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元木昌彦(もときまさひこ)氏。
講談社の雑誌「週刊現代」や「フライデー」の編集長として反権力を鮮明にした誌面づくりで部数を伸ばした。オンライン雑誌「Web現代」を企画・育成後、同社関係会社の三推社専務に。強まるメディア規制の動きに反対し論陣を張る。
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今月の同行者/鳥越俊太郎氏(とりごえ しゅんたろう)氏 (キャスター)
1940年3月13日福岡県生まれ 65年京都大学文学部国史学 科卒業 同年毎日新聞社入社 新潟支局 社会部 サンデー毎日編集部 外信部(テ ヘラン特派員)を経て88八年サンデー毎日編集長 89年10月から「ザ・スクープ」 キャスター 2001年日本記者クラブ賞受賞
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元木昌彦のメディアを考える旅55
「ザ・スクープ」終了は報道軽視で
経営者に権力チェックの志がない

今月の同行者/鳥越俊太郎氏(キャスター)

■権力が批判封じをもくろむ今こそ必要な報道番組


「ザ・スクープ」のキャスター・鳥越俊太郎さんは元・毎日新聞記者で「サンデー毎日」の編集長からテレビへと転身して、テレビが不得意だった調査報道の分野を確立した人だ。その鳥越さんの「ザ・スクープ」が9月末で打ち切られるというので、弁護士の藤田謹也さんや紀藤正樹さん、田島泰彦・上智大学教授らが発起人となって「存続を求める会」を作り、私も末席に名前を連ねている。8月24日、その会が主催して「テレビ番組は誰のものか?―テレビ朝日『ザ・スクープ』打ち切りを問う―」という緊急シンポジウムを開いたら、200人近い市民の参加があった。
 その会で私は、「もの言わぬ新聞」「もの言えないテレビ」が書かない、報道できないことを書いていくのが雑誌の役割だとの持論を展開した。そして、いわゆる椿発言問題(1993年の総選挙時にテレビ朝日の椿貞良・報道局長が「非自民政権が生まれるよう報道せよ」と指示した等と問題になり、テレビ朝日は翌年、社内調査の結果、偏向報道はなかったとの報告書を郵政省に提出した)以来、テレビは報道を扱う現場が萎縮し、自主規制してものを言えなくなっている。その中で「ザ・スクープ」は、雑誌でも扱わない硬派なテーマを取り上げ、徹底的に追及する稀有な調査報道番組だと注目して見てきたこと、99年に成立した住基ネット(国民総背番号制)から始まった、国民を国家が管理統制するための法整備は、戦前の治安維持法以上に悪質な個人情報保護法案を含めたメディア規制三法案と有事法制(国家総動員法)でほぼ完成し、その流れは政治家、官僚、検察、警察など”権力”を批判するメディアの息の根を止めてしまえ、という明確な意図であることを説き、「この国が危険な方向へ舵を切ろうとしている今こそ、『ザ・スクープ』のような番組が必要なのです。今日ここにお集まりの皆さんと連帯して、絶対この番組を存続させましょう」と訴えた(詳しくは私のホームページ[新「編集者の学校」]参照http://www.henshusha.com/)。
 アメリカでは今年3月、ABCテレビの報道番組「ナイトライン」のキャスター、デッド・コッペル氏が視聴率低下を理由に更迭されようとしたのをアメリカの市民が非難して立ち上がり、その決定は撤回された。「ザ・スクープ」終了は一番組の問題ではなく、メディア全体で考え、行動を起こすべき事柄である。



元木 「ザ・スクープ」を存続させようというシンポジウムには一般の市民も200人近く参加してくれました。あれからテレビ朝日側も少し変化してきましたね。
鳥越 テレビ局って本音では視聴者をそれ程大事にはしていないのですが、ああいうふうに一人ひとりの顔が見えるムーブメントになって、その後ろに多くの視聴者がいると分かると弱い。
元木 なぜ「ザ・スクープ」のような良心的な番組がなくなってしまうのか。視聴率と経費の問題だ、とテレビ局側は言っているようですが。鳥越 視聴率はそんなに悪くはないですよ。日曜日の七時からのゴールデンタイムで1年くらいやりましたが、テレビ朝日の過去10年の同じ時間帯の番組では一番よかった。そういうことも考え合わせると、単純に「これだからやめる」という話ではなさそうです。経費の問題でも、最近はディレクターが自らデジカムを持っていって撮ってくる。そのデジカムもテレビ朝日が買ってくれない。「鳥越さんとこで買ってくれ」っていうから、百何万円か出してソニーの一番新しいデジカムを5台買って、これを番組にレンタルしてリース料いただいている(笑い)。小田(久榮門・元テレビ朝日編成局長、現BS朝日会長)さんがこの番組をはじめた13年前は、制作費が確か1回2000万円くらいだった。それが今は900万円ぐらい。まあ、テレビに調査報道番組がそんなに必要だと思っていない、常に費用対効果とか視聴率とか、金だけで計算をする営業や編成の副部長や部長クラスが考えたことでしょう。

■テレビの持つ報道の役割が分かっていない

元木 ”報道のテレビ朝日”の名が泣きますね。
鳥越 テレビは娯楽と報道という2つの柱で成り立っていますが、やっぱり数字も取れる娯楽のほうに流れようとする。結局、「娯楽だけだよ、テレビは」という力が社内で強くなってしまった。でも、市民の間に存続させる会ができ、社内でこの番組を残そうとする人たちもこれを大義名分にできて、そういうことが働いたから年数本の「『ザ・スクープ』特番」を残すことが現実化したんでしょう。
元木 今、出版社も同じような問題を抱えていて、調査報道やノンフィクションは取材費がかかるけど部数はそれほど出ないから、あまり優遇されない。書く舞台が少ないから若手の人材が出てきません。
鳥越 時間かけて、金かけて、人かけて、きちっと取材して、現場へも行って、そうしてちゃんとしたものを作って、それがめちゃめちゃ視聴率とればいいんだろうけど、こういうものはそんなに視聴率とるわけがない。こういうのがとったら逆におかしい。日本人全体の中で十数%の人が関心を持っているというくらいでいいんじゃないかな。あとは経営者の志の問題ですよ。テレビには、娯楽を提供したりスポーツを提供したりと色々な役割がある。その中で世の中で何が起きているかを、その日起きたことだけではなく1カ月前、2カ月前のことでも、もう1回検証して考える。あの時はこう思われていたけど、実は裏があってこれが本当なんだということを適時届けていく報道もテレビの役割です。そういうことをテレビ朝日の一部の人たちが分かっていないから、こういうことが起きる。

(以下、本誌をご覧ください)

 
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