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システム思考のエキスパート、ピーター・センゲ氏
(右は筆者=小田理一郎:有限会社チェンジ・エージェント代表取締役社長兼CEO。システム思考の研修プログラムを開発し、企業やJICAなどで講師を務める傍ら、持続可能な開発、企業の社会的責任分野の経営コンサルティングを手がける。http://www.change-agent.jp/
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「ビジネスと持続可能な開発会議2006」に枝廣淳子さんがスピーカーとして参加
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| [巻頭レポート]――小田理一郎(チェンジ・エージェント社長兼CEO) |
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日本企業は取り残される危機!?
米中企業を変えたシステム思考
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■持続可能な社会への取り組みや環境経営では、日本企業は進んでいると思ってはいないか。
だが、小手先の対応をしているうちに、もっと大きな動きの理解が求められているのだ――
この6月に米国で開催された2つの会議に参加し、世界の第一線で活躍する多くの企業や有識者と意見交換した。そこから感じ取ったのは、米国や中国の企業に起きている大きな変化の潮流だ。その変化に大きな役割を果たしているのは「システム思考」である。
◇
米大企業で起きているマインドセットの変化
ワシントンで行われた「ビジネスと持続可能な開発会議2006」は、「持続可能な発展のための世界経済人会議」(WBCSD)が後援する会議である。6年目の今年、米国の大企業や政府機関、NGOなどからの150人の参加者とともに、本誌で「プロジェクトe」(64ページ)を連載している、環境ジャーナリストで有限会社チェンジ・エージェント会長の枝廣淳子が、日本人として初めてスピーカーとして招聘され、参加した。
各セクターから、持続可能な開発のための取り組みの最新動向が発表され、活発な議論が行われた。特に印象に残ったのは、米大企業のマインドセット(意識・無意識の前提)の大きな変化である。
これまで米国企業といえば、一部の先進企業以外は財務成果偏重で、環境経営では欧州や日本の企業から大きく遅れているとの感が強かった。しかし、その米企業に確実に変化が起こり始めている。
巨大石油会社エクソン・モービルは、それまでの否認を一転して、産業活動が地球温暖化を引き起こしていることを認め、低炭素社会に向けての計画を発表した。世界最大の小売業ウォルマートも昨秋、100%再生可能エネルギー利用などの野心的な環境目標を掲げた。GE、フォードも環境商品・サービスをマーケティングの中心に据えている。
これらの大企業の「転身」を、消費者の目をごまかすだけの「グリーンウオッシュ」といぶかる声も聞かれる。だが、米国のビジネス環境には、変化を後押しする動きが確実に起こっている。
一つは、ステークホルダー(利害関係者)との対話と協働だ。企業統治の仕組みに、持続可能性や社会的責任を監視する委員会を設け、政府やNGOと協力して社会・環境問題に当たろうという動きが広まっている。ウォルマートやフォードの取り組みも、広範なNGOとの対話から生まれた。これからの社会は「相互依存の時代」だとして、ステークホルダーとの協働こそがビジネスの持続可能性と競争力を高めるという考え方が浸透し始めている。
システムのデザインとリスク・マネジメント
株主にも変化が起きている。金融機関や機関投資家に「リスポンシブル・シェアホールディング(責任ある株式保有)」の動きが広がりつつあるのだ。株主が自ら責任ある投資のあり方を問い直し、投資先の企業に社会的な責任を満たす行動を要求し始めている。この1、2年、米国で盛んになってきた二酸化炭素排出量の開示要求はその典型だ。無視できない数の株主が、企業に社会的・環境的要求を突きつけ始めているのである。
昨年のハリケーン・カトリーナなどの相次ぐ災害や広域停電なども、企業の認識を大きく変え始める要因になった。カトリーナは莫大な直接損害以外にも、ガソリン価格の高騰など、計り知れない影響を与えた。エネルギーをはじめ、交通、物流、金融、情報などのネットワークの脆弱性が明らかになったことから、企業には、自らが依存しているさまざまなシステムの理解と、より良いシステムのデザイン、リスク・マネジメントが急務であるとの認識が急速に広がっている。
日本にも、環境経営を標榜し進める企業は多いものの、どこまで広く深く考えているのかという点では心もとない。ISO14001や環境報告書といった“ブーム”に乗っているだけということはないか? 自分たちが依存しているシステムの脆弱性を理解し、より良いデザインをしていかなくては生存すら危ういという危機意識と覚悟は存在しているのだろうか?
途上国へのまなざしの強さ
1999年のシアトルでのWTO会議以来、多国籍企業の活動と途上国の貧困問題との関連への視点への注目度は確実に強まっている。社会的責任の機運の高まりを背景にして米国の多国籍企業は、「自分たちは問題の一部ではなく、解決の一部になる」として、途上国の諸問題への取り組みについてのコミットメントを表明し、取り組みを始めている。
製薬会社ファイザーなどは会議で、途上国では貧困のために多くの人が適切な医療サービスを受けられないという問題に対して、安価に医療サービスや医薬品を提供する仕組みづくりに力を入れていることを発表していた。
インテルなどのIT企業も、世界のデジタルディバイドの問題への取り組みを説明していた。廉価なPCの供給や、電話線のない地域でのインターネット接続を支援して、途上国の人々に「情報のパワー」を提供するという。途上国の人々が情報にアクセスできるようになれば、知識や教育レベルが向上し、経済活動に必要な力を増強できる。
今回の会議では、米国の大企業が、経済や社会の発展の源泉である健康や教育、情報などを支援することで、途上国の自立的な成長を助けようとしている様子がまざまざと伝わってきた。
もっとも、こういった動きは「社会的責任」の視点だけで進められているわけではない。多くの分野で先進国市場が飽和状態にある今日、今後の成長には途上国の市場開拓が必須だ。社会的責任から途上国援助・開発支援を進め、その結果として市場が育ってきたら自分たちが最初に参入するという、長期的な市場開発のアプローチともいえる。
日本が位置するアジアには多くの途上国があるが、ほとんどの日本企業は途上国を「安価な労働力の供給地」としてしか見ていないのではないか? 「将来市場として成熟したら事業対象としよう」と考えても、途上国の貧困、健康、教育などの問題に取り組むことを自らの責任と認識し、「市場の成長=経済開発」を手助けすることで将来の事業機会につなげようという、長期的な戦略は日本企業にはあまり見られない。
(以下、本誌をご覧ください) |
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