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 衆院選に向け次期総裁争い、ポスト谷垣は石破vs.石原

 迷走する菅政権の短命説が広がる中、野党第一党である自民党では不人気の谷垣禎一総裁の後継争いが今後の大きな焦点だ。
「谷垣総裁の下で衆院選に臨むことは考えられない。勝てる選挙も負ける」とは、世代交代を唱える自民党の「改革派」とされる中堅議員の言だ。
 谷垣氏は、昨年九月の自民党総裁選で森喜朗・元首相や額賀福志郎・元財務相、古賀誠・元幹事長、伊吹文明・元文部科学相ら、党内の長老組の支持を受けて総裁に就任した。こうした経緯から谷垣氏は旧世代の象徴とされ、次世代派は次期衆院選までに総裁の首をすげ替えて、旧世代の影響力を排除したい考えだ。
 そうした中で取り沙汰されるのが石破茂・政調会長(五三)だ。当選八回の石破氏は防衛相や農林水産相を経験したベテランで、額賀派に属するが、「派閥解消を提唱」。ポスト谷垣には強い意欲を持っている。
 一方、旧世代の後継としてポスト谷垣の座を虎視眈々と狙っているのが石原伸晃・幹事長(五三=写真)だ。石原氏は石破氏と同じ慶応大卒で、当選七回。行革担当相や国土交通相、党政調会長などの要職を経験。しかも、石原氏は「爺殺し」の異名を持ち、森氏らの覚えも悪くない。
 石原・石破両氏は互いに水面下で火花を散らしている。民主党政権の崩壊の足音が近づくにつれ、自民党内の対立が深まりそうだ。


 法務・検察側に残った仙谷官房長官への怨念

 T大官房長官Uとなった仙谷由人氏を支えるのは官僚機構である。頭の回転の速さと人心掌握術は抜群で、時に恫喝も加える緩急自在のT技Uで官僚を操り、情報をあげさせ、菅直人政権の「影の総理」となった。
 ただ、「法務・検察」は掌握していない。もともと全共闘出身の人権派弁護士だったこともあり、新左翼・過激派を監視して取り締まる公安部を持つ検察庁は肌が合わない。
 そうした距離感もあって、海上保安庁が尖閣諸島沖で逮捕した中国人船長を釈放する際、「那覇地検の判断」として官邸は知らぬ顔を決め込み、検察庁を怒らせた。
「地検の判断で釈放できるわけがない。『政府が関与しない解決』を仙谷氏は望み、検察はそれを呑んだ。そうした圧力を嫌う役所だが、今回は主任検事が逮捕された大阪地検事件の直後という弱みもあった。官邸の意向に従ったとはいえ、仙谷氏へのT怨念Uは残った」(司法担当記者)
 小沢一郎・民主党元代表をターゲットにした捜査は実らず、検察審査会のT助けUを借りて強制起訴に持ち込むなど、大阪地検事件と併せて検察は失点続きで、「政界捜査」など望むべくもない。
 とはいえ、「政治家と官僚を狙う猟犬」という捜査検事のT本能Uを思えば、またいつか復活する。その時、仙谷氏は、かつての小沢氏のように検察の標的となるはずだ。
 日本社会党出身で野党暮らしが長かった仙谷氏には、小沢氏のような「政治とカネ」をめぐる利権構図は発生していない。だが清濁併せ呑む性格で弁護士という職業のせいもあって、目的のためなら手段を選ばず的で、危うい人間関係に踏み込んだり、強権を発動したりといった過去がある。
「法務・検察」にとって仙谷氏は、共闘するより対峙する政治家となりそうだ。


 菅政権を突き放せない公明党のジレンマ

 参院でキャスティングボートを握る公明党は二〇一〇年度補正予算案に反対し、菅政権との対決姿勢をアピールしつつ予算関連の地方交付税法改正案には賛成し、将来の連携の余地を残した。菅首相はかつて、公明党と支持母体の創価学会を政教分離問題で追及したことがある「仏敵」。その政権を突き放せないところに公明党のジレンマがある。
 創価学会=公明党の基本戦略は、統一地方選で候補者全員の当選を果たし、組織の足腰を強化した上で、十分な準備期間を置いて衆院選に臨むというもの。追い詰められた菅直人首相による「破れかぶれの解散」や、政権を引き継いだ新首相が早期解散に打って出る事態は避けたいのが本音だ。常識的には、補正予算への対応で対決姿勢を鮮明にすれば、次期通常国会で一一年度予算案とその関連法案の成立に協力するのは「困難になる」(ベテラン議員)。
 こうした事情から、執行部は当初、補正には賛成する方向だった。だが、菅政権の相次ぐ失態と世論の批判の高まりに「距離を置かざるをえなくなった」(同)のが真相だ。
 ある有力議員は「菅首相の退陣を条件に予算・関連法案を成立させ、解散は先送りにできないか」と期待を込めて語るが、自民党とみんなの党が受け入れるとは限らず、むしろ「新首相による解散の確約」を求めてくる可能性もある。そうなった場合、公明党が民主党政権に手を貸せば世論の批判を浴び、統一地方選に大きなマイナスとなりかねない。
 前回全滅した小選挙区に再び候補者を立てるのか、比例代表に専念するのか。また、定年に該当する落選中の太田昭宏・前代表の処遇など、内部で解決すべき課題を多数抱える山口那津男代表の苦悩は尽きない。


 先行きが危ぶまれる与那国島の自衛隊誘致運動

 中国漁船衝突事件が起きた尖閣諸島近くの与那国島(沖縄県与那国町)が打ち出した陸上自衛隊誘致運動の行方が怪しくなっている。道路に掲げられた「誘致反対」の横断幕は「誘致賛成」よりも目立つ。
 与那国町による誘致は昨年六月、町長、町議会議長、国防協会会長の三人が上京し、防衛相に「陸自部隊配備の要望書」を手渡したことで表面化。陸自の部隊は沖縄本島の第一五旅団(二千百人)が最南端。宮古島か石垣島に一個中隊(二百人)程度の部隊配備を検討していた防衛省は、この誘致を受けて与那国配備を最優先とする方向で検討を始めた。
 ところが九月に町議選があり、定数六のうち賛成派が四人、反対派が二人当選し、それまで賛成派と中間派しかいなかった議会構成が変化した。反対派議員が注目しているのが防衛省に提出した要望書の有効性だ。
 反対派の田里千代基町議は「議長は町議会の合意を得ず、勝手に公印を押した。また議長は『琉球新報』の取材に『要請には自費で行った。私的な意味合いが強い』と答えている。要望は議長による私的な行動であり、無効」と主張する。防衛省は「町長と議長の公印があり、正式な要望と受け止めている」というが、反対派議員らは十二月の町議会で公印問題を追及する構え。誘致運動をめぐり島は大揺れとなりそうだ。
 防衛省が配備を検討しているのは二百人規模の「沿岸監視隊」。しかし、与那国町の有権者は一千四百人にすぎず、自衛隊が配備されれば「自衛隊二百票」の行方が町の行政を左右する。与那国町が目指す自立自治とは裏腹に、「自衛隊の町」になることだけは間違いない。


 企業献金受け入れ再開に財界も見放す民主党の変節

 迷走を続ける菅内閣は、世論調査での支持率が三〇%を割り込む苦境に陥った。九月の代表選では「これ以上、総理大臣が交代して政治が混乱するのは避けるべきだ」(財界首脳)と菅直人首相の支持を鮮明にした経済界も、最近は愛想を尽かした感がある。経済界が民主党政権を「気持ちの上では見放した」(同)決定打になったのが、十月中旬に岡田克也・幹事長(写真)が表明した企業・団体による政治献金の受け入れ再開だ。
 財界総本山の日本経団連は、御手洗冨士夫・前会長時代、露骨に自民党寄りだったのが災いして、昨年の政権交代以降、民主党に冷たくあしらわれてきた。それを受けて今春、企業が献金先を判断する根拠となってきた政党への「政策評価」を中止し、献金の斡旋機能を放棄することを決めた。その後、個人献金のあり方などを研究するため、内部作業を本格化しようとしていた。
 民主党がそれまでの方針を転換し、条件付きながら企業献金の受け入れ再開を打ち出したのは、まさにその矢先。経済界は「偉そうなことを言っておきながら、やっていることはご都合主義。彼らの態度は信用できない」(大手製造業幹部)などと呆れ果てている。財界関係者の間では、岡田幹事長は「筋が通った、ぶれない政治家」(経済団体関係者)と評価が高かった。それだけに献金問題での「変節」には落胆の色が濃い。


 経済界の猛反発で温対法に黄色信号

 民主党政権が成立を目指す地球温暖化対策基本法(温対法)成立に黄色信号が灯っている。同法の核となる「三点セット」の導入が極めて困難になっているからだ。
 温対法に猛反発する経済界は、政府内で環境省と対立する経済産業省との同調を決め、「温対法潰し」に躍起となっている。特に三点セットの一つ「排出量取引制度」に関しては断固拒否の姿勢を貫いている。
「これでは、まるで戦中の『配給制』だ」──。ある財界首脳は憤る。怒りの矛先にあるのが「キャップ・アンド・トレード」という別名を持つ排出量取引制度。各企業に、ここまでは排出してよいという排出枠(キャップ)を国が定め、その過不足する量を市場で売買する制度を指す。
 経済界が拒否反応を示すのが、いわゆるキャップの部分。国が排出枠を決めることに強い懸念を抱く。「炭素の排出は企業の生産活動そのもの。その排出量を国が勝手に決めることは、企業の生産活動に国が関与することを意味する」というのが経済界で共通する見解。あくまでも各企業の自主行動計画に任せるべきとの主張は揺らいでいない。
 排出量取引制度の抜本的見直しに向けて経済界が同調を求めたのが経産省。経産省は長年、温暖化対策の主導権をめぐり、常に環境省とのバトルを繰り広げている。経済界から見れば、「敵の敵は味方」なのだが、経産省が目指す他の二点の、「再生可能エネルギーの全量買い取り制度」を容認し、「石油石炭税の増税」を飲むことを提示。三点セットのうち、残り二つは経産省案に乗る意向を示したといわれる。経済界では、排出量取引制度の見直しを突破口に、温対法そのものの骨抜きを狙っている節がある。
 三点セットのうち、一つでも欠ければ温対法は成り立たない。経済界の揺さぶりに政府与党の対応は後手に回っている。


 日本の「指定席」が中国へ? アジア開銀次期総裁ポスト

 来年二月に任期が切れるアジア開発銀行(ADB=本部・マニラ市)の次期総裁選びがT難航Uしている。
 同ポストは、設立以来四十四年、八代連続で財務省の幹部OBが就任している「国際的なT天下りU指定席」(同省幹部)。改選まで二カ月を切る時点で日本側の候補者が内定しない、異例の事態となっている。
 同行には現在、六十六カ国が加盟しており、総会では各国の出資比率に応じた投票権があり、多数決で決まる。総裁もこのルールで選出される。出資比率は日本とアメリカが同率首位の約一五%、続いて中国、カナダ、オーストラリア、イギリス、フランスなどが五%前後で並んでいる。つまり、日本が候補者を決め、欧米が同意すればほぼ自動的に当選という構図だった。
 ところが今回は様相が違うようだ。
「中国に加え、タイ、韓国などが総裁ポストへの意欲を示し、夏頃から多数派工作を水面下で激しく展開している」(同行幹部)と言う。
 ADBは毎年、約七十億?をアジアの発展途上国に融資や技術援助などの形で実施、成果を挙げている。これに各国が目をつけたわけだ。
「問題は中国。GDP世界第二位などと喧伝しながら、実際にはアジ銀から毎年十七億?前後の融資を受けている。実際に中国が総裁ポストを得たら、その影響力は凄いことになる。自国に一段と有利な形での融資や、アジ銀を使う形での個別国融資、援助が可能だ。日本のインフラ整備、プラント輸出、原発建設などはかなり不利になるな」(国際外交筋)
 無論、これらの原資は各国の税金。
「財務省は黒田東彦・現総裁の数年間の続投か、渡辺博史・政策金融公庫副総裁の新任を考えているが、政府・与党の一部が天下りに反対。あまりに媚中なので、アメリカは呆れ返っている」(事情通)そうな。


 就任を渋っていた「社長」が同友会次期代表幹事に

 人事が難航していた経済同友会の次期代表幹事は十一月十九日、最有力候補だった同友会副代表幹事で、武田薬品社長の長谷川閑史氏(写真)の昇格に落ち着いた。
 長谷川氏は財界の論客として知られる。本業の武田薬品経営ではいち早くグローバル展開を行って、海外での評価が高い。同時に国内でもその発言の鋭さが大きな魅力となっており、経済同友会内部では今年度末で退任する桜井正光・現代表幹事(リコー会長)の後釜と目されてきた。ところが、当の長谷川氏が、社業の医薬品製造経営にこだわっていたため人事が難航。桜井氏を含めた関係者を苛立たせていた。
 複数の経済同友会関係者によると、長谷川氏は製薬業界の内外での競争の厳しさに加え、武田薬品自体も安閑としておれぬ経営状況で、桁外れに忙しい代表幹事よりも社業を優先したいのが本音だった。とはいえ、そのT社長Uが代表幹事に就任した暁には、鋭い言説を期待したい。


 厚労省を「狙い撃ち」する警察・検察の思惑

 厚生労働省の役人や関連団体職員の逮捕、起訴が相次ぐ。十一月九日にコンタクトレンズ診療所からの収賄事件で厚労省課長補佐が追起訴、四日には日本年金機構(旧社会保険庁)の参事役の職員が官製談合防止法違反で、旧社保庁OBのNTTソルコ営業部長が競売入札妨害で、八十万円、五十万円の罰金命令を受けた。前者が九月二十五日、大阪府警に、後者は十月十四日、警視庁に、それぞれ逮捕されている。
 それにしても、わずか三カ月の間に、厚労省に関連した事件が次々に話題となるのは単なる偶然なのか。
「いずれも以前からT慣行Uだったことを、なぜこの時期に逮捕まで踏み切ったのか。裏には厚労省幹部の逮捕という検察の失地回復の狙いがあるのではないか」──厚労省や旧社保庁の関係者の間では、そんな噂がささやかれているという。
 この二件の逮捕に先立つ九月十日には厚労省の村木元局長の無罪判決、二十一日には元局長を起訴した大阪地検特捜部の主任検事が逮捕という、検察始まって以来の不祥事が起きたばかり。厚労省を狙い撃ちしたかのような一連の逮捕劇は、検察の威信失墜を挽回しようという思惑があるのではないかというのだ。
 現に、この二つの事件では従来とは明らかに違う様子が見て取れたと、厚労省関係者は言う。まず、大阪府警が行った家宅捜索の規模が尋常ではなかった。十人程度の職員しかいない保険局の所属部署に四十人もの捜査員が列をなして押し寄せた。押収した資料も大量で、たかが一課長補佐の贈収賄事件とは思えない徹底した捜索ぶりだったという。
 さらに警視庁が逮捕した年金機構職員の場合も、本来なら事情聴取で済むものがいきなり逮捕に至っている。この事件でも別の事情があるのではという憶測もささやかれている。
 コンタクトレンズの贈収賄事件は組織ぐるみといわれており、大阪地検が府警を後押ししているという見方をする厚労省関係者も多い。となれば、全国にも波及する可能性もあり、その先には組織の幹部、局長クラスの人物が捜査対象に浮上するのではという声もあるという。


 ネットラジオが本格稼働。著作権、配信エリア問題も

 ラジオの番組を放送と同時にネットで無料配信するネットラジオ「radiko(ラジコ)」が、八カ月余のテスト運用を経て、十二月から本格稼働する。
「radiko」は、高層ビルが建ち並ぶ大都市圏で電波障害による難聴取を解消するため、三月に試験配信が始まった。運営はニッポン放送など在京の七局、朝日放送など在阪の六局と、電通が設立した任意団体の「IPサイマルラジオ協議会」だ。
 受信機がなくてもネットにつながったパソコンやiPhoneがあれば聴取できるとあって、スタート直後からネットで話題となり、週間聴取者数は延べ三百万人を数えるまでに膨らみ、新たなリスナーも掘り起こした。しかも、大半のリスナーが試験期間終了後もサービス継続を要望。一躍、低迷するラジオの救世主として注目を集めるようになった。
「予想以上の成果」に気をよくした協議会は十二月一日に株式会社へ移行し、本格的にネットラジオに取り組むことを決めた。
 だが、難題も多い。かねてから難航している歌手や放送作家の権利処理問題は全面的に解決したわけではない。このため、配信エリアは引き続き各局の放送エリアに限定され、リスナーは首都圏の四都県と関西圏の四府県の居住者にとどまる。
 収入の柱と見込むラジコサイトの広告も十分に確保できる見通しはなく、各局に収益を配分しようにも「メダカの切り身を分けてどうなる」という声すら聞こえてくる。
 落ち込むラジオ需要をネットで「復権」させようというこの作戦、著作権問題や配信エリア規制のハードルは高く、軌道に乗せるまでの道のりはまだまだ長そうだ。


 新興IT企業グリーは給与水準でもヤフー上回る

 テレビCMや私鉄・地下鉄の車内広告でやけに目にするのがグリーだ。無料の携帯ゲームを誘い水に二千万人という会員数を誇る新興IT企業の雄である。驚くべきはその業績で、二〇一〇年六月期決算は売上高が三百五十二億円、経常黒字は百九十五億円。売上高経常利益率はなんと五五%を超えているのだ。
 給与もIT業界の中では良く、従業員の平均給与は七百五万四千円。百七十四人いる社員の平均年齢は二十九・四歳で、在職年数はわずかに一・六年ということを考えれば低くない。もっとも、グリー創業者の田中良知社長は注目を集めるのを警戒する。日大卒後、楽天などを経て〇四年暮れにグリーを創業した彼は、「目立つと嫉妬を買ってライブドアの堀江(貴文)さんのような目に遭う」と周囲に語っており、役員報酬も平均で一千四百万円にすぎない。
 一方、IT業界の先駆け的存在のヤフーの従業員の平均給与は五百九十一万円。平均年齢が三十三歳を超えているので、グリーよりもかなり低いことになる。「うちは安いですよ。しかも福利厚生はほとんどないに等しい。福利厚生面はサイバーエージェントや楽天のほうがずっと上です」と、大手食品企業からヤフーに転職した中堅社員は打ち明ける。
 しかし、ヤフーの幹部層は正反対に好待遇で、取締役の平均報酬は七千九百七十五万円。井上雅博社長の役員報酬は一億五千九百万円で、IT業界ではダントツに高い。売上高二千七百九十八億円、経常利益は一千四百三十三億円もあるのだから、少しは社員に還元してはどうか。


 中国ダンピング認定で王子製紙がとばっちり

 王子製紙が社運をかけて建設中の中国・南通工場(江蘇省)に暗雲が漂い始めた。米国政府が十月、安価な輸入紙の流入を防ぐため中国製の印刷用紙に反ダンピング・相殺関税の賦課を決定。その余波が及びそうなのだ。
「中国政府が付加価値税の還付や極端な低利融資などを通じて国内企業を優遇している」というのが米商務省のクロ判定の理由。税率は目の玉が飛び出るほど高く、中国製紙最大手グループのAPPとチェンミン社に対して二五%、四位の山東太陽紙業にいたっては「実態調査に協力しなかった」として三一三%を課した。
 中国製品の締め出しを声高に主張したのは紙の産別労組を傘下に置く全米鉄鋼労組(USW)で、雇用問題に気を使うオバマ政権が中国製紙を生け贄にした側面もあるのだが、クロ判定は五年間は覆らない。欧州連合(EU)も同様の規制を検討しており、行き場を失った中国製品が日本に向かう可能性が高まっている。
 そうした中で微妙な立場にあるのが国内トップ企業の王子製紙で、総額二千億円を投じた南通工場では同社最大級となる年産四十万?の抄紙機が年明けすぐに動き出す予定。生産する印刷用紙はT中国製品Uの烙印を押されるため、米国に輸出すれば一五三%の税がかかる。日本へ輸出しようとしても、同業他社からは「米国政府がクロと言っている筋悪の中国製品を持ち込もうとしている」との批判を浴びかねない。立ち上げたばかりの最新設備がいきなり減産ではお話にならないだけに、経営陣の苦悩は深まるばかりだ。


 伊藤園がキリンを抜いた。清涼飲料業界のM&A事情

 清涼飲料業界でキリンビバレッジが四位に落ち、入れ替わって伊藤園が三位に浮上した。伊藤園は「お〜いお茶」が不動の一位。そして「伊藤園のコーヒーはお茶臭い感じでまずい」という消費者の声を吹き飛ばす強力な助っ人を得た。タリーズコーヒージャパンの買収だ。タリーズはスターバックスに次ぐ外資系コーヒーチェーンの大手で、チルド製品や缶タイプも増えてきた。
 清涼飲料業界は、事実上四社の寡占体制であるビール業界に比べ、競合社数も商品数も多く、競争はより激烈で値下げ合戦も激しい。キリンはこうした価格競争に巻き込まれずに距離を置いたのが四位になった要因と説明しているようだが、収益率は改善したとしても、今後もシェアはジリ貧になることが避けられない。飲料の巨人、コカ・コーラ軍団をサントリーが追う展開の中、タリーズを得た伊藤園は三位が指定席になっていくだろう。
 そうなると、キリンがどこかの段階で巻き返すには、М&Aで同業他社を買収していく以外にない。アサヒビールやサッポロビール系のソフトドリンクも精彩がないが、この三社はいつ他社と合従連衡に走ってもおかしくはないだろう。
 少子高齢化や若者のビール離れを考えると、ビールシェア一位、二位のアサヒとキリンは非アルコール飲料の強化が必要不可欠。そういう点では、「プレミアムモルツ」という、あまり価格競争の激しくないジャンルで地位を確立し、緑茶飲料もコーヒーも二番手にいるサントリーの総合力が頭一つ抜けている。やはり、キリンホールディングスにとってサントリーホールディングスの経営統合破談は惜しかった。


 赤字が続く地場証券がなりふり構わぬ資金調達策

 「株屋ですから、この閑散相場では息絶え絶えですよ」と、中小の地場証券幹部は自嘲気味に語る。そうした苦境に立つ地場証券が資金捻出に動き出した。
「自社株買いで出資を買い戻してもらえないだろうか」
 中小証券四十八社が連名で、白井勲・日本相互証券社長にこんな申し入れをしているのだ。「BB(ブローカーズ・ブローカー)証券」の愛称で知られる日本相互証券は、国債や社債などの売買仲介を専門に手掛ける最大手で、東京証券取引所正会員八十三社などが出資している。そのうち地場証券各社が出資する四千株分(簿価四十八万円)について買い戻しを求めて白井社長に直談判したのだ。
 要請の急先鋒は、業界のご意見番として知られる安陽太郎・十字屋証券社長ら地場証券数社の首脳。七月には「自社株買いのお願い」と題する文書を手渡すなどし、要請を強めてきた。赤字が続く地場証券にとってBB証券株は残された数少ない優良資産だが、「生き残りのためには売却もいたしかたない」(地場証券幹部)と腹をくくっている。
 しかし、BB証券にとって地場証券の離脱は存立基盤に係わることだけに、すんなりとは受け入られない。対応に苦慮した白井社長は当面、配当性向を五〇%まで引き上げることで、どうにか折り合っている。だが、買い取りの火種は依然、燻っており、さらなる増配要望も強いという。
「株式相場の低迷が続けば、いずれ廃業も視野に入れなければならない」(証券アナリスト)と言われる。その前に手持ちの資産は売り払いたい。BB証券株もその一つとなる。


 中途半端に終わった証券市場改革に不満の声

 東京証券取引所が来春に社債市場「東京プロボンドマーケット」を設立し、来年五月をめどに現物株の取引時間を延長することを決めた。
 新たな社債市場は、東証が二〇〇九年に創設した新市場「TOKYOAIM」が運営し、取引参加者を国内外の機関投資家(プロ)に限定し、英文だけの書類提出なども認める。東証は「日本国内にユーロ市場と比肩する債券市場を構築し、アジア域内の中核市場に発展させることを目指して設立される」との狙いを示す。
 東証はまた、十一月十日に開いた市場運営委員会(東証取締役会の諮問機関)で、現在十一時から十二時半まで一時間半とっている株取引の昼休みを三十分短縮し、取引時間を延ばすことを決めた。午前中の取引時間を九時から十一時半まで延ばす。これに対し、昼休みの廃止を主張してきたオンライン証券などから効果を疑問視する声も上がっている。
 昼休みが全廃できなかったのは、大手証券会社を中心に「システム費用の増加や人員配置の見直しなどで、手間やコストが余計にかかる」などという反対意見が高まったから。自己売買も行っている証券会社にとって、現物株の取引では取引開始後や終了間際に売買が集中することもあり、昼休みがなくなると利益を確定する機会が減ってしまうという本音も見え隠れする。
 プロ向け社債市場にしても、兜町関係者によれば大手証券会社が創設を働きかけたという。東証幹部は一連の市場改革について「一歩前進」だと胸を張るが、大手証券会社や機関投資家寄りの感は否めない。
 市場関係者は「どうせやるならアジア市場と東証の取引時間帯を同一にするなど、もっと思い切ったことをやってほしい」と抜本的な変革を求めている。


 ライバル会社も注目する住友林業のネット販促

 市場の低迷に苦しんでいる住宅業界で新商法が注目されている。住友林業が十一月からスタートさせたインターネットを利用した販売促進策がそれだ。
 これは、ネット上で思い通りのプランを作成し、三次元化された建物の中を自由に歩き回るように移動しながらバーチャル体験できるプランシミュレーションコンテンツ「BF間取りDESIGNER(デザイナー)」を、同社ホームページに会員制でオープンにしていくもの。ネットに接続できれば、時間や場所を選ばずにプランシミュレーションが可能となる、住宅業界初となる技術である。最終的には作成したデータを送付することで、専門家によるプランや建築地による法規制などのチェック、プランの合理性や暮らしやすさなどのアドバイスが受けられる。
 同社では昨年来、住友林業の家づくりがバーチャル体験できる「WEB住まい博」や、三百のベースプランからプランの選択が可能で、概算の工事費が分かる「木達(こだち)」サイトなど、ネットを利用した会員制サービスを充実させてきており、今回は第三弾目のサービス。「本コンテンツに採用した当社オリジナル『ビッグフレーム(BF)構法』の特長である、プランの自由度や大空間設計、将来的な可変性などの優位性の訴求につなげ、『住友林業の家』の販売促進と受注の拡大を目指す」(同社関係者)と意欲を見せており、このネット利用の販促手法は今後、他社にも波及しそうだ。


 独ウェーバー氏への反発で次期ECB総裁人事が混戦

 ユーロ圏の金融政策を担う欧州中央銀行(ECB=写真)の次期総裁レースが混沌としてきた。ドイツ連邦銀行(中央銀行)のウェーバー総裁が規定路線とみられていたが、ECBの方針に盾突く「ビッグマウス」が仇となり、反発が強まっている。
 ECBは初代総裁のドイセンベルク氏がオランダ出身、二代目の現総裁トリシェ氏(任期は来年十月)がフランス出身。経済大国ドイツとしては三代目の座は譲れない。
 しかし、ECBがギリシャに端を発した債務危機の拡大を防ぐため着手した各国国債の買い取りにウェーバー氏が異論を唱えたことで、風向きが変わった。ECB理事会メンバーでありながら理事会の決定に公然と反対したため、欧州首脳の間で「不適任」との見方が広がったのだ。
 トリシェ総裁は「通貨は一つ、金融政策を担う機関も一つ、政策も一つだ」と語り、ECBの決定に従わないウェーバー氏を総裁にすべきではないとの考えを示唆している。
 ウェーバー氏の対抗馬はイタリア中央銀行のドラギ総裁だ。以前から「ウェーバー氏でなければドラギ氏」と名前が上がっていたが、ギリシャの財政危機の発端となった債務隠しを同国にそそのかした「戦犯」と疑われるゴールドマン・サックスの元幹部だったことが大きな壁だ。
 オランダ中央銀行のウェリンク総裁は、初代総裁と同じオランダ出身者なので可能性は低い。フランスが推す、同国出身のストラスカーン国際通貨基金(IMF)専務理事も同じ理由で事実上の選外だ。
 ドイツ出身者では、欧州安定化基金のトップを務めるレグリング前欧州委員会経済金融総局長が候補の一人だが、中銀での実務経験がない。元ドイツ連銀副総裁のシュタルクECB理事は、ECB理事の再任禁止規定への抵触が指摘されている。どの候補も決め手を欠いているのだ。


 米国が最大級に警戒する中国IT企業「華為技術」

 「通信産業の巨人=華為技術は米国の安全に脅威」という大見出しで、「ニューヨーク・タイムズ」、「ヘラルド・トリビューン」などが警戒信号を出している。
 二〇〇九年春、シリコンバレーで中国のハイテク企業、華為技術がコンピューターのエンジニア数百名もの大量引き抜きを始めた。IT産業のメッカだけに、優秀なエンジニアが外国企業に大量移籍すると目立つ。
 そして米国最大の通信整備企業スプリント・ネクスト社が華為技術から三十億?の設備購入を準備中と伝えられるや、「米国の通信中枢という国家安全保障につながるプロジェクトであり中国軍とつながる中国の企業から買うべきではない」との脅威論が拡大し、米議会も動き出した。
 華為技術は、元中国軍のエンジニアが創業した、社歴二十二年という若い会社。現在九万六千人の従業員の半分が研究開発部門で、上海の開発センターの八千人のエンジニアは全員が研究開発の専門家だ。現在ではエリクソンに次ぐ世界二位の通信機材メーカーとなっている。
 実は「華為技術」急成長の裏には中国政府の迂回援助がある。中国国富ファンドが百億?を供与して圧倒的な市場占有率を握らせる、要するに国家丸抱え企業なのだ。
「政府の支援を受けずに自由競争の原則でビジネスを展開してきたノキア、シーメンス、エリクソンなど欧米企業をわずか数年で凌駕した華為技術のからくりを見ると、中国は不公平きわまりない」と米国の警戒は日々強まっている。


 北方領土問題に強硬でも実は親日派のロシア大統領

 ロシアのメドベージェフ大統領がわが国固有の領土である北方領土の国後島を初めて訪問し、日本側の逆鱗に触れたが、メドベージェフ一家は実は親日派で、日本の生活スタイルを取り入れていることはあまり知られていない。
「大統領は健康のため毎日、緑茶を愛飲しています。二〇〇八年に洞爺湖サミットで訪日した際も、最高級の日本茶をダンボールに詰めて持ち帰りました。APECサミットで横浜に来た時も大使館に大量に買わせたようです」(モスクワ特派員)
 ファーストレディーのスベトラーナ夫人は寿司、刺身に目がなく、モスクワの高級レストランから日本食を仕入れて食卓に並べるという。洞爺湖サミットの際、夫人が大統領より一日早く北海道入りし、温泉と寿司を堪能したことは、日本側警備関係者の語り草だ。
 一人息子のイリヤ君も「ドラえもん」の大ファン。スベトラーナ夫人は、日露の子供たちの交流のため、ドラえもんとロシアで人気のアニメキャラクター「チェブラーシカ」を共演させるアニメ製作を、ロシア外務省を通じて日本側に呼びかけたこともある。
「大統領が国後島で自らハンドルを握ったクルマは日産の中古オフロード車、国後で撮影したカメラも日本製でした」(モスクワ特派員)
 大統領一家を筆頭に、ロシア人は日本料理や日本製品が大好きなのに、こと北方領土問題では日本に強硬になる。このアンバランスが日露外交の最大の悲劇のようだ。


 弱体化するオバマ民主党 vs. リーダー不在の共和党

 十一月の中間選挙で大敗したオバマ米大統領の政権運営は厳しくなりそうだ。「雇用創出」と「歳出削減」という二大目標で共和党との協調路線を築くとしたものの、すでに大きな政府をつくってしまったオバマ大統領と、小さい政府を志向する共和党の間では妥協の余地は少ない。
 肝心の経済政策も国家経済会議(NEC)のサマーズ委員長が退任、政治家を抑え込んでまで経済政策を立案できる人材が政権内にはいなくなった。また、行政管理局(OMB)のオルザグ局長も退任し、トップ不在のまま予算編成が難航している。ホワイトハウス内でもエマニュエル首席補佐官が辞任し、大統領の腹心が誰もいない状態だ。国家安全保障会議(NSC)はジョーンズ事務局長が辞任し、組織が弱体化している。
 お膝元の民主党内も、今や主力の党活動家の大半がクリントン夫妻の息がかかっているといわれる。「上院は民主党」が、「下院は共和党」が多数派を取るねじれ議会の中で、早速重要な法案審議が待ち構えている。
 一つは、ブッシュ政権時代に導入された優遇税制措置の延長問題だ。もし民主・共和両党で合意が得られなければ、年内で期限切れとなり、来年から実質的に大幅増税となる。
 二つ目は、失業給付制度の失効問題だ。二桁近い失業率が続く中、失業給付を打ち切られれば、オバマ政権を大きく揺さぶりかねない状況だ。
 一方で共和党は下院で勝利したものの、二年後に大統領選挙で政権を奪取できるようなリーダーはいまだ現れていない。ペイリン前副大統領候補は今回の中間選挙ではティーパーティで脚光を浴びたものの、共和党主流の中道右派勢力とは相容れない。また、ベーナー次期下院議長も政策に難がある。
 二年前にオバマ政権に集まった人材の多くがすでに逃げ出してしまった。今後二年間の米政界は、弱体化したオバマ政権とリーダー不在の共和党という状況下で混乱が進みそうだ。


 共和党のニューリーダー? ジョン・ベーナー氏の素顔

 それでも共和党で新しい指導者として注目を浴びるのは、やはりジョン・ベーナー次期下院議長だ。長身の六十歳。日焼けがトレードマーク。議会ロビィストの代表だ。
 地味な企業経営者で、子だくさんで典型的な古き良きアメリカの家庭に育った。カソリックを深く信仰し、カソリック学校の復興募金では政敵のはずのテッド・ケネディと超党派のチームを組んだことも。それゆえ政治家としての信念を問われると、「私の一生はアメリカン・ドリームの実現であり、個人の自由、経済の市場原則自由競争の尊重、ファミリー・バリューの尊重」と答える。
 一九九〇年初当選で、地盤はオハイオ州。たばこ産業、金融・保険業界の代弁者とされ、「右翼強硬派」というマスメディアの宣伝が先行したが、実は政局優先型で、少数派を大事にする。一九九〇年代の議会の暴れん坊で、保守派の旗手といわれたニュート・ギングリッチ元下院議長の副官筋。ギングリッチ元議長もこちこちの保守というより議会遊泳が巧みなタイプだが、頑固なため土壇場で柔軟な対応ができず、大統領選では共和党内の予備選でパパ・ブッシュに敗れた。
 その失敗を間近に見たせいか、ベーナーは「何事にも寛大であり、人の話に耳を傾ける」と評されている。




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