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今月の同行者
佐藤 優氏(起訴休職外務事務官)
写真(上)
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佐藤 優(さとう まさる)
1960年東京生まれ 埼玉県大宮市育ち 県立浦和高校卒 同志社大学神学部卒 同大学院で組織神学を学ぶ 
85年外務省入省 英国・ロシアの日本大使館を経て国際情報局 ロシア専門家として情報収集・分析 
2002年5月背任容疑で逮捕され512日の拘置 
2005年2月第1審で「懲役2年6ヶ月、執行猶予4年」の判決を受け控訴中 現在、外務省を休職中


写真(上)
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元木 昌彦(もとき まさひこ)
「週刊現代」や「フライデー」の編集長として権力批判の誌面づくりを貫いた。
最近はメディア規制の動きに反対の論陣を張る。
現在は講談社関連会社・三推社専務取締役。上智・法政両大学講師。「編集者の学校」
(http://www.henshusha.com/)。


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元木昌彦のメディアを考える旅

「国家の罠」・鈴木宗男事件が遺した
外務省と日本外交への後遺症


■「外務省のラスプーチン」と呼ばれた情報分析官の眼力

『国家の罠』(新潮社刊)が話題になっている。すでに10万部に近いという。書いたのは、外務省の凄腕分析官で、騒動の渦中では、“外務省のラスプーチン”と揶揄され(真意は本書を参照)、恐れられた佐藤優氏である。
 彼は鈴木宗男・元衆院議員の信頼を得て、ロシアと、北方領土返還や、その前提になる平和条約締結を、2000年までに実現しようと粘り強い交渉を続けたが、果たせなかった。
 小泉政権ができて、田中真紀子・衆院議員が外務省に乗り込んできたころから、流れが変わっていく。宗男氏の力で真紀子氏を追い出すことに成功すると、外務省幹部たちは、絶大な権力を持っていた宗男氏も排除しようと画策する。
 宗男逮捕の突破口にするため、佐藤氏をイスラエルの学者を外務省の予算で過剰接待したという微罪で逮捕し、徹底抗戦する佐藤氏を512日間も拘留する。逮捕後3日目に、取り調べの担当検事から「これは国策捜査だ」と聞かされる。
 彼によれば、「国策捜査」とは、国家が自己防衛の本能に基づいて、検察を道具にして、政治事件をつくり出していくことだという。
 ストーリーは決まっていて、ジグソーパズルのように、後は埋めていくだけなのだ。
 あれほど大騒ぎした「宗男事件」とはいったい何だったのだろう。1審で宗男氏に下された判決は、地場産業からの収賄、それも1,000万円でしかなかった。「売国奴」「疑惑のデパート」と罵られた結果が、これなのだ。
 私は、宗男氏のような「利権政治屋」は嫌いだし、佐藤氏も虎の威を借るようなところもあったと推測する。しかし、国益のために身を粉にしてきた人間を、このような形で抹殺していいのだろうか。
 司法のあり方が問われている今、この本は、人を裁く難しさを改めて考えさせてくれる。
             ◇
元木 本を出して周囲の空気を含めて変わりましたか?
佐藤 コアな部分は変わりません。変わったのは外務省の中からの連絡がすごく多くなりました。私とあまり仲良くなかった、知らない連中がスキャンダル系の話を持ってきます。
元木 今度は逆利用しようというのですか?
佐藤 とにかく不満をぶちまければ、何か恨みを晴らせると思っている。この組織は相当に病んでますね。
元木 この本の面白さの1つは、東京地検特捜部の西村(尚芳)という検事との丁々発止と、裁く側と裁かれる側の男同士に友情が築かれていくところですね。
佐藤 西村検事が優れた人間だったからですよ。あの検事のいたことを、僕は残しておきたかった。彼は一言も余計なことは言わなかったけど、私とやった以上は表に出ることはあると、彼は覚悟していたと思います。彼自身、今の検察のあり方がおかしいということを外に出したかったんですよ。

故意に肥大化された“鈴木宗男問題”

元木 今も鈴木宗男さんとは会っているんですか?
佐藤 会っています。最近、鈴木さんと話していて、以前と変わったと思うのは、個人情報保護法とか人権擁護法案を、彼は非常に危険視してるところですよ。ストーカー事件なんかで一般人で被害者になった人はともかく、自ら手を挙げてなった政治家や高級官僚など、こういう人たちの隠れ蓑にしないようにするべきだと言っています。
元木 佐藤さんが「微罪」逮捕されると、外務省の人間が次々と佐藤さんに不利な証言をしていきますね。
佐藤 基本的にこの本に書いたことに付加することはないと考えています。それに、当事者というのは、私を含めて案外見えないものなんです。例えばこの中に出てくる1人のキーパーソンは、倉井高志さんという人ですよ。この人はロシア支援室長で、われわれが何を企画をしても、この人がサインをして支援委員会に命令を出さなければ絶対にお金は出ません。じゃあ、この人はどういう供述をしているかというと、「違法だと思っていたが、怖いし、その後ろに鈴木の力があって、人事の不利益を被るかもしれない。だから違法とわかっていてもサインをした」となっている。
 仮にそれが正しいと認めましょう。しかし、鈴木さんよりもっと怖い人はいますよ。例えば北朝鮮の金正日、あるいはロシアのプーチンは、鈴木さんより怖いと思う。そういう怖い人がいれば、日本の国益に反するような文書にでも署名することになるわけです。そういう人は外交官としての資質がないですよ。怖くたって違法なものは違法なんです。外に対してそうキチンと言っていれば絶対勝てるんです。
元木 鈴木宗男という人は大変に有能だけれども、「天下人」ではない。彼程度の人間を排除するために、なぜ、「国策捜査」までしなければならなかったのか。もう1つ、私にはしっくりこないのですが。
佐藤 鈴木さんに関しては、確かに「天下人」じゃないですよ。だから今回の鈴木騒動の中で、鈴木さんは「故意に」大きくされてしまった。歴史にはそういった例はたくさんあります。例えば「アイヒマン裁判」がそうです。「アイヒマン」というのは鉄道関係のごく限られた部分の責任者ですが、「アイヒマン裁判」の中でいつの間にかものすごく大きい存在、ヒトラーと同格ぐらいにされちゃったわけです。田中真紀子さんとぶつかったがゆえに、そういった「巨悪」のイメージができちゃったんでしょう。田中さん自身も天下人じゃないですが、彼女自身も、メディアによって非常に肥大化されてしまった。要するに「シンボルをめぐる闘争」になってしまったんです。
元木 それにしても、あのころの宗男バッシングはすごかったですね。
佐藤 鈴木さん側に、現行の法規の中では許されないレベルのダーティーな部分があれば、もっと簡単に捕まってましたよ。鈴木さんの秘書を捕まえて、ガサ(家宅捜査)かけて揺さぶりゃあ何でもできた。ところが、鈴木さんがキレイ過ぎたんです。だから、脇から攻めていかなければならなかった。特に外務省がらみの疑惑だから、外務省を揺さぶってみたんです。そしたら、外務省の連中はみんな逃げたいので、逃げるために1番いいのは、スターリン時代のロシアの諺(ことわざ)に「告発者は告発されず」というのがあるんですが、他人を告発すればいいということになった。私も、そうやれと上司から言われましたよ。「鈴木さんを告発する側に回れ。そうじゃないとお前がやられるぞ」と。ただ、私はそれをやらなかった。それで、検察は捕まえりゃあフニャフニャになるだろうと思って捕まえてみたら、フニャフニャにならなかった。それで、外務省につなげるストーリーをつくれなかったんです。
元木 佐藤さんの1審判決が執行猶予4年というのもおかしいと思うけど、あれほど大騒ぎした鈴木被告に、地場産業からの1,000万円の収賄でしか起訴できなかったし、1審判決でも、彼を巨悪と断罪することができなかった。この一連のストーリーの中で、種を蒔いて、刈り取って、その利益を享受した人たちはどういう人たちだったことになるのですか?
佐藤 たぶん、種を蒔いた人は刈り取れなかったんだと思います。1番利益を享受したのは、外務省のイデオロギッシュな親米主義者ですが、それは本当の親米じゃない。この人たちは全然アメリカ人脈はない。ところが、何かやるにもアメリカを錦の御旗にしていれば、ものを考えないでいいからね。こういう人たちがその成果を1番享受した結果、どうなったか。外務省はキレイな水槽になって、誰も仕事をしなくなった。そして、八方塞がりの、今のような外交状況が生じてしまった。
元木 外務省は、ほとんど親米主義者に牛耳られているんでしょ。
佐藤 それは正しい。私を含めて親米派ですよ。冷戦の間は、親米主義というのは積極的なイデオロギーじゃなくて、共産主義というものに対するアンチテーゼだった。ただ、冷戦が終わったあとの親米主義というのは、すでに有効性を喪失していると思います。
 みんなが軽く考えていますが、私はBSE問題というのは非常に重要だと思うんです。これはアメリカと日本の交渉文化の違いなんです。アメリカからすると、イラクへの多国籍軍の派兵というのは、これは明らかに憲法規範を超える重大な決断だ。そういうことに関しては、すぐ言うことを聞くのに、何でこんな小さなことでここまで頑強なんだ、分からないと。これが日本からすると、逆の論理がある。本筋を譲ったんだから、何でこんな問題を見過ごしてくれないのか、となる。ただ、このケースはすでにあるんです。かつてのオレンジ輸入問題と一緒。日本は国際スタンダードじゃない。ただ、国際スタンダードじゃないほうは負けるんです。負け戦なんです、このBSE問題は。
(以下、本誌をご覧ください)
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