巻頭言
舛添要一の


舛添要一氏
(参議院議員・国際政治学者)







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「皇統の安定」のために

 秋篠宮妃殿下がご懐妊された。喜ばしいかぎりであり、元気なお子様の誕生をお祈りしたい。小泉内閣は、皇室典範の改正案を今国会で提出する予定であったが、この慶事を受けて、先送りすることになった。このような慎重姿勢は、大方の同意するところであろう。しかし、皇位の継承をめぐる基本的な問題は、なお残っていることを忘れてはなるまい。
 基本的な問題というのは、いかにして皇統の安定を保つかということである。過去40年間、皇室には男の子が生まれていない。
 秋に出産予定の秋篠宮様のお子様が、たとえ男の子であっても、お一人ということで、不安定なことには変わりはない。そこで、有識者会議は、女系容認、長子優先という原則を打ち立てたのであり、その結論は妥当であると考える。
 男系を維持するための安全装置は、側室制度であった。歴代天皇の約半数は、側室を母とする。昭和天皇がこの制度をきっぱりとおやめになったのであり、この英断を私は断固支持する。昭和天皇は国民が尊敬する名君であり、今日の日本の平和と繁栄は、昭和天皇の功績なしにはありえない。
 実は、昭和天皇が側室制度を廃止されたときに、臣下の政治家が、皇統の安定を維持する制度を考えるべきであったのが、何もせずに今日まで至っているのである。
 今日の日本で、側室制度の復活など論外であり、国民が拒絶する。男系論者は、旧皇室の復活を主張するが、60年間も民間にいた者が、まず皇籍に戻りたいと思うか、また仮に戻っても、皇族として国民の敬愛を集めるところとなるであろうか。今上天皇、皇太子殿下直系の血を引く愛子内親王がおられるのに、男系というのみで、遠い血筋の旧皇族を天皇にしてよいのであろうか。
 日本国憲法をよく読んでほしい。第一条は、「天皇は、日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」とある。長い日本の歴史を通じて、皇室が国民と共に歩んできたからこそ、天皇制が国民の支持を得てきたのである。日本国民の総意は、側室制度の復活や旧皇族の突然の皇籍復帰ではあるまい。そのようなことを強行すれば、皇室と国民の間に溝ができてしまう危険性があり、天皇制そのものが国民の支持を得られなくなることすら危惧せざるをえない。
 しかも、第二条には、「皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」となっている。つまり、国民の代表である国会議員が皇室典範の内容を決めるのである。今回の慶事で、多くの国会議員は、判断を保留することができて安堵しているかもしれないが、問題は先送りされただけなのである。
 秋に生まれる秋篠宮様のお子様が男子の場合、今の皇室典範では、皇位継承順位は、(一)皇太子、(二)秋篠宮、(三)秋篠宮長男となるが、皇太子殿下から秋篠宮殿下に皇位が継承された場合、後者の在位期間が短くなる可能性がある。これに対して、長子優先の場合、親から子へと世代が移るので、そのようなことはありえない。
 男子優先という現行の皇室典範のままだと、今後ともお妃(きさき)に著しい重圧がかかることになり、将来の皇族男子、とりわけ皇太子のお妃選びは難航するであろう。皇室の安泰、天皇家の血を守るという観点からすれば、やはり皇室典範は有識者会議の提案の方向で速やかに改正すべきではあるまいか。
 男系に固執する論者は、かえって皇統の不安定を招いているような気がしてならない。広範な国民の議論を待ちたいと思う。
(参議院議員・国際政治学者)

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