶えた。支持母体である創価学会のドン、池田大作・名誉会長の「長期不在」が響いたのは間違いないが、敗因としてささやかれているのが、東日本大震災の影響で「F」取りの動きが鈍かったことだ。
公明党の選挙は、創価学会員があらゆるルートを使って、友人、知人、同級生ら会員以外の票(フレンド=F票)を固めていくのが常套手段。地区ごとに、どれだけ「F」を取れたか、票読みを繰り返すのが通例だ。
 しかし今回は、震災の発生後約十日間、創価学会は原田稔会長ら幹部が被災地を慰問するなど、票固めの動きをほぼストップ。各党、多くの候補者が被災者に配慮して派手な選挙運動を自粛したため、さすがの創価学会も友人らへの「お願いを緩めざるをえなかった」(ベテラン会員)。
 大阪府議選(和泉市区=定数二)では、わずか三十一票差で無所属候補に競り負け。横浜市議選で敗北した金沢区に至っては定数が五で、創価学会の本来の集票力からすれば落選など考えられないことだ。党関係者によると、実際、金沢区はノーマーク。震災による液状化でかなりの被害が出ており、組織の活動もかなり鈍かったとされる。
 前回、二〇〇七年統一地方選では、北海道美瑛町議選で最後の議席をめぐって共産党の候補と得票同数で並び、くじ引きで当選を決めており、薄氷を踏んでの全員当選だったが、全勝は全勝。東西で一人ずつの落選者を出したことは創価学会の集票力の衰えを象徴しており、緩んだ組織を立て直すのは容易でない。
 池田氏は昨年五月以降、本部幹部会への欠席を続けており、一般会員が肉声に接することはなく、健康問題は否定しようがない。ドンの不在が今後も続くであろうことに加え、「トモダチ作戦」を十分展開できなかったことは、創価学会の集票力のさらなる低下につながりかねない。


 大震災の傷が癒えぬ折も折、「尖閣」接近を狙う中国

 中国が再び尖閣諸島に接近を目論んでいるとの分析がある。五月から六月、特に沖縄返還四十周年の記念日である六月十七日前後に、台湾、香港の活動家を中心とした、魚釣島を確保するための「世界華人保釣連盟」なる団体が小型船舶を中心に一千隻程度で魚釣島に接近、うち四百五十人程を島に上陸させるという計画だ。もちろん背後には中国政府がいるが、できるだけ香港、台湾、中国沿岸部の民間団体を装う自発的領土奪還行為に見せかけている。
 現時点で中国政府は、最少のリスクとコストで上陸を狙うと見られるが、大震災後のダメージの大きい日本に対するそうした行為に対し国際世論がどう反応するかはまだ読み切れていない気配だ。
 仮にそうした事態になった場合、海上保安庁だけで多数の上陸者を退けるのは不可能とみられ、自衛隊による領土防衛の自衛権の発動まで踏み込まざるをえないと想定されている。しかしこの場合、船舶の保護を名目にやって来る中国軍と交戦状態になる可能性も否定できず、そうなればヒラリー・クリントン国務長官が以前、前原誠司・前外相に約した日米安保の下での米軍の発動まで行く事態も考えられる。大震災のニュースで隠れがちだが、中国政府とどう対峙するかという重い課題が菅政権に突き付けられようとしている。


 なぜか国交省官僚が囁く「亀井静香」待望論

 大震災、福島原発事故という未曾有の危機を乗り切る人材が与党・民主党に見当たらないのは衆目の一致するところ。求められているのは、関東大震災後の経済危機を大胆な復興構想と大規模な財政出動で乗り切った後藤新平のような指導者だ。しかし今、国の中枢にいる人材は「財源」を気にして復興計画を描けず、一次補正、二次補正とチマチマ予算を小出しにするような輩ばかり。
「みんな財務官僚にマインドコントロールされている。『GDPの倍近い借金を抱えている日本がこれ以上赤字国債を重ねると、金利が急騰、国家破綻となる可能性がある』と脅されて手も足も出ない。そんなんじゃ今の国難を救えない。後先考えない政治家が必要だ」(国交省OB)
 このOB氏が名を挙げるのが、旧運輸相も旧建設相も経験済みの与党・国民新党代表の亀井静香氏(写真)。震災復興を担う国交省の官僚にしてみれば、良し悪しは別にして、大胆に予算を分捕り、大胆にばら撒く亀井氏の剛腕が忘れられない。
 亀井氏は外交防衛問題ではタカ派だが、経済面では弱者救済の国家社会主義的な発想が持ち味。景気の低迷は大胆な財政出動で乗り切るべきというのが持論で、連立政権発足時、中小企業の資金繰り支援のため「金融モラトリアム法案」を策定した。
 震災復興と原発処理だけでも三十兆円は必要とされる。揃って財務官僚に取り込まれた今の政権中枢からは、「復興増税」という発想しか出てこない。未曾有の危機に増税では景気の冷え込みが必至だ。この“暴挙”を食い止め、民主党幹部にモノを言い、官僚を一喝できる大物といえば亀井氏。疲弊する経済最前線から、「亀井氏を有力閣僚に!」との待望論が澎湃(ほうはい)と湧き起こっている。


 年金問題で「蚊帳の外」の厚労相が露呈させたもの

 瓦礫の除去や仮設住宅の建設など、東日本大震災被災者への緊急措置を中心とした二〇一一年度第一次補正予算。政府・民主党は四月上旬、年金の国庫負担割合二分の一を維持するための「埋蔵金」など二・五兆円を財源の一部として転用する方針を決めたが、関係閣僚でありながら「蚊帳の外」に置かれたのが細川律夫・厚生労働相だ。
 方針は、四月八日の菅直人首相と野田佳彦・財務相、玄葉光一郎・国家戦略担当相らの会談、その後の岡田克也・幹事長、輿石東・参院議員会長ら党幹部も加わっての政府・民主党首脳会議を経て決定したが、社会保障を所管する細川厚労相はいずれの会談・会議に呼ばれずじまい。十一日には、党政調会長を兼ねる玄葉氏らが自民、公明、国民新の各党に、財源も含め一次補正の概要を提示したが、この段階でも官邸サイドから細川氏に何の報告もなかった。厚労省関係者によると、温厚な細川氏もさすがに怒り心頭で、同日夜に野田氏を呼んで「抗議」。親交のある公明党の坂口力・元厚労相と会って、「年金財源の転用に所管閣僚として反対だ」と伝え、坂口氏もバックアップを約束した。
 細川氏といえば、専業主婦の年金切り替え忘れ問題で莫大な予算が必要となる救済策を担当課長が昨年十二月に通達を出して決めたことを事務方から知らされず、厚労官僚に軽んじられた姿を露呈したばかり。国民が高い関心をもつ年金に関わる決定を下す際、担当閣僚に報告しないどころか意見も聞かないなどあり得ない話で、菅首相か枝野幸男・官房長官が細川氏の意見を聞くなど手続きを踏むべきだった。
 震災に限らず、菅政権の機能不全は目を蔽うばかり。年金財源の転用問題は、細川氏の存在の軽さ以上に、菅首相の「資質」の欠如を国民に改めて印象付けた?


 震災に乗じて巧妙に立ち回る財務省に経団連が激怒

 東日本大震災による深刻な被害は、日本の経済財政運営にも大きな影響を及ぼした。民主党肝いりの子ども手当や高速道路無料化は見直しの機運が高まる一方、浮上した「復興税」案にも、それを受け入れる空気が大勢を占めている。
 その中で、企業の国際競争力維持のために法人税の税率引き下げを強硬に主張してきた米倉弘昌・日本経団連会長(写真)が三月末の記者会見で「法人減税をやめていただいて結構だ。その代わり迅速に復興に動いてほしい」と発言し、注目を集めた。米倉会長は税制改正論議では法人減税を一貫して訴え続け、「財界の利益しか眼中にない」(政界筋)と顰蹙を買った張本人。それが震災後、あっさりと断念したため、驚いた経済産業省は「慌てて経団連に問い合わせた」(経産省関係者)。
 とはいえ、経団連側はその後の成り行きに怒りを募らせている。というのは、今年度の税制改正では法人税率引き下げと引き換えに、税率構造を見直してより広く税を徴収する「課税ベースの拡大」が盛り込まれた。税率引き下げをあきらめた以上、経団連は「課税ベースを元に戻すのが筋」(幹部)との論陣を張ってきた。
 しかし、財務省は経団連の言い分に耳を貸さず、課税ベースの話にダンマリを決め込んだ。同省の態度に経団連は、「震災に乗じて巧妙に立ち回り、自分たちに都合のいいところだけを持っていった」(同)と激怒するが、あとの祭りの観が強い。
「お公家集団」の経団連が自らの脇の甘さのせいで、百戦錬磨の財務省にまんまと一本取られた格好だ。


 米倉会長の擁護論に当の東電は迷惑顔

 その米倉会長は今、原発事故で国民的批判が集まる東京電力を必死に守る「用心棒」といわれている。震災直後から東電と原発支持を表明、原発トラブルの初動ミスが指摘されると、「東電の対応は悪くない。悪いのは国とマスコミ」と擁護した。
 その後も米倉会長の東電擁護論はエンジン全開だ。「東電の努力には頭が下がる」「東電の対応に甘さはない」との発言を繰り返し、責任追及の矛先を国とマスコミに向ける。賠償問題では「原発の安全基準は国が定めたのだから、損害賠償も国が全面的に担うべきだ」、風評被害についても「テレビ報道が悪い。チャンネルを変えたくなるような評論家ばかり」と批判。東電の責任論には一切言及しない。
 これだけ全面支持を公言する「財界総理」だが、東電側にはむしろ迷惑がられている。実際、東電幹部が頭を抱えた米倉発言がある。四月十一日に東電の清水正孝社長が福島県の佐藤雄平知事に門前払いされた件について、米倉会長は「苦境にある時に、あのような対応をする人物はリーダーとしての資質に欠ける」と知事批判を口にしたのだ。これを聞いた東電幹部は、「知事批判は地元批判と同義。こちらが地元対策で必死になっている最中に、地元をこれ以上刺激してほしくない」と、まさにひいきの引き倒しになっている。
 米倉会長が東電擁護にこだわる理由を、ある財界関係者が説明する。
「米倉会長は長年財界活動をしてきた割には交友範囲が狭い。そんな米倉会長が最も信頼を寄せるのが東電の勝俣恒久会長なんです」
 東電擁護発言が米倉会長の個人的付き合いから来るものだとしたら、「国民とともに歩む経団連」というスローガンとかけ離れている。


 ロシアからの忠告を生かせなかった政府・東電

 米倉会長がいくら擁護しても、政府や東電の初動対応にはまずさがあった。チェルノブイリ原発事故で指導的立場にあったロシアの専門家による貴重な忠告を生かせなかったことがわかったからだ。
 忠告をくれたのは、モスクワにあるコルチャトフ原子力研究所のアクショフ副所長。同副所長は、日本政府が福島第一原発三号機の使用済み核燃料プールの温度を下げるため放水することを報道で知り、急遽、三月十七日に来日した。
 多忙を理由に最初は面会を断られた原子力安全・保安院に乗り込み、アクショフ氏は「チェルノブイリではヘリや消防車による派手な放水によって放射線を含んだチリが周辺に飛び散った。特にヘリからの放水はやめるべきだ」と忠告したが、同日午前、陸上自衛隊の大型ヘリコプター二機による四回の放水が強行された。次いで警視庁機動隊、自衛隊、東京消防庁の順番で消防車による放水が行われた。
 ヘリによる放水は菅直人首相が北沢俊美・防衛相に指示したとされる。防衛省幹部は「首相の指示もあるし、プールの水温が上がっていた。待ったなしだった」と言うが、アクショフ氏の忠告がどこまで伝わっていたのかは不明だ。政府はこの後、コンクリート・ポンプ車を使った放水に切り換えたが、これはチェルノブイリ原発で採用したアクショフ氏のアイデア。原子力安全・保安院は途中から進言を受け入れたようだ。
 北方領土問題をめぐって日露両政府には不信感があったとしても、貴重な忠告を生かしきれなかったことは残念としかいいようがない。


 スマートグリッドで覇権を狙うトヨタ

 「三・一一」ショックの悪夢がいまだ覚めやらぬ四月六日、トヨタ自動車と米マイクロソフト(MS)が、次世代の車載用情報システムの共同開発でタッグを組むことで合意した。
 MSが持つインターネットを使ったクラウドコンピューティング技術を使い、トヨタが二〇一二年中に発売予定の家庭用電源で充電可能なプラグイン型の電気自動車、ハイブリッド車向けにITサービスを提供する。両社は一五年までに、トヨタの販売網がある世界約百七十カ国・地域でこのサービスを提供し、次世代車載用情報システムでの世界標準を目指す。
 しかし、その先には、自動車とITの融合を飛び越え、エネルギー分野を視野に入れたトヨタの野望が見える。合意には、太陽光発電をはじめとした新エネルギーと、化石燃料を主体とした従来型エネルギーを効率的に組み合わせて活用するスマートグリッド(次世代送電網)の技術開発での協力が織り込まれているのだ。
 既にトヨタは、スマートグリッドの手法で新世代の街、都市づくりを目指す実証実験を青森県六ヶ所村などで手がけている。東京電力は原発事故でそんな覇権争いに加わる余力などはもう存在しない。そんな状況下でスマートグリッドの覇権争いは俄然、分散型のトヨタに傾き出した。「一代一業」がある種T家訓Uのトヨタの創業家にあって、その成否は別にして、今回の巨人連合を「自動車の世界に無限の広がりが出る」と語るトヨタの豊田章男社長の言葉からは、その突き進む「道」が定まったかにもみえる。


 ユーシン社長公募の裏にファンドとの確執

 次期社長を公募するという、上場企業としては前代未聞の挙に出て注目されていた自動車部品メーカー、ユーシン。このほど次期社長候補に外務省キャリア官僚の八重樫永規氏を、また、フェリカネットワークス取締役の丸子秀策氏を副社長候補に決めた。五月十九日の臨時株主総会で取締役に選任、半年後をめどにそれぞれ社長、副社長に昇格させる。
 実は、ユーシンが異例の社長公募をせざるをえなくなった遠因は、外資系ファンドとの確執にある。同社を率いてきたのは創業家出身の田邊耕二社長。しかし、現在七十七歳で健康への不安があり、二〇〇六年四月に後継社長選びを条件にRHJインターナショナル(旧リップルウッド)から二〇%の出資を受け入れた。
 RHJは日本長期信用銀行(現新生銀)の買収をはじめ、自動車部品業界の旭テック、日産系のナイルス、ドイツのホンゼルを買収するなど、同業界には精通したファンドとして知られる。そのRHJが〇六年六月に送り込んでいたのがナイルスの元社長である竹辺圭祐氏。しかし、竹辺氏は〇七年九月に解任される。竹辺氏が提案したユーシンによるナイルス買収案が、当時最高顧問となっていた田邊氏の逆鱗に触れたのだ。
「PHJ傘下で実質債務超過だったナイルスをユーシンに買わせるとは何事だというのが田邊氏の本心。今年二月にはRHJとの資本関係は完全に解消されることになったのです」と自動車担当記者は解説する。
 〇八年二月に社長に復帰した田邊氏だったが、後継社長候補の不在という状況は変わらぬまま。社長公募はそんな田邊氏が打った苦肉の策。業界には元外務省キャリア官僚に社長が務まるのかとの見方が強い。


 通常紙面復活は恐る恐る…、大震災後遺症に悩む新聞社

 東日本大震災と福島第一原発事故の二重災害は、原発事故に絡んで被災者が増大するという前例のない事態に発展。新聞各社は長期化した特別報道体制の収拾に頭を悩ませ、通常紙面復活のタイミングも懐具合を確かめながらおっかなびっくりで探る羽目になった。
 大震災の発生直後は新聞各社とも全社挙げての臨戦体制を敷いたが、もともと「短期決戦」を念頭に置いたもので、被害の拡大や原発事故の深刻化は「当初の想定を超えてしまった」。かつての好況時なら、編集局主導で湯水のように取材費を使い、増ページで紙面展開したところだが、広告収入の落ち込みと販売部数の減少で青息吐息だけに、兵站(へいたん)を十分に確保することもままならない。発生から二週間が過ぎたあたりから、各社とも報道の使命感と兵糧(ひょうろう)攻めの狭間に立って、我慢比べが始まった。
 通常紙面復活の指標は、最も閲読率の高いラジオ・テレビ面の掲載面を見ると、わかりやすい。
 最初に音(ね)を上げたのが「産経新聞」。四月一日の年度替わりを機に最終面の定位置に戻し、文化面なども復活させてほぼ平時の紙面に戻した。
「毎日新聞」と「読売新聞」は、発生からちょうど一カ月たち、統一地方選前半戦の開票結果が確定した三月十一日夕刊から最終面に復活させた。一部特集紙面の休載は継続したものの、全体としては平時に近い紙面展開となった。
 一方、「朝日新聞」は、朝刊こそ十二日から最終面に掲載したが、夕刊は中面のまま据え置いた。四コマ漫画の位置も戻さず、特別紙面を継続する構えをとった。
 各社の判断は、経営体力と微妙に連動しているようにもみえる。報道の質と量もカネ次第か。


 地熱発電で活気づく富士電機の納入実績

 地中のマグマなど高熱エネルギーの一部を蒸気で取り出し、直接タービンを回して発電する地熱発電が見直されている。この分野をリードしてきた富士電機システムズの火力・地熱技術部担当部長、山田茂登氏も活気づく。
「立ち上げコストが割高とか、地熱発電用地として有望な地域が国立公園内に多いなどで、日本の地熱発電量は頭を打ったままです。しかし、十年、二十年という長期のランニングコストを勘案すれば決して割高ということはありません。二酸化炭素の排出量も火力発電の約二十分の一。半永久的な自然資源を活用できるのは大きな魅力です」
 同社は二〇一〇年時点の世界の地熱発電設備容量、約一万七百十五メガ?のうち、約二三%分の地熱タービンを納入した実績を残している。
 さらにニュージーランドでは、一〇年に六百二十八メガ?だった地熱発電設備容量を一五年には一千二百四十メガ?にする計画が進んでいる。米国も三千九十二メガ?を五千四百メガ?に、ロシアも八十二メガ?を百九十メガ?にといった具合に、地熱発電は「環境に優しい再生可能なエネルギー源」として存在感を高めつつある。
 新エネルギー財団では地熱エネルギー委員会を主宰し、地熱発電に対する啓蒙活動を展開。また政府・関係機関への提言等の動きを活発化させている。こうした流れを受け、前出の山田氏は「私どもでは、昨年、低温の地熱でも発電可能な設備を開発いたしました。水分を含まない高温の岩体に水を注入し、蒸気を発生させる技術も開発済みです」と腕を撫している。


 西松JAL前社長が城西国際大学で教授に就任

 昨年一月十九日にJAL(日本航空)が経営破綻した時の社長、西松遥氏(写真)が、この四月一日から城西国際大学観光学部(千葉県鴨川市)の客員教授に就任した。観光政策論や観光ビジネス論、そしてリスクマネジメントを教えるという。JAL経営破綻の責任者がリスクマネジメントを教えるのも皮肉だが「失敗から学んだ」ことは多いだろう。
 だが、西松氏の客員教授就任は学内でも疑問の声がある。
「城西国際大学の経営は順調とはいえませんからね。著名人を教員に迎えて学生を集めようとしているんじゃないでしょうか。その影響か、他の教員の整理も活発化していますけどね」(同大学関係者)
 観光学部の卒業生には、航空会社や旅行会社は有望な就職先だ。西松氏は今も財団法人日航財団の理事長も務める。それにJAL前社長の肩書も利用できるのでは、という大学側の思惑もあるのかもしれない。
 城西国際大学の学長は、金融再生担当大臣や厚生労働大臣を歴任した政治家だった柳沢伯夫氏だ。彼は西松氏と同じ静岡県の出身でもある。
 今年三月二十八日にJALは東京地裁から会社更生手続き完了の決定を受けたと発表。会社更生法適用からわずか一年二カ月で裁判所の管理下から離れたわけだ。そこに至るまでには、整理解雇を受けた百六十五人を含め大勢の社員がJALを去らなければならなかった。まだ将来の見通しどころか、再就職先の決まらない元社員も少なくない。そうした中で西松氏の辞任後の人生は“巡航体制”に入ったといえそうだ。


 実は解明されていない「低水準」被曝の影響

 震災後、世界の関心は津波被害から福島第一原発事故の放射能汚染にシフトした。原発から放出された放射性物質は、周辺地域だけでなく東北から関東一帯に拡散。毎日各地の数値が公表されている。二百??以上離れた東京でも、多い時には平常時の一時間当たり〇・〇二八〜〇・〇七九マイクロシーベルトから〇・一マイクロシーベルトと、五倍程度の放射性物質が降り注いだ。
 放射性物質が健康に与える影響は、大量被曝の場合を除き、実ははっきり解明されているわけではない。従来の放射線被曝の例から年間一〇〇?シーベルトを超えると悪影響が出ることはわかっているが、それ以下だと専門家の意見も大きく食い違う。
 今、懸念されているのは一〇〜二〇?シーベルトといった低レベルでの放射線被曝のリスクだ。放射線被曝に関する国際機関ICRP(国際放射線防護委員会)では、チェルノブイリ原発事故の経験から、汚染地域ではがんの死亡率が二〜三%増加すると推測している。同事故の汚染地域の子供の甲状腺がんは、汚染の強い地区では百倍(一〇〇〇〇%増加)になり、患者数は十六年間で約五千人、白血病などの増加も報告されている。
 ただし、ICRPはそれ以上の断定を避けている。甲状腺がん以外のがん増加については、まだ結論を出せるだけのデータに乏しいからだ。
 一方、放射線はわずかな線量でも健康に影響を与える可能性があるとする専門家もいる。広島、長崎の追跡調査や原発作業員の調査などから、五〇?シーベルト以下でもがんの死亡率は増加するという研究があり、最近では、低い線量でも程度の差はあれ発がん率は上がるという説が有力。当然、東京で浴びる程度の放射線量でも影響を受けるという。
 ただ、明らかなのは、低年齢ほど影響を受けやすいこと。ならば持病を持つ高齢者は、慣れぬ環境に身を置くほうが健康を損ねる可能性は高い。避難指示は子供や妊娠中の女性、今後子供を作る若年層を優先させるなど、きめ細かい対応が必要だ。


 放射能漏れで“敵前逃亡”自称・戦争特派員を更迭

 東日本大震災による福島第一原発の放射能漏れ事故で共同通信福島支局が一時丸ごと山形に移転した話は「週刊文春」などが報じたが、先導したY支局長が三月末に更迭された。赴任後一年足らずの異例の早期交代は明らかな「解任」だろう。
「支局長はユーゴスラビア・コソボ戦争などを取材した国際畑の記者で、『戦争特派員』などと自称していました。福島市の放射能値はまだまだ低く、この程度の放射能が怖くて何が戦争特派員だと笑いものになっています」(地元紙記者)
 この支局長はもともと“環境派”で、ツイッターのヘビーユーザー。福島での「被曝体験」やヨード剤を飲んだ話を書き込んだり、東電幹部の情報秘匿を批判していた。そのくせ三月十一日の大震災で福島全域が停電し、放射能漏れが伝えられるとパニックに陥り、支局員を連れて山形支局に脱出。本社の指示で福島に戻ったのは二十四時間後だったという。
「共同通信は地元紙の『福島民報』と『福島民友』に記事を配信していますが、支局の緊急移転は報道の義務を怠り、福島を愚弄したとして、両紙幹部から顰蹙を買った。共同は契約を破棄されかねず、慌てて更迭したのでしょう」(新聞業界筋)
「敵前逃亡特派員」として、福島では長く語り草になりそうだ。


 「禁断の実」を食べていた原発批判の大手マスコミ

 「暴走・原発」「放射能の恐怖」「政府・東電のなれあい」──。新聞、週刊誌、テレビなどではおどろおどろしい見出しが躍り、原発批判の大合唱だが、これは、醜くはないか。これらメディアが「原発推進応援団」の一翼を担ってきたのは紛れもない事実だ。新聞・通信社は全国九電力で構成する電気事業連合会提供の企画広告の形で「原発の安全性」を再三アピール。通常報道でも原発礼賛の記事を多数掲載してきた。
 さらに原発をテーマとした講演会を原発立地候補地などで主催、自社の記者、解説委員やOB評論家、大学教授などを派遣して「原発は絶対安全」を訴えてきた。ある大手マスコミは「環境懇話会」なる組織までつくって原発建設容認の世論づくりに奔走した。エネルギー担当記者や解説委員の中には原発取材と称して電力会社のアゴ足つきで現地へ旅行に出かけ、安全性をアピールする記事を書いた者も多かった。スポンサーの意向で批判的な記事差し止めとなったケースもあったと聞く。大手新聞関係者が国や地方の審議会委員はもちろん電力会社の社外役員や顧問に就任したケースさえあった。
 電力会社からのメディアへの巨額資金の提供は民放テレビでも同様。「TEPCO」(東電のロゴ)や「電事連」のCMが繰り返し流されたほか、官民で「原発こそ成長戦略」と原発インフラ輸出を推奨する特集番組やコメントも目立った。地球温暖化の恐怖を煽り、CO2を出さない「地球にやさしいエネルギー」として原発を持ち上げたのも大手マスコミだ。経営環境が厳しい大手メディア界にとって「原発特需」はまさに干天の慈雨。「原発安全神話」創りに加担して禁断の実を食べたことをすっかり忘れているようだ。原発は短絡的批判より議論の時なのだ。


 日テレ氏家会長死去で名前の出る次期社長候補

 日本テレビ放送網の首脳部人事が、大詰めを迎えている。民放界のドンとして君臨した氏家斉一郎会長の死去に伴うもので、細川知正社長の代表取締役会長への昇格が前提となる。新社長の選任には、大株主の読売新聞グループ本社の意向が強く反映され、「六月の株主総会前の人事確定」(同社幹部)を目指している。
 読売本社内部では、政治部出身の渡辺恒雄会長(写真)が実権を握って以降、盟友で経済部出身の氏家会長との間で「新聞は政治部、テレビ関係は経済部が仕切る」というT暗黙の了解Uが成立したとされ、両部幹部のT棲み分けUが続いていた。
 この路線を踏襲する形で、氏家会長は一九九六年、読売の経済部長経験者の久保伸太郎氏(六七)を後継者含みで日テレに出向させ二〇〇五年、久保氏は社長に就任した。ところが〇八年に放映した番組「バンキシャ」で扱った「岐阜県庁裏金疑惑」が誤報だったことから、久保社長は引責辞任し、現在は相談役である。
 その間に、政治部からは弘中喜通・元政治部長(六三)が日テレに役員で出向。弘中氏は昨年、読売本社に専務で復帰し、入れ替わる形で、これも政治部長を勤めた大久保好男氏が取締役に就任している。
 こうした経緯から、社長候補には経済部関係では久保相談役の返り咲きや中村仁・大阪本社社長、大田宏・西部本社社長が浮上、政治部関係では日テレ時代の経営手腕を買って弘中専務が有力視されている。


 朝日新聞とテレビ朝日、首脳部人事で不協和音

 さて、一方の朝日新聞グループ。こちらは朝日新聞社とテレビ朝日との関係が円満とは言いがたい状態が続いている。朝日新聞社はテレビ朝日株の二四・七二%を保有する筆頭株主で、今の早河洋社長を除けば歴代の社長は朝日新聞社出身者だった。一方のテレビ朝日は、朝日新聞社のオーナー家である村山家保有の株式を一部譲り受けたため、今では朝日新聞社の株式を一一・八八%持つ大株主。上下関係だったのが、相互に株式を持ち合うようになって微妙な齟齬をきたしているようなのだ。
 朝日関係者によると、朝日新聞社の秋山耿太郎社長は六月の株主総会で会長職に就くことを狙っており、後任社長には政治部出身の吉田慎一氏か経済部出身の和気靖氏、同じく経済部出身の久保田泉氏らの名前が挙がっている。この役員改選を機に、ソリの会わないテレビ朝日の早河社長への影響力を強めようと、秋山氏は腹心の池内文雄・朝日新聞社常務をテレビ朝日に役員として送り込むことを検討していた。早河氏は、朝日新聞出身者ではないテレ朝生え抜きのせいか、秋山氏にことごとく盾をついてきたからだ。
 池内氏を送り込む背景には、朝日新聞の箱島信一・前社長の盟友である君和田正夫会長を早めに退陣させ、その後釜の会長職に早河氏を据えるとともに、社長職を再び朝日の天下りである池内氏にする目論見があるためとされる。
 しかし、早河氏が池内氏のテレ朝への役員入りに難色を示し、これに君和田氏が同調。池内氏の天下り阻止で両者は意見の一致をみたという。このため朝日からテレ朝に送り込まれる役員は久保田氏など別の人物になる可能性も出てきたようだ。


 大震災で外国人観光客激減、あえぐ京都の旅館・ホテル

 東日本を襲った大震災と原発事故が全国の観光地に影響を及ぼしている。特に放射能への恐怖が影響して海外からの観光客が激減し、観光都市・京都はお花見の自粛と相まって壊滅的な打撃を受けている。
 京都のホテル、旅館などの観光関連業界にとっての打撃は、外国人観光客のキャンセルもさることながら、今年は法然上人八百回忌と親鸞聖人七百五十回忌にあたり、今春に大掛かりな行事を予定していたが、今回の大災害で急遽、今年秋に延期されたことが大きかったという。
 なにしろこの二つのビッグイベントは、少なく見積もっても八十万人の信徒のお参りが見込まれていたからだ。法然上人の知恩院、親鸞聖人の本願寺はもとよりだが、この膨大な数の信徒を受け入れるホテル、旅館、それに観光地にとっては、改築・改修工事など先行投資をして準備万端整えていただけに、当てが外れ、がっくりというところだ。
 ある老舗の大手旅館経営者は「秋に延期というのがまだ救いですが、信徒さんを当てにして、かなり改装するなど手間暇かけたのでショックです」という。ところが別のホテル経営者は「実はあまり大きな声で言えないのですが、外国企業の幹部らが放射能汚染を恐れて、東京からビジネス拠点を関西に移し長期滞在してくれているので、一息ついています。ただこの人たちは観光見物じゃないので、観光地は打撃でしょうね」と述べている。


 上海でにわか“風評被害”、日本人向け不動産が急騰!?

 東日本大震災と原発事故による「風評被害」は日本だけの話ではない。海外在住の日本人も大変な目に遭っているのだ。
 現在、海外で暮らす日本人が約五万人と最も多い都市となった中国・上海では、四月初めから日本人向けの不動産価格、賃貸物件の価格が急に値上がりを始めたという。「契約更新をしようとしたら、なんと三割も値上げを要求された」「新たにマンションを購入しようとしたら、相場より高い額を提示された」という声が日系社会から聞こえてくる。
 例年三月から六月にかけては、日本人駐在員の人事異動に伴う入転居のシーズンで、契約更新や新契約が多い。特に日本人が多く住む虹橋(ホーベイ)地区では、「今後、日本から大挙して富裕層や企業駐在員が上海に逃げてくる」という噂が流れ、一部の業者や個人の家主が賃料をつり上げたようだ。
 実は、東京を脱出した外資系企業の外国人社員や家族が香港やシンガポールに移ったため、これらの都市でも不動産の価格や賃貸料が一時的に値上がりした。上海もその影響を受け、そこに「これからは日本人が逃げて来る」という風説が重なったための火事場泥棒的値上げだ。
 中国では連日のように日本の状況が報道され、その見方はかなり手厳しいものがある。「経済参考報」は「危機を有効に抑え込むことができなければ、日本経済は『孤島』になる」と報じ、「第一財経日報」は「(今回の災害は)日本企業の市場シェアを奪取したり、買収したりする好機」とまで書いている。まさに“他人の不幸は蜜の味”という感じだが、商魂たくましい中国人の本音がむき出しになっている。
 原発事故が終息しない限り、まだまだ、こうした見方から海外でも風評被害に遭う日本人は増しそうだ。


 ドイツ原発政策見直しで代替エネルギー計画に狂い

 ドイツで原発を運営するエネルギー大手四社が、再生可能エネルギーの開発促進を目的とする政府の「エコ基金」への資金投入を停止し、政府の代替エネルギー開発計画に大きな狂いが生じている。政府が原発の稼働延長計画を凍結したことに対する対抗措置で、政府は手痛いしっぺ返しを食らった。
 メルケル政権が原発に慎重な姿勢に転じたのは福島第一原発の事故がきっかけ。日本の事故の影響で、ドイツの代替エネルギー開発計画が打撃を受ける事態になっている。
 メルケル政権は昨秋、シュレーダー前政権が打ち出した原発の全廃計画を見直し、国内に残る原発の稼働期間を平均で十二年延長する方針を決めた。再生可能エネルギーが定着するまで原発が必要というのが表向きの理由だが、連立与党の支持基盤である実業界に配慮したとの見方がもっぱらだった。
 その見返りとして、エネルギー会社には原発の運営に伴う収益の一部をエコ基金に納入するよう求め、エネルギー会社側も同意した。納入額は二〇一六年までに総額十四億ユーロ(約一千七百億円)に達すると見込まれていた。
 しかし、ドイツ国民の間ではもともと、原発への抵抗感が強い。そこに福島第一原発の事故が発生したことで、メルケル政権の支持率は低迷し、州議会選で連敗を喫する失態を演じた。メルケル首相にとっては、政治生命を断たれぬためには原発政策を見直すしかなかった。
 メルケル政権が脱原発へと舵を切ったのを受け、ドイツでは早くも電力不足への懸念が広がっている。メルケル政権は代替エネルギーの開発のペースを上げる必要に迫られているが、エネルギー各社の「反乱」で資金不足に陥るのは必至だ。


 バーレーン問題などで米・サウジの同盟に亀裂

 中東情勢は複雑怪奇、日々、政局は猫の目のように変化する。日本はペルシャ湾の安全にしか関心がないが、原油高騰の危機が迫っている。もしサウジアラビアのアブドラ国王体制が転覆すると、原油は一バレル=二〇〇?を間違いなく超えるだろう。
 中東全域の不安定化、特に世界七位の産油国=リビアが内戦に突入して以来、原油は高騰した。加えて、イランの対岸、バーレーンの王政が危機に瀕しており、ペルシャ湾が封鎖されると日本へのタンカーも航行できなくなる。
 バーレーンに改革を要求する米国とて表向き「民主化」を迫るポーズを示すが、本心は王家の存続にある。だが、米国とサウジアラビアの鉄壁の同盟に深い亀裂が入った。エジプトとバーレーンをめぐって深刻な対立が出たのだ。
 米軍第五艦隊が基地を置くバーレーンは少数派のスンニ派が王政を敷き、多数派シーア派を抑える。イランからの移民も夥しく、人口比では圧倒的にシーア派だから不満が昂ぶって反政府暴動へと発展し、相当数の死者が出た。そこでサウジアラビアは国境がつながる重要拠点でもあるバーレーンに一千二百人の軍隊を派遣。ところが米国がこの動きを知らなかった。サウジアラビアは前日までリヤドを訪問していたゲーツ国防長官にひと言も相談しなかった。
 それでなくともエジプト政変で、米国はムバラク退陣を舞台裏でお膳立てし、エジプト軍幹部を背後で操作した。この「民主化」のドミノという米国のやり方をサウジアラビアは不快に思ってきた。そこに今回のバーレーン問題が起こり、両国は外交的に険悪な関係に陥ったというわけだ。
 不安定さを増す中東情勢にも目を向けていなくてはならない。


 米議会に共和党の新星、ライアン議員の注目度

 ワシントンに旋風を呼ぶ共和党の新星が現れた。若い下院議員でウィスコンシン州選出。四十一歳。黒のスーツに鷲のワッペン、黒髪。大学で経済学を修め、二十九歳で初当選、今では下院予算委員会・委員長だ。
 世界が注目するポール・ライアン議員(写真)は、オバマの進める医療制度改革、保険制度改革による連邦政府の予算肥大化と鮮明に対峙し、大幅な予算カットを主張している。ライアン議員の計算によれば、オバマ予算には二兆?の冗費が含まれるとし、保険福祉医療制度を「予算上のフランケンシュタインだ」と酷評して嵐を呼んだ。
 ライアン議員の「向こう十年間でわれわれは十兆?を削減できる」という発言はあまりにも大胆な数字なので、共和党内部でも「やりすぎ」と批判があったが、四月十一日に次期大統領選挙へ出馬表明したミット・ロムニー氏(現時点で最有力候補)が、このライアン予算案を支持するとしたあたりから急速に現実味を帯び始めた。ライアン議員のプログラムで共和党がまとまれば、次の大統領選挙でオバマ大統領と渡り合うキャンペーンの基軸にできるという政局判断があるからだ。
 ライアン議員は若さを売り物に、人気凋落気味のオバマ大統領への挑戦者として大物のイメージが膨らみ、数年後には大統領候補に出る素質も備えたようだ。





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