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田辺製薬は、葉山社長が口にする
「研究開発型企業」などまだ夢物語
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■売上高・研究開発費では大手8社の下位クラスにあるのが現状。合併先も見つからず――
「2010年度には売上高2000億円、営業利益350億円を目指す」とアドバルーンを上げたのは、医薬品大手・田辺製薬(大阪府中央区)の葉山夏樹社長である。
06年度から開始した中期経営計画「チェンジTANABE2010」で明記した目標である。実現のために打ち出した主な作戦は、循環・代謝、免疫・炎症、泌尿器の3領域で自社独自の新薬開発12品目以上を創出し、関節リウマチ治療薬「レミケード」の用量・効能追加、そして後発医薬品(ジェネリック)事業への参入である。 「現状の田辺から判断して、かなり思い切った目標で背伸びし過ぎではないか」(証券会社製薬担当者)とみられている内容である。同社の05年度の売上高は1715億5200万円、営業利益は271億円だった。たしかに計算上では、今後5年間で年間平均して売上高で30億円以上、営業利益で15億円以上稼ぐことができれば、目標は実現する。だが、売上高は03年3月期(1822億5000万円)以降、下がる一方で推移している。「目標が背伸びしている」といわれる根拠の1つがこうした数字であるわけだが、作戦の内容に説得力が少ない。
「レミケード」が田辺の将来の鍵を握る
葉山社長は、「自社製品の核」と位置づけている稼ぎ頭のレミケードに大変な期待をかけ、中計の目玉にしている。適応症を拡大して多面的に育成することで、レミケードの売上高を「06年3月期の127億円から2010年度には約5倍の500億円に引き上げたい」と強気の構えで、さらにもう1つの目玉として新規開発品を育てることを挙げている。
レミケードは米セントコア社が開発した注射剤で、田辺は国内での開発・販売権を取得した経緯でもわかるように本来、自社開発製品ではない。02年5月、腸に炎症が発生するなどのクローン病薬として発売した導入品である。その後の03年7月に、国内で初めての生物製剤として関節リウマチ薬の効能を追加した。国内初ということで、厚生労働省から5000人の市販後調査が要請されるなどの安全性調査や、副作用情報の提供を慎重に行っているため、市場への浸透は遅い。だが、同社では「データの収集など、他の薬剤にも生かせる経験を積ませる」としている。
それはともかくとして、さらにベーチェッド病や潰瘍性大腸炎などの効能を追加するためにも取り組んでいる。ベーチェット病は、皮膚や目、血管などに炎症が起こる病気で、すでに臨床試験(治験)を終え、03年7月に製造・販売の承認を申請している。また、潰瘍性大腸炎に加えて、乾癬、強直性脊髄炎の治験は、06年度中にも順次、開始する予定とのことである。
関節リウマチ薬は国内では田辺だけが販売しているわけではなく、米系ワイスと武田薬品工業が共同で発売した「エンブレル」などの競合品が増えているため、激戦区。そこで、さらにレミケードの効能の追加の取得に血眼になっているだけでなく、同薬の営業を強化するため、専門の医薬情報担当者(MR)を06年度中に100人増員し、MR全体の知識向上で対応しているのが現状である。
田辺は、2、3年後にレミケードの年間売上高を300億円の大型製品に育てる目標を挙げている。年間300億円の売上高を挙げている薬を田辺は現在、持っていない。狭心症薬・血圧降下剤「ヘルベッサー」が196億円と、同社のトップ商品である。ヘルベッサーは、74年に冠動脈の異常により胸が痛む狭心症の錠剤として発売してから30年以上たっている。82年に高血圧症の効能を追加し、注射剤やカプセル製剤も発売。ピーク時の93年3月期には、売上高は輸出を含め474億円に達し、海外メーカーの販売分を加えると10億ドルを超える大型薬品となって、国産初の国際医薬品と評価された。海外は特許切れで落ち込んだものの、国内では90年に新たにけいれん型の狭心症の効能を取得するなど、前述したように漸減にとどまっている。
こうした田辺の動きを見ると、レミケードへの期待がいかに大きいか、うなずけるところだ。レミケードが田辺の将来の鍵を握っているといっても過言ではない。
この5年間発売がない自社開発品
さて新規開発品の育成だが、田辺が現在進めている開発候補品を含め、海外での臨床試験や提携を活用しながら、人での有効性、安全性を確立した自社開発品5品目以上の創出を目指すとしている。田辺はこれまでの5年間、自社開発品を発売していない。臨床開発品中の自社開発品はまだ第二相段階(フェーズ2)で、まだまだ市場に出すまで時間がかかる。2010年前後までは、海外の製薬メーカーからの導入品に頼る以外ない。
その田辺の葉山社長は「研究開発型の製薬企業として画期的な薬剤を出していく」と言うのが口癖である。研究開発型の製薬企業の理想的形態といえば、米ファイザーや仏サノフィ・アベンティス、英グラクソ・スミスクライン、米メルクなど、巨大な製薬企業が展開しているように、発見した化合物を自国だけでなく、欧米の三極で自ら新薬を開発して申請する姿といえる。しかし、現在の田辺では、こんな世界規模での研究開発は「夢のまた夢でしかない」(業界関係者)。 田辺の年間研究開発費は05年度305億円で、大手製薬企業のなかでは下位に位置する。世界の製薬業界の売上高順位で16位に位置する日本最大手の武田は1696億円(06年度2050億円の見通し)で、第2位のアステラス製薬は1420億円(同1750億円)、3位の第一三共は1587億円(同1570億円)だが、欧米の大手は8000億円〜5000億円を投じている。 田辺のそれとは比較にならない巨額である。1つの新薬開発には「15年・200億円」といわれている。田辺の305億円では、海外での大規模な臨床試験は極めて難しいといわざるをえない。しかも、06年度の研究費は290億円と減額している。
ともかく「研究開発型の製薬企業が理想」と口にする葉山社長は、合併には意欲的なのである。ある紙上で合併について尋ねられた際、「世界に向けて創薬していく資金力はなく、規模の拡大が必要だ。問題は研究開発力をどう引き上げるかに尽きる。合併して研究開発力が強くなるような組み合わせを選びたい。自分が社長のうちに機会があればと思っている」と語っているように合併再編には意欲的なのだ。とくに2010年度には500億円の研究開発費が必要で、「現状では大型新薬の発売などの幸運がないと無理だ」と、自力調達はほぼ諦めているような発言をしている。
(以下、本誌をご覧ください) |
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